2023年の振り返り 〜抱負「新世界」に踏み込めた1年〜
今年も残り僅かとなりました。今回は自分の2023年の振り返りを書きます。個人的な振り返りですが、少しでも読んでいただいた方にとって価値のあるものになるよう努力しましたので、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
2023年に得ることができた手応えと今後の課題をまとめ、迎える2024年を良い形でスタートしたいと思います。
今回の内容では主に2023年の抱負「新世界」と達成したい目標「PBLの体系化」「小説を20冊以上読む」「ランニングの年間記録を更新する」について振り返ります。結論から言うと、「小説を20冊以上読む」以外は抱負も含めて概ね達成できたので、良い1年になったと感じています。ただ、来年に向けて課題もたくさんあると感じています。今回の振り返りを通して課題をメタ認知し、少しでも実現に繋げたいと思います。
抱負「新世界」に足を踏み入れた手応え
今年の抱負は「新世界」で、そのために「毎日小さな挑戦」「クリエイティブに問題解決」を行動目標にして1年間生活してきました。平日の仕事では毎日学びがあり、学んだことを生かしてより良い教育ができるように実践したり、休日は教育関係やテニス(部活動の指導に関することも含めて)の研究をしたりして、研究と実践のサイクルを回し続けて毎日小さな挑戦をすることができたと感じています。
ただ、研究に関しては最近新しい発見が減ってきていると感じています。本はたくさん読みましたが、それほど目新しい内容を多く目にするには至りませんでした。教育系やウェルビーイング系のもので読んだ本はどれも良い内容でしたが、これまでに読んできた本の内容と被るものが多かったため世界観が大きく変わるような印象的な発見はできませんでした。そういった意味でロジェ・カイヨワの『遊びと人間』は非常に読み応えのある内容で、今年読んだ本の中では1番印象深い内容でした。元々大学院の時代から「遊び」を研究していて、カイヨワの遊び理論も少しは齧っていましたが、彼の代表的な著書をじっくり読んだのは初めてだったので、とても新鮮な感覚で読むことができました。カイヨワの遊び理論については、興味深い考察がいくつも見られました。本を読むまではなんとなくカイヨワの理論が古いものであるという感覚だったのですが、遊びに対する視野を広げる良い機会になっただけでなく、今後読む本について考えるきっかけにもなりました。
カイヨワの本を読んで改めて思ったことが、名著と呼ばれる本は読んで得られることがたくさんあるということです。昨年ルソーの『エミール』を読みましたが、内容の概要は読む前から知っていても、細かい部分については知りませんでした。本の概要を知っているだけというのは世界史や倫理を高校の授業で表面的に学んでいるのと同じようなことであり、不十分な知識だと思います。言葉と言葉のつながりからなんとなく過程を想像したり考察したりすることはできますが、名著はその過程の内容にこそ著者の世界観が滲み出ており、それを味わうところに名著を読む醍醐味があると思います。カイヨワの『遊びと人間』を読んで、改めて、歴史的な名著を読む価値について考えさせられました。名著を読んで考察し、世界観を更新するだけでも十分に小さな挑戦になります。
今年も普段の教育活動では様々な問題と直面しましたが、その都度クレイエイティブな問題解決を図りました。クリエイティブな問題解決というのはそれまでにやってこなかった方法を使うことになります。当然全てがうまくいったわけではありませんが、解決方法を考え、アイディアを出すだけでも十分に価値のあることであり、その経験がまた別の機会で生きる可能性があります。
ただ、クリエイティブに問題解決すること自体よりも、実は「問題に直面すること自体」が大事であると最近考えるようになりました。どういうことかと言うと、私としては問題と感じることであっても、他の人からすると問題とは考えていないことが多くあるということです。例えば、連絡の手段で紙を多用する人の中には、同じ連絡をする際にデジタルを活用すれば時間と労力、利便性といった面で大きなメリットが得られるにも関わらず、デジタルを活用せずに「ずっとこうしてきたから」という理由でより良い方法を選ばないというケースがあります。つまり、紙の不便さを問題と考えていないということです。
紙とデジタルに関する問題は学校では数多く見られます。と言うより、GIGAスクール構想が始まっているにも関わらず学校が依然として圧倒的な紙文化であるゆえに、デジタルのメリットを知っている人間にとって様々な場面で問題を感じるのだと思います。より効率的で効果的な良い形を目指している中で問題を発見できた時点で、「クリエイティブに問題解決」というのは半分クリアしていると言っても良いと思います。問題を感じたのであれば、後はそれを解決するために良い方法を考えるだけです。良い方法というのは決して全てデジタル化することではなく、時にはアナログが価値を発揮することもあります。その判断を適切に行い、問題解決するためにも、日頃から考えたことを実践に移す行動力、そして経験値が重要になります。また、問題を解決したと思っても、それによってまた新たな問題を創出してしまうこともあります。私はそういう問題と向き合うことにこそ、創造力の本質があると思います。誰も対応することがなかった問題と直面できるというのは前進している証と考えたいところです。
今年は積極的に問題を発見したり、前進する中で新たな問題を生み出してクリエイティブに解決を図ることができました。前進した分だけ新たな挑戦が必要になるため大変ではありますが、挑戦することはとても楽しいことなので、来年も継続してクリエイティブに問題に対応していきたいと思います。
PBLの体系化には制作の多様性とレポートを前提にした学習
今年はPBL(問題解決型学習)を体系化するための実験的な取り組みに挑戦しながら教育活動をしました。PBLは近年注目されている学習者が主体的に課題を設定して解決を図り、その中で学びを深く広くしていくというものです。これまでよく見られた、教師から知識を学ぶスタイルとは違い、学習者が自ら課題を設定して、必要なことを学んだり、実践の計画を立てたり考察をしたりという、学習者の主体性に重きが置かれる学習方法になります。PBLでは教師から教わる部分ももちろんあって良いわけですが、それは主に個別の課題意識に基づいたものになります。そのようなPBL型の授業では教師からの一斉指導の時間がないわけではありませんが、授業の大部分は生徒が自らの判断で学習活動に取り組むものになります。
元々、私が担当する美術科では、教材設定さえ問題なければ活動がPBL化する傾向が強いものです。ただ、この教材設定に課題があるゆえに、学習のPBL化を阻害してしまうケースが多くあり、私自身も昨年や今年になってようやくPBL化しやすい教材設定の基盤を掴むことができるようになってきました。
これまで、私は制作するものが分かりやすいように「ステンシルで年賀状」「ペーパーナイフ・バターナイフ」「自然物と人工物を組み合わせた色面構成」など、ゴールが明確なものを教材にしていました。ただ、年賀状の版画を学ぶのではなく日本の美を生かした版画表現を学ぶのであり、ペーパーナイフの作り方を学ぶのではなく木材を生かした工芸について学ぶのが本来のミッションだと思います。
ゴールの幅を狭めることは、学習者にとって分かりやすい教材になる一方で、個々の興味関心に即したものに必ずしもなるわけではないため、主体性を生かした学習を考える上で大きな障害になってしまいかねません。なので、私は教材の抽象度を高め、「ペーペーナイフ・バターナイフ」だった教材を「暮らしで生きる木の工芸 クラフトデザイナー体験」に、「自然物と人工物を生かした色面構成」から「生活を彩るデザイン グラフィックデザイナー体験」という感じに、クラフトデザイナーやグラフィックデザイナーになったつもりで、素材や道具を生かして作りたいものを作るという方向に転換しました。
その結果、工芸ではペーパーナイフやバターナイフもありましたが、皿やスプーン、フォーク、箸、箸置き、スマートフォン置き、キーホルダー、さらには廃材を切り揃えてジェンガを作る生徒も出るなど作品が多様化しました。デザインも同様に自然物や人工物を生かした色面構成もありましたが、キャラクターデザインや文化祭のポスター、ネームカード、ストーリー性のあるアニメーション、さらには衣類の染色やデザインなど、グラフィックデザインに関する様々な分野に跨った制作が見られるようになりました。
工芸もデザインも、これまでは1つの教材で一つの作品というのが通常でしたが、周りの生徒がそれぞれ違った制作をしていることで刺激を受けるため、一作品に留まらず、積極的に複数の作品を制作する生徒も多く見られました。そして、次々と作品に取り組むに従って技術も向上し、より質の高い作品も生み出されるようになっていきました。
学習内容をわかりやすくするためにゴールを絞るというのが良い面で効果を発揮することもあると思いますが、それはどちらかと言うと短期的な取り組みにおけるものであると思います。長時間にわたって取り組む内容であれば、長い時間の中で制作したいものも変わりますし、時間に幅がある分、多様な制作もできるようになります。生徒が主体性を発揮して自ら課題設置して制作に取り組むためには「暮らしを彩る」「暮らしで生きる」「自分を見つける」など大きなテーマや工芸・デザインなどの学習分野は大事にしつつも、制作するものは最終的に生徒が自由に決めることができるようにする教材設定が大切ということに確信を持つことができました。
今年、教材設定に加えて、学習のPBL化においてもう一つ大事なポイントがあることを発見することができました。それは学習内容をレポート化するということです。これまでにもレポートには取り組んできましたが、今年は一貫して振り返りシートとして使っているGoogleスライドをそのままレポート化するという方法をとってきました。昨年までは普段の授業で取り組んでいる振り返りとレポートが別々になっていましたが、今年からはレポートに一本化しました。
どうしてこれがPBLの体系化に一役買っているかというと、普段の学習の記録はレポートの一部であるだけでなく、学校外で取り組んだ内容も全てレポートの一部に加えることで、単元を通しての学びが大変なボリュームを持ってまとめられていくことになります。学校から出たところで、学んだことを基にさらに学習を広げる。そんな学びがこれまでにも教師の目の届かないところで行われていたと思いますが、そういったこともレポートに取り込めば教師は生徒の学習がどのレベルまで到達しているのか一層見取ることができます。
振り返りは学習のメタ認知という面で無視できない価値があるため、基本的に授業では毎時間統一されたフォーマットの振り返りシートに振り返りを入力するようにしていますが、振り返りのレベルを超えてレポートとしてさらに深いレベルでの学びが達成できるのであれば、統一された振り返りシートの形に囚われる必要もなくなります。なので、私は学習内容を見取ることさえできる状態であれば、振り返りシートをそのまま使っても良いことにしていますし、逆に自由にアレンジしてこだわりのレポートにすることも認めています。
そもそも、学んだことや実践したことをレポートにするというのは、大学生が卒業論文の研究をするのと同じような構造であると考えています。つまり、決して新しいことをやっているわけではなく、環境的にこれまでどうしても実現が難しかったというだけの話だと思います。
一人一台端末が実現し、学習内容をレポート化することが容易になったことに加え、ルーブリックという達成度を生徒と教師が共有するツールがGoogleクラスルームで可能になり、生徒が学習を調整しやすくなったことや、教師が生徒に合わせて必要なフィードバックをすることがこれまで以上に容易になったこと。こういった状況が大学生のような研究を高校生以下の学習者にも可能にしたと言えます。
今年、PBLの体系化については教材設定とレポートによってかなり前進したと感じています。今後はこの形をより生徒に取り組みやすく届け、充実した学習環境を実現していきたいと思います。
小説20冊以上は早々にギブアップ…
しかし、自分が今読みたい本が明確化
今年は読書のメインを仕事に関係するものから思い切って小説に切り替え、世界観の拡大に努めようと考えていました。しかし、これは1月の段階で手応えが鈍り、2月に入る頃には読みたい本はまたしても教育に関するものがメインになってしまいました。先にも述べたように、教育関係の本を読んでもあまり目新しいことはなく、読んだ後に「ただの確認作業になってしまった…」と思うような状態に陥りました。
そんな状況から抜け出して、また読書で得られるものが多くなったターニングポイントがありました。それはこれまでメインで読んできた教育や美学、または社会学に関すること以外の分野の本です。例えば『縄文文化が日本人の未来を拓く』は古代から続く日本文化について考えることを通して、本来人類はどのようにして生きてきたのかを考察し、今後の日本だけでなく世界が文化とどう付き合っていくことができるのか、新たな視点を得ることができました。最近は日本の美意識や世界観に興味が湧き、それに関する本を中心に読んでいます。当たり前のことかもしれませんが、これまであまり読んでこなかった分野の本を読むと得られる知見はたくさんあります。これまでじっくりと触れてこなかった内容でも、興味が持てるものであれば積極的に読んでいきたいと思います。
結果として小説を20冊以上読むことはできませんでしたが、今年もたくさんの本を読んで知見を広げることができたのは良かったと思いますし、自分が本当に読みたい本が何だったのかを改めて確認することができたことはポジティブに考えたいです。また、カイヨワの『遊びと人間』や昨年読んだルソーの『エミール』のような読み応えのある歴史的名著は内容が非常に濃いため、これからも積極的に読んでいきたいと思います。
ただ、今年あまり読めなかった小説もある程度は読んで、純粋に読書を楽しみたいとも思っています。そのためには時間の余裕が必要であると感じました。以前に比べると、学校で仕事をしている時間は月間で100時間近く減っていますが(冗談のように聞こえるかもしれませんが、以前は7時前出勤、22時半退勤がアベレージでした)、まだまだ時間に余裕が持てていません。来年小説をたくさん読みたいと思うものの、そのためにはさらに時間に余裕を持てるような生活と働き方を実現する必要があります。来年は部活動(下校指導)終了後1時間以内に退勤することを目指してみようと思います。あまりに退勤時間が早すぎると学校周辺は大渋滞でそれもまたストレスなので、戦略的に1時間と考えています(笑)
ランニングの年間走行距離は大幅に更新
昨年は大晦日に23キロを走破してギリギリ年間走行距離を更新しましたが、今年は夏休みにほぼ毎日ランニングをしたため8月の段階で昨年の記録を更新。大きく年間走行距離を更新することができたので、間違いなく過去最高に良くランニングに取り組めた1年になりました。
ランニングにしっかり取り組んでいる人と比べると、大した距離とペースではありませんが、少しずつ成長できていると感じています。ただ、成長すること自体は良いことですが、来年、再来年とひたすら記録を伸ばして成長することをを目指す危険性も忘れてはいけないと考えています。
今年の記録はまだ余力を残した上での数字ではあるので、今後も記録を伸ばすことは可能だと思います。しかし、それを際限なくやろうとすると、必ずどこかで無理が出てしまいます。何事も丁度良いところでやめることが大切です。ランニングは記録のためと言うより楽しみとリフレッシュのためにやっていることなので、おそらくこの先数十年はやるでしょうが、記録はどこかで頭打ちしますし、100歳を超えても走るかというと厳しい可能性が高くなるでしょう。あくまでランニングは趣味でやるというスタンスを忘れずに、無理をせずに取り組んでいきたいと思います。
今年は休日以外にも走ることが多く、下校指導後にそのままランニングに出たり、ちょっとした時間があればすぐに走りに行ったりで、気分転換のような感覚で走ることも多くありました。短時間の運動は知的労働をしている場合にはむしろリフレッシュ効果があるようなので、来年もうまく運動を取り入れて仕事も効率アップさせていきたいと思います。
最後まで読んでくださってありがとうございました。今回は2023年の振り返りということで、今年の抱負や達成したい目標について自己評価してみました。概ねやりたいと思ったことは達成できましたが、今後も継続して取り組んでさらに内容を充実させていきたいものばかりです。これからも新しい世界に踏み込んでいくことを楽しみ、研究や趣味を充実させていきたいと思います。2024年が今から楽しみです!
それでは皆様、良いお年をお迎えください。
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