乾燥棚に展示棚としての役割を持たせる
これまで絵画などの作品を乾燥させるために活用してきた乾燥棚の使い方を工夫して展示棚としての役割も持たせるようにしてみました。
美術の学習では制作だけでなく鑑賞による学びも大切であることは多くの美術の先生が認めていることだと思います。制作がメインの授業であっても、その中に鑑賞の要素が入ることで、学習者は他者からの刺激を得て自らの世界を拡大する挑戦的な表現行為が促進されます。
しかし、鑑賞の機会作りに苦慮されている先生も少なくはないと感じています。対話型鑑賞にしろ、制作した作品の鑑賞にしろ、ある程度の授業実践方法を持っていないと学習者が満足できる授業にはなかなかならないと思います。私もこれについては日々研究と実践を繰り返しています。
そんな少々難易度が高い授業としての鑑賞に比べると、乾燥棚の展示棚化は安定して実践できる鑑賞学習であり、一旦環境づくりをすれば継続させることができるものです。
私は美術の授業中は生徒の移動を基本的に自由にしているため(授業の最初は自分の場所で制作をスタートし、中盤以降はやりたい場所を自分で選ぶ)、自然と鑑賞をしながら制作に取り組む生徒も多いですが、そうは言ってもクラスの全ての作品を目にしているわけではないので、全ての作品が見渡せる機会を増やしたいと常々思っていました。そのような背景から、今回乾燥棚の展示棚化を考えるに至りました。
まだ今年の授業が始まったばかりなので、これによってどのような状況が生まれるかは見守っていく必要があると思いますが、早速少し良い手応えがあったので今回記事にしてみました。
網を間引くことで作品の状況が見えやすくなる
以前から乾燥棚の網を一段飛ばしで使っていたので、普通に全ての網を使っている状態よりは他者の作品が見える状態でしたが、今年は網を2段飛ばしにしてさらに作品が見えやすい状態にしてみました。
これまでも乾燥棚に集結した作品を見て感動する生徒はいましたが、このように明らかに目に入る状態にすると、他者の表現に対してこれまでよりも関心を持ちやすい環境になったのではないかと思います。乾燥棚の場所も以前は全て教室の隅にしていましたが、教室後方(出入り口も後方)のスペースに4つのうち3つを移動させたので、授業の最後に乾燥棚を覗いて教室を後にする生徒も少し増えました。
乾燥棚を展示棚として使うベストの形は作品全体が見える状態だと思いますが、それは環境的に難しいので、これぐらいが妥協点と言ったところでしょうか。逆に、これぐらいの見え方ゆえに覗いてみたくなる好奇心を刺激すると期待しています。
作品の回収も容易に
作品が乾燥すれば次のクラスが利用できるように乾燥棚から作品を回収しますが、これまでに比べて格段に作品が抜き出しやすくなりました。これまでの半分ぐらいの時間で作品を回収できるようになり、授業中に回収しても時間にゆとりがもてるようになりました。
これまでは少しコラージュして盛り上がった作品でも上の網に触れて壊れないようにデリケートに引き出す必要がありましたが、スペースに余裕ができたため、楽に回収できるようになりました。
立体作品でも置ける
これまでも平面に立体的な工夫を施す作品はたくさんありましたが、過度に盛り上がったものは乾燥棚に入れることができず、「先生、棚に入りません!どこに置いたら良いですか?」と生徒から聞かれることが度々ありました。しかし、これぐらいのスペースの余裕があれば、かなり盛り上げられた作品でも対応できますし、無理なら乾燥棚の上に置くこともできます。
これまでは乾燥棚が2段重ねで棚の上まで2m以上あり、中学生が作品を置くのは困難でしたが、今は1段になって上に置ける高さとなったので、中1の生徒でも難なく作品を置くことができるようになりました。
アレンジをして思ったのが、これまで乾燥棚の機能をかなり無駄にしていたということです。棚の機能をフルに活かせば四つ切りサイズの画用紙を120枚以上収める事もできますが、そんなに棚を全て使うことはありませんでしたし、高いところは誰も使わないような状態でデッドスペース化していました。今回のアレンジでかなり最適化されて棚を有効活用できるようになったと感じています。
使えていないと思うものがあれば思い切って変更を加えることが大切ですね。こんまりメソッドではありませんが、ときめく空間づくりを心がけていきたいものです。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
私の使っている美術室の乾燥棚が組み合わせを変えることができるもので、しかも同じものが4つあったというのは、今回の変更を実現させる上で幸運なことでしたが、工夫次第で乾燥棚と展示棚をミックスさせたものもできるかもしれません。今回の内容が読まれた方にとって参考になるものであれば嬉しいです。
今回は乾燥棚を活用した鑑賞学習についてお話ししましたが、乾燥棚以外でも普段から鑑賞を充実させる展示環境の工夫は色々とあると思いますので、できることからコツコツやっていきたいと思います。
それではまた!
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