アイス棒で作るコースター 簡単で発展性のある工芸

 今回はアイス棒で簡単にできるコースターについて紹介します。

 アイスを食べた後に残る棒をなんとなく取っておいたという経験がある人はいるでしょうか。私は作品制作の材料に使えると思ったものは取っておくことがあり、そういうものから教材に使えるものを生み出したこともあります。アイス棒はたくさん集まれば組み合わせ次第で立体的な作品も作ることができ、積み木感覚でできる工程が魅力的です。


 今回はコースターの制作と教材としての可能性について考えを書いています。もし自分で作ってみたいという人や、美術や図画工作で教材として扱ってみたいと思う人がいれば、読んでいただけると嬉しいです。




簡単な構成でできるコースター

 このコースターを作成するのに必要なのはアイス棒と木工用ボンドだけです。木を汚れやくすみから守りたい、色を変えたいという場合はニスを塗るのも良いでしょう。

 制作方法は簡単。アイス棒を2段以上で構成し、接着するだけです。普通に組み合わせるのも良いですが、美術的に考えると、棒の組み合わせ形を工夫したり、カッターや彫刻刀で形を変えたり、模様を彫ったりするのも面白いと思います。使う形がシンプルな分、構成や細かいアレンジで工夫することに集中して取り組みやすいのが魅力で、美術や図画工作が苦手な人でも積み木で遊ぶような感覚で制作することができます。彫刻や色でアレンジできることを考えると、積み木よりもさらに多様な要素で遊ぶことができるので、工芸の導入としてはとても取り組みやすい教材になると思います。


簡単&発展性がある



 児童生徒の取り組みに対するモチベーションを刺激する上で、「取り組みやすさ」「簡単」というのは必要な条件ですが、これで十分かというとそうではありません。ただただ簡単なだけでは「優秀な遊び手」にとっては暇以外の何者でもありません。テトリスなどのパズルゲームは簡単で取り組みやすいですが、点数が上がるにつれて難易度が上がるように設定されているからこそ、上を目指して遊べるわけで、この発展性がなければ面白味がありません。ただの暇な作業になってしまいます。そういうものは遊びの要素が欠落しています。

 美術や図画工作の教材も、簡単かつ発展性が無限にあるような「アレンジのしやすさ」が不可欠であると私は思います。アイス棒によるコースターは形の自由度、色の自由度が非常に高く、工夫次第で個性的な芸術作品にもなり得るものだと思います。


楽しいと思う経験が制作へのモチベーションに

 これまで、私は1年生の工芸ではバターナイフやペーパーナイフといったものに取り組んできました。これらは時間さえかけて取り組めば、やすりがけやニス塗りで仕上げて大抵の作品は良い感じに仕上がるのですが、本格的な工芸に取り組む最初の作品制作としては「簡単」という要素がかなり不足しています。まず彫刻刀がまともに扱えない生徒が多く、木を削って適度な薄さに加工することが困難であったり、そもそも木を削って薄くしていくことでナイフの形状になるという感覚さえ分からない生徒も意外と少なくありません。

 そういう彫刻が理解できていなかったり、彫刻刀の扱いが不慣れな生徒でもアイス棒を扱った工芸であれば、形の大半はアイス棒の組み合わせと接着によって完成しているので、加工の手間がほとんどない上、薄い木材なのでちょっと彫るだけでも形を簡単に変えることができます。バターナイフやペーパーナイフは木材の厚みがあるため、かなり削らないといけません。彫刻刀の扱いに不慣れな場合、削ること自体に多大な労力がかかってしまい、工芸の楽しさを味わえないまま時間が過ぎてしまいます。こういう難易度の高い教材は工芸の楽しさと出会う機会を喪失しかねません。

 まずは取り組みやすい教材で、木を扱うことや形を加工することの面白さを味わい、「もっとレベルの高い工芸にチャレンジしたい」と思えるようにするのが大切だと思います。これまで難易度の高い教材にいきなり取り組ませて、過剰なストレスを生徒に与えていた私自身の取り組みは反省する必要があります。今後中学1年生を担当する場合はこのような簡単で発展性のある教材で導入をしておいた上で、より発展的な内容に取り組めるようにしたいと思います。導入で誰もがすぐに遊べる取り組みが不可欠ですね。




 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回はアイス棒で作るコースターについて紹介させていただきました。とても手軽に作って楽しむことができる工芸なので、やってみたいと思われた方がいらっしゃれば嬉しいです。芸術の秋、自分の手で造形活動を楽しんでみるのも良いと思います。

 これからも部屋が散らからない程度に身近なところで材料になるものを集め、手軽に造形活動を楽しめるものを考えていきますので、良いものが発見できたらまた紹介したいと思います。

 それではまた!

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