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3月, 2023の投稿を表示しています

美術の授業で使いたい言葉 〜上手という言葉を使わない〜 vol.4

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   月に1回のペースで紹介する美術の授業で使いたい言葉シリーズ、今回はVol.4ということで、今回も「上手」という言葉を使わずに子どもたちの活動や学習を促進する言葉掛けを紹介していきます。過去の記事はこちらからアクセス可能ですので、もし興味があれば覗いてみて下さい。 vol.1 (導入) vol.2 (「#1 この部分、すごく面白い!」「#2 ピカソを超えた!」「#3 遊びまくってるなぁ」) vol.3 (「#4 ワオ!ワンダフル!!」「#5 次は大丈夫!」「#6 やられたわぁ!」)  今回紹介する言葉は次の通りです。 #7 どこまで進化していくん!? #8 思わず二度見した! #9 この表現、良い意味でメッチャ気になる!  それぞれ詳しく説明しているので、よろしければどうしてこれらの言葉を使いたいのか知ってもらえると嬉しいです。 #7 どこまで進化していくん!?  生徒は試行錯誤しながら作品に変化を加えていきます。ただ、その変化が好ましいものであるかどうか、生徒の中には不安に感じながら制作をしているケースがあります。特に、元々美術に対して苦手意識をもっている生徒の場合、手を加えた分作品が悪化してしまい、下手な表現を重ねて恥ずかしい作品を制作しているとネガティブに考えてしまっていることもあります。しかし、手を加えた分、作品が悪化するなんてことは基本的にはないと考えるべきだと私は思います。 生徒がやりたいと思って加えた工夫、挑戦の結果生まれた変化は進化ととらえ、そういった状況を見取ることができれば「進化してますね!」と言葉掛けし、それが順調に続いている場合は「どこまで進化していくん!?」と、進化していくことへの期待を驚きと共に伝えたいところです 。  ただ、「進化している」と言うだけではあまりにも抽象的な賞賛ですし、それが本人にとって望ましい進化かどうか分からないので、「これからさらにどうしていきたい?」と聞くこともよくあります。その時に「この部分をさらに〜して〜を表したい」と、順調に進化させていく道筋が計画できている場合もあれば、「実は本当は〜したかった」という感じで、進化というよりはどちらかと言うと失敗だったということが分かる場合もあります。いずれにしても、生徒がその後どうしていくか考えたり、アドバイスしたりする機会にはなるので、この言葉掛けが生きることになりま

義務教育最後の美術の授業でジャムボード協働学習

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   3月も後半に入り、中学3年生たちは卒業していきました。私自身、3年間クラス担任と美術の授業を全クラス担当した学年だったので、彼らの授業がもうないことに物凄く寂しさを感じていますが、彼らが卒業後も美術を生活のさまざまな場面で生かしていってくれるものと期待しています。  今回は3年生最後の授業で行った作品鑑賞会での協働学習について紹介します。最後は「美術の可能性とは」ということでGoogleジャムボードで意見共有をしました。ここに掲載している画像は授業で実際に使ったものをベースにこのブログ用に調整したもので、1クラスだけでここまでギシギシに様々な意見が出ていたわけではありませんが、どのクラスも十分に素晴らしい考えの共有ができていました。  今回この協働学習をしたことで改めて教育と美術の可能性について考えることがあったので、記事を書いてみました。 充実した制作体験ができるように  3年生の最後の制作はスクラップブッキングかボックスアートで3年間の思い出を詰め込む卒業制作に取り組みました。上のジャムボードでの意見共有はこの制作の作品鑑賞会でのものです。この制作ではB4木製パネルをベースに、生徒たちは思い出の品や写真、これまで学習してきた様々な知識や技術、デコレーションに活かせる様々な材料を活用します。  今回生徒の作品を掲載することはできませんが、イメージを掴んでもらえるように私の試作品からどのようなものであるか想像してもらえたらと思います。私自身、試作品とはいえ思い出の詰まった海外旅行をテーマにしているので頑張って制作したのですが、生徒の作品はこの様な試作品よりも圧倒的に熱量のあるものがたくさんありました。生徒からは学ぶことが本当に多いです。  スクラップブッキングは写真を飾るクラフトですが、B4木製パネルを活用するため、どちらかというとボックスアート的な要素が強くなります。中には写真を使いたくない生徒もいるため、ボックスアートとしても制作できるようにしています。  3年間の思い出を詰め込むために生徒たちには様々な材料を持参してもらいます。修学旅行のパンフレットや学級通信、総合体育大会のトーナメント表、委員会の任命書、過去の美術作品、エヴァンゲリオンやガンダムのプラモデル、お菓子の箱、キーホルダー、壊れたモーター、部活動Tシャツ、レゴブロック、ランドセルなど、もう使

生徒の姿から学ぶ 〜非認知能力に焦点を当てた教育〜

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  今回は個人的な備忘録的な内容になります。ただ、教育において非常に重要だと改めて考えるようになったことを記しますので、何か参考になるものがあれば嬉しいです。  卒業式が迫り、少しでも良い形で卒業してほしいという願いから様々な取り組みをして忙しく働いている今日この頃ですが、卒業していく生徒の姿を見ていると、もっと何か彼らのために良い教育ができたのではないかと、色々と反省することも浮かんできます。 非認知能力にもっと焦点を当てる教育へ  各教科の授業は学校教育の重要なパートであることに間違いないと思いますが、 学力以上に心の面での成長が重要であり、明確な数値によって点数化できる認知能力に対して、非認知能力という学力テストでは点数化できないような情緒の面での豊かさこそ教育において最重要と考えなかればいけない のではないかと最近は強く考えるようになってきました。  私がそもそも美術教師を目指したきっかけも非認知能力の可能性の大きさに気がつき、好奇心や粘り強さ、コミュニケーション能力など、芸術表現で必要とされる数値化するのが難しいながらも確かに存在する力や価値が人生を豊かなものにすると考えるようになったことにあります。私が大学生の時に非認知能力という言葉は聞いたことがありませんでしたが、「生きる力」という言葉は学習指導要領に存在したので、「これこそ学校教育の存在意義だ!」と強烈な共感をもって教育に関する研究を始めました。  私が大学や大学院で勉強をしていた時代はまだ「ゆとり教育」の時代でしたが、教育現場に出る頃には「脱ゆとり」に舵が切られ、美術の授業時間数は中学校3年間で115時間、大体週1回程度となり、音楽と共に美術は存続の危機とさえ言われるようになっていました。  時間数が削られるのは芸術教科がその存在意義をしっかり示すことができていなかったことも原因の一つとして考えることもできるかもしれませんが、それでもやはり国数英社理の5教科が基礎学力として重視され、それ以外の教科は学力に直接つながるものではないと考えられて軽く扱われてしまった感じが否めません。  学校現場でも「高校や大学へ行きたかったら学力をつけなければいけない」と言って大量の課題を生徒に課し、学力を補うために、多くの生徒が学習塾へ通う姿を見てきました。私自身、美術の正規教員になる前までは英語の講師として学校と学

表紙のデザインはステンシルで

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  卒業シーズンですね。私も今年は中学3年生の担任をしているので、この時期は忙しかったり寂しかったり、込み上げるものがあったりで情緒不安定です。この感じ、私は嫌いではありません(笑)  自分が3年生を担当している時に毎回自分の役割になるのが呼名名簿を貼り付ける台紙のデザインです。担任がこれを手に取り一人ひとりの名前を読み上げます。もしこの紙がペラペラのコピー用紙だったら品がないので、品のある紙を台紙にして卒業式の雰囲気に合ったものにします。 ステンシルなら簡単に短時間でデザインを施すことが可能  この台紙がたとえ無地であったとしても、遠くから見るとそれほど気になることはないでしょうが、担任にとっても卒業式は特別な機会なので、なるべく良いものを手に取って気持ちよく式に臨んでほしいものです。  だからと言って台紙を外注するほどのことかと言うとそうでもないような気がしますし、一々手作業で凝ったものを作るのも大変です。このような状況を解決してくれるのが以前にも度々紹介してきたステンシル版画です。 ステンシル版画であれば、簡単に短時間で素敵なデザインを施すことが可能です。  今回活用したステンシルは7年も前に作成したものですが、私が3年生を送り出すたびに活用して今回で3回目。唯一の変更点は学年目標のステンシルを新たに作成する程度です。着彩はブラシと網を活用したスパッタリングで色を分けたり重ねたりして版画を作成します。今回は7枚の台紙に着彩をしましたが、学年目標のステンシルを作成するのも含めて1時間程度で着彩が完了しました。 台紙を2枚重ねにすると更に上品に  色画用紙にデザインを施せばそれだけでも十分に良い状態になりますが、 薄い色画用紙を用いた場合、台紙自体がペラペラとして品が出ないので、これにケント紙などを重ねて糊付けするとシャキッとするだけでなく、2色構成になるため少しオシャレ感が増します 。欲を言うなら完全なツートンカラーにしてしまいたいところですが、同型色を構成するために画用紙を購入する手間とコストを考えると、セパレーションの効果が出る白でも良いと思います。トーンで考えるならグレーはどの色彩にも調和するので、グレーの色画用紙を用意するのも良いかもしれません。 手軽ながら感動を生むステンシルの優秀さ  私的には手軽に作成した台紙でしたが、学年主任の先生に歓声の報告をし