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Canvaを美術科でどう使うか

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 今年度から倉敷市でCanva For Educationが導入されました。Canvaはオンラインで使うビジュアルツールキットで画像の加工や動画作成、文書やプレゼンテーションの作成に便利なアプリケーションです。協働作業も得意としていて、Googleと同じようにチームで作業することも可能です。無料版のものもありますが、Canva For EducationになるとAIのツールなど、便利な機能が使えます。  まだCanvaを授業で使い始めたばかりなので色々と試しながら勉強をしている状況ではありますが、グラフィックデザインの学習で非常に有効性が高いことは間違いなさそうなので、これからの授業で活用していきたいと思います。ただ、Canva単体で使うよりは、美術の授業でこれまで振り返り&レポートで活用していたGoogleスライドやGoogleクラスルームとセットで活用する方法が良いのではないかと考え、今回利用方法について考察してみました。 直感的に色々なツールが使えるCanva  Canvaは元々デザイン系のアプリケーションということで文字のデザインやエフェクト、背景削除といったグラフィックデザインに役立つツールが充実しています。手がきの機能も充実しており、オンラインのツールとしては十分な描きやすさと言えます。描いたものをPNGで透過画像にすることもできます。  ただ、あまりタッチを入れ過ぎると容量が重くなりすぎて限界を迎えてしまうので、手がきを存分にしたいというのであればやはりオフラインで使える描画ツールの方が良いでしょう。  これまでグラフィックデザインの学習ではGoogleスライドの学習レポートの雛形をGoogleクラスルームで配信し、それを利用してグラフィックデザインを作成させていました。委員会活動でもGoogleスライドやGoogle図形描画を活用してポスターを作成してきたので、これらでもある程度は立派なデザインを作成することは可能でした。  ただ、手がきがまともにできないことや背景削除するために他のインターネットのツール( remove というアプリを使ってきました)を併せて使わなければいけないなど、GoogleスライドやGoogle図形描画の限界を感じながら利用していました。それが、 Canvaであれば全て一つのツールでデザイン作成を成立させることができます 。こ

神戸に校外研修へ行って気がついたこと

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 5月のこの時期は多くの学校で校外研修を行う時期だと思います。私も今回5月8〜9日にかけて神戸に震災学習へ行ってきました。震災学習と言っても2日目は班別自主研修で神戸の街を観光する時間もあり、神戸の街の魅力を様々な面から味わえる2日間になりました。  神戸への研修は今回で4回目でしたが、改めて感じさせられたり考えさせられたりすることもたくさんあったので、備忘録的に気がついたことをまとめてみました。 心の安心・安全  「心の安心・安全」は今回のスローガン(学級委員会で決めました)で、副題に「今だからこそ分かる身近な人の大切さ」というものがついていました。率直に良いスローガンを学級委員の生徒たちは考えたと思います。この言葉の前置きがあったことで、改めて大切なことに気がつけたと思います。  人と防災未来センターでの見学の中で「このまちと生きる」という15分程度の動画を見ました。もう下見も含めるとこの動画を見るのは5〜6回目となります。初めて見た10年前と内容も変わっていません。それでも、今回非常に印象に残ったシーンがありました。それはナレーターの女の子が火事に巻き込まれて死んだ姉の遺品を家族と一緒に探していた時、「幸せな時間が流れた・・・」と語った部分です。普通に考えたら震災で街が滅茶苦茶に破壊され、姉を失い、厳しい生活をしていて「幸せ」などという感覚を得られるとは考えにくいですが、 家族とのつながりを感じる時間さえあれば「幸せ」になれる という、とても大切な視点について考えさせてくれる部分だったと思います。  人や物など、存在するものへの執着心を私たちは持っており、形あるものはいつかなくなるということは分かっていても、それを自然体で受け止めるのは簡単なことではありません。やはり私も解脱者ではない煩悩の塊である一般人なので、人や物を大切にすれども、失うことへの受け入れ難い気持ちは抱いてしまいます。ただ、そういった心を持つことが人間として未熟であり、駄目というわけではなく、 たとえ失ったとしても、心のつながりさえあれば代わりに新たな幸せを得られるという、心のセーフティーネットのようなものさえ備えていれば、苦難を乗り越え、たくましく生きていくことができる ので、身近な人や物を大切にする気持ちを忘れないようにしたいと思います。心の安心・安全とは身近な人を大切にして、心の拠り所を

乾燥棚に展示棚としての役割を持たせる

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 これまで絵画などの作品を乾燥させるために活用してきた乾燥棚の使い方を工夫して展示棚としての役割も持たせるようにしてみました。  美術の学習では制作だけでなく鑑賞による学びも大切であることは多くの美術の先生が認めていることだと思います。制作がメインの授業であっても、その中に鑑賞の要素が入ることで、学習者は他者からの刺激を得て自らの世界を拡大する挑戦的な表現行為が促進されます。  しかし、鑑賞の機会作りに苦慮されている先生も少なくはないと感じています。対話型鑑賞にしろ、制作した作品の鑑賞にしろ、ある程度の授業実践方法を持っていないと学習者が満足できる授業にはなかなかならないと思います。私もこれについては日々研究と実践を繰り返しています。  そんな少々難易度が高い授業としての鑑賞に比べると、 乾燥棚の展示棚化は安定して実践できる鑑賞学習であり、一旦環境づくりをすれば継続させることができるものです 。  私は美術の授業中は生徒の移動を基本的に自由にしているため(授業の最初は自分の場所で制作をスタートし、中盤以降はやりたい場所を自分で選ぶ)、自然と鑑賞をしながら制作に取り組む生徒も多いですが、そうは言ってもクラスの全ての作品を目にしているわけではないので、全ての作品が見渡せる機会を増やしたいと常々思っていました。そのような背景から、今回乾燥棚の展示棚化を考えるに至りました。  まだ今年の授業が始まったばかりなので、これによってどのような状況が生まれるかは見守っていく必要があると思いますが、早速少し良い手応えがあったので今回記事にしてみました。 網を間引くことで作品の状況が見えやすくなる    以前から乾燥棚の網を一段飛ばしで使っていたので、普通に全ての網を使っている状態よりは他者の作品が見える状態でしたが、今年は 網を2段飛ばしにしてさらに作品が見えやすい状態にしてみました 。  これまでも乾燥棚に集結した作品を見て感動する生徒はいましたが、このように明らかに目に入る状態にすると、他者の表現に対してこれまでよりも関心を持ちやすい環境になったのではないかと思います。  乾燥棚の場所も以前は全て教室の隅にしていましたが、教室後方(出入り口も後方)のスペースに4つのうち3つを移動させたので、授業の最後に乾燥棚を覗いて教室を後にする生徒も少し増えました。  乾燥棚を展示棚として使う

スプレッドシートの年間指導計画に様々な要素をリンクさせ、「共有場」として機能させる

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 新年度開始早々にやらなければいけない業務として年間指導計画作成があります。多くの場合、ワードやエクセルで作成し、紙ベースで保管するのではないかと思いますが、この資料が有効に活用されているのをあまり見たことがないと感じる先生も多いのではないかと思います。正直なところ、年間指導計画を立てなくても教科書に沿って行えば授業は特に問題なく行うことができますし、私が担当する美術科においても絵画やデザイン、立体造形、工芸、鑑賞といった内容のポイントを押さえてさえいれば教科書を使わなくても学習指導要領の内容をカバーすることは十分に可能です。  では年間指導計画の存在意義とは一体何なのかとなります。計画を考えることによって教師自身が指導のポイントについて考え、授業のイメージを膨らませることができるという「一般的な」指導計画の存在意義は決して無視できるものではありませんが、私はそれ以上に 「授業資料の共有場」として機能させることに価値がある と考えています。そのために、私はGoogleスプレッドシートを活用して年間指導計画を作成するようにしています。  今回はスプレッドシートで資料を共有したり、アップデートしながら日頃から活用する方法を紹介します。とても便利なだけでなく、これまでの紙ベースの年間指導計画ではできなかったような使い方もできるのでおすすめです。 エクセルから簡単にスプレッドシートに変換可能 スプレッドシートで便利になること  スプレッドシートで一から年間指導計画を作成するのは大変な労力ですが、既にこれまで使ってきたエクセルの年間指導計画があるのであれば、Googleドライブにアップロードしてスプレッドシートにほぼそのまま変換できるので、手間はほとんどかかりません。  ただエクセルのファイルをスプレッドシートに変換して印刷するだけならメリットはありませんが、スプレッドシートに変換することで以下のようなことが可能になります。 ・インターネット上で直ぐに編集することができる(インターネットにつながるどの端末からでも編集可能) ・共有の設定で他者と共同編集したり、ファイルを共有したりすることが容易 ・リンクの機能でGoogleドライブに保存しているファイルと繋げられる ・スプレッドシートのQRコードを作成して資料共有 ・Google Chromeを常時使っている場合、Google

中1最初の授業で「やりたいと思ったら即行動」のマインドセットに

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 新年度が始まり、私が担当する中学1年生の全てのクラスの授業が1回目を終えました。初めての美術の授業では学習における大切なマインドセットを持ってもらえる仕掛けを可能な限りたくさん体験してもらえるようにしています。例えば、 「美術と感動的で文化的な生活」「徹底的に遊ぶ」「マナーさえ守れば全てOK」「失敗最高」「主役はみんな」「先入観の排除」「自分の感性を生かして自由に表現」こういったことをスライドを使ったり、実際に表現したり中で生徒に伝えるようにしています。こうして、中学校で学習する美術に対して良いイメージをもってもらえたら、美術へのモチベーションを促進することになるので、1発目の授業を非常に大事にしています。  今回は、1発目の授業で生徒に伝える内容で、特に私が重要視している 「やりたいと思ったら即行動」 について私の考えをまとめました。 これは個性を発揮した自由な表現を可能にするスモールステップであり、これをマインドセットにできれば、自然と結果はついてくると考えています 。なぜなら行動と思考は一体化したものであり、双方は不可分なものであるためです。 本当に自由に表現できる時間であることを認識できる仕掛け  美術は個性を発揮して自由に表現する時間。これは自明のことのようで、往々にして教材や制作条件、制作環境に制限が多すぎて実現できていないことがあります。これとは逆に、教材や制作条件が生徒の活動を促進する仕掛けに乏しく 放任的な時間になっても、結果的に表現活動における自由を経験することが難しくなってしまうこともあります。教師が個性を発揮できる仕掛けをつくることができているか否かで活動の充実度は大きく異なることになります。  私が特に重要と考える「やりたいと思ったら即行動」という考え方は、何の仕掛けもない中でいきなり言われても、そのような経験とメタ認知が十分でない場合、何をどうすれば良いのか考えることが難しく、充実度の乏しい時間になりかねません。なので、何ができるのかイメージをもたせる仕掛けが大切になります。    上は最初の授業で配布するプリントです。授業の流れで逆さグリッドデッサンで先入観を排除してモチーフの位置関係さえ掴めばある程度似せて描くことは簡単にできるようになり、デッサンはコツさえ掴めば皆同じように描けるようになるという描画体験をした上で、個性的な表現をす

ICTの活用はWOWの「仕掛け」として

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 2024年度の授業が始まりました。今年も授業を鋭意アップデートして生徒と共に充実した学習経験をしていきたいと思います。  充実した学習経験を可能にするために、私は教室を造形活動で思う存分楽しめるように整えたり、体験を通して学べる教材を作成したりと、アナログ面での工夫を普段から行っていますが、ICTも積極的に取り入れています。  ICTを取り入れることで資料の提示や共有が手軽にできるというのは言うまでもないことなので、わざわざ詳しく話しません。 私がICTを活用する最大の目的は一瞬で生徒にWOWと思ってもらえる「仕掛け」としての役割があるためです 。特に動画の効果は非常に大きく、これが生徒の端末と共有できるようになったことで生徒の興味関心をより引き出すことができるようになったと感じています。  今回は私がICTを活用して学習者にWOWと思ってもらえるような仕掛けの視点について少しまとめてみました。 WOWの「仕掛け」として  ICTとプロジェクターで教科書の内容を提示したり、スライドで学習の要点を強調しながら説明したりといった「教師が生徒に説明するためのICT活用」は広く行われています。私も内容をまとめたスライドを用意して授業で利用はしていますが、基本的に、教科書や資料集に載っている内容をそのまま学習するのであれば、自分で読むだけでも十分であるため、「問い」を投げかけるためにスライドを作るようにしています。資料を見ながら読み上げるスライドの利用は生徒にとって退屈な時間になってしまう可能性が大きく、そのような資料作成は極力避けるようにしています。   私が何よりスライドの作成で大切にしているのは見た瞬間にWOWと思ってもらえるようなインパクトある「仕掛け」を作ること です。私が担当している美術の教科書は他の教科の資料と比べても構成がドラマティックで感動を演出する仕掛けがたくさんあります。なので、ICTを積極的に活用していると言ってもアナログの教科書を資料提示として使うことも少なくありません。  ただ、教科書の内容が自分の伝えたいことを全てサポートしてくれているわけではないので、その部分はICTを活用して視覚的なインパクトを最大限に引き出せるように工夫しています。  例えば、光を表現した印象派に関する学習(学習は対話的鑑賞を基本にして進めていきます)では、教科書や資料集