Google classroomを活用した美術科における振り返り活動 vol.2
今回は以前に紹介「Google classroomを活用した美術科における振り返り活動 vol.1 https://art-educator-tatsuwaki-serendipities.blogspot.com/2021/05/google-classroom.html」の続編ということで、Google classroomを活用し、スライドでの振り返り活動を実践している中で見えてきた活用方法と今後の課題について記事を書きます。GIGAスクール構想が本格的に始まった今年、各学校で試行錯誤しながら生徒たちとICTを活用されている先生が多いと思いますが、少しでも参考にしていただける部分があって、私の実践が役に立つようなことがあれば嬉しいです。そして、この記事を読んで、別の工夫された実践をされているというのがありましたら、是非吸収していきたいので、コメントしてくださるとありがたいです。
フィードバックとメタ認知の充実
以前に紹介したスライドを利用した振り返りシートでは制作状況を撮影して、画像付きで振り返りを蓄積していくことがメタ認知を促したり、教師の側からの具体的なフィードバックに役立ったりすることを説明しました。これは実際に授業でやっていてかなり効果を発揮しているように感じます。1時間の授業を通して自分の表現がどのように変化したのかを見ることができ、進歩をより実感しやすくなったと思います。教師からのフィードバックも制作状況の写真を見ながらできるため、どの部分に満足しているのか、また、どの部分につまづいているのかを分析してコメントを返すことも容易になりました。そして具体的な例となるような画像を貼り付けて返却できるため、フィードバックがかなり充実したものになったと実感しています。進歩の実感と適切なフィードバックは生徒のメタ認知を促し、その経験が成長につながっていきます。
このような方法によって、指導と評価の一体化という言葉がかなりリアリティーを帯びてきましたし、このことは「学びに向かう力」を伸ばす上で有効であると考えています。教師にとっても、指導を通して生徒の表現が変化していくことが実感しやすくなったので、過程をしっかり評価することができます。
生徒へのサポートが個々に合わせてできるようになると、達成感を味わい、モチベーションの向上につながります。稀に手厚いサポートに対して根性論を振りかざし、「自分で全てなんとかする経験も大切」という人もいるかも知れませんが、そんなこと言い始めたらそもそも教育が不要となります。1から10まで全て教えるという考え方は間違えていると私も思いますが、10を達成するために、きっかけとなる「1」を生徒に提供するのが教師の仕事だと思います。生徒にとって、表現したいことがうまく表現できなかったり、つまづいてばかりで進歩がなかなか得られないような状況というのはモチベーションの低下を招くのは明らかです。全て自分の力で乗り越えていくことができたらこの上ないことですが、そういう人は本当に稀な存在です。大多数の人はコーチングを必要としています。教師の仕事は生徒のやる気に火をつけ、主体的に学ぶことができるようにすることだと思います。そうして主体性が伸びると、自然とその中で技術や思考力・発想力も身に付いていくというのが、今回の新学習指導要領改定のポイントにもなっています。そうであれば、教師の役割は知識を教えることよりも、主体的な学習態度を育むきっかけを起こしていくことに重きを置くべきであることも見えてきます。
Google Classroomでスライドの振り返りシートに取り組むことで、これまで以上にきっかけとなる情報を提供することが可能になったことは、学びをコーディネートしたりファシリテートしたりする新しい時代の教師としての役割を再認識することになりました。適切な情報を提供することで、生徒は自分で学びを深めることにつなげられます。例えば、上の振り返りに対するコメントでコンスタブルという画家の作品を貼り付けていますが、この情報から自分でコンスタブルについてググることも考えられます。そうして緑の表現や空の表現を自ら学んでいく状況が生まれます。
インターネット上には教師の知識を遥かに凌ぐ知識が蓄積されており、生徒が調べた内容から学ぶこともたくさんあります。そうして教師自身も生徒と一緒に学んでいける機会が主体的な学習の先にはあると感じています。
振り返りシートが発想の基地に
スライドを用いた振り返りシートを使っていると、デジタルならではの利点が上記のことに加えて次々に見えてきました。当初は振り返りシートはその名の通り「振り返り」のために使うものだと考えており、授業の最初に教師からのフィードバックを確認して制作に入るぐらいの感覚でした。
授業の中では制作に役立つ画像を検索して、それを参考にして絵を描いたり構成を考えたりする生徒が沢山います。このような状況でも十分にICT活用の利点はありますが、この利点をさらに加速させる方法が見えてきました。それは画像を振り返りシートに貼り付けしてスクラップブックのようにしていくということです。
これをすると、画像をいちいち調べ直す必要がなくなるだけでなく、書式設定から色を変えたり、他のモチーフとの組み合わせをよりイメージしやすくなったりします。人間の想像力は思った以上に脆弱。実際に表現してみたり、モチーフを用意したりしないと想像はなかなか膨らみません。だからこそ、スクラップブックやメモ書きというものが想像を膨らませる上で重要な役割を果たすわけです。それが振り返りシートで手軽にできるというのは大きな価値があると考えています。しかも、スライドだと他のページを見たり、枠外に画像を置くことも可能なので、ドキュメント(Word)よりも利便性が高いと言えます。
このような使い方に加え、授業中に他の生徒の表現を鑑賞して興味を持ったものを写真に撮り、それを振り返りシートにストックするという使い方も推奨しています。クラスの中の刺激というのは生徒にとってとても意味があります。神童と呼ばれたピカソの中学生の時の超絶写実的な絵を見ても、完全に別次元の人間の表現として扱ってしまいますが、同じ中学生の表現であれば、「自分にもできるかも」「自分もやってみたい」という意識で見ることができます。そういう協働的な学びを促進するためにも、他者の制作を写真に撮り、振り返りシートに蓄積させていくというのは大切なことだと思います。
こうして教師からのフィードバックに加え、必要な情報や他者の作品をスクラップしてくことで、発想の基地としての役割を振り返りシートが持ち始めます。そういう利便性を生徒が感じるようになると、ますますこの振り返りシートを有効活用していけるようになると考えています。
最後まで読んでくださってありがとうございました。今回は「Google classroomを活用した美術科における振り返り活動」について、以前紹介した振り返りシートをさらに有効に活用する方法を紹介させていただきました。ICTを文房具のように使うというのがGIGAスクールの目指すところです。ICT機器だからこそ可能な学びについての研究はまだ始まったばかり。これからも様々な機能で遊びながら利用価値の高い方法を探していきたいと思います。
次回はGoogle Jamboardを利用した鑑賞の授業について記事を書く予定です。最近、黒板に書いていたようなことは基本的にJamboardに表示するようにしています。このJamboardは学校におけるまさに破壊的テクノロジー。Jamboardは学校以外の場でも使える意見共有の強力なアプリケーションです。まだ使い始めて数ヶ月しかたっていない初心者の私ですが、初心者なりにJamboardの魅力を伝えてみたいと思いますので、もし興味があれば、次回の記事も読んでいただけると嬉しいです。
それではまた!
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