廃棄物をリサイクルしながら汚部屋の改善

  前回は整理整頓についてお話ししました。今年の4月に赴任した中学校の美術室は凄まじい汚部屋で廃棄物の宝庫でした。夏休みが終わろうとしている現在までに自分なりにかなり部屋の状況は改善できたと考えています。

 単純に不必要な物を廃棄し、必要な物を配置することはそれほど難しいことではありません。必要なものは簡単に手に入る時代です。予算に限りはありますが、数年かければ必要な物を購入して揃えることは可能なので、部屋の備品を良い状態にすることは可能です。この点においてデザイン思考が大変役に立ちます。デザイン思考で問題を解決し、部屋を利用する人が心地良く使える状態にしたり、教師が授業をしやすい環境にすることが可能です。

 例えば、上のような作業台の配置です。最初、これらは教室の後方に三つが一ヶ所に固めて置かれており、その周りにはイーゼルや乾燥棚が集められていました。そのため台を囲んで作業したり、作品や道具を置いたりすることにかなりの制限がありました。現在は台の周りを人が移動できるようにして柔軟に活用できる利便性の高い作業台として活躍しています。
 実は真ん中の茶色の作業台は台の表面がボコボコになっており、使い物にならないような状態でした。実はこの作業台はもともとこのような状態ではなく、大量にあった90×180cmの合板を貼り付けました。それによって他の作業台二つと同じサイズになり、三つがきれいに揃うようになりました。合板は10枚ぐらい謎にあったので、他にも色々な場所に利用しました。この写真の後方に見えている棚の上にのっているのも同じ合板です。これらによって物を置くスペースをかなり拡大することに成功しました。
 デザイン思考によって問題を解決し、ある物を適切に調整することができたと思います。一見邪魔でしかなかった合板も今は教室に欠かせない働きをしてくれています。
 作業台の配置や合板の利用はそれほど難しい工夫ではありません。次はいわゆるDIYによる汚部屋の改善です。
 美術室の整理をしていくと、合板の他にもたくさんの木材が集まりました。あまりに多すぎて材木屋を企業することさえ頭をよぎりました。そこで、私は材木屋になりきって美術室に必要な備品を作成しました。
 美術室には教材に使える資料がたくさんあります。というよりも、準備室を整理していると大量に資料が手に入りました。ただし、これらを美術室に保管する場所がなかったので、そのための棚をつくることにしました。


 棚があることでカッターマットもスペースに収まっています。資料やカッターマットを使うときにはこの場所に来たらよいという習慣がつきます。ついでに、授業に活用できる掲示物を棚の上に置いておけるので、この棚は大活躍してくれています。
 今回最後に紹介するのが、こちらの展示ボードです。普通展示ボードと言うとパーテーションとしても使えるようなものですが、これはスペースとマッチしないことが多く、むしろ邪魔になってしまうことがあります。今回私が展示ボードを必要としたのは、様々な絵具の特徴が分かる作品を掲示するためだったので、そんなことのために限りあるスペースを犠牲にしたくはありませんでした。
 むしろ教室のデッドスペースになっているようなところを活用したいと考えていたとき、目に入ったのが、教室後方の謎の窪みのあるスペース。「こんな所にスペースがあったらゴミを入れられてしまう!」そう直感しました。と言うよりも、既にホコリだらけのゴミがたくさん放置されていました…(苦笑)


 このスペースをなんとかして良い状態にしたいと思ったときに大量の汚い材木が意識に上りました。材木を組み合わせてスペースを埋めていったところ、丁度良い感じにスペースをカバーしただけでなく、展示ボードの上部は壁とボードの穴を塞ぐために物を置ける状態に平面を設けたことで彫刻を置くことも可能になりました。ただ、木材があまりに汚かったので、ペンキで塗り潰しました。このペンキもやはり廃棄物の候補になっていた物です。使い切って廃棄したかったので、無駄に厚塗りになり、数ヶ月間ペンキ臭が周囲に漂っていました(笑)
 この展示ボードは本来はなくてもよかった物かもしれません。部屋に窪みがあっても少々ホコリやゴミが溜まる程度でそれほど問題になることもありません。しかし、改善の余地はあったわけです。問題を解決するというよりも、「問題を発見する」ということ。これは「デザイン思考」に対して「アート思考」と呼ばれるもので、まだ前者ほど一般的ではありませんが、新しい時代に非常に価値を発揮するであろうと最近注目を集め始めた概念です。問題解決は便利な今の時代なら簡単ですが、そもそも問題として上がってこなかったことに気がついて、問題を発見するという芸術的なアートの考え方にこれまで以上に価値が見出されようとしています。
 デザインとアートの価値について生徒が気付ける仕掛けを今後も美術室にはしていきたいと思っています。そしてそれに利用されているものが実は廃棄物であったということに少しでも多くの生徒が気がついて欲しいと思いますし、そういう会話ができればと思っています。廃棄物は部屋に残すべきではありません。しかし、何かに利用できるのであればすぐに利用したいですね。そして1年以内に利用できなかった場合は迷わず捨てることも大切です。

 最後まで読んでくださりありがとうございました。次回はもう一度廃棄物の利用についてお話しします。これだけのブログを書くきっかけをくれた美術室と過去の先生方への感謝は持ち続けたいものです。






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