カーテンの代わりになる障子紙と板ダンボールの活用
今回は私が普段使っている美術室の環境改善について紹介します。
学校の教室に限らず、部屋にはカーテンがあり、眩しい日差しを防いでくれていますが、眩しささえ回避できれば、太陽光は私たちにたくさんのポジティブな影響を与えてくれます。特に、自然の光である太陽光は頭の働きを良くし、作業効率もアップさせることが明らかになっているので、なるべく上手く利用したいところです。
カーテンの問題点は太陽光を遮断しすぎるということです。もちろんカーテンにも色んな種類があって光を通すものもありますが、既存のものを取り替えてカーテンを購入するのは現実的ではありません。なので、既存のカーテンを残しながら太陽光をコントロールする方法を考えてみました。
降り注ぐ強烈な太陽光は学習の障害に
私の勤務する中学校の美術室は窓が大きく(大体どこの教室も天井ぐらいまで窓が伸びていますよね)、南中高度の低い冬の時期や午前の早い時間帯は太陽の光が強烈に窓を通過します。太陽がはっきり見える場所の生徒は眩しくて目を開けるのも大変ですし、それと同時に体もポカポカになりすぎて強烈な眠気を催してしまいます。さすがに美術の時間に制作をしていて睡魔に襲われる生徒は滅多に見ませんが、それでも太陽光が気になってカーテンを閉めるというのがこれまでの常でした。
しかし、カーテンを閉めると、完全に外の光をカットしてしまうため太陽光のメリットが生かせなくなります。自然光による作業効率の面だけでなく、晩秋から初春の時期は太陽光による温室効果を頼りにしたいところです。ちなみにこれは設計ミスだと思うのですが、カーテンを閉めようとすると換気扇が邪魔していて、これを通過させるためにカーテンを激しく動かさなければいけません。かなり荒い動きになるため、換気扇のカバーにカーテンが引っかかって破損するということもこれまで起きていました。これまでカーテンを閉めるか閉めないかは生徒に任せてきましたが、このような事情もあり、内心カーテンを閉められると嬉しくはありませんでした。ただ、眩しさに耐えるのも大変だというのはよく分かるので、「仕方なし」と考えてきました。
ただ、こういった課題も原因や状況を分析すれば大抵の場合は解決できます。何か良いアイディアはないかと窓を眺めていた時、ふと日本の建築が頭に浮かびました。それは日本建築にはカーテンがない代わりに簾や障子窓が使われているということです。最初簾を手っ取り早く取り付けることを考えましたが、丁度、中学2年生の授業で日本の美やステンシル版画で年賀状を作成していた時期というのもあったので、障子とステンシルを掛け合わせて障子窓を作ろうと考えました。
機能性と美しさの両面で環境が改善
障子紙自体も綺麗ですが、切り絵の要素を加えるとまた違った美しさを見せてくれます。障子紙を2枚用意し、一枚は切り絵にしておき、もう一枚はそのままの状態で切り絵に重ねて貼り付けると、厚みの違いで図がエンボス加工のように美しく浮かび上がります。切り絵は私が担任している美術室掃除の生徒に掃除時間中に毎日少しずつ作成してもらいました。ステンシルを学習していたので要領良く作業は進み、遊び感覚で切り絵ができました。
これを貼り付けるのが板ダンボールになります。そのままだと障子紙の透ける特性が生かせないので、ダンボールを切り抜きします。この際に利用したダンボールは以前の記事でも紹介した表現の実験場として利用した板ダンボールです。この板ダンボールの裏面はグレーに着彩しているので、障子紙を貼っても模様が喧嘩することはありません。逆に窓の外側からはダンボールに描かれたものが見えるので、外から美術室を見たときに、「何だあれは?」と興味を引くことにもなります。
ダンボールを格子状にカットして障子窓感を出すことで、光と模様の調和も生まれました。眩しく強烈、場合によっては邪魔になる太陽光を遮断することなく優しい光に変え、図柄に絶妙な演出を加える。障子の素晴らしさを改めて認識するとともに、日本の美意識について触れることができました。
この障子窓をセットしてからカーテンを閉める生徒はいなくなり、美術室には丁度良い光が差し込むようになりました。障子は機能性と美しさを兼ね備えた素晴らしいアイテムなので、これ以外にもまた活用方法を考えてみたいと思います。
最後まで読んでくださってありがとうございました。今回はカーテンの代わりに障子紙と板ダンボールを活用するアイディアを紹介させていただきました。大したお金を使わなくても工夫次第で既製のものにはできない良いものがつくれるのが美術や工芸の魅力なので、これからも色んな工夫を探し、良いものが見つかったらまた紹介したいと思います。
それではまた!
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