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7月, 2025の投稿を表示しています

美術室の環境改善 〜教科書としての機能空間に〜

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 夏休みが始まってゆっくり休むどころか、県の総合体育大会、市の大会などが怒涛のように入り、むしろハードな日々を送っているうちに、早くも1週間が経ちました。年休は多少取ることができているので、日頃よりは自分の時間を作ることができていることを考えると、一応夏休みらしい生活はできていると思います。残りの夏休み中の出勤日は、ほとんど終日か半日の出張で、部活動と出張にさらに追われる日々になるので、寸暇を見つけては自分のやりたいことのために有効に時間を使いたいと思います。  今回紹介する内容は日々アップデートしている美術室の環境についてです。これまでにも様々な改善を加えてきましたが、まだまだやれることはたくさんあるということで、工夫できる余地を探し続けています。  昨年、光村図書の取材で美術室を紹介していただく機会がありましたが、それから半年以上の間にかなり大きな変更を加えました。正直なところ、取材をやり直して欲しいです(苦笑) 私の美術室: "Go Crazy"わくわくする空間  むしろ、取材された機会が自分のメタ認知の機会となり、課題意識が生まれて今の美術室の空間があると言えるのかもしれません。  私が目指している美術室のコンセプトはとにかく美術がやりたくなる空間であり、テーマパークのようなワクワク感を味わってもらえるように工夫をしています。 美術を学ぶ上で教科書や美術資料が有効なツールであることは間違いありませんが、それ以上に美術室の空間を生かすことは生徒の美術表現や学びに対する主体性を伸ばすことに影響があると考えています 。この視点は、西洋の教会や大聖堂の内部がステンドグラスや壁画、彫刻によって埋められていて、文字が読めない人でも空間の装飾によってキリスト教について学ぶことができるようにしていたことが参考になっています(中世のキリスト教関係の言語がラテン語で統一されていたこと自体は一般市民の教養や社会的な活躍の障害になっていたかもしれませんが、空間による教育的な可能性については認めざるを得ないものです)。  私自身、結婚して子どもができる以前、長期休みの際にはよく海外旅行(旅行というよりは自己研鑽目的)に行き、多くの大聖堂の内部を見学して、その教育的効果については実感してきました。また、身近なところでは美術館や博物館、水族館や動物園など、リアルな体験...

構成美のスモールステップ 〜音楽に合わせて色と形を描く〜

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 今回は中学1年生のグラフィックデザインの学習過程として位置付けている構成美の作成に向けたスモールステップ教材について紹介します。これはインストゥルメンタルの音楽に合わせて色と形だけの抽象画を描くというもので、生徒の感性を刺激し、色と形を雰囲気(テーマ)に合わせて構成する体験を通して構成美の基本要素を直感的に理解したり、構成美に対する難しいイメージを和らげることを狙いとしています。  この学習に先立って、構成美について簡単に紹介しますが、いきなり構成美の作成に入るより、音楽を聴きながら色と形でテーマや雰囲気を表現する経験があれば、より気持ちを楽にして構成美に入ることもできると考えてこの教材を作成しました。音楽と平面表現ということで、勿論カンディンスキーの表現についても教科書を利用して簡単に紹介します。  この教材を実際にやってみて、 短時間で抽象画を描く経験が、その後の構成美制作に非常に有効だと手応えを感じたため、今回記事にまとめました 。今回の内容が平面の表現力を育てる上で何か参考になるものになれば嬉しいです。 学習効果について分析  音楽のイメージを色と形で表現するという説明を聞いて、最初は何を描いたら良いのか分からず困惑する生徒もいましたが、音楽の雰囲気に合わせて色を選び、リズムに合わせて手を動かしているうちに絵ができていくという手応えを掴むことができれば、瞬く間に絵を発展させることができていました。   音楽に合わせて描く上でのポイントになるのが、まずは色を使うことです 。音楽は瞬く間に流れていくものなので、鉛筆で形を描くだけでは色による雰囲気やイメージを表現する間もなく終了してしまいます。この発想はモネが一瞬の光をそのまま描くために、色を短時間で画面上に配置した描き方が参考になりました。 着彩できるものであれば色鉛筆、マーカー、クレパス、水彩、ポスターカラーなど、何でも良いと思います。私のお勧めは水彩やポスターカラーを出してパレットスペースを作り、筆で描いていくという方法です。水を加え過ぎなければコピー用紙でも問題なく描けます。  この教材の学習効果について分析すると以下のような点で有効性があると考えています。 直感的な理解の促進:  言葉や具体的なモチーフに縛られず、音楽からインスピレーションを得て色と形を表現することで、生徒は構成の要素(色、形...

Canvaを活用したグラフィックデザインの学習

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 Canvaが自治体導入されて1年以上が経ち、Canvaの利点を活かした有効活用ができるようになってきました。夏休み期間中には倉敷市の美術部会の研修会や岡山県の中学校・高校中心の研修会でCanvaの講習をすることになっているので、それに向けて準備をしています。  今回は研修会の準備ついでに、Canvaを活用したデザインの授業実践方法についてブログにまとめました。何か参考になれば嬉しいです。 グラフィックデザインの学習  Canvaの強みは何と言ってもデザイン作成に関する充実した機能がついていることです。豊富なテンプレートと素材、直感的な操作が持ち味で、初心者でも簡単に優れたデザインが作成できます。  ただ、 美術の学習では造形に関する知識と技能を獲得することに重きを置いているので、テンプレートを組み合わせただけの作品ではなく、構成美や色面構成の学習をしながら色と形の働きについて理解を深め、実践できる力を培うことを目的にしてCanvaを利用します 。  同様のことはGoogleスライドでもある程度は可能ですが、Canvaの方が機能が充実しているため、美術の授業(中学1年生)ではGoogleスライドとCanvaの両方を利用できるようにしています。Canvaは、背景削除・手描き・GIF・アニメーションといった高度な機能が豊富です。Googleスライドでは難しい表現も、Canvaなら手軽に実現できます。なので、高度なデザインや映像を作成したい場合にはCanvaを使うメリットが大きくなります。  以下のリンクから実際に授業で活用しているものと同じ状態のCanvaのファイルにアクセスできます。授業ではこのファイルのテンプレートリンクをGoogleクラスルームに貼り付けて、生徒がテンプレートをダウンロードして編集できるようにしています。使い方の説明なども載せているので、生徒は各自で学べます。 Canvaの共有ファイル  このファイルはコピーなどしてもらって構いませんので、どうぞ自由にご利用ください。 指導と評価の一体化 Googleクラスルームと連携   美術の授業ではCanva単体で使うより、Googleクラスルームと連携して使う方が指導と評価の一体化、生徒へのフィードバックといった面でメリットが大きい と考えています。それは、Googleクラスルームの「授業」の機能でルーブリ...

視野を広げる材料の活用 〜トイレットペーパーの芯で造形遊び〜

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 今回は、視野を広げ、豊かな創造性を育む仕掛けについて紹介します。それは本来ゴミになってしまうようなものを創造の材料にすることです。今回はトイレットペーパーの芯を利用した造形遊びを紹介します。材料を集めることは簡単なことなので(少々期間は必要かもしれませんが)、良かったらやってみてください。結論から言うと、とても創造性が刺激されて楽しく造形遊びができますし、芯に着彩をするとまた違った魅力を味わえるので、幼い子どもがいらっしゃる場合はおすすめの遊びです。 トイレットペーパーの芯を活用しようと考えたきっかけ  どうして今回このような内容を書こうと思ったのかと言うと、多くの子どもたちが幼児の時に体験したことがあるであろう積み木による造形遊びの経験が、中学生になって美術の時間に構成を想像する際にあまり生かせていないと感じることがよくあるためです。 積み木遊びを通して、子どもたちは自然と「シンメトリー」「リピテーション」「バランス」「グラデーション」「ムーブメント」などの構成美の基本を体得していきます 。こういった造形ができるのであれば立体作品をつくる際にも創造性溢れる構造をつくることができると思うのですが、それが意外とそうなりません。もちろん、全員ができないわけではありませんが、多くの生徒が自分で形を創造することに苦戦します。そういう時に「積み木で遊ぶように形を組み合わせてみましょう」といった言葉をかければ、ある程度は効果が出て、創造的な構造が見られるようになります。しかし、積み木の経験があるのであれば、本来はそのような声かけなしに多様な構造をつくることができても良いはずです。   積み木でなくても整った形のものであれば、積み上げたり並べたりして造形遊びができます。そういう経験は、構成能力はもちろんのこと、有り合わせのもので何とかする(ブリコラージュ)柔軟な思考を育むことにもなります 。今回紹介するトイレットペーパーは形が筒状で整っており、強度も高いため、構成で遊ぶには非常に優れた材料になってくれます。そして、普通はゴミと思われるからこそ、造形遊びに利用できるものとしてのインパクトがあると考えています。  材料の機能面として優れているだけでなく、印象面でもインパクトがあるトイレットペーパーを使うことで、造形で利用する材料への視野を広げることにつながります。  こうしてただ綺...