視野を広げる材料の活用 〜トイレットペーパーの芯で造形遊び〜


 今回は、視野を広げ、豊かな創造性を育む仕掛けについて紹介します。それは本来ゴミになってしまうようなものを創造の材料にすることです。今回はトイレットペーパーの芯を利用した造形遊びを紹介します。材料を集めることは簡単なことなので(少々期間は必要かもしれませんが)、良かったらやってみてください。結論から言うと、とても創造性が刺激されて楽しく造形遊びができますし、芯に着彩をするとまた違った魅力を味わえるので、幼い子どもがいらっしゃる場合はおすすめの遊びです。


トイレットペーパーの芯を活用しようと考えたきっかけ

 どうして今回このような内容を書こうと思ったのかと言うと、多くの子どもたちが幼児の時に体験したことがあるであろう積み木による造形遊びの経験が、中学生になって美術の時間に構成を想像する際にあまり生かせていないと感じることがよくあるためです。積み木遊びを通して、子どもたちは自然と「シンメトリー」「リピテーション」「バランス」「グラデーション」「ムーブメント」などの構成美の基本を体得していきます。こういった造形ができるのであれば立体作品をつくる際にも創造性溢れる構造をつくることができると思うのですが、それが意外とそうなりません。もちろん、全員ができないわけではありませんが、多くの生徒が自分で形を創造することに苦戦します。そういう時に「積み木で遊ぶように形を組み合わせてみましょう」といった言葉をかければ、ある程度は効果が出て、創造的な構造が見られるようになります。しかし、積み木の経験があるのであれば、本来はそのような声かけなしに多様な構造をつくることができても良いはずです。

 積み木でなくても整った形のものであれば、積み上げたり並べたりして造形遊びができます。そういう経験は、構成能力はもちろんのこと、有り合わせのもので何とかする(ブリコラージュ)柔軟な思考を育むことにもなります。今回紹介するトイレットペーパーは形が筒状で整っており、強度も高いため、構成で遊ぶには非常に優れた材料になってくれます。そして、普通はゴミと思われるからこそ、造形遊びに利用できるものとしてのインパクトがあると考えています。

 材料の機能面として優れているだけでなく、印象面でもインパクトがあるトイレットペーパーを使うことで、造形で利用する材料への視野を広げることにつながります。


 こうしてただ綺麗に並べるだけでもリピテーションとバランスの効果が生まれてトイレットペーパーの芯が良い感じに見えますね。こういったことに気が付くことを通して、お店に並んでいる商品や自動販売機の飲み物の見せ方が実は構成美を利用していることに気が付かせることは美術教育の役割として大切です。


トイレットペーパーの芯で多様な造形美&多視点で捉える

 トイレットペーパーを並べたり、積み上げたりするだけでも多様な造形美を生み出すことができますし、この作業自体がとても楽しく、崩れないようにバランスよく積み上げることは集中力も必要になるので、構成ができた時には充実感が得られます。トイレットペーパーも見方を変えれば白い筒であり、このパーツが組み合わさった立体構造は普通に美しいです。

 そして、この造形を多視点で見ることによってまた違った造形美を発見することも可能になります。下から見上げたり、真上から覗いたり、近くから見たり、それぞれに造形的な魅力があります。多面的に対象を捉え、見る場所を絞って深く捉える、そういった視点で見ることによって美に対する視野が広がります。



身の回りに造形美のネタはいくらでもある 脱固定観念

 トイレットペーパーの芯でも造形美に対する視野を広げることができるのであれば、身の回りにはいくらでもそういった造形美のネタはあるということがマインドセットとして植え付けられます。自然のものや生活の中で出る廃材など、そういった普段材料として使わないものに対して、造形に活用する見立てができるようになることを目指したいところです。そして、そのためには材料に対する固定観念から解放される必要があります。何かをつくる時に専用の材料や道具が必要と考えるのではなく、動物たちもやっているように、自然のものや廃材を利用すれば巣など居心地が良い場所をつくることができると考えたり、人間も工業化が進む前は自然のものを工夫して工芸の材料として使ったりという、「使えるものは使う」造形に対する基本姿勢が重要だと私は考えています。

 身の回りのものに対する材料としての見立てができるようになれば、自分でいくらでも材料になるものを発見し、それを造形に生かすことができるようになります。誰かが用意したものを使うことが悪いことではありませんが、固定観念に縛られずに色々なものをケース・バイ・ケースで利用することに加え、それを造形的にも美しいものにすることができる創造力は、生きる力の視点でも大切なことだと思います。

 このような基本姿勢が身につけば、常に創造に対する視野を広げることができることでしょうし、美術の時間にそのようなことはわざわざ教えるまでもないことにもなるでしょう。身の回りに目を向けて使えそうなものがあれば、まずは造形遊びすることから始めてみると良いかもしれません。そういった意味で自然は材料の宝庫なので、特に子どもたちには自然の中で造形する楽しさを創造の原体験にしてほしいと思いますし、大人になってもそういう時間を大切にしたいものです。


 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回は視野を広げる材料の活用についてお話しさせていただきました。今回の内容は、私が授業の中で、視点を多面化し、造形に対する視野を広げられるようにするための仕掛けとして使っているものをベースにしてお話をまとめました。何か参考になるものがあれば嬉しいです。

 これからも造形に活用できる身近なものを紹介したいと思います。

 それではまた!

コメント

このブログの人気の投稿

Google classroomを活用した美術科における振り返り活動 vol.1

授業資料とChatGPTでGoogleフォームの練習問題を短時間で作成

Canvaのクラス招待をGoogleクラスルームでスムーズに 〜みんなが使いやすいCanvaの導入〜

Googleフォームを活用した対策問題