遊びで作ったものを自由に置ける環境

  最近、私の美術室に少しずつ変化が生じています。これまでは私が教室内にたくさんの作品を展示したり、制作で参考になるような掲示物を展示するなど、教師側が美術室に変更を加えていくという状態でした。私自身、教室環境の改善にはかなりのこだわりがあると自負していますが、教師がコントロールして環境を改善するというのは言ってしまえば普通のことです。しかし、最近は状況が違います。生徒が遊びで作ったものを「勝手に」設置するようになってきました。まだ教室に大規模な見かけ上の変化が起きているわけではありませんが、状況としては面白いものになりつつあるように感じています。


教室での活動は遊び

 普段から学習や制作は遊びのように取り組むことが大切であることを生徒には伝えていますが、そうは言っても授業で制作したものは成績に反映されるわけなので、完全に遊びと同化させるのは生徒からすると状況からいって難しいと考えられます。

 しかし、「課題」と言える制作以外のもの、例えば制作のウォーミングアップとして取り組んだものや、課題の制作が終了して残り僅かな時間で制作したものは、作品の完成度を気にせず純粋な遊びとして取り組むことができる傾向が顕著に見られます。そして、そういう時に見られる作品のユニークさや挑戦的な表現は造形教育の目指すべきものとして重要な要素であると考えています。


遊びで作った立体作品が増殖

 粘土を使った授業をしていると、使わなくなった粘土やゴミとして残った粘土が沢山出ます。これらをそのまま捨てるのは勿体無いということで、私は粘土を再利用して遊びで作品を作ります。最近はこういった作品を教室の空きスペースに設置するようにしています。遊びで作った作品が生徒の目に触れる場所にあることで、造形表現が気楽にできるようにする「仕掛け」です。



 2学期になり、樹脂粘土を使った制作が始まり、造形遊びを通して樹脂粘土の特性を学ぶ授業を行いました。造形遊びではありますが、一応作品はできるので、この作品を持って帰るか本番の制作で活用するかは自由としています。この度、そんな遊びで作ったものがテレビ台のスペースに提供されました。扱いが気楽な作品ゆえに生徒もそのようなことができたのだと思いますが、そのスペースに「作品を設置しても良い」と認識してもらえたことが大きな一歩であると私は考えています。

 授業で作成した樹脂粘土の作品に加え、気がつくとたこ焼きも仲間に加わっていました。このたこ焼き実はティッシュペーパーでできていて、触るまで私は樹脂粘土だと思い込んでいたので大変驚かされました。いつの間にこんなものが作られたのか分かりませんが、生徒が主体的に制作した結果生まれたものであることは間違いありません。作品がこれから増殖して、色々な工夫がこのスペースで見られるようになると面白いことになりそうです。


遊びで作った作品でも良い刺激になる

 ティッシュペーパーで作られたたこ焼きの立体作品を見た際の私の反応と同様に生徒の反応も良く、そのようなサプライズがこのスペースから沢山生まれることになれば、生徒の学習活動にも良い影響が期待できます。

 冷静に考えてみると、日常生活の中にサプライズを提供してくれるような造形作品はそんなに沢山あるわけではありません。だからこそ、美術の授業で創造力を解放して、視覚的に新鮮な体験をすることが大切であると言えます。雑貨屋さんに立ち入った時に感じるワクワク感は、見ているだけで楽しくなれる体験価値があるからこそ。以前に「花空間ivory」という植物と雑貨に溢れたカフェに行ったことがありますが、このような場所は幸福な時間を提供してくれます。お店の方には申し訳ないですが、品物を買わずにコーヒーとケーキだけで長時間ゆっくりさせてもらいました。


 美術室が雑貨屋さんのようなワクワクする空間になるよう、生徒の力を借りながら発展させていきたいと思います。そうなっていくと、もしかしたら雑貨屋さん以上に生徒にとってワクワクする場所になるかもしれません。なぜなら、その空間を作っているのは他ならぬ生徒自身の働きかけであるためです。教師によってでなく、自分達で作っていく美術室。PBL(問題解決型学習)やCBL(チャレンジ・ベースの学習)が行われる場所として、そういう状況は重要です。実現に向けて、さらに気楽に作品を作ることができるような仕掛け、作業スペースとしての充実を図っていきたいと思います。


 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回は遊びで作ったものを自由に置ける環境ということで、最近少しずつ美術室で見られるようになった変化を紹介させていただきました。美術室での体験価値は雑貨屋さんやテーマパークのような「体験させてもらう」受動的なものではなく、「体験をつくり出す」能動的で主体的なものだと思います。少しずつですが、生徒が美術室に遊び感覚で作品を提供して環境をより良いものに発展させていけるように、彼らの活動をサポートしていきたいと思います。

 それではまた!


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