自然に学ぶ美 〜岩石〜

  今回から「自然に学ぶ美」をテーマに記事を書少しずつ書いていきます。シリーズものにして、たくさんの自然の美とそこから学べることについて考えを発信していきたいと思います。

自然に学ぶというのは、自然そのものについて学ぶということです。そして、そこから美について迫っていきたいと思います。

 美とはどのようなものであるかと考えたときに、自然というのはとても大事なヒントになります。私たち人類は長い間自然の中で暮らしてきました。そしてその中で生活や種の繁栄を支える良いもの(美点)を発見し、美の概念を生み出してきました。これは人間の本能レベルの美意識であり、こういう美意識は人間以外の生物でさえもっているとされます。例えば、色が綺麗な花びらの花には蜂が集まります。これは、蜂たちがそこに良質な蜜が取れることを本能的に知っているためだとされています。また、オス鳥が美しい羽を持っている傾向にあるのは、羽の美しさから健康状態を判断して、メスが良い状態のオスを選ぶためであるとされています。

 生物たちは種の保存と繁栄のために「自然の美」にとても敏感に反応するようになっているのです。なので、自然の姿についてよく観察し、繁栄している何かを感じ取った時に、それがどのような状態になっているか、つまり「自然に学ぶ」ことによって美の姿も自ずと見えてくるのではないかと思います。そして、その先に、より普遍的なことについて考えることもできるようになるのではないでしょうか。この点においては私もまだ大体のイメージでしかもてていないので、これから記事を書いていく中でより明確に自分の中に築いていきたいと考えています。


 というわけで、今回は「岩石」から学べることについて私なりに考察をしてみようと思います。岩石は山や川にたくさん存在する非常に身近でお手軽な存在です。皆さんは岩石を見て何か魅力を感じたことはあるでしょうか。岩石は理科の授業で様々な種類のものがることは学習しますが、それがただの知識にしかなっていないのであれば大変勿体無いように思います。

 そういう私も高校で地学を専攻して、岩石に興味は持ったものの、実際に岩石を自然の中に主体的に見に行くようなマニアではなく、漠然と地層を見て、「面白い模様だなぁ」と思う程度でした。実は私、実家にいたときには兄からもらった富士山の火山岩が机の片隅にずっと置いてあり、そこそこ岩石には興味を持っていて、地学も大好きな教科でした。それでも岩石や地層を見て「なんか凄いなぁ」程度にしか考えていなかったのです。それぐらいに「自然の美」というものは多くの人にとって秘境の領域なのかもしれません。

 私が岩石の美しさについて深く考えるようになったきっかけは日本六古窯の展示を滋賀県のMIHOミュージアムに見に行った時でした。行ったきっかけはたまたまゼミの先生が余っているチケットを下さったからで、それがなかったら間違いなく行かなかったでしょう。

 私はそれまであまり陶芸の魅力が掴めていませんでした。自分が作ることには面白みを感じていましたが、信楽焼や備前焼など、伝統的な焼き物の美しさについてそれほど深く考えたことはありませんでした。そんな状態で作品を目にしましたが、初めてまじまじと伝統的な焼き物を見て視覚的刺激に興奮が止まりませんでした。土の美しさに完全に魅了されたのです。焼き物の表面を見るとただの土ではないことは明らかであり、その土は地域ならではの成分を含んだ独特な雰囲気を持つものであることを悟ることができました。それはまるで自然が作り出したオーケストラのような造形物で、自然を生かすことの重要性を強烈に印象付けられた機会となりました。

 これをきっかけに私は土や岩石をそれまで以上に美の対象として見るようになりました。子どもの頃にさえやらなかった面白い模様の石を見つけては持って帰ることさえしました。そんな中、私は岩石の魅力について考えるようになりました。岩石は持って帰ることができないので、その場でまじまじと観察するしかありませんが、その観察によって岩石ならではの魅力と出会うことになったのです。今回は岩石の魅力てついて「成分」「形」「岩石を中心として生成される生態系」の観点から岩石の美についてお話ししていきたいと思います。

1.成分

岩石は地層を見てもわかるように、様々な種類があり、成分もそれぞれ異なります。玄武岩や安山岩といっ火成岩以外にもチャートというプランクトンの殻が堆積してできた岩石もあったり、小さな石(礫)が堆積して大きくなった礫岩といったものもあったりして、様々な岩石が地層を作り上げています。このような地層の生成には地球の活動に原因があり、本来は海の底だったものがプレートの移動や隆起によって地表に現れたり、火山活動によって形成されたりと、地球の生命活動の中で生まれるものです。作者は地球と考えると自然の模様の偉大さを感じさせられます。そういう人の力を超えた自然のパワーがつくり出した造形は崇高の美を演出します。

 岩石がもつ様々な成分に注目すると、それだけでも十分に美的なものとして捉えることができます。そもそも宝石などは高温高圧の中で生成された岩石であることを考えると、岩石のもつ成分というのは非常に面白いと思わされます。


 もちろん地表にある岩石には宝石のような輝きはなく、非常にワイルドな風貌ですが、これらにしても、よく見ると非常に表情豊かで現代アートのような雰囲気さえ味わえます。この岩をドアップにして表情をよく見てみましょう。

 よく見ると一体どうなっているのか理解不能な状態ですね。こう見ると岩肌と植物の区別がつきにくい状態に融合しています。岩石自体の成分が見せる美しさに加え、苔などがスパイスのように魅力を加えます。


 これぐらいになると、もはや岩石というよりは毬藻ですね(笑)。こういうのもとても面白いと思います。岩石が芯材となって苔ではありえないようなボリュームを演出しています。岩石の活躍あってこそです。

 私はコケについては詳しくないので確かなことは言えないのですが、きっと岩石と苔の組み合わせにはかなり土地柄があると思います。気候によって植物が変化するということや土も地域によってかなり成分に差があるためです。また日本中を旅する機会があれば、岩石と苔のコラボレーションを記録に取り、比較してみたいと思います。


2.形

 岩石の形は不規則そのもの。巨大な岩石もあれば、石ころのような状態にまで砕けたり、角が削れて丸くなったりしたもの様々ですが、その形の多様性は自然が生み出した天然の彫刻であり、これもまた土地柄が関係するのがとても面白いところです。地殻変動の激しい場所では岩が褶曲して強烈な模様を生み出しますし、ゴツゴツの岩がたくさん見られる海岸沿いは大地の沈降と波による侵食で独特の雰囲気を演出します。そういう景色をドライブしながら見ていると、目を奪われて事故しそうになるぐらいです。ADHD傾向のある私には地層が見える場所や海沿いの絶景は非常に危険な要素を孕んだ美しさです。


 私は山奥の大きな岩石がとても好きです。こういう岩石を見つけたら腰掛けてそのまま瞑想をしたくなるものです。ただ、上の岩石はおそらく人の手が入っているのではないかと思います。こんな組み合わせ方にはおそらく自然の力ではならないのではないでしょうか。もし自然だけでこのような状態になったのであれば奇跡ですね。しかし、裏を返せば、岩石が組み合わさって複雑な形を作ると、それだけで特異な雰囲気が出ると言うこともできるでしょう。

 それに関して例えを出すと、下の神聖な岩です。海にこのように双子のように岩が出ている姿は崇高の美しさを感じます。大きな岩は存在感があるため、パワーストーンとしてよく信仰の対象にもなっていますね。


 岩石の形は自然の中で浸食作用などによって長い時間をかけて生き物の如く変化していきます。岩石を見つめると、どんな過去がその岩石に起きたのか想像することができ、とてもロマンティックな時間を送ることもできると思います。地殻を地球の本体と考えたら、岩石は本体の一部みたいなものであり、まだ植物も水も何もなかった時から岩石は地球にあった、というよりも岩石しかなかった時代があったわけです。岩石に少しでも多くの人が親近感というか、ノスタルジーをもって欲しいと勝手に考えています。大地が母なら岩石は何でしょう(笑)。


3.岩石を中心として生成される生態系

 岩石はその周辺の環境と融合して、生態系を生み出します。そこに見られるドラマもまた自然の美そのものと言えるのではないでしょうか。

 まず岩石は大きな陰を作ります。岩石を退けると虫が出てくるのを見たことがある人は多いと思いますが、岩石の下は生き物の住処として非常に良い場所なのです。色んな虫が共存していてかなり密な住宅環境になっていることもありますね(笑)

 岩石を中心に様々な生物が生活をしていると、それが岩石の姿を作ることにもなります。元々はただの岩石だったのが、岩石の組織の隙間に入りこんだ水分をもとに苔が生え、その周りに微生物や虫が集い、時には糞を落としてそれを養分に植物が育つ。岩石の下には安心感のある住まいとして利用する生物たち。岩石の下は水を溜め込み、いつも潤っているため、そういう環境が好きな生物にとっては最高の場所なのかもしれません。


 このような生態系を生み出す岩石は周囲の環境と共に姿を変える生き物のような存在といえます。その生命感あふれる姿を人間の力で再現することは困難です。岩石にはそんな崇高な美しさがあると思います。そして、私はこの記事を書いていてある事実に気が付きました。この美意識は日本の国家「君が代」に見られるということです。「苔のむすまで」というのは有名な部分ですが、「小石が大きな岩になって、そこに苔がむす」というのは緑あふれる地球の進化のプロセスをそのまま描いていると思います。岩石に見られる生態系というのは私たち人類の枠では捉えられないような壮大なスケールのものであることを教えてくれると私は思います。


 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回は「自然に学ぶ美」ということで「岩石」について考えを書かせていただきました。ただ、先にも述べたように、私自身まだまだ岩石については未熟者であり、学ぶべきことはたくさんあると思っています。今回の記事を書くことを通して気がつけたこともたくさんあるので、これからさらに岩石と良い関わり方ができたらと考えています。

 次回は「授業は遊んでこそ学べる」について記事を書く予定です。この内容は教師をしている人以外にも、人に何かを教えたり、充実した学びをしたいと思っている人に参考にできるものにするつもりなので、よかったらまた読んで欲しいと思います。


それではまた!

 

 

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