Google classroomを活用した美術科における振り返り活動 vol.1


 今回は美術の授業での振り返り活動でGoogle classroomを活用したものを紹介させていただきます。今年からいよいよGIGAスクール構想が本格的に進められていくことになりました。そして、私はこの4月から情報教育担当になり、ほぼ知識がない状態からスタート。まだ十分に環境面で整っているわけではありませんが、少しでも早く生徒や教員がICTを活用した授業をしていけるように日々奮闘中です。GIGAスクール構想では子どもたちや教員がICT機器を「文房具」のように用いることを目標にしており、ただ調べ物をしたり、動画で学んだりするためだけに用いるのではなく、ノートや筆記具、付箋、授業ファイル、さらには教科書、資料集として活用していくことを目指しています。これらのことは実際に実現可能な状態であり、これまで黒板に書かれた内容をノートに書き写して、プリントなどの資料はファイルに入れて、大切なことには付箋を貼って、といったことが当たり前でしたが、それらが技術的には全てタブレット1枚で可能になります。

 もちろん、これまで使っていたノートや鉛筆、ボールペンやマーカーなどがこの先すぐに不要になるようなことはないでしょうし、これらにはデジタルにはない良い面がたくさんあるため、紙を用いる文化が完全になくなることはまだしばらくの間はないと思いますが、デジタルで十分に済ませられるようなことや、デジタルの方が利便性が高いことについては、おそらく数年の間に紙からデジタルに置き換わっていくと思われます。デジタル教科書が取り入れられ始めており、「資料」としての紙の大部分はデジタルシフトしていくことでしょう。そうなると、教科書や資料集で通学鞄をパンパンにする必要がなくなります。重たい鞄は筋力トレーニングになるため個人的には嫌いではありませんが、おそらく軽い鞄の方が嬉しいという人の方が圧倒的に多いと思うので、教科書がデジタルになるのはきっと多くの人にとって朗報となるのではないでしょうか。

 デジタルシフトしていく中で、授業の在り方も大きく変わっていくのは確実です。もしかしたら近い将来、先生が黒板の前に立って授業をすることはなくなり、各々のレベルに合わせて動画で学び、AIによって最適化された学習を個人で受けるようになるようになるかもしれません。これも技術的にはすでに可能なところまで来ています。しかし、だからと言って教師が全くいらなくなるわけではないと思います。人間である教師にはAIやデジタルができないようなことをこれから期待されるようになるでしょう。教師は躓いている生徒や他とは違った特異な考えを持っている生徒を見取り、学びを調整したり促進したり、または適切な学習環境や機会をコーディネートしたりする大切な役割を担うようになるかもしれません。未来のことは正確には誰も分かりませんが、少なくとも教師という仕事の在り方が変わっていくことになるでしょう。そして、そういう時代の到来に向けて、今からやれることをやり、教育文化の向上に努めていきたいと私は思います。かなり意識高い感じで語って「努める」なんて言っていますが、結局は自分が楽しく働けることが一番大事なので、大変な仕事ではあるかもしれませんが、あくまで「遊び」感覚で新しい時代の仕事について試行錯誤していきたいと思います。

 今回取り上げる振り返り活動の方法はGoogle classroomとGoogleスライドを利用します。この4月に入ってから本格的にGoogle workspaceというGoogleが提供するクラウドツールを運用するようになりましたが、これはビジネスや教育に最適化された複数のアプリケーション(ドキュメント、スプレッドシート、スライドなど)で構成され、情報共有が簡単にできるようになっています。このツールの活用性に関してはまだ手探りの状態ですが、この1年間で活用の基盤を築くことができたらと考え、現在私の勤務校では積極的に取り組んでいくようにしていますし、これは全国的にも同様だと思います。私は情報教育担当としてこの活用を率先して行っていく立場になり、その責任の大きさを感じているのですが、今回振り返り活動で早速使えそうな方法を考え、運用を始めてみました。おそらく、今後何度も方法を改善していくことになると思いますし、この記事を読まれる人の中には、もっと進んだ取り組みをされている人もいるかもしれませんが、私なりに価値があると思って考えた方法を紹介させていただきたいと思います。もっと良い方法があるという意見などございましたら、是非コメントいただけると嬉しいです。


「振り返り」の意義について

 Google classroomやGoogleスライド云々の前に、「振り返り」の意義について簡単に確認しておきたいと思います。授業の最後に教師の方から「まとめ」を示し、子どもたち自身で「振り返り」をする時間を取ることが重要であると近年言われるようになってきました。「振り返り」の活動は教師が教えるものではなく、子どもたちが授業で気がつけたことや発見できたことを自覚する(メタ認知)する時間であり、これによって学ぶ意味を知り、主体的に学習する態度を伸ばしていくことを狙いとしています。

 振り返り活動で子どもたちが授業でインプットしたり、自分自身がアウトプットしたことを俯瞰して捉えることで、深い学びを実現することになり、それが次の学びにつながります。また、振り返りに対して教師が適宜フィードバックをすることで、振り返りの質はさらに向上し、さらに学びを深めることができます。この有益性に気がつけた生徒は振り返りシートに気がついたことや困っていること、質問などをたくさん書くようになります。知りたいから知ろうとする。表現したいことがあるから表現方法を知ろうとする。学びたいから学ぼうとする。そういった主体性が振り返り活動を通して育まれていくことへの手応えを振り返り活動には感じてきました。

 これまでは振り返りシートというプリントを配布して、毎時間振り返り活動をしてきましたが、フィードバックする際のコメントスペースの限界や、写真や図で示したら簡単に説明できるものが提示しにくい(過去には写真の切り抜きなどを貼り付け他こともありますが…)など紙の不便さを常々感じていました。また、振り返りシートを管理したり、授業前に返却したりといった作業が手間で、これによってかなりの負担が自分自身に生じていました。このような問題がデジタルの活用によって一気に解決するだけでなく、可能性として大いに広がることになりました。


classroomの授業課題に「スライド」で振り返りシートを作成

 振り返りシートの作成方法は色々な方法があるので、教科によって特性を生かせるものを選ぶことが大切です。一般的な振り返りシートを作成したいのであれば、ドキュメントやスプレッドシートで良いと思うのですが、美術は振り返りシートに写真など図を載せたり、制作の過程をプレゼンテーションするケースも考えてGoogleスライドを利用するのが効果的だと思います。写真自体はスライドを用いなくても貼り付けできますが、スライドは毎回の授業を1ページにまとめ、毎時間ページを更新していくという方法にすることで、振り返り全体をとても見やすく管理することができます。

 このように振り返りの例(生徒はファイルを閲覧可能の設定)と、生徒が編集できるファイル(各生徒にコピーを作成)をセットで提示すると生徒にとっても分かりやすいと思います。ちなみに、クラス全体で一つのファイルを編集していくのであれば、「生徒はファイルを編集可能」に設定すると良いでしょう。ただし、この場合1人でもいたずら小僧がいると、みんなで積み上げた作業が一瞬で台無しになってしまうこともあるので、取り組む前に心構えについて話をしておくべきでしょう。振り返りシートは各生徒にコピーで配るので、誰かにいたずらされる心配もありませんし、プリントの振り返りシートとは違い、管理がいい加減で紛失する危険性も基本的にはないので教師としても無駄なストレスがなくなります。


 予め単元の回数分振り返りシートを作成しておき、後は子どもたちが入力をするだけの状態にしておくと安心です。一番最初は使い方について分からない生徒が続出しますが、すぐに慣れてくれます。保存はクラウド上に自動で保存されるようになっているので、間違って編集中にインターネットを閉じてしまっても大丈夫です。
 振り返りシートは授業中に気がついた時にメモするぐらいの用い方でも良いと思うので、このページは常に用意しておき、他にタブを増やして授業資料や解説動画など他の作業を同時にできるようにしておくことをお勧めします。


授業での成長を実感できる「記録」としての振り返りが可能に

 これまでのプリントによる振り返りシートでも成長を実感し、それを記録することは可能でしたが、美術というビジュアルが大切な教科においては、視覚的に分かる記録を残すことで、その効果が大いに上がることを期待できます。

 手を加える前と後の状態を見比べるのはとても興味深い発見を生むことになります。スライドで写真を貼り付けたページをめくると一瞬でビフォー&アフターを見比べることができるので自分の成長を実感しやすくなります。これによって、技法の効果や陰影を加えることの効果、全体のバランスに必要な要素など、さまざまな気づきが生まれ、強烈にメタ認知を促すことができます。



 教師側からしても、制作が完了したものだけを作品評価するのではなく、制作のプロセスも含めた総合的評価ができるようになるため、チャレンジして作品が思うようにいかなかった子どもがいたとしても、過去の状態を引っ張り出してきて「この状態を知っているから大丈夫だよ!」と言って安心させることができますし、そもそも挑戦する姿勢自体が主体的に学習する態度と考えることもできるので、子どもたちが安心してチャレンジできる状態にすることができると思います。

 振り返りシートのデジタル化によって、時間一杯作業をして、休み時間などを利用して後から提出することも可能になります。私は授業終了の5分前までにはまとめをして、先に終了の挨拶を済ませます。そしてチャイムがなるまで作業と片付けと振り返りを自由裁量にしています。作業を切りの良いところまで進めたいという生徒は時間ギリギリまで作業をし、休み時間に入って片付けと振り返りシートの記入をする場合もありますが、授業自体は早めに終わっているので、休み時間を使ってでもやりたいという生徒にとっては都合が良いですし、チャイムと同時に教室を出たい生徒は片付けと振り返りをさっさと済ませて時間が来るのを待っています。振り返りシートがデジタルで提出できるようになることで、子ども一人ひとりのニーズにより答えやすくなったと考えています。

 これまでにもプリントを後から提出してくる生徒はいたのですが、わざわざ提出しにいく負担を考えると、デジタルでタッチひとつで提出できるというのは大変楽と言えます。また、家庭でログインして提出することも可能なので、これは振り返りシートに限ってのことではありませんが、家庭学習としてやりたいという場合にも便利な方法だと思います。

 振り返りシートのデジタル化によって、時間の使い方を自分で考え、最適化させることにもつながります。振り返りというものが主体性と関係深いものであるなら、その取り組み方も主体性がいかされるようにすることが大切。子どもの多様性を生かすためにも、振り返り活動にある程度の「遊び」をもたせて取り組ませたいと思います。


教師からのフィードバックも充実

 振り返り活動をより効果的にする上で、教師からのフィードバックはとても大切です。振り返りシートにただハンコを押して返却するだけでは、子どもたちからしたらただチェックされただけですが、そこに教員からの適切なアドバイスや賞賛があれば、振り返りはどんどん充実したものになります

 これまでにも、子どもたちが深く考えて大切なことに気がつけていると判断できた部分にはアンダーラインを入れて、コメントを返すようにしていましたが、プリントの振り返りシートではスペースに限界があり、書き込む時間もかかるため、真剣に振り返りに対するフィードバックをするとかなりの負担になっていました。私が非常勤講師で美術の授業のみに集中できていた時代はそれでも良かったのですが、担任業務や部活動、校務分掌でたくさんの仕事を抱えるようになって、そのような細かいフィードバックをすることがかなり難しくなってきていました。それでも、「虹のようなグラデーションを作るにはどうしたら良いですか?」みたいな質問があった時には「三原色で赤から順番に少しずつ混ぜてみよう」とコメントするだけでなく、色鉛筆で実際にプリントに描いて視覚的に分かりやすくするなどしていましたが、こういう図を用いて説明する必要がある生徒が続出すると自分で自分の首を全力で締めている状態で本当に大変でした。これまではそれでも自分のトレーニングになると考えて前向きに取り組んできましたが、30代も半ばになって、そろそろ別のことに時間を割きたいと考えるようになり、これまでのやり方には限界があると感じている中でGIGAスクール構想が本格実施になり、希望の光が見えてきました。

 Googleスライドを用いた振り返りシートは教師側からのコメントが手軽にできますし、コメントバンクという機能があるため、かなり長い文章で内容のあるものであれば、同じようなコメントを返すケースが発生した場合にこれをコピーして使うことができます。また、スライドに写真などを貼り付けることもできるので、実技的なアドバイスをする際に、写真で示すことができ、分かりやすくフィードバックすることができます。そういうフィードバックに用いた図はGoogleドライブに保存しておくと、再利用も可能なので、質の高いフィードバックを継続、発展させることさえできるようになります。


 デジタル化はこれまで当たり前に用いてきたチェック済を示すハンコでさえ代わりになる方法を可能にします。Googleスライドではスタンプの代わりに、上図のような写真やイラストを貼付けするようにしています。これをコピーすれば、「control +V」で別のシートにもすぐに貼付けができるので、非常に楽です。ハンコを押すよりも圧倒的に速いですし、これだけでもかなり楽になります。GOOD JOBだけでなく、場合に応じて貼り付けるものを変えられるようにレパートリーを増やしておくのも良いかもしれません。これは私自身の今後の課題です。

 楽しつつも内容をレベルアップして生徒も教師も得をする。そういうことを実現できるという手応えを感じることができた4月でした。まだ始まって間もないですが、日々発見があるので、GIGAスクール構想元年の今年、色々なことに挑戦して、来年度から学校全体で取り組んでいけるように、職場の仲間と協力していきたいと思います。


 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回はGoogle classroomでGoogleスライドを活用した振り返り活動について説明させていただきました。デジタルの良いところは便利なことを組み合わせて、質を上げ、効率化することが可能だということです。良いものを素早く。これが可能になっていくと、当然働き方改革にもつながりますし、余裕ができることによって、そこからさらにより良い活動を創造したり、業務を効率化する時間に当てたりすることができるようになります。改善が加速し、今言われているような学校におけるブラックな印象は過去のものとなるでしょう。現在はまだその過渡期であり、GIGAスクール構想への消極的な姿勢さえ一部ではありますが、5年後や10年後の教員の仕事はかなり楽観視して良い状況になってきたと考えています。今全国で教員の働き方改革が学校単位で実践されていっている状態です。これらの取り組みが一つに結合する日を信じて、これからも自分たちにできることを日々やっていきたいと思います。

 次回は、これまたGoogleのサービスからJamboardを用いた意見の共有について紹介する予定です。これもなかなか面白いことができるツールで、授業で使って早速子どもたちから大変評判をもらうことができたので、その魅力について説明させていただきます。またお時間がございましたら次回の記事に目を通していただけると嬉しいです。

 それではまた!

 





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