明けましておめでとうございます! 2022年の抱負と目標

 


 明けましておめでとうございます。今年も美術や教育に関することを中心に、週1回程度の更新を地道に続けていきますので、どうぞよろしくお願いします。

 今年1回目の内容なので、今回は新年の抱負と今年達成したい目標を3つについて書きました。私の個人的な内容になりますが、読んでいただいた方にとって何か刺激になるものがあれば嬉しいです。


新年の抱負 常に「遊び」基準で考える

 私はこれまで美術や教育について「遊び」をキーワードに研究し、実践を行ってきました。この研究を始めたのは大学院1回生の時で、ふと「そもそもなぜ人間や動物は遊ぶのか」を考えたことがきっかけで、その後哲学で現象学や記号論、心理学で生体心理学や臨床心理学、そして社会がそもそもどのように歴史の中で遊びの要素を取り入れられる状態になってきたのかを社会学の観点から研究することになり、それらで学んだことが美術教育の存在意義や美の哲学である美学に関する考えを補強してきたと感じています。

 遊びの研究を始めて気がつけばもう十数年経っていて、そろそろ次の段階に行かなければいけないと感じ始めたのが昨年です。これまでは自分が研究したことを美術教育の範囲で生かしてきましたが、美術(アート)という現象自体が、その言葉の範疇に収まり続けるものではなく、常に世の中のさまざまな現象と結びつきながら姿を変えるメタモルフォーゼ(変化、変身、変態)であることを考えると、美術教育というもの自体がもっと世の中とつながりを持ち、世の中に変化を与えながら美術教育自体も姿を変えていくことを目指して、「美術で遊ぶ」ことに焦点を当てても良いのではないかと最近は考えています。

 これまでは年間指導計画に沿って、作品をきっちり完成させることを重視してきました。私としてはこれが悪い取り組みであるとは全く考えていませんでしたが、もっと生徒にとって美術の学習が高い自由度で取り組めるようになり、トータルで振り返ったときに学びが最大化される状況をこれからは考えていきたいと思います。

 そう考えた時に、常に「遊び」基準で考えるという抱負が浮かんできました。「遊び」は「遊びたいから遊ぶ」という自己目的的な活動であり、人間は放っておいたら疲れ果てるまで遊び続けます。そして、遊べている限りにおいて、私たちはさまざまなことを達成し、成果と言えるものを生み出すことができます。そもそも、達成しているものがなければ遊んでいても楽しくないので遊びは終了してしまうものなので、「遊べている」「まだまだ遊びたい」と言った感覚に浸ることができれば、自然と楽しみながら創造性を発揮することができると思います。

 きっと理不尽を感じるようなことも仕事をしたり日常生活をしていれば出くわすことだと思いますが、大抵の理不尽なことでさえ視点を変えたり、逆手にとったりして良い方向に変えていけるのが遊びの魅力だと考えています。理不尽なことがあっても、それを改善するためのチャレンジングなゲームだと思って攻略すれば、達成した時の喜びも一入ですし、それによって状況が改善してより良い環境で仕事したり生活したりできるので、幸福が継続します。こういうことは誰かと協力して行うと、更に楽しめることだと思うので、遊び仲間を増やしていきたいと考えています。

 楽しめないことがあれば、そこには必ず改善すべき原因があり、それは遊びに変えることができる可能性が存在するはずです。それが単純に解決すべき問題であれば、攻略するゲームに変えたいと思いますし、もし自分自身の価値観に関することが原因であれば、自分の視点を更なる多様性の価値観に染める機会にすれば良いと思います。

 常に「遊び」基準で考え行動することは、様々なバランスの上に成り立っている社会においてそんなんい簡単なことではありませんが、だからこそ挑戦してみたいと思います。今年の最後には遊んだ成果を良い形で報告できればと思います。


今年達成したい3つの目標

1:PBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)

 これは従来の科目進行型学習(Subject-based Learning)とは異なり、生徒自らが課題を発見し、その課題を解決するために必要な知識を身につけていくというアクティブラーニングの手法の一つです。アメリカのHTH(ハイ・テック・ハイ)と呼ばれるPBLを実行している学校では教科書主体の授業ではなく、生徒の主体性重視で学習が行われていて、プロジェクトや問題を解決するために知識がメタレベルで獲得されることを目指して教育が行われています。その結果、もともと学力が高くない生徒が多かった学校が学力向上に成功し、大学進学率も非常に高くなりました。あることを達成するために基礎学力が必要性を持って身につけられるのがPBLの魅力であり、達成したことが多くなれば当然「もっと学びたい」となるので、大学に行きたいとなるわけです。至極真っ当な進学理由ですね。そんな学生に溢れたアメリカの大学が世界の大学トップ10の大半を占めるのも頷けます。

 この教育が注目を集め、日本でも少しずつPBLが広まりつつあります。基本的には自治体主導で取り入れられているのが現状ですが、私が勤務する倉敷市にPBLが浸透するのは少し先のことになりそうです。なので、自分の裁量が効く範囲でPBLを実行していきたいと考えています。

 そもそも、美術という教科自体が元々PBLの側面を持っており、教材は同じものに取り組んでいても生徒各々がテーマを考え、独自の発想を膨らませ、それを達成するために個別に必要な知識や技術を獲得しながら作品を制作しています。

 ただ、これまでは制作計画や過程も大切でしたが、最終的なプロジェクトの結果である作品の評価が成績に関する評価の中心でした。私は今年、思い切って作品という結果でなく、取り組み全体の成果(経験値)を評価の中心にしたいと考えています。なので、極論ですが制作段階の99%まで完了していて、最後に作品が作者の手で破壊されてしまったとしても、それまでの取り組みや学習が0になるわけではないので、A評価がつくというのも有りにしたいと思います。そのために毎時間作品の進捗がわかるように写真付きの振り返り活動をしたり、授業中の机間巡視で生徒の活動を見とることがこれまで以上に重要になります。

 また、PBLを促進していくために、生徒の自由な活動時間の確保もしていきたいと考えています。昨年取り組んでいて気がついたのですが、作品を一つ完成させてノルマを達成した生徒には、残り時間で学んだことを生かして自由に制作をさせていました。ステンシル版画の制作では各々が制作した版を利用して、共同制作を遊ぶという取り組みもしました。

 そのような活動の中で生まれた作品が実に面白く、生徒も満足のいく制作ができることが多くありました。なので、今年は思い切って割と短時間で制作が完了し、残りの時間は生徒の主体性に任せた取り組みができる授業環境を整え、授業時間を遊び尽くしてもらえるようにしたいと思います。

 これについて特に私が実践したいと考えているのが共同制作です。具体的にはGoogleスライドなど、生徒が情報共有できる場を用意しておき、そこで生徒が制作したいと考えたアイディアやスケッチを貼り付けていき、それに一緒に取り組みたいと考えた生徒が発案者と連絡を取り合い、一緒に作品を制作していくという方法です。これまではクラス単位での学習でしたが、これによってクラスを超えた学習が可能になります。作品の保管場所など実施に向けて考えていかなければいけないことはありますが、工夫すればできることだと思うので実践に移していきたいと思います。可能であれば、学校外との繋がりも作り、美術の学習が地域にも影響を及ぼすものになればPBLの魅力が更に生かされることになると思うので、可能な限り学校外にもアプローチができるように方法を考えていきたいと思います。


2:GIGAスクール構想の発展に貢献

 今年度、私は特段ICTに詳しいわけでもないにも関わらずICT教育担当になり、「Google Chromeとは何か」という超初歩的なところから勉強を始めながら、勤務校でのICT教育の推進と、勤務地である倉敷市のGIGAスクール推進リーダーとしてICT教育の推進に精を出してきました。年度当初は「Google Workspace for Education?なんじゃそりゃ?」の状態でしたが、怖いもので、常に使っていると、これなしには自分の教育活動が成り立たなくなるぐらいの状態になりました。毎日少しずつでも活用していれば、1年も経たないうちに割とマスターできるものだと実感しました。

 2021年度に入って本格的にGIGAスクール構想がスタートし、各校で試行錯誤しながら活用の幅を広げていっている状況ですが、まだまだこれからといった状況です。個人のレベルでは積極的に活用を始めている人はかなりのことができるようになっていますが、まだ様子見の段階の人も少なくなく、学校全体や市全体でGIGAスクール構想が推進されている状態にはなっていません。しかし、そんな中、来年度からメクビット(MEXCBT)というオンライン学習システムの導入が全国的に本格化し、倉敷も導入予定ということになりました。これによって授業者(5教科)の負担が格段に減り、教師の役割は学びをサポートする立場に一気になろうとしています。

 そうなった時に、教師主導で知識を効率よく教える技術よりも、個々の必要性に応じた学びをコーディネートしたり、学習に対する関心を促進するファシリテーターとしての技術が必要になります。その点でICTを活用した授業ができる状態にしておくというのが重要になります。なので、GIGAスクール推進リーダーとして、そのような授業に使えるツールを開発し、学校だけでなく市内全体で共有していけるようにすることが私の果たすべき役割なので、来年度に突入するまでに、可能な限りツールを開発していきたいと思いますし、来年度も継続的にツールを進化させていきたいと考えています。

 学びをコーディネートしたりファシリテートしたりするためにはGoogle Workspaceの強みである「共有」、そしてそれに伴う「協働」がポイントになると考えています。これは先に述べたPBLにも繋がっていく部分もかなりありますので、力を入れていきたいと思いますし、またブログの内容として扱っていく予定です。

 

3:美術室を更に遊べる環境に


 私の全てと言っても過言ではない美術教育。これを日々行う場所である美術室はこれまでにたくさんの改良を行ってきました。現在の勤務校に来てから1年半以上が経ち、まだまだ理想には程遠いレベルですが、着実に進化させて来ました。今年、美術室を美的な遊びの場所、いわゆるテーマパークのような場所にしていきたいと考えています。

 そのために、生徒が気軽に触ったり、造形遊びしたりできるものを部屋の中に増やしていきたいと思います。先日大掃除ががったのですが、普段から担当の生徒は掃除をきっちりしてくれているので、掃除時間がかなり余りそうな状況でした。普通であれば、隅々まで徹底的に掃除するように指導するのが大掃除での教師の仕事ですが、私は時間いっぱい掃除を「楽しんで」もらいたかったので、大きな段ボールパネル(美術室で実用品として利用します)を普段教室に遊び用に置いている和柄のステンシル版画で着彩してもらいました。これが完全にはまり、普段なら掃除終了とともに一目散に帰ってしまう生徒が掃除時間が終了しても主体的に居残り掃除をする状況に。10分以上居残り「美化活動」をされたので、「いつまでする気?」と内心困るほどでしたが、生徒にとって美的な遊びをするというのは興味深いことであることを確認することができました。

 この遊びにハマっていたのが普段あまり授業では主体的ではなかった生徒も含まれていたことを考えると、美術室での活動が全て「遊び」に直結するものになる状態にすることが鍵だという確信を持つことができました。美的な活動における生徒の幸福感が結果的に美術の学習の成果につながると信じて教材や教室の環境を遊べるものにしていきたいと思います。



 美術室の中に生徒が気軽に美的な遊びができる仕掛けをするだけでなく、美術というもの自体が遊びのツールとなり、美術という遊びがメタレベルで行われるようになれば、教材の垣根を超えてしまうようなことも起こり得ると思います。授業者が仰天するようなものが生まれる授業。これこそ、学校での新しい学びの姿であり、多様性がなせる業だと思います。

 新学習指導要領が「主体的」という言葉をことさらに強調しているのも、教材や教科の垣根を超えてしまうような学びを思い描いているからこそだと考えられます。個別最適化学習によって誰もがこれまで以上に知識や技術の獲得が容易になることが予想される今後の学習環境において、児童生徒に求められるのは自分を生かした活動とそれに基づいた学びです。多様性が大切とは言いますが、どのような意味で大切であるか説明することは多くの人にとって難しいことだと思います。しかし、児童生徒が学校で生き生きと活動し、それぞれの多様性を生かしたものが目にみえるようになって実感を伴った時、多様性の真の価値について理解されていくことになると私は思います。そんな未来につながるよう、今年は徹底的に美術(室)を遊べるものにしていきたいと思います。


 最後まで読んでくださってありがとうございました。新年の抱負と目標をノリと勢いで書いてしまったので、意味不明な部分もあるかと思いますが、これぐらいの遊び感覚で今年はブログも書いていこうと思いますのでご容赦ください(笑)

 今日は元旦ということで昨年と同じように初日の出を山に登って拝んできました。新年早々に体を動かすと、快調に1年をスタートできますね。この調子で2022年も充実した1年にしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

 それではまた!!

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