学習を共有しアクティブラーニングを実現するGoogleスライドの活用

  今回はGoogleスライドの活用について私が実践してきて有効だったものを紹介します。私が担当する美術科だけでなく、他の教科でも学習を共有することには大きな価値があると思いますので、今回の記事が読まれた方にとって何かしらの価値を提供できるものになればと思います。

 GoogleスライドはMicrosoftのPowerPointやappleのkeynoteと比べるとできることが限られますが、普通にプレゼンテーションのスライドを作成するぐらいなら何の問題もなく使えます。そしてなんと言っても、Googleスライドの魅力はChromeによって他者とファイルがクラウドで共有され、協働作業ができることにあります。誰がどこを触っているのかさえ確認できるため、チームでスライドを編集しているときは、お互いの動きや作業を確認しながら自分の作業を進めることができます。まるで、ゲームの世界で協働作業しているような感覚さえあります。この感覚が楽しいのか、最初は多くの生徒がスライドの中で遊びまわり、作業どころではありません。しかし、そういう成長過程を通過し、在るべき形でスライドを活用できるようになると、驚きの生産性で作業ができるようになります。これに関してはドキュメントやスプレッドシートなどGoogleのツールには共通して言えることですね。

 今回紹介するGoogleスライドの活用方法は、「学習を共有するスライド」です。私が担当する美術科では教科の特性上、個人で作業する時間が非常に多いです。しかし、そんな制作時間が中心の美術の授業でアクティブラーニングができると、学びの質は劇的に向上すると感じています。そして学習を共有するスライドは、自ら判断して実践し、そこから学びを広げていくアクティブラーニングを促進してくれるものになります。

 アクティブラーニングができるように、授業中に自由に動き回って他者の作品を鑑賞し、また自分の制作に戻るという方法はこれまでにも一般的に行われているものでしたし、私もこの方法を今も実践しています。ただ、この問題点は大抵の生徒は友達の作品を見に行くだけにとどまり、他に沢山存在する魅力的な表現に触れる機会をあまり持つことができていないケースが見られることです。これではせっかくの学びの機会もただ仲間と群れる時間になってしまい、多様性を吸収し合うようなアクティブな時間にはなりません。

 Googleスライドを活用した学習の共有では常に他者から学べる鑑賞学習を可能にし、学んだことを即利用できるような状態を可能にします。よく美術の時間は制作と鑑賞の時間が別々で考えられることが多いのですが、常に制作と鑑賞が一体化したような状態が学習効果を考える上では有効であると私は考えています。鑑賞して良い刺激をもらい、それをそのまま表現に生かすことができたら、アクティブラーニングを目指す授業としてかなり望ましい状況であると言えるでしょう。

 ここからはその具体的な取り組み方法について紹介します。今回は美術の授業に関することですが、他の教科でも同じようなことはできると思いますので、何か参考になることがあれば幸いです。


制作の過程を分類してスライドを作成する

 まず、制作過程(アイディアスケッチ・実験(造形遊び)・制作過程(工夫)・完成作品)など、単元全体の見通しが持てるようにスライドを制作過程で分類して用意します。


 上に示している例のスライドには、過程の中で生徒が個々の必要性に応じて活用できる資料や動画をスライドに貼り付けしています。Googleスライドはリンクの機能が使えるため、このように必要な資料を追加して生徒の活動を促進する仕掛けを作っておくと、主体的な学習に役立つと考えられます。

 このリンクは自分で作成した資料や動画でも良いでしょうが、インターネット上には沢山の優れた資料があるので、活用できそうなものを調べ、ストックしておきたいところです。ストックする際にもスライドは便利なので、授業などで使わない個人用スライドなどに整理してストックしておくと、いざというときにすぐに使えます。


生徒の制作過程の写真を貼り付ける

 ここからは授業での活用例になります。授業の中では生徒の多様な表現やアイディアを発見することができます。生徒の努力や工夫は教師のリアクションで伝えることが生徒の自己肯定感につながるため重要ですが、制作の状況を写真に撮らせてもらったり、振り返りの際に撮影する写真の提供をお願いしたりすることは自己肯定感だけでなく、有能感にもつながるものであると実感しています。


 生徒の中には自分の表現に自信がないケースも見られ、その表現に対して教師が口頭で褒めたとしても「どうせお世辞でしょ…」と受け取られてしまうこともあります。しかし、「全体で情報共有したいので、写真を使わせて欲しい」と言われたら自分の表現が本当に認められているということを実感することができます

 これまでに沢山の写真使用の許可を授業中に生徒にお願いしてきましたが、幸いにも未だかつて拒否されたことがありません。生徒自身では自信が持てなかった表現でも、教師の側から「この部分の表現が〜で大変工夫されていますね」など、よくできている部分に視点が向くようにすることで、生徒は「そうか、これもこれで確かに良いかも…」と考えを改めて、さらに工夫した表現につなげていくことができます。ただ、「上手!」「天才!」「頭いいね!」という抽象的で相手の能力を「褒め言葉」は言われた本人にとっても、周囲の生徒にとっても決して良い影響が期待できないどころか、学習意欲という点では逆効果になるというデータが出ているので、具体的に「工夫できている部分、努力できている部分」を褒めることができるスキルと習慣を授業のファシリテーターとして身につけることが大切です。もちろん私自身もそのスキル獲得に日々悪戦苦闘しながら取り組んでいるところです。

 このようなよく取り組めている部分をピックアップして、活動を促進する働きかけを行う機会は美術の授業では割とよくあることですが、どの教科においても、個別最適化による学習や生徒の主体的な学習を可能にする上で、このような働きかけ、ファシリテーターとしての役割が、スタディサプリなどの動画付きの学習サービスを利用して授業をすることになるであろう今後、ますます求められるようになるのではないかと考えています。


追加情報を入れる

 生徒から集めた有益な情報はそれだけでも学習を促進する上で十分に価値がありますが、それを活用して追加情報を入れることで、さらに学習活動を促進する情報になります。

 写真や答えを貼り付けているだけだと、生徒の大部分はそれをただ眺めているだけの、浅い認識に留まってしまいます。しかし、そこに言葉が入ることで、情報がより具体化されて、イメージが沸きやすくなります。


 例えばグルーガンを使った表現の写真がありますが、これは「すぐ固める」「グルーガン」という言葉がなければ、この表現が適切に理解される可能性はおそらくかなり低くなると思われます。グルーガンというものを知っている生徒はごくわずかですし、この特性について深く理解できている生徒はさらに少数になります。そういう時に教師という知識者がこの道具の特性についてキーワードとなる「すぐに固めたい」という言葉を入れることで、この表現を必要としている生徒に届くようになります。

 これは学習活動のコーディネート力と言えるものですが、教師には個別最適化の学習活動ができるように、生かせる情報を掴み、生徒に適切に届くように調整することが大切です。これをできるようにするためには、教員として日々研究と修養に励み、深い造詣を獲得することが求められます。授業自体はICTの活用によって楽になりますが、だからと言って教師が勉強する必要がないかと言うと全くそうではなく、むしろこれまで以上に広く知識や技術を獲得し、それを活用して主体的な学習の育成に生かせるようなレベルになる必要があります。勉強することで広がる可能性や、遊ぶように学ぶ主体的な学びについて、教師自身、実践を通して考えを深めていきたいものです。


Jamboardへの貼り付けでさらなる活用も可能

 Googleスライドでの共有情報が充実してくると、これをスクリーンショットしたものをJamboardに貼り付けて活用することも可能です。これによってGoogleスライドでは操作しにくい拡大縮小がJamboardでは容易にできるようになるため、必要があれば細かい部分まで見ることも可能ですし、授業をしている側としてもスクリーンに拡大して提示しやすくなります

 Jamboardは付箋やテキスト、手書きの機能が優れているので、Googleスライドから流用した画像を活用して意見を出させたり、思考を深める活動に用いたりすることで、授業のめあて、まとめ、振り返りの活動に生かせます。


 スライドにはスライドの良さ、JamboardにはJamboardの良さがあるので、双方のメリットを生かす方法についてこれからも実践を通して研究していきたいと思います。不便だなと感じた時は大抵何かしらの解決方法を用意してくれているのがGoogleのサービスだと思います。私たちも日々勉強して使いこなせるようになっていきますが、それを上回るようなペースでGoogleは進化しているので、多くの人と協力しながら学んでいきたいと思います。


 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回は「学習を共有しアクティブラーニングを実現するGoogleスライドの活用」について説明させていただきました。生徒の表現を肯定し、活動を促進するきっかけ作りになり、主体的な学習態度の育成にもつながるような可能性を持った活用方法だと思います。今回の内容が読まれた方にとって何かしらの価値ある情報になれば嬉しいです。私自身もまだまだ学ぶべきことが多い身ですので、これからも試行錯誤しながらICTの活用について考えを深めていきたいと思います。

 それではまた!





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