Googleスライドを活用した冬休みの課題 〜スクラップブッキングの素材集め〜

  今回は私が今年の冬休みに実践したGoogleスライドを活用した冬休みの課題(3年美術科)について紹介します。生徒の提出課題そのものを表示することはできませんが、取り組みの例と、提出された課題の内容を基にお話しさせていただきます。

 中学校3年生は2学期末から3学期にかけて卒業制作としてスクラップブッキングに取り組みます。普通のスクラップブッキングはデコレーションの施されたアルバムのようなものですが、私は作品に自由度を出したいということで、B4木製パネルを活用して、中学生としての3年間をテーマにスクラップブッキングを制作するか、写真を使いたくないという生徒もいるのでボックスアートを制作する授業をしています。

 この制作には中学生としての思い出が詰まったものや、パネルを装飾する素材が必要になります。つまり、各自が家庭で用意するものが鍵で、冬休み期間中に3学期の制作の準備をしておくことで、制作も充実したものになる可能性が上がります

 今回紹介する実践は、冬休みの課題として、素材や制作のアイディアを集め、それをGoogleスライドにまとめて提出するというものです。ちなみに、まだ私の勤務校は冬休み中で、1月10日から3学期がスタートします。それにも関わらず、生徒の課題が提出されているのはGoogle Classroomを活用して、Googleスライドで課題配信しているからこそです。課題は完了したらすぐに提出することができ、早い生徒は2学期の終業式の日の午後に早速提出しているぐらいでした。

 今回の内容を通して、ICTを活用した課題のメリットと効果、さらには良いアイディアと出会う上で大切にしたいことについて何か参考になるものをお届けできたらと思います。

 ちなみに私はスクラップブッキングの試作品ついでに、海外旅行の思い出をスクラップブッキングしてきました。旅先で手に入れたパンフレットやチケット、これらは持っていてもほとんど見る機会はありませんし、実用性ゼロです。しかし、スクラップブッキングにしてしまえば、鮮やかに思い出として蘇り、私にとってクリエイティブに人生を送るモチベーションになってくれます。スクラップブッキング自体、とても魅力的なので、興味のある方は是非個人的にも取り組んでみてください。


冬休み中に素材とアイディアを集める

 スクラップブッキングの制作は2学期末から始まります。この時期に始めるメリットは、冬休み中に素材とアイディアを集めることができるためです。

 冬休みには多くのお家で年末大掃除があると思います。そして、その時に掃除だけでなく、片付けや整理整頓もセットで行うことも多いと思います。そうすると、これまでなんとなく取っていた思い出の詰まったものや、お家では不要になったものの、スクラップブッキングの素材としては使えそうなものが色々と出てくる可能性があります。そういったものを集めておくことで3学期の制作が充実すると考えました。

 また、掃除や片付けを通して、自然と必要なものや大切なものとそうでないものを選び分けることにもなり、物と向き合う時間が生まれます。この物としっかり向き合うこと自体がとても大切だと私は考えていて、自分が好きなデザインや造形との出会いはそのまま作品のアイディアとして生かすことができます。家や自分の部屋の中には作品に生かせる可能性が詰まっていると思います。

 こうして集まった素材やアイディアに関する写真をGoogleスライドで作成したシートにアップロードし、3学期の制作計画と意気込みを入力して提出します。提出された課題はGmailで通知が来るようになっているので、すぐに課題をチェックしてコメントを入れて返却することも可能です。このように、課題の確認とフィードバックが手軽にできるのがGoogle  ClassroomとGoogleスライドを活用した課題のメリットです。



 掃除や片付けで見つけた素材以外にも、各家庭には制作に活用できる道具や素材が色々とあると思います。そういったものを活用する視点も大切で、DIYや工芸品制作が好きな家庭も多く、美術室にはないような道具や素材を3学期に持参したり、これまでに制作してきた工芸品を持参する生徒がこれまでにも見られました。

 中学3年生という時期なので、多くの生徒が受験勉強に励む冬休みですが、卒業制作のスクラップブッキングのためにホームセンターや100均で素材を調達するケースも多くみられます。冬休みもずっと勉強ばかりだと精神的にハードですが、スクラップブッキングの素材集めがちょっとした気分転換になり、気持ちをポジティブなものにしたり、頭をリフレッシュさせるものになれば良い事づくめですね。実際はなかなかそう上手くいくものでもないかもしれませんが(苦笑)


Googleスライドはページ挿入が簡単

 この冬休みの課題は普段活用しているスクラップブッキングの振り返りシートに挿入する形で実施しました。Googleスライドのページはコピー&ペーストで簡単に挿入できるので、2学期の最後の振り返り内容の次に冬休みの課題を挿入するという形を取りました。



 この方法、正直言うと少し面倒で、約220人分の振り返りシートにページを一々挿入したので、1時間ぐらい挿入だけでも時間がかかってしまいました。なので、最初からこの課題を計画しているのであれば、振り返りシートの最後の方に冬休みの課題スペースを用意しておいた上で配信すればよかったと後悔しています。 


提出された課題の状況から

 生徒用のICTが導入される以前は、「冬休みの課題は、素材とアイディア集めです」と言っても、その課題は確認できるものでなかったため、実際にはあまり意味を成していませんでした。しかし、Chromebookが一人一台導入され、冬休み期間中に家庭に持ち帰ったことで、この課題が明確化し、生徒にとっても素材を集める動機として働いた手応えを掴むことができました。

 Googleスライドを活用した課題にすることで、ちょっとしたレポートのようにもなります。素材やアイディアを集めているうちに楽しくなってしまったのか、たくさんの情報をスライドに詰め込み、熱い制作に対する思いを書き込む生徒も多くみられました。


提出された課題の入力文章から抜粋

◯家にあったシールや家でつくっておいた飾りを3学期の制作で使おうと思います。この作品のテーマが「思い出」なので、家にあったものを多く使っています。探していくうちにいつ、何に使うのか分からないものも出てきて、少し楽しかったです。

◯クリップでハンガー型やハート型を作って、枠に飾りたいなと思った。2年生の時に画用紙で折った薔薇があったからそれを使いたい。貝殻を海で拾ったままでいつか何かに作りたいと思っていたから使いたい。

◯修学旅行でもらったパンフレットや栞、ビーズなどを作品に取り込もうと思う。照国神社のおみくじも使ってユニークな作品にしたい。

家にホイップクリームを絞るやつがあったので美術室にあるボンドを活用して周りに絞ろうと思います。クリップは百均で買ったけど大きさがたくさんありどの大きさが土台にあうのかわからなかったからだいたいの大きさにしました。あわなくても自分なりにアレンジしていこうと思います。吊るす部分は毛糸ではなくひもに近いものにしてみようと思いました。そのほうがおしゃれになるかなと思ったからです。

ダブルクリップはそのまま使わずに分解して使う。色がついているところを活用したい。刺繍糸とビーズとフェルトを使ってなにか音楽に関するようなものを作りたい。ミシン用ボビンは何も決めていないけど面白そうだから使ってみようと思う。冬休み中に見つけた材料も使って素敵な作品に仕上がるようにこれまでの経験を活かしたり様々な方法にチャレンジしてみたりして作品を完成させていきたいと思っている。

パステルカラーがメインの表側にメリハリをつけるために、マーブル模様の粘土を丸とか星とかに成形して貼り付ける。シールがたくさんあったからそれらを使って作品の細部にまでこだわりたい。レジンがない代わりにプラ板を家でいい感じに作ってきて透明感や立体感を出したい。大量にレゴが家にあったからどう使うかはまだ考えてないけど、うまく利用して作品のアクセントになったらいいなとおもった。


 生徒の提出課題の写真を載せていないので分かりにくいかもしれませんが、各生徒が素材からユニークな発想を膨らませているのが文章からでも伝わると思います。

 なんとなく取っておいた貝殻や修学旅行のパンフレット、昔使っていたレゴブロックなど、こういったものは所持しているだけでは勿体無いですし、それが全く使われない不要なものであれば部屋のスペースを圧迫する厄介な存在になってしまいます。しかし、こういったものに視線を向け、作品として活用することができれば、使われる物たちもきっと嬉しいのではないでしょうか。

 ちょっとスピリチュアルなことを言っているようですが、やはり物を大事にするだけでなく、有効活用するというのは私たちにとってなくてはならない生きる力だと考えています。逆にこの視点がないと、足ることを知らず、ひたすら欠乏感のある状態で、次から次に欲しいものを手に入れようとしてしまうことにさえなりかねません。そういう私も、昨年末の片付けの際に、不要な物をたくさんストックしていたり、必要と感じたものを長年保管しているだけで使えていなかったりしたものをたくさん発見して、自分自身の判断力と管理能力の不十分さを反省した次第です…。

 物を大切にすると同時に、有効活用する。そういう視点がこのスクラップブッキングの制作、そして冬休みの課題で促進される可能性があると、生徒の記入内容から改めて感じることができました。このような視点にも触れるのが美術教育の大切な意義と考えられます。


冬休みの大掃除&片付けを生かして素材集め 

〜こんまりメソッドを参考に〜

 昨年たくさんの本を読みましたが、実用面で一番効果を発揮したのが近藤麻理恵さんの「人生がときめく片付けの魔法」です。このシリーズ、累計1400万部を超える今世紀世界で最も売れているとんでもない本です。「こんまり」こと近藤麻理恵さんのことはYouTubeなどでよく知っているつもりでしたが、彼女の本(人生がときめく片付けの魔法1と2)を読んで自分でもビックリするぐらいマインドセットと行動に変化が生まれました。今回は詳しく語りませんが、世界で一番売れているには訳があると痛感させられました。私自身、片付けは苦手ではないと考えていましたが、本を読んでいると改めて考えさせられることが沢山あり、「じゃあ、試しにやってみよう」となりました。

 片付けをしながらときめくものとそうでないものを分けていく「こんまりメソッド」は素材集めに有効であると考え、冬休みに入る前の最後の授業で私は生徒に「どう考えても不要だけど、なんか捨てづらい。そう言うものはスクラップブッキングに使ってしまうのも良いです。冬休みの大掃除と片付けで良い素材と再会してくださいね!」と言いました。

 そうすると、折れたラケットや部活動Tシャツ、古くなったサッカーボールを素材として活用しようとする生徒が次々に現れました。そういった大事なものだけど捨てられないものを作品に使って思い出の品に「昇華」するという考え方は、ただ断捨離を実行してミニマリストになるのとは違う、ときめくものに囲まれた人生を送ることを目指す「こんまりメソッド」に通じています

 学習活動を通して得られるこのような経験によって、ときめく人生を送る「生きる力」が生徒に身につくように、アプローチを色々と考えていきたいと思います。そういった意味で、知見を広げられる読書は大切ですね。


 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回はGoogleスライドを活用した冬休みの課題ということで、スクラップブッキングの素材集めに関してお話しさせていただきました。ICTを活用することで素材の写真を載せたり、興味のある素材やアイディアを手軽に集めることができます。そして、それはそのまま休み明けの制作に反映されます。振り返りシートと連携させるのも有効です。今回の内容が何かICT活用で参考になるものになれば嬉しいです。

 スクラップブッキングは思い出の詰まった最高にときめく作品であるからこそ、その価値を発揮すると私は考えています。スクラップブブッキングの制作を通して、思い出の詰まった物の素晴らしさと、それを大切にしつつ有効活用するマインドセットが育ち、ポジティブな気持ちが常態化すれば、きっと中学校を卒業した後、生徒たちは自分らしく主体的に人生を歩んでいってくれるのではないかと思います。そんな思いも込めながら3学期の授業に臨んでいきたいと思います。

 それではまた!



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