講習会でも生かせるジャムボードの利用 〜スマートフォンさえあればどこでも協働学習〜

  今回は学校外での講習会をアクティブな思考活動の場にする工夫について紹介します。近頃はGIGAスクール構想の推進によってジャムボードを活用して意見交流したり、協働的に思考を深める活動をしたりする機会が増え、学校外の人とオンラインで交流する際にもジャムボードを活用して意見交流することが可能になりました。ジャムボードを使うことで思考活動がこれまで以上にアクティブなものになるという実感を多くの人がしているのではないでしょうか。

 研修によってはただ知識を受け取るだけの場合もありますが、最近は参加型の研修も多く、付箋などを使って意見交流のワークショップが行われることもよくあります。そんな意見交流型の研修においてジャムボードが使えると、これまで物理的に制限が多かったアナログでのワークショップの問題も解決します。

 今回の内容は、たとえPCがなくてもスマートフォンさえあればジャムボードで活発な意見交流を可能にする方法について紹介します。もし自分が研修会や講習会の発表者になって、Google Workspaceで繋がっていない外部の人とジャムボードを利用して意見交流したいときには有効な方法です。


研修や講習で是非使いたいジャムボード QRコードの活用

 Googleのツールであれば基本的にどれも共通して言えることですが、ジャムボードは「共有」の設定で「リンクを知っている全員」が「編集者」になっていれば、誰でもファイルのアドレスにアクセスして編集することが可能になります。これを生かすことで、ジャムボードにアクセスした全員によるアクティブな意見のやり取り、思考活動、協働学習につながります。極端な話になりますが、ジャムボードに参加している人の中に優れた意見の持ち主や、意見の引き出し手がいれば、授業者や講師がまともに話ができなくても、自然と活発な議論に発展する可能性さえあると言えます。

 講習会や研修会でしばしば見られるもったいない状況があります。それは、話を聞いている側にとって意見を出したくても時間が足りない、話を共有できる相手も限られる、そんな状況です。これではせっかくの学習機会が生かされず、良いアイディアを持っている人も生かされにくくなります。講習会や研修会では参加する人が「今日は良いきっかけを掴むことができた!」という充実感を持てるようにすることが当然ながら大切です。

 ジャムボードには、そんな状況を打破する可能性があります。ただ、校内や自治体内での共有はGoogle Workspaceで簡単にできるので、内部での研修会などで役立ちますが、これが外部の人に向けた講習会などになると、事前のジャムボードの共有が難しくなります。そもそも講習会の会場にPCを持参する人は限られますし、Wi-Fiの環境面でも厳しい場所が多いです。




 そこで活躍するのがスマートフォンです。レジュメにジャムボードに飛べるQRコードを付けておけば、スマートフォンで読み取ってジャムボードを利用することができます。講習会の際には「共有」の設定を「リンクを知っている全員」を「編集者」にしておけば、スマートフォンを利用している参加者なら誰でもジャムボードで意見交流をすることが可能になります。

 ジャムボードのQRコードの作成はとても簡単で、ジャムボードを開いた状態にしておいて、アドレスのところにある共有マークをクリックすればQRコードが出てくるので、これをダウンロードしても良いですが、スクリーンショットしてすぐにドキュメントやワードの文書に貼付してしまうのが簡単で早いためお勧めです。




 最近は文書の作成もGoogleドキュメントを使うことが多くなりました。やはりこれもリンクを活用した共有が便利で、他の人と共有する際に役立つだけでなく、Googleドライブやドキュメントが使える端末ならいつでも、どこからでもアクセスできるので、レイアウトや文字の形にこだわりがないのであれば、Microsoft Wordではなくドキュメントを使うようにしています。

 ちなみに、少人数のミーティングであればドキュメントを共有して共同編集するのも有効です。私が担当する学級委員会では昨年からドキュメントを活用してミーティングを行い、共同作業で内容を入力したり、リンクを活用してGoogle図形描画やスプレッドシートを活用した作業にアクセスできる文書を作成しています。できることの幅はジャムボードよりもドキュメントやスライドといった他のGoogleのツールの方が多いため、仕事で何かを作成するときにはジャムボードを使うことはあまりありません。ただ、人数が多い状態で共同編集すると、各々の操作で複雑な動きとなり、完全にカオス状態と化すので、講習会などであればジャムボードが使いやすいと言えます。授業も同様で、意見を単純に集めたりKJ法などで考えをまとめたりするブレーンストーミングの方法を使う場合にはジャムボードが非常に強力です。


付箋は色分けをすることで意見がわかりやすくなる



 ジャムボードはデフォルトの付箋であれば黄色ですが、意見の種類によって付箋を分けることで、講習の中で活発な意見交流をすることも可能になります。この付箋の利用方法は授業でも大切な視点になるのではないでしょうか。

 発表者が質問事項を確認しながら話を進めることができると、これもアクティブな講習につながります。質問に関する付箋の色が違えば、発表者がそれに気が付きやすくなりますし、発表者以外の人がフォローの意見を出しやすくなります。

 無闇に付箋の色を変えてカラフルな状態にしてしまうと混乱しますが、付箋の役割を決めておくことで、より深い学びにもつながると考えられるため、この点においてもジャムボードを使う前に考えておきたいところです。


スマホでも簡単に使えるようにするためにはアプリがお勧め

 スマートフォンで使えると言っても、ブラウザ版のものをスマートフォンで使おうとすると、かなり使いにくいのも事実。ブラウザ版でスクリーンを横向きにしたら不具合が出て表示されなくなる傾向があります。スマートフォンで使う場合はアプリ版をインストールしておく方が圧倒的に使いやすいです。スマホとPCの差はまだまだ大きい…


 アプリ版であれば、横向きの大きなスクリーンで見やすく、アプリならではの機能(手書き補正)も使えるなど、使い心地もとても良くなります。無料でダウンロードできるので、ジャムボードユーザーであれば是非スマートフォンにインストールすることをお勧めします。


メモの取り方が変わる

 ジャムボードが使えると意見がたくさん集まります。従来であれば出た意見をレジュメなどに必死にメモすることもあったでしょうが、メモに時間がかかって自分が考える時間や話を聞く時間が犠牲になるのでは本末転倒です。情報の蓄積という意味でのメモはジャムボードに任せて、自分の手で書くメモは自分自身の思考活動を活性化するために行うというのも一つの方法だと私は考えています。

 メモ書きによるイメージの広がりはデジタルがこれだけ普及した時代でも有効であると感じています。私自身、記事を書く際にはコピー用紙の裏紙やiPadにインストールしているGoodNotesを活用してメモ書きをした上で文章を書くようにしています。図や色、字の大きさを自由にアレンジしてメモすると思考をイメージ化することができるため、その後に文章がスムーズに書けるようになると感じています。

 研修会や講習会でメモする内容は、今後の自分自身の活動につなげていくべきことがほとんどだと思います。であるとすれば、これからの自分のビジョンが描けるようなメモを書いて、具体的な行動のイメージを膨らますことができるというのが理想的と言えます。

 今回は授業に関する内容ではありませんが、メモに関して言うと、授業ノートの取り方も同じなのではないかと考えています。教科書に載っている内容が板書されたものをノートに改めてメモするという作業を私自身小学校の頃から高校を卒業するまで行ってきましたが、常に「これ何か意味あるん?」と思っていました。当時はみんなやっているということで、自分も同じようにやっていましたが、このような教科書を写す作業は印刷技術がまともに普及していなかった時代には有効だっただけで、単純に知識を吸収するためだけなら今の時代は様々な学習に役立つツールが開発されています。そしてノートを取らずにアウトプット中心の学習で力が伸びるということも明らかになっています。それでもメモ書きはイメージを広げてくれるということでメモやノート術に関する本が人気を得ていますが、これらはいずれもアウトプットを重要視したものになっています。

 学びの場において、メモには依然として重要な役割があると言えます。ただ、メモの取り方については学びが最大化される方法を考える必要がありますし、ジャムボードとレジュメの関係の面で発表者はその点を意識したものを用意することが重要になります。発表の前にはある程度ジャムボードとレジュメから展開を予想してメモによるアウトプットがしやすいレジュメになっているかを検討が必要と言えます。


 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回はジャムボードを組織外の人も利用できるようにして、研修会や講習会での学びをアクティブにする方法について紹介しました。スマートフォンさえあればどこでも協働学習が可能になりますし、これはオンラインの場合にも勿論強力なツールとして活用できるものなので、受講者がただ聞くだけの状態にならないよう、主催者や発表者は思考ツールとしてジャムボードが利用できる環境設定をしておきたいところです。

 夏休みももうすぐ折り返しの時期。夏休みにやりたいことはまだまだたくさんあるので、自由研究を楽しもうと思います。それにしても、真夏の部活動は…修行でしかありませんが、今年は朝夕の比較的涼しい時間を活用して活動しているので、例年に比べるとマシです。美術室にも晴れてエアコンが設置されるので、2学期の開始が憂鬱ではありません(笑)

 環境面で色々と恵まれている時代だと思う今日この頃です。

 次回はブログを始めて2周年ということで、2年間の振り返りについて徒然なるままに書こうと思います。

 それではまた!


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