散歩でインスピレーション

  今回は散歩の魅力とそれから得られるインスピレーションについてお話しします。私は歩くことがとても好きです。海外旅行に行った時には街を歩き尽くすというお話を以前にしたことがありますが、今回の話題は日常的に行う散歩に関してです。

 散歩が良い運動であり、ストレス発散効果があって健康に良いなんていうことは言うまでもないことなので、わざわざここでは語りません。美術教師ならではの視点で語り、少しでも散歩に対して新しい視点をもっていただけるように記事を書きたいと思います。

 私が散歩に魅力を感じるのは「普段見逃していたことに気がつき考え方を広げられること」「自然を身近に感じ、一体化することで極上のマインドフルネス効果を得られること」「散歩を通してクリエイティブなアイディアが不意に浮かぶこと」があげられます。そしてこれらが価値あるインスピレーションにつながります。こんなことを言っておきながら、実は私はただ散歩に出かけるというのは滅多にありません。大抵は何かのついでに散歩をします。例えば、ランニングからの帰り道で散歩したり、山登りを散歩のようにしたり、季節を感じるために外出ついでに散歩したり、などなど。散歩の魅力を語る者としては、あまりに散歩自体を軽んじていると私自身思いますが、そんな散歩かじり虫の私でも散歩の効果を大いに感じているので、今回は邪道な散歩かもしれませんが自信をもってその魅力についてお話ししたいと思います。


普段見逃していたことに気がつき、考え方を広げられる

散歩はのんびり自由気ままに歩くものです。この「のんびり」「自由気まま」というのが散歩のもっとも顕著な特徴であると思います。普段、車やランニングで走り抜ける街の景色はゆっくりと眺めるわけにはいかないので、想像以上に認識することができていません。たまたま興味深いものを発見しても、一瞬で走り去ってしまうため、すぐに忘れてしまいます。また、仕事で徒歩で移動している場合も散歩にはなりません。仕事で外を歩いて移動している時は大抵時間に囚われており、脇目もふらず早歩きをしている人が多いのではないでしょうか。これらはただの移動であり、移動を目的とするわけではない散歩とは根本的に異なるものです。

 散歩をしていると、普段とはまた違った景色を感じることができます。その違いは普段気づくことができていなかったものとの出会いを実現します。見え方が変わると、発見の機会が生まれます。これがとても価値あることで、私たちは日々の発見から想像力を伸ばしていきます。こんなことを言うと、「散歩で発見できることはあっても、それが何の役に立つのか」と言われそうですが、自然や街の様子から発見できることは人の生活に関わるものばかりです。人の生活に関わることで普段意識していなかった大切なことに気がつける。これ自体が大変価値のあることではないでしょうか。

 例えば、最近私は山道などで車を駐車して、周辺を散歩していて、素晴らしく美しい景色が見える場所を発見しました。この場所は今では出勤前の散歩コース&瞑想&読書を高いクオリティーでできる場所になっています。瞑想や読書はそれ自体生活の質を上げてくれるものですが、それらに取り組みやすい環境となると、家の空間には限界があります。散歩で発見した場所のお陰で朝のスタートが大変良いものになり、一日をこれまで以上に元気に過ごすことができるようになりました。具体的に言うと、これまでたくさん消費していたレッドブルが不必要になりました。それぐらいに一日中活動的でいられますし、集中力も続くようになりました

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 もう一つ例を紹介します。散歩をしていると、街の色々な姿を不意に目にすることになります。それが街の良いところであれば、それを自分の生活にいかしたり、それをデザイン的に分析したり、いかにしてそれが自分の仕事に取り込めるか考えることにつながります。逆に、街の改善ポイントを発見する場合、それをどうすれば改善、解決できるのかについて考える良い機会となります。これを考える際に自分が行ったことのある街のデザインを参考にしたり、インターネットなど様々なメディアを通して調べた街のレイアウトやシステムを用いても良いと思いますが、それらだけで考えても、大きな価値を生み出せるわけではありません。そのようなアイディアはただの後追いであり、たとえ実現したとしても、その頃には時代はさらに進み、価値あるものにはならないためです。より価値あるアイディアにするためには、その場所ならではの事柄を取り込んだものにすることが大切であり、そのためにはその土地のことについて理解を深めておく必要があります

 そこで生きるのが、散歩で5感をいかして得た生の情報になります。自分で得た情報だからこそ、アウトプットしやすく、その場所により適した改善策を考えることにつながります

 しかし、このようなことを考えて何の意味があるのかと思う人もいるかもしれません。幸いなことに、私の場合、教師という職業なので、子どもたちに美術や総合の時間を利用して、街のデザインについて考えさせる機会をつくることができますが、そんなこと言われても多くの人にとっては依然として特に関心のもてる話ではないでしょう。

 では、このように考えてみてはいかがでしょうか。これからの時代、社会が大きく変わり、街の構造もそれに伴って変わる。そしてお店や施設の場所や在り方について考え直さなければいけない時が来るということです。このようなことを考えずに、ただこれまでのものを継続してしまったらどうなるでしょう。きっと、廃れた商店街や活気を失った街のような姿へと少しずつ変わっていくことでしょう。それは歴史が証明しています。

 しかし、逆に古い街でも工夫次第で価値を人々に提供し、発展し続けられるというのはヨーロッパの都市や、京都、倉敷などの観光都市が成功を収めていることからも明らかなことでしょう。街にあるものをどう生かすか。この視点は全ての人がもっても良いことでしょうし、私はそれゆえに、美術の授業で建物や街のデザインに関して子どもたちに学習する機会を提供することに使命感を感じています。みんなの力で愛する街を素敵にしていきたいものです。


自然を身近に感じ、一体化することで極上のマインドフルネス効果を得られる

 近頃マインドフルネスという言葉をよく聞くようになりましたが、これは「今この瞬間の状態がどのようになっているか注意を向ける」という、いわゆる簡単にできる瞑想的なものです。散歩をすることでマインドフルネスの効果を得ることにつながります。ちなみに瞑想とは、いわゆる無の境地、フローと呼ばれる状態になることなので、注意を向けている自分自身の状態も忘れて気がつけば時間が立っているという状態です。「毎朝瞑想していて、さらにその上で散歩も瞑想かい!活動時間がもったいない!」と思われるかもしれませんが、そういう時間を増やすことは結果的に質が高い活動を可能にし、できることを増やしてくれます。実際に現在の私は完全にキャリアハイを迎えている状態ですし、これを継続してさらに生産的な生活を送れると確信しています。

 ちなみに、私は色々な方法で散歩をしています。ある時は魅力を感じたものを写真撮影、ある時はYouTubeなどの音声を聴いて勉強、またある時はランニングを終了して家まで戻る時、そして単純にぶらぶら歩きまわる。これらをまとめてセットでやる時もあります。どれも魅力的な活動であると、私自身感じているのですが、散歩でマインドフルネスを感じる方法は「ただ単純にぶらぶら歩く」という方法が自分にとってはベストだと思います。そしてできれば自然溢れるところを散歩したいものです。

画像 マインドフルネスの効果を得るためには、いわゆる「俗な刺激」が障害になります。歩くことに集中したいのに、信号に集中をそらされたり、後ろから来る車や自転車を気にしたりすることがとにかく邪魔なのです。それらの刺激があるたびに「今の自分」への集中は途切れることになります。こうなると、もはやただのウォーキングになってしまうわけです。決してウォーキングが悪いわけではなく、それ自体良い運動であり健康的なことなのですが、マインドフルネスによってメンタルを整えたいというときに、街の中で散歩をするのは自然の中で実践するほど効果的ではないということです。

 自然の中で散歩をする場合、熊などに襲われない限り、基本的に散歩は完全に自分のペースで行えます。だからこそマインドフルネスの状態になりやすいと思います。そして、何より自然に触れることでストレスが解消されるヒーリング効果もあります。つまり、自然の中に溶け込み、ぶらぶら散歩することは最強にメンタルに良いのです。私はこれを毎朝継続して行うことで、1日バリバリ働いても疲れることがなくなりました。良いメンタルの状態であれば、作業への集中度や取り掛かりスピードが上がり、様々なことに不要なストレスを感じなくなるため、精神面での疲労度がかなり軽くなります。実は人間の脳は肉体的疲労と精神的疲労を共通の「疲労」として処理するため、精神面での疲労が改善することで圧倒的に疲れにくい状態になれるのです。

 こんなことを言うと、まるで麻薬のような効果があると思われるかもしれませんが、その通りです。そもそも麻薬は脳の感覚を麻痺させて精神面での疲労を感じにくくさせたり、麻酔に代表されるように、肉体的苦痛を和らげる効果があるため、疲労感をなくす効果があるわけです。それが依存につながり、薬の成分が脳や体を破壊することになるのが麻薬の恐ろしいところ。しかし、マインドフルネスや瞑想、自然の中での散歩はむしろ体に良いことばかり。私たちにとって、これをやらない理由はないのではないかと思いますし、薬物中毒になった人もこれらを実践するだけで問題解決するのではないかと勝手に思っています。

 このように散歩で得られるマインドフルネスというものは私たちに多大な恩恵をもたらしてくれると考えて毎日実践しています。「私は仕事で毎日1万歩歩いているから散歩は不要」とか言わずに、純粋に「散歩」して無目的に歩く楽しさを味わってほしいと思います。


散歩を通してクリエイティブなアイディアが不意に浮かぶ

 普段見逃していたものに気づき、マインドフルネスによって良いメンタルになると、クリエイティブなアイディアが不意に浮かびます。いわゆるインスピレーションというものです。気づきは大切にするべき価値を自分の中に強力に形成しますが、その際にメンタルの余裕がないとそのまま放置状態になります。しかし、メンタルに余裕があると、あるものとあるものをつなぎ合わせて新しい考えをクリエイトし、実行することに対して何の面倒も感じなくなります。そうして成果が出始めると、それが楽しくてやめられなくなります。完全に好循環が生まれるわけです

 私は学級通信や部活動通信、そしてこのブログなど、毎日たくさんの文章を書くことが日課となっていますが、そのためにはたくさんのネタが必要になります。しかし、もしも私のメンタルに余裕がなくて、アイディアをクリエイトすることができなかったら、本当にくだらない月並みな文章、何ならどっかからコピぺしたのではないかというような文章を書き、それを子どもたちに大量印刷して、社会にゴミを撒き散らすという悪行を行うことになりかねません。少しでも価値ある情報にするためには、私自身が常にクリエイティブな状態でなければいけないという社会的責任を感じています。そしてそれを可能にする一つの方法が散歩になっています。

 最近、私がクリエイトしたアイディアで子どもたちに発信したものの例を紹介します。それは、「勉強するにはどの場所が一番集中力を発揮できるか」についてです。テスト週間だったので、帰りの会で話題になったのです。「風呂で勉強すると集中できるらしい」なんていう面白い意見を出す生徒もいましたが、私の発言にはみんなキョトンとなっていました。「俺は最近最高の勉強と読書スペースを発見したで!それは山の頂上!山を登って頭を活性化し、最高の景色と空気を吸いながらテーブルとベンチがある場所で勉強と読書をすると最高に集中できる!」と言いました。常識の観点から言うと、完全に頭がおかしくなった人の発言だったのかもしれません。

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 しかし、私はこの方法が非常に合理的であると確信しています。これだけインターネットで仕事ができるようになった時代、もはやノマドワーキングはカフェなど施設に縛られるものでもなくなってきたのではないかと思います。現状、Wi-Fiの設備があるカフェなどの優位性はありますが、これからはインターネット回線自体が地球上の多くの場所で無条件で使える時代になっていきます。そのように考えると、自然の中で癒されながら、そして運動もしながら働いたり、勉強したりというのが一般化するのもそう遠くない話なのかもしれません。私はカフェや施設に囚われない、さらに自分で自由に活動できる場所を選んで働く方法をノマドワーキング2.0と勝手に定義しました。良いものは良い。そんな自由な活動が広まればと思います。

 この話には続きがあります。先日テストの採点をしました。普段なら職員室で夜遅くまでかかってやるのですが、この日はとても天気が良かったので、外の渡り廊下に机と椅子を出して、そこで採点をしました。そして気がついたときにはほぼ採点が終了していました。日没を迎えたため残りは職員室でしましたが、終了時刻は6時。作業効率は約2倍でした。そして疲れはほぼ無し。これには自分自身が一番衝撃を受けました。このことを翌日子どもたちに話をすると、唖然としてくれました(笑)。いかに私たちが普段集中できない環境で仕事や勉強をしているかを象徴している出来事であったと思います。もうこれを一度味わったら、この先も間違いなく継続していくこどでしょう。私の周りで、外で勉強や仕事をする人が増えて欲しいと思うので、宣伝を続けていきたいと思います。

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まとめ

 今回のまとめをしておきます。散歩には「普段見逃していたことに気がつき考え方を広げられること」「自然を身近に感じ、一体化することで極上のマインドフルネス効果を得られること」「散歩を通してクリエイティブなアイディアが不意に浮かぶこと」といった魅力があり、身体的にもメンタル的にも価値のあることであり、価値あるインスピレーションも浮かぶ可能性が高まるということでした。

 散歩をするというのは、時間に終われる現代人にとって「そんな余裕ないわ!」と思われるかもしれませんが、意外と1日の活動を分析してみると、無駄に時間を浪費していたり、効率の悪い働き方で時間を失っている側面があると思います。そんな状況を改善するために、散歩の時間を設けるというのは、実は時間を有効活用することに結果としてつながるものであると私は確信しています。そしてこれは継続することで大きな成果へとつながるものだと思います。これからも、その成果の一片一片を記事にしていくつもりなので、これからもどうぞこちらのブログをよろしくお願いします。

 今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。前回の予告ではなるべく短くまとめると宣言していましたが、記事を書き出すと、どんどんお伝えしたい内容が浮かんでしまい、割と長い文章になってしまいました(笑)。短くまとめるトレーニングをしていきたいと思います。次回は散歩で見えてきた街づくりの工夫について書きたいと思います。私の住む街には備中国分寺という岡山を代表する観光名所があるのですが、その近くを通る道は時間帯によって非常に混雑します。この解決方法について私なりに考えてみたいと思います。街づくりはみんなで考えていくもの。私はちっぽけな存在ですが、草の根活動で発信し、少しでも多くの人に新しい考えをもってもらえると、いつの日か大きな成果に行き着くものだと信じています。というわけで、来週も長い文章になるかもしれませんが、再びお付き合いいただけると嬉しいです。

 それではまた来週!残りわずかな激動の2020年が皆様にとってたくさんのインスピレーションに溢れますように…

 

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