生徒会活動でGIGAスクール構想を推進することの可能性 〜PBLにつながるICT活用〜
GIGAスクール構想元年と呼ばれる2021年度もあと2ヶ月弱となりました。来年度からはGIGAスクール構想を更に進めて、生徒の主体的な学習態度の促進を実現していけるように、今のうちからできる限りの準備をしておきたいと考えている人も多いのではないかと思います。
GIGAスクール構想を進めていると、ICTの活用が教科の学習だけでなく、様々な場面で役立つものであることが見えてきます。これまでは主に教科の学習面での活用について記事を書いてきましたが、今回は生徒会活動(委員会活動)でのGIGAスクール構想の推進について私が実践していることを元にしてお話しさせていただきます。今は年度末に差し掛かる時期で、おそらくこれから生徒会活動の最後のミーティングで活動の振り返りが行われていく学校も多いと思いますが、来年度に向けて試しにICTを活用してみるのも良いのではないでしょうか。
消極的な活動から積極的な活動の場へ
生徒会活動の日には生徒にミーティングのレジュメや連絡内容に関するプリントが配られることが多いと思います。そして、委員長もしくは委員会顧問の先生がミーティングの進行を司会して黒板に目標や取り組み内容などを書き、それをプリントに書き写させるというのが一般的なのではないでしょうか。しかし、メンバーによっては活発に意見が出て、有意義なミーティングになることもあるでしょうが、私の経験上そういう状況は稀で、たくさん生徒は集まっていても結局一部の生徒の意見だけが反映されて、他の大多数の生徒にとっては消極的な委員会活動になっていることが多いのではないでしょうか。委員としてただ決まったことを実行するだけ。このような活動では充実感を得ることは難しくなります。実際に「明日は生徒会の日です」と連絡すると、「めんどー」「うっわ、最低…」という声を聞くことも珍しくありませんでした。自分たちに裁量のない活動に対してネガティブになるのは仕方のないことです。
しかし、自分の意見が反映されて、自分たちで活動内容を決め、それを実行することによって学校が変化していく状況になると、生徒会活動の日が生徒にとって楽しみなものにもなり得ることがGIGAスクール構想元年の今年、ICTの活用の中で見えてきました。生徒会活動というものがあるからには、少しでも生徒にネガティブに捉えられる要素を改善し、充実した時間にできるようにすることが教師の役割だと思います。ICTの活用はそのための有効な手段になり得ます。
レジュメはGoogleドキュメントの活用で協働作業
私はこれまでプリントのレジュメを使ってきましたが、当初はペーパーレス化目的でとりあえずGoogleドキュメントで資料を作成し、委員会専用Classroomを作り、そこで委員会の生徒に資料を提示することから始めました。そして、ドキュメントは生徒と共有して編集可能にし、意見は全てドキュメントに入力するという形でミーティングを行うようにしました。
最初はペーパーレスで黒板を使わずに済むぐらいにしか考えていませんでしたが、これを始めて見えてきたことがあります。それは、たくさんの生徒が同時に意見を入力できて、多様な考えが一瞬で集まり、その中で考えが深まっていくという状況が生まれました。
多数決も簡単で、良いと思った意見の横に自分の名前を入力するだけ。生徒たちは慣れてきたら顧問がその場にいなくても自分たちでミーティングを進めることができるようになります。だからと言って全て生徒に丸投げにしてしまうと内容の深まりに欠けたり、実現性の低い内容になりかねないので、要所で質問を投げかけたり、アドバイスをしたりします。そうして、目標や具体的な取り組みはよく考えられたものになっていきます。
生徒が資料やポスターを作ることも容易に
GoofgleドキュメントやGoogleスライド、Google図形描画といったGoogleのサービスを活用することで、生徒が資料やポスターを作成することも容易になりました。
これまでポスターを作成するために手描きが一般的でしたが、これによって多大な負担を感じる生徒は少なくなかったと思います。絵やデザインが好きで得意な生徒であれば、画用紙さえ手に入れば喜んで描くでしょうが、美術教師をしている私でさえ、全て手描きで作成するとなったら心の中で「めんどくさー!」と叫び散らかします。そんな仕事をポスター制作が苦手な生徒に「委員会の仕事だから」と言って強要するのは、一種のパワハラとさえ言えます。そんな状況で制作されるポスターの多くは手抜きのもので、それが校内の至る所に掲示されてきたという状況を鑑みると、誰も得をしない取り組みになっていた感さえあります。いつでもWIN−WINの構造で考えること。ICTの活用はこれまでの技術的な問題をたくさん解決してくれました。ポスター制作では生徒が短時間で魅力的なものを作成し、それが校内掲示されたことによって多くの生徒が注目してポスターを見る機会を作り出すことができました。
ポスター以外にも、ドキュメントを活用することで、球技大会の説明資料などを生徒が自分たちで作成することも可能になり、教師の負担も大きく軽減することにつながりました。Google Formsを活用すれば生徒がアンケートを作成することもできます。
自分たちで活動を計画し、実行するPBL
PBL(Project Based Learning)という計画を中心にした学習が昨今注目を集めています。これは同じ頭文字のPBL(Problem Based Learning)という問題解決型学習よりも更に学習者の主体性を尊重した学習方法で、「こうなったら良いのに」という理想を実現するために、計画を立て、それを解決するために実践していくことで、自然と知識や技術を活用しながら習得していくというものになります。この学習方法は教科の中で実践できれば理想的ですが、学ばなければいけない内容が決まっていて、必ずそれらを履修しないといけない法的な決まりがありますし、受験のために学力として知識を効率よく身につけなければいけないという、これまでの学習観によって、思い切ってPBLを実践するのは難しいと感じる人は多いと思います。
私個人の考えとしては、それでもPBLを実行した方が結果的には学力が向上し、受験でも良い結果に繋がると予想しています。アメリカの高校でハイ・テック・ハイと呼ばれるPBLを実践した学校の学力向上が目覚ましかったことから、PBLを実践しても大丈夫だと思いますし、たとえ実践に失敗しても、これからは効率良く学習できるシステムを児童生徒は活用できるため、現行の学習指導要領の時間数があれば問題なく必要事項を履修し、学力も定着させられると思います。とは言っても、実践して失敗するリスクを考えると実行に移しにくいというのが多くの人が感じることだと思います。だからこそ、生徒会活動という、割と気楽にできる場で実験的に実践してみる価値があると思います。
生徒会活動のミーティングでたくさんの意見を集め、具体的な取り組みについて考え、それを実践に移すこと。これはまさにPBLに関することになります。
私が顧問を務めている学級委員会であれば、委員会目標である「他人に気遣う心を育む」という学年担当顔負けの目標が学級委員によって決められました。これを実現するために月目標で「落ち着いた生活を送れるようにする」というものが定められ、そのために具体的な取り組みとしてポスターの制作や廊下にセンターラインを引いて移動の際のマナーの向上を図りました。
この際、センターラインをどうするかという議論になり、色々な意見がで得た結果、アピール度の高い黄と黒の縞々テープ、撤去も簡単なビニールテープ、といった案が出ました。顧問のすることは必要なテープを購入するのみ。この際、最もコストと耐久性の面で良いものを考えるのは顧問の仕事になりますが、物させ用意してしまえば、後は生徒が協力して廊下にテープを貼り付け、作業が完了しました。
最初はこのテープがすぐに剥がされてしまうのではないかと生徒も私も全員が危惧していましたが、学級委員会の努力はポスターとセットで多くの生徒に伝わったのか、テープは貼られてから数ヶ月経ちましたが良い状態を維持しています。
生徒が考えたことを実践し、成果を出すためには、実践する際の知識と技能が不可欠です。もし、このセンターラインが手軽に手に入る可愛らしいマスキングテープであれば、視覚的なアピール面、耐久性の面で問題があるため成果には繋がらなかったかもしれません。実際にミーティングの中ではマスキングテープという言葉やペンキ、スプレーといった言葉が出ていました。
どんな素材でどんな色が良いかを考え、可能な限りの最適解を導き出す。これを導き出すためにインターネットで調べるというのも有効な手段だと思います。また、PBLはチームで行うことで更に効果が現れるものだと思います。協働的な学びという言葉をよく目にするようになりましたが、PBLが果たす役割は非常に大きく、これから注目されるべきことではないでしょうか。
そんなPBLの実践にもつながるのが生徒会活動でのICT活用であり、GIGAスクール構想を推進することの可能性でもあります。これからもICTを生徒会活動で活用してGIGAスクール構想を推進していきたいと思います。
最後まで読んでくださってありがとうございました。今回は生徒会活動でGIGAスクール構想を推進することの可能性〜PBLにつながるICT活用〜について説明させていただきました。今後も生徒会活動やPBLについてICT活用が役立つと分かったことは記事にしていく予定なので、その際はまた目を通していただけると嬉しいです。
それではまた!
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