アダプティブラーニングの普及が迫る 〜AIが起こす学習革命〜
Chat GPTが世間を賑わし続けている2023年ですね。最近になってニュースでもよくChatGPTに関する話題を見るようになりました。ChatGPTの数ヶ月間での劇的な進化を見ていると、多くの人が想像していたよりも遥かに早いペースでAIは進化を始めており、GPT(Genererative Pretrained Transformer)を活用したツールであるかどうかが利用者を集めるポイントになるのは間違いなさそうです。GPT4を搭載したMicrosoftのOffice 365 Copilotが年内にも一般利用できるようになるとの見通しもあり、2023年はテクノロジーの進化と利用が劇的に進む1年になるということを考えながら、私たちは今の仕事と向き合っていくことが大切になるでしょう。
GPTやAGI(汎用人工知能)を使うか使わないかは人々の自由です。しかし、学校教育という子どもたちの貴重な時間を預かる場であれば、AIの助けを得て、個別最適な充実した学習ができる環境を整えるのは極めて大切なことだと思います。そうでなければ、不登校生徒数の爆発的増加にも見られるように、学校離れが今後ますます進んでいく可能性があると考えます。
今回はAIを駆使したアダプティブラーニングの魅力とその普及状況、それを活用して今後学校での学びがどのようい変化していく必要があるのか考えをまとめてみました。
ChatGPTを積み込んだアダプティブラーニング
これまでにもAtama+やすららドリルといったアダプティブラーニングはあり、塾などを中心に普及してきました。ブラウザで使えるので学校のChromebookからAtama +にログインして学校の休み時間に取り組んでいる生徒もいるぐらいです。
AIを活用したアダプティブラーニングの魅力は個別の学習状況に合わせて学習内容を提供するところにあり、これによって着実に知識を身につけることができます。分からないところをそのままにするのではなく、根本的に分かるように、AIが学習者と二人三脚する形で学習をサポートしてくれます。
これまでのアダプティブラーニングでは数学なら数学、英語なら英語に特化したもので、AIを活用しているといっても、それは特定の教科のために用意されたアルゴリズムで動いており、人間のように柔軟なサポート、話題が脱線して飛躍するような対話は困難でした。
しかし、ChatGPTの登場で一気にアダプティブラーニングの世界が変化したと言えます。このAIには意思があるのではないかと感じられるぐらいに、柔軟に話をすることができ、疑問に対して真摯に説明してくれます。内容が難しかったら小学生でも分かるように、しかも大事なポイントを抽出して分かりやすく説明してくれます。
最近「スピーク」という英会話アプリを使っているのですが、これはChatGPTを積み込んでいて、AI講師に話をしたら柔軟に話を返してくれます。しかも、自分の英語の改善点までフィードバックしてくれます。英会話のトレーニングであるにもかかわらず、教育についての話し相手にもなってくれます。
最近の気になる話題で、ベネッセホールディングズが社内用AIチャットでBenesse GPTを使うというのがあります。ベネッセは言わずと知れた通信教育の大手ですが、このような教育系の企業がGPTを活用していけば、自ずと学習ツールにもGPTが組み込まれていき、アダプティブラーニングが促進されていくと思われます。ChatGPTを開発したOpenAIは今後、日本にもオフィスを構える方針のようなので、多くの企業がそのテクノロジーを利用していくことになると思うと、想像するだけでワクワクします。
私の勝手な想像ですが、これまでは学習者が学習教材のカスタマイズをするのは限定的なものでしたが、GPTの機能を使えば、自分に適した学習ツールに調整することさえ後々には可能になるのではないかと思います。個別最適な学習の進化はこれから劇的に始まっていくことでしょう。
ChatGPTを積み込んだBingやAIチャットくん
BingにChatGPTが積み込まれ、検索とAIチャットの同時進行が可能になったことや、LINEでもChatGPTが利用できる「AIチャットくん」が登場し、瞬く間にユーザーが増えている状況を見ると、GPTやAGIといったAIを使ったツールの浸透は今後ますます加速していくと考えられます。ChatGPTもそうですが、基本的には無料で使えるというのも手軽に利用する状況を促進しています。
AIチャットくんやBingは音声も認識してくれるため、ちょっとした英会話の練習にも利用できますし、基本的な頭脳はChatGPTなので、かなり高度で専門的な話し相手にもなってくれます。
これからこういったものが当たり前に使える時代になることを考えると、学習の在り方が根本的に変わるのは間違いありません。すでによく話題に上がっていますが、作文などはGPTの得意なことであり、教科書通りの文章を作成してくれますし、こちらの要求に柔軟に答えて文章を変更してくれます。しかも、毎回異なる文章を生成してくれるため、ChatGPTで作文をしたかどうかを明確に判断することは不可能です。
変わらなければいけない学校教育
これまたすでに話題として上がっていますが、これまでのような教科書通りで一般的な作文やレポートを生徒に作成させることを目的とした学習活動はChatGPTの登場で変化を余儀なくされることでしょう。それによって、ますます頭を使わなくなるようになる危惧を抱いている教師や大人も少なくないように感じます。
ただ、こういう時だからこそ、文章を書いたり、会話したりすることの本質に迫っていくべきなのではないかと私は考えています。それは造形教育も同様です。
そもそも文章を書いたり、会話をしたり、造形したりといった活動と私たちの幸福感は連携したものとして考える必要があると思います。文章を書く力はテストで高得点を取るためではなく、自分が考えていることを文章化して相手に伝えたり、考えが頭の中が言語化されて整理されたりして世界観が広がる喜びにあると思います。そのためのツールが書く力であり、学習を通して使って楽しむことができれば良いというシンプルな話のはずです。
どうして文章を書くことが面倒で楽しくないことだと思われてしまうのかというと、それがただただ教科書通りの正しい文章、上手な文章が書けるかどうかばかりに焦点が当てられ、表現する喜びが置き去りにされるだけでなく、それが「課題」ということで強制的に取り組まなければいけない傾向があったからではないかと思います。他の学習の対象も同様です。面白くないものにしてきたのは、正解不正解の基準で学習し、一律に正解するための学習を全ての生徒に強制的に取り組ませてきたことが問題の根本にあると私は考えています。そのような学習状況では知識活用はおろか、本来は役立つ基本的な知識の獲得さえ面倒で厄介なものとして認識されるようになってしまいます。
学習者は知識や技術の必要性を感じ、自分事として捉えるまで、本当の意味で学習モードにはなれません。例えば国語力に関して言うと、学校での勉強を通して国語力をつけている部分ももちろんあると思いますが、学校での勉強には消極的でも、国語は普通でにできる生徒をたくさん見てきました。実力テストで国語だけ8割、他は2割弱というアンバランスなスコアを見たことがる人は教師であれば多いのではないでしょうか。しかも国語が8割取れても、普段の授業には意欲的でないため評定は2、そんな現象も見たことがあります。
結局、会話したり、本を読んだり、チャットしたり、普段の生活の中で実践しながらいくらでも国語力を身につけることはできると思います。る・らる・す・さす・しむ・ず・じ・む・むず・まし・まほし・・・、I,my,me,mine・・・。そんな呪文を唱えながら古文の助動詞や英語の格変化などを覚えても言語本来の持つ面白さには気がつくことができませんし、これを刷り込んでいるうちに授業での学習意欲は低下していく可能性があります。しかし、普段の生活の中で国語や英語の知識を活用すると、「より良いコミュニケーション力」の獲得をほとんどの人が望んでいるため、自然と力は向上していきます。LDで言葉を書くのが苦手な人でも、会話をすれば至って普通というのもよく見られます。
正しい知識を学ぶことは不可欠と考えていますが、それが実際に幸福な活動に結びついているかどうかがポイントであり、一人ひとり求める知識や技能は異なることを考えるとアダプティブラーニングの不可欠性が見えてくると思います。
学校という場で子どもたちが過ごす時間を最大限に有意義なものにするためには、一人ひとりの状態に適した学びの環境が必要なのは言うまでもありません。ますます多様化する人間、社会の状況を鑑みると、学校でこれまで行われてきた画一的な正解を覚える学習や学習者の時間を拘束する一斉指導の時間の割合を極力減らし、多様な学び、多様な表現が多様な人間どうしで共有される、お祭り、遊びのような活気のある環境を学校で実現していくことが大切だと思います。そんな環境を創出することが教師のこれからの仕事と考えると、大変魅力的な仕事だと私は思います。
最後まで読んでくださってありがとうございました。今回はAI革命によって予想される今後のアダプティブラーニングと、学校の姿について、私見をつらつらと述べさせていただきました。読まれた方にとって何か参考になるものがあれば嬉しいです。
それではまた!
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