素材のもつ魅力 〜ペットボトルキャップ編 VOL.2〜
以前に一度ペットボトルキャップを利用したアートについて記事を書きました。今回はそのVOL.2になります。前回のペットボトルキャップに関する記事からまだ1ヶ程度しか経っていませんが更新するというのはかなり早いペースのような気がしますが、それぐらいにこの素材に私ははまり込んでしまいました(笑)。準備室に色で仕分けしたキャップを保管しているせいか、制作のスイッチが入りやすく、半ば衝動的に新しい作品を作りたくなってしまったというわけです。しかし、それがこれまでのような表面をただ装飾する感じのものであれば、決して今回記事にするようなこともなかったと思います。つまり、今回のペットボトルキャップを用いての制作では私自身最初は考えていなかったような想定外の出会いがあったのです。今回はペットボトルキャップの素材としての魅力だけでなく、前回の遊びに関する記事でも取り扱った想定外を歓迎することの大切さについても触れていきたいと思います。今回は自分自身が制作をしていて想定外なことに遭遇しました。想定外を受け入れた上で、それをプラスに生かしていく考え方のヒントになる内容にできたらと思います。
ペットボトルキャップが生かせる他の素材を組み合わせる
今回私が制作したのは整理に使えるミニデスクです。最初はこれまで同様にダンボールとペットボトルキャップだけで作ろうと考えていました。そうしてとりあえずデスクの平面はダンボールにペットボトルキャップを接着し、脚の部分はペットボトルキャップをグルーガンで繋いでいこうと考えていました。しかし、平面を制作している最中に、キャップの窪みを造形的な効果だけでなく、機能的に使うことができないか考え始めました。この窪みを最適に活用する方法はやはりペットボトルとの組み合わせであることは当たり前のことなのですぐに思いつきました。
というわけで脚の部分をペットボトルにして完成した平面に取り付けました。最初は四隅だけにペットボトルを取り付けたのですが、平面の中心部があまりにも不安定な曲がり方をしたので、脚を増やし、ある程度の強度が出る状態にしました。これで上からの圧力には対応できる状態になりましたが、また新たな問題が発覚します。
ペットボトルは軽いため、デスクがすぐに動いてしまいます。このミニデスクの上でメモを書くようなことはなく、あくまで物置として使いますが、何か物をとった拍子にデスクが動くぐらいに脚が軽いということが判明しました。これは想定外だったので、この脚の軽さを解消するために何かを入れることにしました。
最初、ただ水を入れるというのを考えましたが、それでは何も面白みがないということで、以前にポスターカラーを溶かしてグラデーションに見えるようにしたペットボトルのインスタレーションを思い出したので、この要素を組み合わせることにしました。ペットボトルに入った色水は光を通して大変クリアな発色をします。色の美しさをここからも感じられるものに発展させることができたと思います。
問題を解決したところでこのデスクの上に物をセットしました。普通に教師机がより使いやすい状態になったことと、生徒の視界に入りやすい目立つ場所に色の魅力について考えるきっかけをつくる可能性をもったアイテムとして期待できるものになりました。
想定をさらに超えた工夫
ここでピリオドを打つこともできたと思います。当初の目的はあくまでミニデスクをつくることであり、ペットボトルを脚として使うことも十分に想定していたことです。水をペットボトルに入れたり、色水にしたりというのも必要性の中で適応していった物であり、ミニデスクが完成した時点で終了というのが私の最初のイメージでした。
しかし、まだ何かができると感じたので、デスクの上面で何ができるか更に深掘りしてみました。やはりキャップの窪みを生かしてペットボトルと組み合わせるというのが真っ先に思いつきます。今度はペットボトルを切って、ペン立てや筆立てとして活用する方法を考えました。
小さいサイズのものも作って、そこにクリップや消しゴムも入れるられる部分を追加して、少し賑やかな感じになりました。なかなか機能的です。
しかし、このペットボトルの装着には難点がありました。それはただ単純にダサいということです。道具が普通に収まっているのは良いですが、特に美しく見えるわけではありません。むしろペットボトルの透明感が災いして消しゴム入れやクリップ入れに関してはかなり煩雑な見え方をしています。そしてペットボトルキャップの平面との関係性が大変薄いため、異質感さえあると言えます。アートに何の工夫もないものを加えるとこのようなアレルギー反応と言える現象が起きるため、ここにも何かしらの造形的工夫を入れることが必要になってきます。このミニデスクは工芸的な要素を持っているため、そこに用と美のバランスが常に求められます。美の要素が見られないものを付属させることが非常にナンセンスになります。
そうして考えたのが、粘土やペットボトルキャップ、さらにはグルーガンで装飾することです。もう中途半端なことはせずに大胆に手を加えて強烈な感じのものにしてしまおうと考えました。やはりこの際も遊びの感覚ですね。もう好きなようにやりました(笑)
その結果こういう状況です。少々カオスな感じにはなっていますが、粘土やグルーガン、ペットボトルキャップの造形的魅力はある程度出せたのではないかと思います。切ったペットボトルをそのまま使ったら「ただの容器」ですが、加工されたペットボトルはそれ単体としても十分に造形的魅力をアピールする力があると思います。このミニデスクが子どもたちにとってアートへの意識を涵養する働きを期待する物であるなら、そこにセットされるものもそういうアートとしての魅力を持った物であるべきでしょう。
このようにどんどんアレンジを加えていくことになった今回のペットボトルアート。自分でも想定していなかったことを逆に利用して、前進させていくことがとても大切だと思います。想定通りで全てことが進んでしまうと、発見がなくワクワクするような体験もすることができないでしょう。想定外の状況で、この先どうなるか分からなくても、新しい世界に胸を躍らせ、手を加えていったり、何かと何かを結びつけて状況を打開する方法を考えたり、工夫の数は無限にあり、どれが間違いというわけでもありません。自分がやりたいことを徹底してやれば、自然と自分らしく作品が仕上がっていくものだと私は考えています。
素材を生かしてアートの可能性に気が付ける仕掛け
今年に入ってペットボトルアートで教室の装飾環境はさらに前進したと思います。今思うとこのブログを始めたときと今ではかなり教室の環境は変わってきたと思います。現在勤める学校に赴任してもうすぐ1年が経ちますが、ここからのスパートでさらに良い環境にして2020年度を締めくくりたいと思います。
これまでにも素材の魅力について記事は書いてきましたが、素材を生かした物を教室に置くことによって子どもたちがアートの可能性に気が付ける機会を創出することが私たち美術教師の役割として大変意味のあることだと思います。一見ゴミのような物でもアートの魔法をかけることによって魅力的なものに生まれ変わります。美術教師の仕事は子どもたちにアートの世界との出会いをコーディネートし、学習をファシリテートすることではないでしょうか。
生かせるものはとことん生かす。モノとの戯れる姿勢が表現の可能性をどこまでも広げてくれることでしょう。美術室はそういう遊び場として日々進化させていきたいと思います。
最後まで読んでくださってありがとうございました。今回は素材のもつ魅力〜ペットボトルキャップ編〜ということで、ミニデスクをペットボトルキャップで制作する中で様々な価値ある想定外があり、それゆえに表現が進化できたことについて書かせていただきました。私たちの身の周りにはたくさんの活用可能なモノと歓迎すべき想定外が溢れています。そういったものと戯れ遊ぶことを通して自分でも考えていなかったような物を創造することができると思います。子どもたちの表現においても、「使えるものは使う」のスタイルで無限の創造性を引き出していけるように、これからも研究をしていきます。
次回はステンシル版画の魅力について授業実践したものから紹介したいと思います。今年中学2年生の授業で年賀状のデザインをステンシル版画で行いました。今年は丑年ですが、自分たちの好きな干支を選び、実に多様で魅力的な表現が数多く生まれました。これも私にとっては想定外の連続でした(笑)。また記事を読んでもらえると嬉しいです。
それではまた!
コメント
コメントを投稿