常識を疑いオフィスチェアを創造
今回はかなり軽めの内容ですが、実は美術に大きく関係している内容をお届けします。皆さんはが職場で使っている椅子はどのような物でしょうか。おそらく多くの人が職場で提供された普通のオフィスチェアを使っているのではないかと思います。
もちろん私もこれまで与えられた椅子をそのまま使っていて、座り心地の悪さを座布団で誤魔化してきました。しかし、そのような中で大きな犠牲が姿勢の面で発生していました。安物の椅子に座っていると、作業するときに少し姿勢を変えるだけで体のあちこちに負担がかかるので大変疲れると言うのは多くの人が実感するところではないでしょうか。特にパソコンを使っている場合は、姿勢が前屈みになりやすく、夜遅くまで仕事をしなければいけないような場合には猫も二度見するぐらいに背中が曲がった状態で体を酷使し、肩や首、腰の疲労が日々蓄積していくというサイクルを私はこれまで続けてきました。
このような状態が自分の姿勢と座り方に問題があるというのは重々承知していたので、意志の力で姿勢が良い状態になるよう座り直してきましたが、オフィスチェアには姿勢が崩れる仕掛けでもしてあるんでしょうか。作業をしていたら30秒ともたないうちに姿勢は元のゾンビ状態。意志の力では到底打ち勝つことなどできませんでした。
問題を解決するオフィスチェア
今回はそんな椅子に座る姿勢に悩まされ続けてきた私がとうとう問題を解決することができた究極のオフィスチェアを紹介します。それがこれです。
「何これ?」と思った人が多いかも知れませんね。少々汚れてしまっているのはご容赦ください…。これはオムニウッティという高性能バケツとバランスディスクを組み合わせたもので、下にはローラーをつけているのでオフィスチェアらしく座ったまま移動するもできます。
ローラーをつける部分は木を組み合わせたもので、この上にバケツを安定して設置することができるようにしていますが、それ以外は完全に既製品を組み合わせただけの簡単な造りなので、誰でも簡単にこの椅子を作れます。
この椅子を使い始めて明らかに姿勢は良くなり、疲労度も下がりました。これにはバランスディスクが大きな役割を果たしていると考えています。バランスディスクはバランスボールのようなもので、中に空気が入っていて、この上に座ると体が揺れます。なので、姿勢を保つために無意識に体幹を使うことになります。この状況が姿勢を良い状態に保ってくれます。そして座っているだけで体感トレーニングにもなるので、一石二鳥です。
もし、この椅子で変な姿勢をとったらどうなるかというと、バランスディスクには角度がついているので変な方向から力が加わることになり、椅子が後ろに転がったり、倒れたりします。なので、必然的に椅子の頂点にチョンと座る感じをキープすることになります。
ドカッと座るのではなく、チョンと座る。この時点で勝利確定です。ドカッと座るもので代表的なものとしてソファーがありますが、これに座って作業が捗るというのは考えにくいことだと思います。仕事や勉強に集中するためには椅子に浅く座って体に緊張感をもたせることが大切です。バランスディスクを用いることによって、半ば強制的に良い姿勢で座ることができるようになります。
結局、深く座るというのは休憩の時のみするべきことであって、ソファーにも長時間座っていると、腰などが痛んでしまうので、普段はなるべく深く座らないようにしたいところです。今でこそ、一週間で累計1時間もソファーに座る時間がなくなった私も、以前はソファーの上でよく時間を過ごしていました。そして、これをすると読書をしていてもすぐに眠くなり、映画をみていても寝落ちする上に、体がものすごくだるい状態に仕上がってしまうということを経験してきました。いくら意識を高く「今日はこの本を読み終えるぞ!」と鼻息荒く読み始めたとしても、ソファーの破壊力には到底太刀打ちできません。ソファーで変な格好になって昼寝をしたこともたくさんあって、その度に首や腕の関節が悲鳴を上げてきました。そうなると分かっていても一度ソファーに座ってしまうとそこに居続けてしまう。それがソファーであり、ドカッと座ることの危険性だと思います。休日ならまだしも、仕事中にはなるべく避けたい座り方だと思います。
座って仕事するのに疲れたら立って仕事
1時間以上座っているといくら姿勢が良くても疲れが出てきます。人間の体は活動的に過ごすようにできているので、座り続けるというのは体に良くありません。
このオフィスチェアはそんな悩みも解決してくれます。この椅子は各パーツを重ねただけのシンプル構造なので、分解することもすぐにできます。分解してどうするかというと、オムニウッティ(バケツ)を机の上に置いて、蓋をすることによってスタンディングデスクにし、バランスディスクの上に立って仕事をします。私は作業スペースが欲しいので、少し大きめのボードをオムニウッティの上に乗せるようにしています。ちなみに、この状態でもパソコン作業ができるように、スクリーンの位置は高めに設定し、キーボードとマウスは無線にしています。
バランスディスクはツルツルの面とツボマッサージができる面があるので、履物を脱いでツボマッサージしながら立って仕事をすると気持ちが良いですし、体幹を鍛えながら使いながらの作業もできますし、立つことによって血流が頭に上がりやすくなって頭が冴えるので良いことばかりです。ついでに履物を脱いでいるので足が蒸れず快適です。唯一ネックになるのが、これをすると職場で確実に変人扱いを受けます。この羞恥心にさえ勝つことができたら最高の仕事環境を手に入れられます。一度やってしまえばそれ以上変人のレッテルは貼られなくなるので中長期的に見ると何の問題もありません。
長時間の残業をしていると体と心の面に不調をきたす可能性もありますが、体にも心にも優しいバランスディスクとオムニウッティの組み合わせは強い味方になってくれていると感じています。椅子としての機能性だけでなく、簡単にそれぞれのパーツの利点を生かせる状態というのがこのオフィスチェアの最大の強みだと思います。
収納性も◎
オムニウッティはただのバケツではなく、多用途を目指して開発された高性能バケツです。うねりのあるボディは強度を出すことに成功し、蓋をすれば100キロ以上の人が上に乗っても壊れることはありません。そのようなことから、ピクニックの際にはこのバケツをカバンがわりにして荷物を入れたり、座ったりといったふうに、バケツの常識を覆す機能性が魅力です。密閉率も大変高く、家ではオムニウッティに生ゴミの袋を入れて悪臭をシャットアウトするようにしています。また、オムツ用のゴミ箱として利用する人も多いそうです。
このオムニウッティの収納性を生かして、私はカバンをこの中に入れ、水筒やスマートフォンなどもこの中に入れるようにしています。水筒やスマートフォンをいちいちカバンから取り出すのは面倒ですし、だからと言って机の上に置いていても邪魔になります。スマートフォンが置いてある机は集中力の妨げになり、作業効率を劇的に下げるという話も聞きます。そんなものは見えないところにしまっておきたいところです。
カバンなどの荷物を置く場所が机の周辺にあれば良いのですが、そうでない職場は多いのではないかと思います。大抵は足元に置いている人が多いのではないかと思いますが、足元にカバンがあるだけですごく仕事中不快に感じてしまいます。それによって姿勢が崩れてしまうというのもあるので、なるべく足元は自由の効く状態にしたいところです。そういった意味でも、この椅子はとても便利だと思います。
アート思考を仕事に
このように考えると、オフィスの椅子はそもそもこうあるべきなのではないかと考えてしまいます。これまで誰もやっていないからといって、それが間違いかというとそうではないはず。常識にとらわれず良いものを取り入れていくと、理想的なものが生み出されていきますし、掛け合わせる視点こそ、アート思考の大切な側面だと考えています。
アート思考とデザイン思考、これらはよく混合されていますが、本質的に異なるものです。例えば、デザイン思考は「姿勢が悪くなるから姿勢をよくするために最適化」という、問題の解決型と言えます。デザインというもの自体が「ものごとをより良くするために調整する」というものなので、問題があって初めて活躍するのがデザイン思考と言えます。
それに対してアート思考は「問題を創り出す」ものと言えます。そもそも椅子に対して「座る」という機能以外を求めるのは非常識的なものだと思いますが、その常識を疑って、他に何かできないかと問題提起するのがアート思考です。
アート思考が仕事の中で行われると自然と楽しく仕事をできるようになると思います。ただ決められた仕事をするだけではなく、仕事を創り出すようなことができれば、その仕事は発案者に任されるので、自然と自分のやりたい仕事ができるようになると思います。
アートと聞くと、難しいと考える人もいるかもしれませんが、私はどんな人でも手軽にできるものであると信じているからこそ美術教育の大切さを伝え続けてきました。アートには単純な法則があります。それは「あるものとあるものを掛け合わせる」ということです。これをした時点で新しい何かが生み出され、それによってそれまでの常識が覆るような革命が起きます。何を掛け合わすかは人それぞれであり、生み出されたものが優れたものであるかどうか判断するのには時間がかかります。そして、たとえ課題の多いものであったとしても、一旦生み出したものであれば、それをデザイン思考によって最適化(デザイン思考)して、優れたものに洗練していけば良いのです。
まずは掛け合わせて何かを生み出してみる。そういうちょっとした挑戦を仕事の中で実践し、より充実した仕事ができるようになれば、人生も楽しくなるのではないかと思うので、これからも美術教師として生徒にアートを伝えつつ、自分自身もアーティスティックに仕事をしていきたいと思います。
最後まで読んでくださってありがとうございました。今回は仕事中の姿勢の悪さを解決するオフィスチェアについてお話しさせていただきました。現段階で常識的に考えると、少し使うのが恥ずかしいオフィスチェアかもしれませんが、私は常識はまず疑ってみるべきものだと考えています。最近はスタンディングデスクが使われるようになるなど、そもそもこれまでの座ってオフィスワークする常識が大きく変わろうとしている時代です。今使っている椅子に少しでも不満があるのであれば、何かアクションをしてみても良いのではないでしょうか。ちなみにバランスディスクとオムニウッティは単体でも素晴らしい品なので、オフィスチェア以外のアレンジもきっとできると思うので、色々と試してみるのも良いかもしれませんね。
次回は「モチーフは表現の動機」をテーマに記事を書く予定です。皆さんは美術の授業でモチーフをどのように表現するように言われたことがありますか。または美術教師をしている人の場合であればどのように表現するように生徒に伝えますか。モチーフは表現をする上でとても大切な役割を果たしますが、これをどのように生かすかについては人それぞれ大きな違いがあるのではないかと思います。モチーフは元々「動機」という意味を持つ言葉ですが、それが表現の動機としてどのような意味をなすものかについて考察したことを説明しようと思います。もし興味があれば、次回も読んでもらえたらと思います。
それではまた!
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