ChatGPTで育む根本的な好奇心


 ChatGPTが公開されて早くも1年が経ちました。私はChatGPTやBing AIをこの1年間かなり使ってきたので、今後の教育の在り方について考察を深めることができたと感じています。

 しかし、教育現場ではまだまだChatGPTに対する評価が定まっておらず、「ChatGPTで文章を作成しても作文能力は身につかない」「ChatGPTを活用して勉強してもテストの点数は上がらない」「教科書を使った方が学力がつく」といった意見が多いように感じています。

 私は、こういった意見が上がるのはChatGPTを生かす視点が不十分であることが背景にあり、これまでの学習方法にそのままChatGPTを取り入れようとするゆえに否定的な捉え方をされているのではないかと考えています。

 ChatGPTが学習に役立つかどうか、私の考えの結論を言うと「非常に有効」であると考えています。もしChatGPTをテストで良い点数を取るために「答えを教えてもらう」ような学習ツールとして使うのであれば、間違いを平気で言うChatGPTは合理性を欠いているとしか言いようがありませんし、試験範囲に忠実な教科書とワークが良いでしょう。しかし、ChatGPTを「思考を広げる対話のパートナー」と考えれば素晴らしい機能を発揮します。

 ChatGPTを有効に活用するために必要なこと。それは身のまわりの環境への根本的な好奇心であると考えています。その好奇心に火をつけ、探究の冒険に誘ってくれるのがChatGPTです。

 今回はそんな探究的な学習でChatGPTを活用する具体的な活用方法について紹介します。何か参考になるものがあれば嬉しいです。


身近な問題について考えるツールとして

 先日趣味の山登りをしているときに、ふと自分の視界が学びの宝庫であることに改めて気がつきました。視界に広がる樹木、葉、光、落ち葉、丸太、土。こういったものは当たり前の景色のように思えるかもしれませんが、日々変化しているのも事実。樹木は日々成長して1年ごとに年輪が作られていきますし、葉は11月になって少しずつ紅葉が始まっています。地面にはたくさんの灰色の落ち葉があり、丸太には無数のヒビが入っています。土も場所によって様々な土が存在します。これらを当たり前のものとして考えずに、そもそもどのようにしてこのような状態になっているのかを考えた時、果たして普段勉強で使用している教科書は十分な役割を発揮していくれるでしょうか。


 教科書は確かに効率良く体系的に知識を獲得することができる素晴らしい学習ツールです。しかし、肝心な身のまわりの現象について知ろうとした時、必ずしも教科書が有効に働くものではないということは想像に難くないことでしょう。知りたいと思った時にすぐに調べる。その好奇心を満たしてくれるのがGoogleなどの検索ツールであり、対話で分かりやすく知識に触れることができるのがChatGPTを始めとしたAIツールです


 分からないことがあればググるというのが一般化した世の中ですが、ググることの問題点はWEB上の記事は情報が多すぎて「分かりにくい」というのが問題です。それに対してChatGPTは非常に明確に分かりやすく、チャットで疑問や考察に答えてくれる良き話し相手になってくれます。次々に興味深い内容を返してくれるため、思考が活発になりますし、具体的に知りたい場合にはポイントを絞ってググるのも有効です。ChatGPTだけを使ってしまうと、生成される内容が全て正しいわけではないため間違いを植え付けられてしまう可能性もありますが、検索とセットで活用すると難点もかなりカバーできます。Bing AIは内容のリンク先がセットになっているので、ワンタッチで詳しい情報にアクセスすることも可能です。無料版のChatGPTがGPT3.5で情報が2年落ちであるのに対してBing AIは無料でGPT4.0が使えて最新情報にアクセスできるというのが素敵です。



 今回、山登りに出かけて素朴な疑問がたくさん浮かんできたので、ChatGPTに質問したり、想像したことを投げかけてみました。どうして機能面で優秀なBingAIを使わずにChatGPTを活用したかというと、大した理由はありませんが、強いて言うならGPT3.5でも十分に使えるということを示したかったのと、文章生成スピードはBingAIに比べるとかなり早く、手軽に使えるためです。英語のトレーニングをする時も圧倒的にChatGPTの方が使いやすく、日本語と英語の切り替えも自動で判断してくれるため、普段からよく使っています。対話的に学習したいのであればChatGPTにアドバンテージがあるように思います。


落ち葉の役割について



苔など自然に生育する生き物について




丸太のひび割れについて


葉が緑色に見える理由について


 ChatGPTは平気で嘘をつくこともありますが、ここで大事なのは対話を通して普段考えたこともないようなことについて思考を向ける機会が得られるということです。それだけで十分に知的好奇心が刺激されますし、より詳しく知りたい内容と出会うことにもなります。探究学習をする上でのきっかけ作りには十分になってくれるでしょう。
 今回、葉が緑に見えることに関しては光の反射によって緑に見えるということは以前から知っていましたが、そのメカニズムについては全く知らなかったので、勉強になりました。この他にも落ち葉が酸化して土壌に浸透することで、アルカリ性に寄った土壌を中性から弱酸性にして植物が育ちやすい土壌になるということも知ることができ、自然が上手くサイクルする構造を持っていることについて再認識する機会となりました。

好奇心を生かして探究心を育む

学習の基礎体力としての活用

 ChatGPTが学力テストで高得点を取るための勉強に最適なものではないことは先にも述べましたが、ChatGPTを活用して気になったことを対話を通して学習することは探究心を育むことになると考えています。子どもは基本的に好奇心の塊であり、好奇心を生かしてスポンジのように様々なことを吸収していきます。「どうして?」「なんで?」そんな問いを自ら立て、試行錯誤するからこそ自分事として学んでいきます
 子どもが小さいうちは身のまわりとの直接的な関係で身体を通して学んでいきますが、次第に「どうして空は青いの?」「どうして雲は白いの?」「どうして土を掘っても生き物の化石が見つからないの?(幼稚園児の時にカタツムリで真剣に化石を作ろうとしていました…)」そんな知的な疑問を持つようになります。好奇心を持つことは素晴らしいことですが、残念なことに、そのような疑問に対して、分かりやすく論理的に納得するように教えられる大人ばかりではありません。結局「空は青いから青く見える」「雲は白いから白く見える」という答えにならない説明で多くのことが固定観念化されていきます
 そうなると、そもそもを問う好奇心が影を潜めて、学習の動機がテストや成績のためになるなど、本来の学習が果たす目的とは違ったものになっていきます。しかし、ChatGPTはどんな質問に対しても膨大な情報を駆使して説明してくれます。しかも相手の知識レベルに合わせて。そのような好奇心を満たしてくれるツールが使えるということは、気になったことはどんどん探究していけますし、獲得した知識で思考を広げることも可能になり、学習する上での基礎体力が培われていくことでしょう
 確かな学力を築く上で、根本的には知的好奇心が重要であることは言うまでもありません。それを日常的に満たし、自ら探究していく姿勢が育てば、学校や塾で「教えてもらう」ことが必ずしもベストな学習方法とはならないでしょう。
 学校は充実した学習体験の場として、これからも重要な役割を果たすと私は考えています。学校という施設は実践的に学んだり、多様な価値観に触れて刺激を得たりする上で非常に有効な場所です。そこにこれまで以上に学習の基礎体力を身につけた子どもたちが集えばどんなことが起きるでしょう。想像しただけでもワクワクしてしまいます。

アテネの学堂が実現する!?




 バチカン博物館にはアテネの学堂というラファエロの有名な作品があります。この作品に登場する人物にはソクラテスやプラトン、アリストテレス、ピタゴラス、ヘラクレイトスといった数多くの哲人や英雄がいます。こんな学堂が実現したら、日々とんでもないイノベーションが起きることでしょう。現代であればサム・アルトマン、スティーブ・ジョブズ、イーロン・マスク、ビル・ゲイツ、マーク・ザッカーバーグといった起業家たちが一同に会して日々学び合っている状態でしょうか。


 ChatGPTやBing AIの情報の中にはこれらのような人物たちの考えや世界観が詰まっており、学習者は対話を通して容易に学びを深めることができます。人間が生まれながらにして持っている知的好奇心が阻害されるようなことさえなければ、きっと人間はどこまでも楽しく学び続け、できることから実践していくのではないでしょうか。そんなことを山で見た光景から自ずと考えてしまいました。今回は山登りの中でふと頭に浮かんだわけですが、散歩をしていてもたくさんの思わぬ発見があり、頭をリラックスさせながらぶらぶらする余裕のある時間も大切ですね。




 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回はChatGPTで根本的な好奇心を育むことの重要性について私の考えを述べさせていただきました。何か参考になるものがあれば嬉しいです。
 秋もますます深まって気持ちが良い日々ですね。来週からは一気に冬が近づいてくるようですが、散歩や山登りをしていると寒さも忘れさせてくれます。また何かを発見できるかもしれないので、暇を見つけては外での活動を楽しみたいと思います。
 それではまた!

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