Googleフォームを活用した対策問題

 勤務校での2学期の期末考査が終わりました。勤務校の美術の定期考査は1年に1回のみなので、今年のテストはこれで終了です。1年間に1回しかない美術のテストということで、一球入魂、テスト問題は当然ですが、テスト対策問題もそれなりにこだわりをもって作っています。

 今回紹介するのはGoogleフォームを活用した対策問題で、GIGAスクール構想によって一人一台端末が実現した3年前から一貫して取り組んでいるので、今回で4回目となります。Googleフォームを活用したテスト対策問題は大変学習効果が高く、ICTの有効的な利用方法としてお勧めできることなので、以前にもこのブログで紹介したことがありますが、改めてそのメリットについてまとめてみました。

 美術だけでなく、どの教科でも学習効果が期待できる視点で述べていますので、参考になる部分があれば嬉しいです。


なるべく画像を活用して図録形式の問題集に

 図鑑を見ていると自然と動物や植物について詳しくなるように、Googleフォームを活用した問題は取り組む人の視覚を刺激して学習を促進してくれる可能性が高まります。紙の資料とは違ってGoogleフォームの対策問題は容量が基本的に無限なので、画像をたくさん使うことができます。もちろんカラーで表示されるわけなので、紙の資料に文字が並んでいるものを読んだり、問題を解いたりするだけよりも、知識の定着スピードが速くなります。


 美術で扱う画像は美しいものが多く、対策問題の最後に入力できるコメント欄には「まるで美術館で鑑賞しているかのような感覚で問題に取り組める」と、感想を入れる生徒もいました。テスト対策問題を鑑賞教育のツールにできるという側面も魅力です


選択肢の順序をシャッフルさせる

 選択肢の順序をシャッフルすることで、問題に取り組む人が答えの場所だけを覚えて答えるのを防ぎ、問題文をしっかり読んだ上で答えなければ正解できないようにすることが大切です。選択問題であっても、答えをしっかり探して考えなければいけないので、その繰り返しによって知識がより定着しやすくなります


 このシャッフルの機能を使う前は、答えの場所だけを覚えて高速で問題を終わらせて100点連発という生徒もいましたが、実際のテストでは記述が書けず、同じような選択問題でも正解できないという状況が見られました。問題の内容自体を理解するというよりは、対策問題で点を出すために繰り返し取り組む中で答えの場所やその問題の雰囲気を覚えてしまい、理解度以上に点が取れる状態となってしまったと言えます。

 答えだけを覚えるという勉強方法が適切ではないと分かっていても、ついつい100点を出したくて楽に覚えようとしてしまうものであることを指導する側として理解しておく必要があります。そして、それを防ぐ手立ても必要です。対策問題で選択問題を出す場合、必ずこの順序をシャッフルする機能をオンにしておくべきでしょう。


解説に資料をリンクさせる

 解答を確認した際に、答えだけではなく、授業で扱った資料などにアクセスして知識をしっかり確認できるようにしています。答えを知るだけでなく、問題に取り組んだ上で、詳しい資料を生かした学び直しができれば、知識の理解も深めやすいです



 普段の授業もGoogleスライドなどを活用しているため、資料へのアクセスはURLのリンクによって簡単にできるため、動画をリンクに入れることもできます。

 Googleフォームのフィードバック機能はインターネットならではのリンクの活用によって充実した情報にアクセスを可能にしてくれます。主体的な学びを促進する上で非常に使える機能です。


結果の概要を表示して間違いやすい問題を認知

 どの問題でどのような間違いが起きやすいのか、それを認知することができると正しい解答に対する印象を強めることができます。下の画像は正答率が上がった状態での資料なので分かりにくいのですが、印象派の特徴について当てはまるものを選ぶ問題で、最初は「立体感を重視した陰影法を駆使した表現」を選ぶ傾向が非常に高く、他の正解以上に選ばれる傾向がありました。印象派のような表現であっても中学生からすると立体的で陰影を駆使した写実的な表現に見えるのでしょうし、問題の図では粗い筆使いが分かりにくいため、間違いを誘発しやすくなっているのだと思います。しかし、そんな回答データを、間違えた生徒が認識すれば、自分自身の勘違いに気がつき、正しい理解が可能になると期待できます。


 ただ答えをみて間違いを直すよりも、「そうだったのか!」と強く印象に残る経験にできれば、エピソード記憶にも繋がり、知識の定着を促進することになります

 結果の概要を表示するにあたって一つ注意点があります。それは回答者の名前を入れる場合、最初は表示をオフにしておかないと他の回答者が点数を知ってしまう恐れがあるということです。誰の点数で、何を間違えたのかが判断できなくなる数十程度の回答が集まった段階で表示をオンにするのが良いでしょう。


デジタルデバイスが学習に役立つことを認知させる

 Googleフォームのテスト対策問題に取り組んだ生徒は、病みつきになったように何度も問題に取り組みます。1人で10回以上繰り返し取り組む生徒も珍しくなく、100点が安定して取れるまで何度もチャレンジする傾向が見られます。98点とかでは満足できない気持ちはポケモンのレベルに対する考え方にも通じるものがあり、レベル98でポケモンの育成を諦める人はほとんどいないと思います。どうせならレベル100を目指したいという、「極められるのであれば極めたい願望」が人にはあると思います。そんな人間の病的なまでの向上心(?)を刺激するのがGoogleフォームのテスト問題です。
 ただ、知識を覚えることに力を注ぎすぎると、活用レベルでの理解が妨げられてしまう可能性もあり、説明的な記述の回答をすることが難しくなってしまう可能性もあることは注意しておかなければいけません。
 キーワードにマーカーで印を入れる勉強法は一般的ですが、これをすると、マークしたところしか見ずに、周りの文脈との関係性で理解を深められないというデータもあるようで、やはり言葉だけを覚える勉強法は有効な手段ではないと言えます。理解のレベルに深めるのが本当の勉強法と言えるでしょう。



 Googleフォームのテスト問題のやり方には少し注意点もありますが、全体の傾向としては、やはり対策問題で安定して高得点を取れた生徒は、本番のテストでも対策問題に取り組まなかった生徒より遥かに平均点が高くなりました。本番のテストの平均点は70点でも、中央値は79点になっていたため、かなり点数に偏りのある結果になったと言えます。デジタル資料による勉強の効果は紙に比べると低いというデータがありますが、それは同じ内容のものを扱った場合のことであって、Googleフォームの問題は紙の資料とは比較できるものではありません。そもそも病みつきになってテスト勉強に取り組みたくなる状況が生まれている時点で、学習効果という点では紙の対策資料や問題とは全く別次元のものであると私は考えています。たとえフルカラーの紙のテスト対策問題よりもGoogleフォームの方が1回あたりの効果が劣ったとしても、何度も取り組む中で成果に大きな差が出るのであれば、デジタルの方が有効性が高いと言えるでしょう。

 スマートフォンやタブレットなどのデジタルデバイスを悪者扱いするのではなく、悪いのは使い方の問題であって、利用の有効性を上げることができれば、間違いなく強力な味方になってくれます。学校教育ではデジタルデバイスとの適切な関わり方について生徒に学んでもらえるように、有効な機会を用意することが大切です。

 すでにスタディサプリやミライシード・ドリルパークなど便利なツールがたくさんあり、生徒の学び方を従来から大きく変えて主体性に基づく学習もやりやすい環境になってきていると思います。ただ、それらも使える環境にあるだけでは大した効果がないでしょう。教師は学び方を教えるプロとして、生徒に学習をファシリテートできるよう、最適な利用機会を考えることが求められます。AIによる革命的な進歩が教育にも大きく影響することが見込まれる時代。主体的な学びを促進する視点をベースにして、教師が積極的にデジタルとの関わり方について真剣に考えていかなければいけないと思います。AIに代替されない存在意義ある教師としてこれからも生徒の学びをファシリテートしていくためにも。


 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回はGoogleフォームを活用した対策問題のメリットと効果的な活用法について紹介させていただきました。何か参考になる部分があれば嬉しいです。

 Googleフォームの問題は生徒からも大変好評なので、これからもテスト対策で用意したいと考えています。しかし、実は、私としてはテストよりも普段の学習をまとめるレポートがあれば、本来定期テストをする必要もないと考えています。それでもテストが存在するからには、効果的な勉強法を生徒に知ってもらえるよう、有効な方法は手を尽くそうと思います。

 2学期もあと僅か。そして2024年も残り1ヶ月を切っていますね。最後まで研究と実践に励んで、2025年に弾みをつけたいと思います。

 それではまた!

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