楽な勉強の先 〜手軽に学習できるツールを利用する〜

  今回は手軽に学習できるツールの可能性と、それによって今後実現していけそうな学習について私が考えていることを書きます。

 最近は勉強に使える便利なツールがアプリやインターネットにたくさんあります。本当に良い時代だと思います。私が中高生だった90年代後半から2000年代初頭はインターネットやデジタルが少しずつ普及していた時代でしたが、まだまだ黎明期で、勉強に使えるデジタルと言えば桃太郎電鉄と信長の野望ぐらいでした。TVゲームで知らず知らずのうちに日本について詳しくなる。当時は勉強している感覚は全くありませんでしたが、日本の地理や歴史についての学習意欲がこれらのゲームによってファシリテートされていたのは間違いないことでしょう。来る日も来る日も日本中を駆け巡り、歴史上の人物について思いを馳せる。そんな反復学習をしているうちに社会が大好きな子どもになっていました。不思議なもので、その後高校や大学で英語や美術を専門としますが、なんだかんだ社会に対する興味や知識が生かされ続けてきたようにも感じています。

 ゲームには「達成感」「真剣さ」「知識・技術の向上」「創意工夫」が求められます。そういうゲームの要素が勉強を構成していれば、きっと子どもたちにとって勉強することが大したストレスでもなくなり、勉強にはまり込むことも現実的なものとして考えられるようになるのではないかと思います。


手軽に始め、ゲーム感覚で

 昔は勉強をするために教科書やワーク、参考書、単語帳といったものをいちいち用意する必要がありましたが、今の時代はスタディサプリなど様々な学習ツールが手軽に使えます。スマホでもできるため、スマホを立ち上げアプリをクリック。学習デバイスに触れてからほんの2〜3秒で学習がスタートできます。この手軽さが非常に大事で、学習習慣を身につけるためにも効果的です。

 習慣づけには手軽さやスモールステップが必須なのですが、この逆に容量と難易度がガッツリのマッチョな参考書を購入して鼻息荒く勉強を始めるケースがあります。これは勉強が長続きしないどころか、いつまで経っても勉強がスタートしない最悪の状況になりかねません。私も昔色彩検定1級というテキストを購入しましたが、購入してから10年以上経過して、結局内容の2%ぐらいしか取り組めていません・・・。お金の無駄遣いでした(泣)こういうガッツリ教材は購入することで満足してしまう傾向があり、それはただ大きな目標を掲げるだけで満足して実行に移さない失敗パターンと似ています。本当に必要なものだけを買うようにしたいものです・・・。

 手軽に始められるだけでは学習習慣は定着しにくく、やはり達成感や面白さといったドーパミンが分泌される構造、要はゲームの構造が必要になります。そのような点で、スタディサプリなどの学習ツールは理想的で、講義動画だけでなく、確認問題(ドリル)に取り組むことができ、一問一答形式で瞬時に解説のフィードバックが得られ、反復学習による定着を容易にしています。しかも達成度がパーセンテージで出たり、完了した問題に王冠マークがつくなど、随所にドーパミンが放出されて、ある意味中毒になるようなシステムが使われています。


 私は今でも英語の勉強を継続していて、英単語の勉強にWeblioというブラウザでも使えるアプリを使っていますが、これも非常に便利。難易度を設定して単語テストができ、単語を無料会員でも200単語までストックでき、それをフラッシュカードで反復学習することもできます。当然英単語の力がみるみる向上してスコアが上がり、ドーパミン分泌。「また勉強したい」となります。




知識の定着は多くの人にとって容易になる その先は・・・

 私自身、昨年美術のテストをGoogleフォームで作り、そのテスト対策問題もGoogleフォームで作成して生徒がQRコードで簡単に取り組めるようにしたところ、全体の4割程度が90点以上、15%が満点という結果になりました。手軽に学習に取り組めて、確実に知識が定着して達成感が得られる状態が当たり前になると、知識の定着度を問う定期テストの意味がほとんどなくなると言えます。

 これまで高点数が取れなかった生徒からすると、容易に高得点が取れるようになるだけでも、きっと勉強に対するネガティブマインドは軽減されることでしょうが、大切なのは知識がしっかり頭に入った状態で行われるアクティブラーニングだと考えています。ここが人生を丸ごとゲームや遊びにできるかどうかの分岐点にさえなると私は考えています。

 これまでは知識を身につけるためにアクティブラーニングが授業で導入されるケースが目立ちましたが、そのような授業では知識がある生徒は人に教えるという部分で自分と相手の対話的関係による気づきがあり、ぎりぎりアクティブラーニングになりますが、知識がない生徒からすると、ひたすら呪文を唱えられているような状態でノンアクティブな学習時間になります。知識はアクティブラーニングを成立させるための言語としての役割を果たします。そういった意味で、ようやく本当の意味でアクティブラーニングが実現する時代になってきたのではないでしょうか。そして、教師はアクティブラーニングを授業の中で適切にコーディネートし、その学び合いの中で生まれたものを見取り、取り上げつつ学習者をファシリテートしていく。そういう役割が求められるようになっていくことと思います。


 最後まで読んで下さってありがとうございました。今回は楽な勉強を実現する学習ツールのもつ可能性と、知識の定着が容易になった先の学習のあり方について私の考えを書かせていただきました。何か参考になるものがあれば嬉しいです。

 これからも美術やICT教育だけでなく、教育に関する問題を広く扱っていきたいと思います。このブログではどの内容も自分自身が経験したり実践したりしたものであり、専門である美術教育以外のことについて扱うことも多いので、学術的でハイレベルなものではないものがほとんどですが、少しでも読まれた方にとって役に立つ内容にしたいと考えていまので、どうぞこれからもよろしくお願いします。

 それではまた!

 

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