学習のまとめは生徒主体で協働的に行う 〜ICTのメリットを生かして〜


 今回は授業時間の最後に行う「まとめ」について、私の考えをまとめてみました。これまで授業のめあてや課題、まとめは教師が中心になって行い、振り返りは生徒が行うという流れが一般的であったと思いますが、生徒の主体的な学習を目指して授業が行われるようになった現在、学習のまとめも生徒が中心になって行うべきではないかと私は考えています。そしてPBL(課題解決型学習)が一般化すれば、各々がめあてや課題を設定することが普通になり、教師が教える目的でめあてや課題を設定することは基本的になくなると思いますし、それを目指して授業改革し、教育へのマインドセットを変えていくことが大切であると考えています。

 生徒の主体的な学習が中心となった現在において、まとめを生徒が中心に行うことは非常に意義深いことではないでしょうか。従来の教師中心のまとめでは、授業内容の一方的な伝達や復習に留まりがちであり、生徒の深い理解や自己評価を促すことが難しかったですが、生徒主体のまとめでは、生徒が自ら考え、自己評価し、学習の成果を振り返る機会を得ることにつながると考えられます。そして、そのまとめの活動をファシリテートするのが教師の役割であり、ICTのツールを活用することによって、その効果を大きくすることができると手応えを感じています。

 今回は以前から取り組んでいるGoogleスライドやGoogleジャムボードを活用した生徒が主体となったまとめの方法を紹介します。生徒が中心となって行うまとめは学びを深く広くする上でとても有意義なものになると感じているので、よかったら参考にしてみてください。


生徒主体のまとめを行うメリットとICTの活用

1. 深い理解を促進するまとめの共有


 生徒がまとめをする過程で、学習内容を整理し、自らの言葉で説明する必要があります。この過程で、より深い理解につなげることができます。探究的な学びでは学びの視点や重点が多様になるため、まとめの内容もシンプルで分かりやすいものではなく、複雑で多様性のあるものになります。

 これまでは、教師がまとめを誘導しながら生徒に説明させるという方法が一般的でしたが、このまとめ方では教師の想像通りの学習であり、予定調和にしかなりません。教師にとって都合の良い発言を積極的に発表する生徒がいれば、確かにスムーズにまとめができますが、そんなまとめであれば教師がさっさと提示したとしてもそれほど大差ないと私は思います。これを発問形式でやったとしても、生徒にとってはちょっとした思考活動にしかなりません。

 学びを整理するだけでなく、「深める」ためにまとめをすることが大切です。そもそも学習が生徒の主体性を中心に行われるのであれば、授業の中で多様な学びが行われ、同じ教材であったとしてもまとめの内容は多様となるはずです。そんな多様なまとめに触れることで、広い視点で考える機会を得ることができ、それをもとに振り返りをすることができれば深い理解につながります。

 Googleジャムボードは手軽に考えを付箋に入力して他者と共有できます。ジャムボードは20ページまで1つのファイルで利用可能なので、同一単元中であれば毎時間同じジャムボードのファイルを利用してまとめを入力するのも良いでしょう。授業資料もジャムボードに貼り付けて、セットで利用するのも有効です。


2. 自己評価の機会


 生徒主体のまとめは、自分の学習の成果や理解度を振り返る機会にもなります。自己評価の意識を高めることで、自己成長や自らの学習を調整する主体性を促すことができます。このような場合でもジャムボードは活躍します。

 自己評価が絡む場合、付箋の色を達成度に合わせて違う色を活用して、理由を入力させると成果と課題が分かりやすくなります。図のような一言の振り返り、まとめでも学習活動の要点が集合知として形になります。


3. アクティブラーニングの促進

 生徒がまとめを行うことによって、受動的な学習ではなく、自ら考え、発信するアクティブな学習が促進されます。他の生徒との共有を通じて、より考えを深めたり広げたりする学習体験を得ることができます。


 私は作品鑑賞会を単元の締めくくりにすることが多く、その際にGoogleスライドを活用しています。普段から振り返りはGoogleスライドにまとめて学習レポートとして活用し、鑑賞用のシートも予め振り返りシートの一部に入れています。作品鑑賞会で気に入った作品の画像を貼り付け、感想や制作をする上でのキーワードを入力が完了したら、そのページをコピーして、共有用のスライドに貼り付けて、他の生徒と情報を共有できるようにしています。



 この共有によって他者の感じ方や考え方、単元のまとめになるキーワードなど濃い内容の資料を生徒は見ることができるようになり、そこから学びを一段と深められます

 GoogleスライドはGoogleジャムボード以上にページを増やすことができるだけでなく、振り返りシートと連携させることも容易です。レポートなど個々の考えを手軽に共有して、アクティブに学ぶツールとして非常に優秀であると感じています。


4. 似た内容でも多様な考えを知ることができる


 Googleスライドに挿入した表に入力された内容はセルごとスプレッドシートにコピー&ペーストすることができます。先ほど示したGoogleスライドを活用した鑑賞の方法であれば、一つのスライドに多数の生徒の考えを集めているので、表をコピーしてスプレッドシートに貼付けする作業を繰り返せば膨大な量の考えを共有することが可能です。少々アナログな作業で手間ではありますが、時間に余裕があるのであれば、こういうことをしてみるのも良いと思います。ちなみに私にはこれを自動的にスプレッドシートに飛ばすICTリテラシーはありません(苦笑)。GoogleもMicrosoftに続いて自動生成の面でアプリケーションのアップグレードを予定しているようなので、今後、このスライドとスプレッドシートを活用する方法もアップグレードしていけたらと思います。

 スプレッドシートを活用すれば共通した言葉をフィルターによってまとめることが可能です。似た内容でも説明が異なることはよくあるため、内容をある程度まとめて比較しやすくすることができるフィルターの機能は便利です


教師の想像を超える多様な学びができているか

まとめはその指標

 生徒が主体性をもって探究的に学ぶことができていれば、本来まとめは教師の想像通りにいくとは考えにくいでしょう。想像通りの意見が生徒から出て、スムーズにシンプルで分かりやすいまとめができれば、それは確かに生徒にとってよく分かる授業になっている可能性があります。ただ、シンプルで分かりやすいということのみが授業や学習の目的ではないはずです。多くの書籍がまとめの文章だけでも何ページも割いて説明しているように、内容にボリュームがある学びは多様性にあふれたまとめになると考えるべきでしょう。そして、そういう内容をたくさん吸収することで深い学びにつなげることも可能であると考えています。

 主体性を重視した学習で生徒にまとめをさせて、教師も目からウロコとなるような内容を目にすることができれば、その授業は生徒だけでなく、教師にとっても充実した時間になります。視野を広げられる体験は好奇心を刺激し、活発な思考活動を促します。これは学習へのモチベーションそのものと言って良いでしょう。

 まとめの内容を穴埋め式にして、生徒に答えさせるようなまとめは教師が想定した内容通りに進むため、失敗のリスクを下げることができます。しかし、一番避けなければいけないことは生徒の思考活動に制限をかけるような授業と、好奇心や学習へのモチベーションを高める「仕掛け」が設定できず、ただ教科書通りに知識を覚えるような授業です。これは生徒の主体的な学びを遠ざける一番望ましくない失敗であると私は考えています。この失敗は目に見えにくく、一見うまくいっているようにさえ見えるので厄介です。

 ややこしい話は抜きにして、授業の最後に「今日の学習で大事だと思ったことをまとめてみよう」と言ってジャムボードやスライド、Googleフォームなどで意見を共有して「そんなことにも学習内容が関係しているのか!」と驚きと感動があった方が豊かな学びになるのではないでしょうか。そういう学習体験が主体的な学びの礎となっていくことでしょう。

 生徒主体でまとめをした時、良い学びができていたかどうかが如実に反映されます。もし、画一的で驚きのないようなまとめになっていたのであれば、そういう授業をしてしまったという教師自身の反省材料にもなるでしょう。そういうのも教師の成長の面で大切だと思います。教師と生徒が一緒に成長していけるのが新しい時代の学びの在り方です。



 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回は学習のまとめは生徒主体で協働的に行うことの可能性について書きました。今回の内容が何か参考になるものになれば幸いです。

 PBLを授業のメインにして以降、生徒の活動が多様になり、驚きと発見の連続になったと感じています。もちろん、これまでもそういう学習活動を目指してきましたが、学びをICTで共有できるようになった現在、学びの可能性は大きく広がっていると感じています。主体的な学習に基づいたまとめの協働作業はまるで哲学者の知的な遊びのようにも感じられます。そんな学習環境をこれからも研究していきたいと思います。

 それではまた!


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