Google Classroomでルーブリックを活用した振り返りをするメリット 〜観点別の評価基準を生徒と共有〜


  今回はルーブリックを活用した振り返りをするメリットについて考えたことを紹介します。ルーブリックとは学習目標の達成度を判断するためのツールで、達成度を段階的に文章説明したものになります。このルーブリックはGoogle Classroomを使うことで簡単に活用できるようになります。私はこれまでルーブリック的なものは振り返りシートで活用していましたが、Google Classroomを利用して作成するルーブリックを活用する方が生徒と教師の両方にとってて良い効果が期待できるということで、2学期の美術の授業で利用できるように準備を進めています。まだルーブリックをGoogle Classroomで活用されていないという方や、指導と評価の一体化を実現するために何をしたら良いか分からないという方には、美術のルーブリックと振り返りシートを使って説明しますが、共通する部分もあると思うので、通して頂けたら嬉しいです。


ルーブリックを使おうと考えたきっかけ

 まずルーブリックを私が使おうと考えたきっかけについて簡単にお話しします。生徒が学習活動に取り組んでいるときに重要なのが、生徒が学習目標と自分の達成度を把握しながら、学習の質を上げていける環境を用意することです。そのために振り返り活動が近年注目を集めているわけですが、何の手立てもなしに学習目標と達成度を意識して振り返りができる生徒はほぼいません。ほとんどの場合は授業の感想になってしまい、自身の学習目標と達成度を照らし合わせてPDCAサイクルを回せるような生徒は少数派です。これでは振り返りの効果も薄く、なんとか改善させたいと考えたのがルーブリックを活用した振り返りを導入するきっかけとなりました。


振り返りのフィードバックにルーブリックを活用

 生徒の振り返りを教師が評価でフィードバックし、それを参考にして活動のレベルを上げていけるようにすることは教師の重要な役割です。一言に「評価」と言ってしまうと誤解を招きそうですが、学習者が活動のレベルを上げていくためには、達成度を表す評価によるフィードバックが重要な意味を持ちます。ゲームも点数やタイムなどでフィードバックがあるように、これによって数多の人が時間を忘れるぐらいにはまり込みます。私もかつてはグランツーリスモやマリオカートのタイムアタックなどでひたすら自分との戦いに明け暮れていました。そして自分の操作をリプレイやゴースト(レコードの走行を映し出したもの)と照らし合わせて、改善に改善を積み重ねていました。到達度の評価と振り返りは学習を動機付け、PDCAを強力に回す可能性があると実感しています。

 これまでもGoogleスライドを活用した振り返りシートでコメントを返すなど、PDCAを促進できるように取り組んできたつもりでした。しかし、これまでの振り返りシートは「上手くいったこと・課題・発見できた大事なこと・質問など」について入力する形をとっていたため、これでは「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的な学習態度」との関連性が生まれにくく、ただの感想文になってしまっている生徒も多くいました。観点別に関する自己評価はABCでできるようにしていましたが、何ができて、何が課題であるかを考えることに振り返りの価値はあるので、一番大切な部分をABCで何となく入力させるというのは改善するべき部分でした。そして一番の問題点は、生徒に評価をフィードバックするためには、「〜の部分は素材の特性を〜できていて非常に良いアイディアだと思います」といった感じに、一人ひとりコメントを入力するしかなかったので、オーバーワークに繋がってしまうということです。これは持続可能な方法ではありません。



 そこで、教師にとって持続性のある方法で、生徒にとっても有益なものにするために、振り返りシートの構造自体を観点別評価に関連する内容にして、生徒が学習活動を振り返りやすい状態にしました。そして、ルーブリックを活用して生徒の振り返りと教師が見取った学習の状況を総合的に判断した評価をフィードバックできるようにしました。ルーブリックにはレベル(ABCなど)や点数を評価としてつけることができます。一般的に、普通に学習内容を理解して取り組めていたらBで、知識や技術、アイディアの質と量で優れているものはAになるので、最初はBやCが多い状態でも、次第にCからB、BからAにレベルアップしていくというのが目指すところです。



 

 これまでは学習の評価に関しては過程の段階では生徒は把握できず、全てが終わってから通知表で評価を知るというのが一般的でした。しかし、通知表では評定を気にするばかりで、観点別評価になっていも、その評価をフィードバックとして受け止め、それ以降に生かすという状況にはなかなかなり得ませんでした。しかし、ルーブリックを活用すると、生徒は過程の段階で評価を知ることができるので、学習活動のフィードバックとして生かすことができます。これによってPDCAサイクルを回して学習活動を発展させることにつなげられると考えています。


生徒が安心感を持って学習活動に取り組める
 生徒からすると、振り返りと取り組んだ内容に対して教師から見取りのサインとしてルーブリックによる達成状況でフィードバックをもらえるのは、取り組みに対する安心感を得ることにつながると考えています。挑戦的なことに取り組んでも、授業の中では十分な完成度に到達しないことも多々あります。そういう活動を生徒は振り返りで記録しますが、それに対して教師が「OK」のハンコや丸をつけて返却するだけでは、果たして自分のやっていることが教師に肯定的に受け止められているのかどうか分かりません。私は評価を気にして学習するのは好ましいこととは考えていませんが、チャレンジした時や、自分でも変化を感じてきた時にルーブリックによって教師からのフィードバックをもらえるようにするのは意味のあることだと思います。ルーブリックによる評価に加え、コメントでより具体的なフィードバックを送ることも可能であることを考えると、振り返りに対するフィードバックの質を上げていくことが、主体的な学習をメインにしたこれからの学校教育において大切なことであると私は考えています。
 ルーブリックで達成度を評価していれば、たとえ生徒が9割完成させていた段階から挑戦して大失敗したとしても、過程自体を評価しているので、評価が下がることは基本的にないことになります。試合であれば大失敗で勝ち負けがついてしまいますが、教育はそういうものではなく、「できるようになった部分」を評価することが重要です。失敗しても評価が下がらないというのが分かれば、生徒は安心してやりたいことに挑戦できるようになります。そのような面でもルーブリックは大切な役割を果たすものであると期待しています。

Google Classroomの「授業」からルーブリックを設定

 基本的なルーブリックの設定方法としてはGoogle Classroomからクラスを開き、「授業」の課題を設定したり、編集したりする際に右下に「ルーブリック」があるので、そこからルーブリックを作成したり、再利用したり、スプレッドシートからインポートすることができます。



 「ルーブリックを作成」を選択すると、評価基準の名前(知識・技能、思考・判断・表現(発想・構想、鑑賞)、主体的な学習態度(態表、態鑑))やレベル(A・B・Cなど)、説明(到達度に合わせたコメントなど)を入力することができます。またレベルに合わせたポイントの設定も可能です。




ルーブリックはスプレッドシートへのエクスポートも可能

 ルーブリックは保存した後は編集や削除、スプレッドシートへのエクスポートが可能です。エクスポートしたものはドライブに保存されます。他のクラスで同じルーブリックを使いたいという場合にはドライブに保存したスプレッドシートをインポートできるので、1クラス作成すれば、他は一瞬で設定をすることができます。


 評価基準や学習目標といったものは、基本形があるのが一般的だと思います。その評価基準をベースにしてレベル別の説明を一度作成することができれば、後はそれに則った形で他の単元にもある程度活用することができるので、それほど大変な作業にはなりません。


ルーブリックの活用で指導と評価の一体化

 ルーブリックを活用することで、指導と評価の一体化が生徒にも分かる形で行えるようになると考えています。これまでは机間巡視をしながら取り組みの状況を教務必携(俗に言う閻魔帳)にメモしていましたが、個人情報が詰まった教務必携を生徒には絶対に見せられません。なので、取り組みの状況に課題がある生徒に可能な限りアプローチを試みて到達度を上げるという方法を取るようにしていました。また、振り返りシートにコメントを入れるということもしてきました。これらのことはかなりの負担で、授業が大変忙しくなるため、できることが限られてしまいます。これは教師にとって持続可能性な方法とは言えませんし、生徒にとっても自分の到達度が分かりにくく、挑戦したことが教師に認められているのかどうかもわかりません。

 しかし、ルーブリックを振り返りシートに設定することで、教師は指導しながら暫定的な評価を入力することができます。生徒はその評価と自分自身の振り返りを照らし合わせ、学習活動を発展させるためにどうしていくべきかを考え自分自身の活動目標にすることもできます。

 指導する際に注意したいのが、これはあくまで指導と評価の一体化によって、生徒の学習活動が教師に認められていることを実感し、安心して取り組めるようにするためのツールであるということです。「Aを取るため」の外発的なモチベーションで取り組んでしまうと、最低限の努力で済ませようとしたり短絡的な行動をしてしまうのが人間です。そうではなくて、良い活動、夢中で取り組める状態を続けていれば自然と評価が付くものであり、たとえ挑戦して失敗したとしても、それが教師にしっかり認められているということをルーブリックの活用で生徒に実感してもらえるに指導に取り入れることが大事です。理想は、学習したことを生かして遊ぶように楽しみながら挑戦的に取り組んでいるうちに評価が上がってさらに冒険し、結果的にA+に到達したという状態が望ましいと考えています。


 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回はGoogle Classroomでルーブリックを活用した振り返りをするメリットについて考えを説明させていただきました。本来であれば実際に授業で取り入れて、ある程度資料となるものが出来てからこのような記事は書くべきなのかもしれませんが、ルーブリックの活用にはかなりポジティブな面があることが予想でき、2学期の授業に少しでも取り入れる人が増えたらという思いから、夏休みの間に書かせていたただきました。今回の内容が何か参考になるものであれば嬉しいです。2学期の最後にはルーブリックを活用して見えてきたことについてまとめようと思います。

 それではまた!

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