余った絵具で遊ぶアクションペインティング

  先日、私の勤務する中学校で体育会が行われました。私の中学校では体育会に向けて、応援幕をクラスで作成します。応援幕の作成にはアクリル系の絵具を利用するのですが、私が担当するクラスの応援幕が完成した際に、たくさんの絵具が余ってしまいました。アクリル系の絵具なので、皿に出してしまった絵具は保存ができません。だからと言って全て捨てるのはもったいないということで、何か良い利用方法はないかと考え、アクションペインティングを活用した絵具遊びを生徒に体験してもらいました。


ダンボールを支持体に

 たくさんの絵具を使ってアクションペインティングをするには、それなりに大きな支持体を使った方が思い切った表現ができるということで、ダンボールを用意しました。このダンボールは生徒が授業資料を整理するクリアブックが入っていたもので、使い勝手が良いので棚としても活用しています。この段ボールにアクションペインティングで着彩すれば面白いものができるかもしれないと考え、支持体として用意しました。コストもかかりませんし、本来はゴミとして扱われるものなので、生徒も気楽に塗ることができます。

 とは言っても、刷毛を使って豪快に絵具を飛ばしたり(ドリッピング)、水で溶いた絵具を垂らしたり(ポーリング)することは生徒からすると珍しい体験です。授業でも少しはアクションペインティングについて取り組んだことはありますが、最初は恐る恐る手を動かしていました。しかし、絵具が見せる面白い反応から次第に表現が発展し、夢中で手を動かす姿が見られるようになりました




実は奥深いアクションペインティング

 アクションペインティングは単純な表現方法のように思えて、行為のバリュエーションと絵具の反応は無限なので、夢中になって取り組める側面があります。堅苦しいルールのないアクションペインティングは、「より遊ぶために遊ぶ」という、行為の中で自由に発展していく遊びと同様に、「より楽しく充実したペインティング」という自己目的的な行為の中で発展していきます。

 一見同じような行為をしているように見えても、同じ行為、同じ反応というのは原則ありえません。常に新しい反応が表現を通して得られます。自分の行為と絵具の反応、これらと対話的な関係を結び、少しずつアクションペインティングが多様な形で行われていく変化の様子を見ていると、表現は手を動かす中で自然と発展していくものであることを改めて考えることができました。





 絵具や刷毛、筆、絵具皿といった道具はアクションペインティングという遊びを支える遊び道具であり、支持体は遊び場になります。より充実した遊びにするためには道具や場の設定が大切になりますが、今回、たくさんの絵具が余ったことは遊び道具の観点から好条件だったと言えるでしょう。絵具は使ってこそ価値があるのは当然ですが、捨てる前に、「何か遊べないか」と考えたいものです。

 アクションペインティングでカラフルに彩られたダンボールの棚はこれから美術室で実際に活用していきます。これを見て他の生徒が「何だこれは!?」「面白い!」と思ってもらえると、絵具で遊ぶことの可能性をより多くの生徒に感じてもらえることにもなるのではないかと考えています。


美的な感動は至る所にある

 今回このようなアクションペインティングを行って、最後に道具を生徒と一緒に洗っていた時、刷毛についた絵具が流れて色が混ざり合い、マーブル模様になったり、オーロラのような幻想的な色が生まれ、私も含めその場にいた生徒は感動の声をあげていました。普段の授業でもパレットや筆を洗っていたら似たような現象が生まれますが、今回は刷毛ということで、流れる絵具の量も多かったことが関係して強烈な色の反応が生まれました。こういうことが起きるのは当然予想ができるのですが、実際に目にすると凄く面白いですし、感動します。

 美的な感動は日常の様々な場面に潜んでいるものなので、そういったものに反応できる感性を大切にしていけると、日常生活もより充実したものになるのではないかと思います。本来子どもたちはそういった感性を揺さぶられるような現象や遊びが好きですし、大人でもちょっとしたきっかけを掴めば童心に帰って感性豊かに色んなことを楽しむことができるようになるものです。

 身近な美に気がつける機会をコーディネートする。これも美術教師として大切な役割だと思います。今私が考えているのが、そういった身近な美を写真に収め、生徒に見てもらう機会を作ることです。プロジェクターなどでスライドショーにして流したり、写真を集めて掲示するなど、方法はたくさんあるので、これから色々と試してみようと思います。


 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回は余った絵具で遊ぶアクションペインティングについてお話しさせていただきました。共同制作などでたくさんの絵具が余った際には、アクションペインティングで遊ぶ良い機会になるので、絵具を捨てる前に何か使えないかと考え、絵具の有効活用ができると良いですね。ただ、この遊びをすると高確率で服を汚すので、汚れても良い格好でやることをお勧めします(苦笑)

 それではまた!

 

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