自主作成の教材動画はYouTubeで 〜Googleドライブに負担をかけない〜

 Google Workspace for EducationによってGIGAスクール構想、教育DXがどんどん進行している今日この頃ですが、それによってある問題が生まれてきているように感じます。それは、教材として利用できる動画をGoogleドライブに保存する先生の増加です。動画を活用した教育自体は肯定的に考えて良いことですが、Google Workspace for Educationのストレージ容量が今年の7月から従来の無制限から100TBになったことで、教育委員会が管理して複数の学校で利用する形をとっている場合、1人あたりの容量が数GB程度しかないことになります。実際に私が勤務する倉敷市では1人当たり大体2〜3GBが目安になります。

 現段階では生徒のドライブ利用率が低いため、教師がたくさんの容量を使うことができますが、今後、学習記録として動画を保存する生徒の増加も考えられるため、これまでのように教師が気軽に動画をドライブに保存することは避けることが望ましいでしょう。私自身、すでにたくさんの学習に役立つ動画をドライブに保存してきたので、もう50GBを超えていますが、これを可能な限り抑えるか、今後に向けては削っていかなければいけないと考えています。実技教科を担当している先生は授業内容に最適化した動画で技法や取り組み方を説明するケースが特に多いと思うので、これはかなり深刻です。

 このような状況を解決するにあたって有効なのがYouTubeの利用です。YouTubeに動画をアップロードすることでドライブの容量に関する問題を和らげるだけでなく、活用における利便性もアップします。すでにYouTubeを利用して自主作成の教材動画を授業で活用されている方もおられるかもしれませんが、これによって期待できる教育的可能性について今回は考えてみました。


ストレージに関係しないYouTubeへのアップロード

 YouTubeはGoogleアカウントさえあれば動画を配信できますし、そのアカウントは教師1人ひとりに割り当てられたものでも利用できます(利用できない学校もあるかもしれませんが・・・)。YouTubeの良いところはストレージ容量に関係なく動画をアップすることができるということです。教材動画が全てYouTubeで配信できるようになれば、かなりドライブの使用量を抑えることができます。



 そのようなことを聞くと、「YouTubeにアップするなんて!ユーチューバーではない自分にそんな大それたこと無理!」なんて思う人もいるかもしれませんが、心配は不要です。YouTubeはリンクを知っている人に限定配信することが可能なので、割と気軽に使えるツールの一つとして考えるべきでしょう。ドライブに保存した動画をGoogleクラスルームで生徒と共有するのと同様です。


YouTubeはただの動画ではない

 YouTube動画とMP4などによる動画の大きな違いは、YouTube動画はリンクを説明に入れるなど、WEBサイトとしての機能性も兼ねているということです。それに加えて関連動画へのアクセスも誘導されるため、自然と知識を深められる可能性もあります。


 Googleサイトなどで教科のWEBサイトを作成し、そこにリンクとして埋め込むのも有効です。Googleの様々なものが一つにつなげられる使い勝手の良さは教育DXのエッセンスと言っても良いでしょう。



教師アカウントで動画をアップするリスク

 教師アカウントで動画をアップすることはあまりお勧めできません。なぜなら、アカウントが使えなくなったらYouTubeも利用できなくなるためです

 短期的にはYouTubeに教材動画をストックしていくのは良いですが、長期的に考えるとリスクがあります。アカウントが変わったり、退職してアカウントが消滅したりすると、そのアカウントでアップした動画が利用できなくなってしまい、教材動画の共有もできなくなってしまうためです。

 GIGAスクール構想の魅力は日本全国の有益なコンテンツをインターネット上でつなぐことができるところにありますが、アカウントというアキレス腱が切れてしまうことで、利用できなくなるリスクを考えると、動画のアップロードは教師用アカウントではなく、個人用アカウントでする方が望ましいのではないかと思います。個人用のアカウントで作成してもGoogleクラスルームに動画はアップロードできます


YouTubeを禁止したり、フィルターでブロックしたりする問題点

 YouTubeの利用に関しては、学校によって状況が異なると思いますが、多くの学校で何かしらの制限がされているのではないかと思います。私の勤務する中学校もロイロフィルターを使って完全にブロックしている状態です。多くの人にとってYouTubeは娯楽のイメージが強く、授業中に自由に触れさせないようにフィルターをかけたり、ブロックしたり、または授業ルールとして禁止したり、まだ教育ツールとしての地位を確固たるものにしていない印象があります。

 しかし、最近は調べ物をする際にググるよりも、「ツベる(YouTubeで調べる)」割合が高くなってきており、学習方法としてテキストよりも動画の方が効果が高い傾向にあるというのも周知の事実となっています。実際に私自身、YouTubeで勉強する時間は非常に多くなっています。教育系ユーチューバーも今は大変充実していますね。

 主体的な学習がテーマになっている新しい教育、そしてそれをサポートするICTの利用。このことを考えると、現在最も優秀な動画ツールと言えるYouTubeを制限するというのはあまりにも勿体無いことだと思います。残念な話、YouTubeはフィルタリングをされていても、他の動画サイトは閲覧ができて、結局授業中に隠れて見ているという生徒は後を絶ちません。いくらでも抜け道はあるというのが現実であるなら、有益な動画の宝庫であるYouTubeの利用を解放しても良いのではないかと思います。

 だからと言って、主体的な学習態度が育っていない生徒のことを考えると、野放しにYouTubeを授業中に利用できるようにするのも問題です。これに関しては教師が積極的に机間巡視して生徒の学習を見取るようにすることで、ある程度適切な使い方をさせることができるようになると考えています。これまでのように教師が黒板の前に張り付いた状態で指導すると、隠れてYouTubeで学習に関係のない動画を見る可能性もありますが、教師が動き回って学習の様子を観察したり、学習内容を確認したりしている状態であれば、意地でもYouTubeを見ようとする生徒はごく僅かとなるでしょうし、そもそもそういう状態の生徒は普段から支援を必要としている生徒のはずなので、教師や周りの生徒が手厚くサポートする時間も多いはずです。

 授業中に関係のない動画をYouTubeで見られるのが嫌というのは共感することですが、そもそも動画はYouTubeの他にたくさんあり、隠れて動画を見ることを完全に防ぐのは現実的ではありません。一番の問題は学習に非常に役立つYouTubeの制限をして主体的な学習の妨げになる環境を作ってしまうことだと思います。YouTubeが自由に使える状況を学校で実践していくためには、教師の粘り強い指導が必要になりますが、生徒が利用しているYouTube動画から授業に活用できる情報をキャッチすることも可能なので、リターンも大きいと考えています。

 これからの学習のあり方を考えて、YouTubeとの新たな関係づくりをしていくことが必要です。


 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回は教師が作成した動画をYouTubeにアップすることのメリットと、今後のYouTubeと学校教育の関係について考えたことをまとめさせていただきました。BUCAの時代において、生徒が主体性を発揮して学習すること、そしてその環境を作ることが非常に重要です。教師だけでなく、生徒の力も借りながら日々改善を行っていけたら面白いでしょうね。

 それではまた!


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