鹿児島の修学旅行に行って印象に残った5つ
修学旅行の引率ではありますが、人生で初めて鹿児島に行ってきました。今回は鹿児島に行って印象的だった5つをまとめてみました。初めて行った地なのでどれも刺激的で5つに絞るのはとても難しかしかったですが、地域の魅力について考える良いきっかけになったと思います。
雄大な桜島
超普通ですが、桜島抜きには語れないのが鹿児島であると感じました。鹿児島のシンボル桜島。鹿児島市からはもちろんですが、途中滞在した垂水市からも桜島の堂々とした姿を見ることができ、ついつい桜島に目をやってしまいます。仙厳園にも行きましたが、庭の作りは桜島とセットで考えられていますし、ホテルやいおワールドでもやはり桜島を見るための良い場所が作られていました。
桜島が魅力的であることは以前から知識としては当然のように知っているつもりでしたが、実際に見るのは格別です。朝起きた時にみる桜島、フェリーから見る桜島、仙厳園から見る桜島、麓の有村溶岩展望所から見る桜島、どれを取っても魅力的でした。
桜島はどんなものと組み合わせても映えます。これは規模の大きい自然がつくり出したからこそ。人工の建物にも魅力的なものはたくさんありますが、やはり富士山や桜島のような単独で大きく構えている山のパワーには敵わないと感じさせられました。
自然は芸術の根本を成すものと一般的に考えられますが、桜島の姿はその良い例だと思いました。気持ちが優れないときに桜島を見ると、自分の悩みがいかにちっぽけなものであるか感じさせてくれます。日本を変える大きな動きが薩摩から生まれたのと、桜島の存在は無関係ではないと思わされました。
民泊
今回、私たちの学校は垂水市を中心とした民泊を利用して体験学習をしました。50ぐらいの民泊にお世話になったので、教師は民泊での活動の様子をほとんど見ずに1日目の夜から2日目の昼までは完全に民泊の方にお任せ状態でした。ほとんど生徒の活動の様子が分からなかったわけですが、生徒に聞くと大変充実した半日になったようです。話を聞けば聞くほど率直に羨ましくなりました。
離村式で民泊の代表の方が、「ディズニーやUSJでは絶対にできない体験」という言葉を言われていたのが印象的でした。用意されたアトラクションを消費するテーマパークでは体験できない、自分たちで主体的に作り上げていく体験は印象的な思い出になると思います。離村式で別れを惜しみ、涙を流す生徒の姿もたくさん見られました。ディズニーやUSJを去るときに涙を流している人っているでしょうか。テーマパークは楽しいですが、民泊には楽しさを超えた「人の温もり」が強烈に含まれており、このような素敵な出会いと別れを短い時間で経験できる民泊は本当に魅力的だと実感しました。
地域の良さを生かした民泊というシステム。こういうものが広がって多くの人が心温まる時間を送れるようになってほしいと思いました。
知覧特攻平和会館
今回の修学旅行の1日目は知覧での平和学習がメインでした。知覧特攻平和会館には隼や零戦といった太平洋戦争で使われた戦闘機の展示や、若くして特攻で亡くなった方の資料をたくさん見学することができました。
滞在時間があまり長くなかったので、資料の一部しか見ることができませんでしたが、当時の困難な状況が鮮明に思い浮かべるには十分でした。
少年特攻隊という10代の特攻隊員が知覧から大勢出撃したという悲しい歴史は、「命の使い方」について色々と考えさせられました。出撃の1時間前から直前までの少年特攻隊の写真を見ましたが、みんな満面の笑顔でした。数時間後にはこの世にはいないことがほぼ確定している中での笑顔。そんなことを普段考える機会は絶対にありません。
隊員たちが出撃の前に書いた親への手紙。どれも達筆すぎて元のものは読むのが困難でしたが、ワープロ文字も付け添えてあったので内容は把握することができました。彼らの手紙を読んでいると、何気ない日常、四季の変化、周りの人々がいかに大切なものであるかを考えさせられます。手紙の最後は「お母さん」に関するものが多く、生命の根本について考えさせられました。この世界に生まれてこられたこと自体に感謝。
手紙の文字は現代の私たちにとって読みやすいものではありませんが、感謝の気持ちが筆に乗り移っていることは明らかでした。ここぞというときはやはり手書きに尽きます。ブログを手書きで書くことは至難の業ですが、気持ちを伝える大一番には手書きの一択であり、気合を入れて手書きする機会は定期的に必要だと思いました。最近手書きをする機会がますます減って、タイピングが圧倒的に多くなっているので、書くべき時は魂を込めて字を書きたいと思います。ちなみに、以前通知表で周りの先生がワープロ入力しているなか、私だけ手書きだったことがありますが、ある生徒から「キモ(苦笑)」と言われたことがあります。その生徒とは決して関係が悪かったわけではないので、それほど気にはしませんでしたが、どうも現代では手書きはやり過ぎ感さえ漂うようなので、上手にやっていきたいところです。
生態系
今回いおワールドかごしま水族館に行きました。この水族館は規模自体は非常に大きいわけではありませんが、ジンベエザメやサツマハオリムシなど南国鹿児島ならではの生き物約500種類(バスガイドさんの話によると鹿児島周辺には約1000種類の生き物がいるとのこと)が集まっていいます。
今回印象的だったのが、サンゴとサツマハオリムシ。サンゴは植物のようで実はクラゲやイソギンチャクと同じ動物に類するものであり、生まれてからしばらくしてサンゴ礁に骨格が合体するというのを今更ながら知りました。
一番面白いと思ったのが、サンゴ自体は光合成をしないが、体内に含む藻類の働きによって光合成するということです。植物と動物の融合体ともいえるサンゴ。サンゴ礁は多様な生物が共生する場として重要な役割を果たし、見事に生態系として調和していることを確認することができました。
家に帰ってから深掘りして調べたのですが、なんと、サンゴの二酸化炭素吸収率は陸上の植物よりも多くの働きをしているとのこと。自らが頑張るのではなく、他者と共生しながらwin-winの関係を築く。自然は非常に合理的にできているものですね。
もう一つ印象的だったのがサツマハオリムシ。これは初めて見た生物でした。この生物、なんと餌を必要としない生物で、体内に硫黄酸化細菌が共生していて、硫黄化水素の化学エネルギーを利用して生育するという、エコライフのプロです。
これまた共生という言葉が出てきましたが、共生というのは自然界繁栄の法則なのではないかと思います。最近は多様性(ダイバーシティ)という言葉やSDGsといった言葉がよく聞かれるようになりましたが、戦争の歴史から多様性を認めてお互いを生かし合う共生の時代になってきています。人類もようやく自然界の法則に当てはまるステージに足を踏み入れてきたのだと考えさせられました。いおワールド、ただのイルカやジンベエザメを見る場所と勘違いしていました。侮れません。
薩摩切子
美術の教師でありながら薩摩切子の存在を現地に行くまで知りませんでした。お恥ずかしいことですが、私は美術教育に関しては研究をひたすらしていますが、工芸の一般教養があまりに不足しています。しかし、その分優れたものと出会ったときには少年のような純真な心で作品を味わえると開き直っています(苦笑)
薩摩切子を見て真っ先に頭に浮かんだのが、江戸切子ですが、どうも薩摩切子の方が先に発展を遂げていたようです。その要因となったのが、かの有名な薩摩藩主島津斉彬が海外との交易を視野に産業を発展させたとのことです。薩摩切子は西南戦争前後に工場が破壊されて生産不能となり、職人が江戸に渡って江戸切子の発展に貢献したそうで、この点からも薩摩切子が当時から優れたものであったことがうかがえます。
以前に新婚旅行でプラハに行ったときにボヘミアングラスを見ましたが、薩摩切子に使われている色被せの技術は絶妙なグラデーションを生んでいて、複雑な模様を作り出し、幻想的な雰囲気をまとっていました。今回の修学旅行では購入しなかったので写真を用意できていませんが、薩摩切子を見たことがない方は是非実際に見てほしいと思います。
薩摩切子を発展させた島津斉彬は藩政改革をして明治維新のきっかけをつくった人物として有名ですが、薩摩切子という価値のつく芸術品を交易に生かし、財政を豊かなものにしたというのは注目すべき部分であると思います。芸術品につく付加価値を生かしたビジネス。これは現代でも無視できるものではありません。京都市や倉敷市など歴史的に価値のある街は、街そのものを芸術品としてブランドにしています。
芸術をビジネスの視点で考えるのは芸術の本来の姿ではありませんが、価値あるものを創り出すという視点は大切ですし、薩摩切子が世界に誇るレベルを目指して生産されたからこそ、優れたものになり、明治期に一旦は断絶したものの、近年になって復元されるに至ったのだと思います。価値あるものは他の物に波及したり、伝統として生き続けますね。
最後まで読んで下さってありがとうございました。今回コロナ禍で第7波が襲っている最中でしたが、なんとか修学旅行に行くことができて本当に良かったです。教師にとっても修学旅行はとても貴重な時間を送ることができる大切なイベントであり、勉強の場になることを改めて実感しました。いつかまた鹿児島に行きたいと思います。よく「修学旅行で学んだことを生かして」なんて言葉を聞きますが、それが「集団行動や平和の大切さ」だけだとあまりに浅いと思ってしまいます。集団行動や平和といったものが、生態系や地域のシンボル、資料の奥から見えてくるものとリンクした時に本当の深い学びがあると思います。今回修学旅行に関する内容をまとめたのは、今回私自身が深めた内容を生かして生徒と話をするためでもあるので、これからも修学旅行の学習は続くと思って生徒と関わったり授業で生かしていきたいと思います。
それではまた!
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