部活動の在り方について考える Vol.2 顧問としてできる環境面でのサポート

  前回に引き続き「部活動の在り方について考える」内容で、今回は「顧問としてできる環境面でのサポート」について記事を書きます。

 生徒の主体的な活動を支えるために、顧問には環境の面でのサポートが非常に大切と言えます。整わない環境では気持ちよくプレーすることが難しいですし、そのような状態でスポーツや芸術の良さを存分に味わうことはできません。どうしても妥協だらけになってしまいます。そういう状態では環境が整った状態に比べて、生徒が部活動を好きになる可能性は低くなると言わざるを得ないでしょう。

 だからと言って、企業の部活動に見られるような優れた環境を用意できるかと言っても現実的ではありません。学校という組織でやっているからには与えられた環境で最大限のことをするしかありません。しかし、この「最大限」というのは非常に抽象的で、何がそもそも最大なのかという話になります。もちろん資金さえあれば、この最大限の領域というのは果てしなく広がっていきますが、公立の学校であれば資金と言えるものは一つの部活動に対して生徒会活動費でせいぜい年間10万円程度、体育科の設備費で数万円程度しか供給されません。私が担当するソフトテニス部ではボールを買ったらそれでほぼ資金は底をつきます。なので、良い部活動環境を作るためには学校から出される資金だけに頼るわけにはいかないのが現状です。

 将来的には部活動が学校から離れ、地域のものとして独立する日が来ると思います。その時には地域からの出資によって環境がより良いものとなり、活動も充実したものになることでしょう。しかし、現状で何ができるかを考え、最大限の工夫を部活動にもたらすことが顧問にできる大切なことだと私は思います。資金がなくてもやれることはたくさんありますし、そういうことを子どもたちに知ってもらうことには教育的な価値があります

 今回は資金がそれほどなくても顧問としてできる環境面でのサポートについて3つお話しさせていただきます。内容を深掘りし、その環境の中でどのような変化をつくりだすことが出来るかについても考えましたので、少しでも読んでくださる人にとって参考になるものになれば幸いです。


1.練習場のコンディションは日進月歩で改善

2.ウェブサイトの活用

3.場所をフル活用


1.練習場のコンディションは日進月歩で改善

 私が顧問を務めるソフトテニス部は外で活動する部活動なので、整備を放置していると練習場のコンディションは日々の練習や悪天候などの影響でみるみる悪化していきます。そのような悪化したコンディションではそもそもプレーを気持ちよくできませんし、一旦雨が降ったら水溜りが大量にできてプレーできない日が続くようなこともあります。これらのことはモチベーションの低下につながっていきます。

 しかし、逆に良いコンディションを維持してるとプレーを気持ちよくすることができ、ソフトテニスの面白さにたくさん気がつける機会が生まれますし、その積み重ねでプレーすることが好きになっていってくれます。また、水捌けの良い環境になれば雨が上がって数時間後にはプレーをすることが可能になるため、ほぼ毎日コートでソフトテニスをすることができるようになります。ストレスなく自分のイメージ通りにプレーでき、雨が降ってもすぐに使えるコートにするといった環境をマネージメントすることは顧問の大切な役割だと思います。

 この点においては、いくら部活動が生徒の主体的な活動の場であったとしても、学校施設を利用しているので、子どもたちが自らコートのコンディションを変えていくのは現実的ではありません。コートやグラウンドのコンディションを変えるためには土を削ったり追加したりといった大規模な作業が求められます。そんなことを子どもたちが自分の判断で行うのはあまりにもハードルが高いですし、子どもたちも「もし失敗したら練習環境を破壊したことになる」という危険性を感じることでしょう。それゆえに、練習環境の改善においては、学校関係者として責任の取れる顧問が主導することが不可欠だと私は思います。

 練習場のコンディション改善はは日々の積み重ねが物を言います。土は一気に入れると安定した強度になるまでにかなり時間がかかるため、大規模な土の入れ替えをするような場合、数週間使えなくなることもあります。しかし、毎日少しずつ土を調整していれば、そのような長期間使えなくなる心配はありません。私は雨の影響でコートが使えない時、もし雨が降っていなければコート整備を補強トレーニングの代わりに行います。コート整備は全身運動なので、十分に体を鍛えることができ、それによってコートの環境も良くなって、活動しやすくなるので一石二鳥と考えてやっています。

 コート整備では本来コートにあるはずの土がブラシがけなどで移動し、コートサイドで高くなってしまっている部分を削り、それをコートの中に戻したり、コートサイドを低くして雨水がコート内から外へ流れやすくしたりします。最初のうちはこのような作業がただの作業でしたが、慣れてくると自然と遊びが生まれていきます。今回はこの点については深くお話ししませんが、下の写真のように、土遊びしながら土を削っていくという、ちょっとしたクリエイティブな作業にさえなっていきます。こうなるとコート整備という肉体労働的なものでも、ソフトテニスの練習までとは言えなくともちょっとした気分転換のようなものになります。



 

 こうして練習場のコンディションを日々改善していく文化ができると、1年も立たないうちにコートの環境は劇的に改善します。顧問としてコート整備に対してポジティブに取り組めるようにしていくことは、子どもたちが練習や普段では味わえないちょっとした土遊びを楽しむことにもつながる大切なことだと思います。良いコンディションのコートで気持ちよく毎日プレーし、上達を早めることで、部活動自体が単純に楽しい場になっていきます。今回はテニスコートに関する話ですが、きっとこれは屋内競技の場合にも日々練習場の改善は図れることだと思います。まずは何ができるか考えてみる、そして試してみる。簡単なことから始めても、やがて発展して大きな結果を生み出すことはよくあることです。それを考え、子どもたちに体験を通して伝えていくのは顧問としての大切な役割であり、部活動で子どもたちが経験できる価値になると思います。


2.ウェブサイトの活用

 ウェブサイトを部活動で持つことにはたくさんのメリットがあります。そもそも、なぜこのようなものが必要だと感じたかと言うと、これまで私は連絡網を使って雨天中止の連絡をするようにしていましたが、この連絡網というもの自体に問題がたくさんあると感じていたためです。

 連絡網には、部員の家庭や保護者の電話番号が分かってしまう個人情報の面での問題があります。昔はお家の電話番号が電話帳に当たり前のように乗っていましたが、時代は変わりました。連絡網というものがいまだに使われていきたということ自体がかなりの問題と言えるかもしれません。これは個人情報としての問題点だけでなく、そもそも連絡を回してもうまく機能しないことも多々あります。ましてや朝早い時間帯に連絡網を回すような場合はかなりの問題が生じます。加えて、連絡網で中止の連絡を回すぐらいなら、まだそれほど難易度の高いことではありませんが、たまに複雑な連絡を回さなければいけないこともあります。そんな場合はまともに情報が伝達できず、伝号ゲームのように内容が変わってしまい、情報が錯綜してしまうこともありえます。連絡がちゃんと回っているかどうかを気にしなければいけないのは顧問としても負担です。ちなみに私はあまりにも連絡網が機能していない時は、練習の中止をキャプテンに連絡を入れてから、間違って来る生徒がいたときのために私も学校に向かい、仕事しながらテニスコートの方をちらちら確認。どうせ学校でやりたかった仕事があるし、別に負担ではないということで、自分自身を納得させていました(苦笑)。私が美術教師であり、学校という場所を使わないと教材研究や授業準備が難しいというのが不幸中の幸です。

 というわけで、私は転勤を機に、このような連絡の方法を変えようと考えました。もっと合理的で顧問としても負担の少なくて済む方法があるはずだと考え、出てきたのがウェブサイトの活用でした。最近はWiXなど、無料で簡単にウェブサイトが作れるようになりました。私はWiXで実家の達脇ベーカリーのウェブサイトを作ったことがあるので、その経験を基にウェブサイトを作り、それを用いて連絡するようにしました。これによって連絡網をつくる必要性がなくなりましたし、確実に連絡を届けられるようになったので、かなりの心理的負担が無くせました。

 このウェブサイトの立ち上げに当たっては校長や教頭の許可をもらった上で作成しましたが、最初は先例のないことということで、教育委員会に確認を取るところまで手間がかかりました。私の感覚では個人情報漏洩確定の連絡網の方がよほど確認を取るべきだと思うのですが、先例のないことというのは始めるに当たって色々と手間がかかるものだと改めて思わされました。しかし、取り掛かってよかったと思います。一度やってしまえば楽になります。


 ウェブサイトがあることで予定表や部活動通信を見ることもできるようになりました。これまでは予定表も生徒用と保護者用の2枚を配布していましたが、今は部活動通信に予定表を載せる形で生徒に一枚配布するだけにしています。もし予定が分からなくなってしまった時にはウェブサイトから確認するようにしています。部活動通信も保護者に渡ることを前提に作っていますが、これも渡らなければ意味がありません。しかし、ウェブサイトに載せておけば、カラー版で好きな時に見てもらえますし、アーカイブにすることもできます

 保護者との連携や活動の透明性は、部活動への保護者の参加や理解を促します。これまでウェブサイトを利用していなかった時からも部活動通信は発行していましたが、これをしていると、保護者の方々から多大なバックアップを受けることにも繋がります。これに関してはまた別の機会でお話ししますが、保護者に部の活動を知っていただくというのは大変重要なことであり、顧問、生徒、保護者が一体となったチームになっていくと私は考えています。

3.場所をフル活用


 私が勤務する中学校のテニスコートは2面しかありません。市内の他の学校と比べて生徒数の割にコートが少ないのが悩みです。この環境を普通に使っていたら当然ですが一人一人の練習は費用に限られたものになってしまいます。せいぜいコート周りにあるネットに向かってボールを打つぐらいしかできないでしょう。

 しかし、こういう環境だからこそ工夫のやり甲斐があるというもの。場所をフル活用するために必要なものを考えることが大切です。そのためにその場所の可能性に注目しました。

 最初に考えたのがポータブルネットをグラウンドで使うということです。グラウンドでは野球部や陸上部、ハンドボール部が活動していますが、テニスコートの近くは滅多に利用していないので、このスペースを使って練習できます。実際にポータブルネットが部には一つあったので、それをこれまでにも利用することはあったのですが、あまり使い切れていませんでした。この原因はシンプルで、組み立てるのが面倒ということです。ちょっと練習に使うためにわざわざ組み立てるという労力を使わなければいけないことが使用頻度にかなり影響を与えていたと思います。道具は手間要らずで使いやすい。これが大切な要素ですが、ポータブルネットには明らかんに不足していることでした。もちろん長時間使うことが確定しているときはポータブルネットを組み立てることにもそれなりにメリットを感じることでしょうが、普段の練習は数十分という短い時間なので、他の方法を考えるべきだと私は考え、ある解決方法を考えました。それは「ポータブルネットを作る」ということです。

 私が赴任してきた学校の美術室には大量の廃棄物が放置されていました。私は4月からずっとその部屋の片付けをしていましたが、その中に古い使えなくなったイーゼル(もう数十年前に備品リストから除かれ廃棄するはずだった)が大量にありました。私はこれが片付けをする上で邪魔で仕方がなかったのですが、この素材を利用してポータブルネットが作れることに気が付き、作成しました。

 

 これによって手軽にコート外でポータブルネットを置いて練習を始めることができます。組み立て方次第でネットの幅も広げることができ、色々な練習に対応することができます。こうしてコートをもう一つ得たに等しい練習効率を得ることが出来るようになりました。

 他にはネット打ちや壁打ちができる環境も作りました。コートの端にそのような環境を作ることでトス打ちなどでたくさんのボールが周りに散らばらずにすみます。木の板を金網にセットすれば、手軽に壁打ちをすることもできるようになります。


 

 こうして色々な練習をできる環境をコートの周りに作っていくことで、練習時間は常に暇することなく練習できるようになりました。元々ソフトテニスが大好きという子どもなら大丈夫ですが、そうでない子どもたちはやることがなくて暇になると、すぐに群れて練習に関係のない話を始めてしまいます。しかし、やはりボールを打つことは好きなので、練習する環境があると、それを利用します。そうしているうちに子どもたちはソフトテニスが上達し、モチベーションを上げていきます。

 手軽に練習できる環境を作ることが顧問にできる大切なサポートだと思います。現状を当たり前と思わずに、常に環境を改善することを忘れないようにしたいですし、このような創造的な活動を顧問として楽しむことが大切であり、このような創造活動を子どもたちに示していくことも大切な務めだと考えています。


 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回は顧問としてできる環境面でのサポートをテーマにお話しさせていただきました。細かい内容はソフトテニスにものが多かったですが、「練習場のコンディションは日進月歩で改善」「ウェブサイトの活用」「場所をフル活用」というのは顧問としてできる子どもたちへのサポートとして大切だと思います。今回の内容が少しでも参考になるものになれば嬉しいです。私もまだまだ改善の余地を感じますし、日々反省の連続で悔しい思いをすることもありますが、それがあってこそ子どもたちと一緒に成長していけると思いますし、顧問としてありがたい経験をさせていただいていると実感しています。

 次回の内容は私の本職である「定期考査における美術科の意義と今後の在り方」についての記事を予定しているので、少し期間を開けて部活動に関する記事をまた書こうと思います。今回部活動のことで興味をもって読んでくださった方にも、次回の内容を読んでくださると大変嬉しいので、もしお時間に余裕があればよろしくお願いします。


 それではまた!

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