Googleスライドの振り返りシートを学習レポートに 〜ルーブリックの活用で教師も生徒もWIN-WIN〜



 私は2年前から定期考査の代わりにレポートを期末課題として設定しています。これまでレポートは紙のものかGoogleスライドを活用したデジタルのものいずれかを選択して、学習した内容を一からまとめる形で取り組ませてきましたが、今年からは普段の授業で行なっている振り返りのファイルをベースにして、学習レポートにするという方法を取るようにしています。
 この方法が実現したのは昨年の途中から活用しているルーブリックの影響が大きく、これによって教師にとっても生徒にとっても効率が上がり、課題の負担が少なくなるだけでなく、自動生成AIが普及する中でも学習レポートが今後も有効であり続ける手応えを掴むことができたので、記事にまとめてみました。

学習レポートとしての機能性をもった振り返りシート

ルーブリックとの連携で指導と評価の一体化




 私はGoogleスライドを振り返りシートとして活用しています。Googleスライドにはたくさんの情報を載せることが可能で、毎時間の学習活動に関する振り返りを1ページにまとめ、それを蓄積していくようにしています。
 制作だけでなく、鑑賞会で活用するページも一体化しているため、普段からこの振り返りシートを活用していれば自然と学習レポートになっていくように設計しています



 Googleクラスルームの「授業」で振り返りシートを課題設定する際にルーブリックも設定(スプレッドシートからルーブリックのファイルをインポート可)しておけば、振り返りシートが提出された際に学習状況を判断してルーブリックを調整することが可能です。振り返りとして入力された内容だけでなく、机間巡視しながら見取った生徒の学習状況を反映させて評価することができるため、指導と評価の一体化という点で非常に有効な方法であると考えています。



普段から活用している振り返りシートに考察を加えるだけ

 これまで振り返りシートは授業で取り組むもの、学期末レポートは授業外での課題(授業中にも取り組む時間は設けていました)という扱いで、それぞれ別のものとして「評価」してきました。しかし、振り返りシートの内容が学期末レポートに反映されるのであれば、そもそもこれらは一つのものとして扱えるものですし、レポートとしてまとめる際に振り返りシートに書き込んだことがそのまま活用できるのであれば、レポートではそこから内容を深化させることに集中しやすくなります。



 今年から行なっている学期末レポートでは普段の振り返りシートにこれまで学習してきたことを踏まえた「考察」を加えるだけにしました。既に学習状況からルーブリックで評価が入力されているので、この考察内容で評価がさらに加わるという仕組みです。これまで学習レポートを作成するために数時間要していたものが、これによって早い場合は数分、時間がかかっても数十分あればできるものになりました
 評価するにしても、事前にルーブリックで評価したものに追加で評価を調整するだけなのでとても手軽です。生徒にとっても教師にとっても負担の少ないものになりました。

徹底的に取り組みたい生徒にとっても有効



 普段の学習がルーブリックで既に評価されているため、学習レポートにした際に評価が下がるというのは原則あり得ません。なので、振り返りシートの形式をアレンジしたり、完全にオリジナルのレポートにしたりすることも自由にできるようにしています。
 既にルーブリックでA評価や部分的にA+を獲得している状況であれば、通知表の評定としては5が約束されているようなものですが、そもそも大事なのは取り組みたいと思うかどうかの生徒の主体性であり、主体的な学習者がどこまでも安心して挑戦できる仕組みを用意することが主体的学習者を育てる教師の仕事です。



 振り返りの内容をスライドの枠外に退かせ、ページ上に自分なりに内容をまとめるのも良いですし、不要と思うなら振り返り欄を削除しても問題ありません。削除した後にどうしても振り返りの内容が見たくなったり、利用したりしたいのであれば変更履歴から辿ることも可能です。
 このようなレポートの形にしてバリュエーションに富んだ「作品」が次々に提出されました。厳密に言うと、この記事を書いている7月1日(土)の段階でまだレポートは締め切っていないので、こうしている間にもどんどんレポートが提出されています。実は今はテスト週間なので、生徒は週明けに控えたテストに向けて勉強に勤しんでいるわけですが、そんな中でもこだわりを大切にして魅力あふれるレポートを作成する生徒は少なくありません。
 生産性や効率性を考えると、もう十分に評価が約束されている美術のレポートに時間を割くよりは、1点でも多く点が取れるように他の教科の勉強をした方が良いでしょうが、主体的な学習というものは評価云々とは全く関係のない別次元のものであると考えています。ファーブルが虫の研究に生涯夢中になったのはお金や世間からの名声、評価のためではなく、虫への飽くなき好奇心があったからであり、研究したいから研究したという自己目的性ゆえだと思います。

快楽が根本にあること

 主体的な学習者にとって学習や研究のレポートは、自分が満足できるかどうかが鍵であり、学習者の快楽に基づいて行われるものなのではないでしょうか。これは美術に限ったことではなく、学習に関連するものであれば基本的に当てはまることであり、さらに根本を突き詰めると、「遊び」を根本にしたものではないかと考えています。
 人間は遊びを継続している限りにおいて、常に行動を発展させたり、試行錯誤したりして、快楽を得ることができます。この状態をフロー状態とも言いますが、時間を忘れて没頭できるというのは人間にとって幸せなことだと思います。そういった経験が人を内発的に動機づけ、さらに広く深く学び遊ぶことを実現します。
 教師の役割としてそのような機会、可能性を学習者に提供することが極めて大切であると考えています。生徒が取り組んだことから自分自身も新たに学ぶことができますし、それが今後の教育の改善にも繋がります。教師にとってそういう状況は快楽そのもの。遊びという根本的に快楽につながるものであるからこそ、教師も生徒もWIN-WINになれると思います。





 最後まで読んでくださってありがとうございました。生徒のレポートを見ていると改めて美術の面白さ、主体的な学びの奥深さについて考えることができ、自分にとっても良い機会となっています。そして部活動がない週末の良い暇つぶしにさえなっています(笑)
 今後、自動生成AIは世の中を確実に便利にしていき、人間を「面倒」から解放することでしょうが、主体的な学びはこういったものに取って代わられるものでは決してないと確信しています。人間は快楽を求め、挑戦や冒険を続けることでしょうし、好きなものをとことん調べたり研究したりすることをやめらません。今日も私はこんなブログを書いたり、生徒のレポートをチェックしながらも、戦国大名で一番好きな武田勝頼のことを調べ上げるという生産性の乏しい快楽的な時間を過ごしました。今年の大河ドラマで武田勝頼がめちゃええ感じに取り上げられているのも幸せなことです。無駄に思われそうなことを主体的に楽しむことは無駄ではありません。ついでに言うと、昔ドラクエにハマり倒したのもきっと必要な経験だったと確信(正当化)しています。
 評価や成績に関係なく、没頭できる機会を提供する。そんな教育の可能性についてこれからも研究をしていきたいと思います。
 それではまた!

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