肌の色は色彩学習の良い教材

 私は普段から、生徒たちに色を自分で調整し、自由自在に色彩表現をする手段として三原色(赤、青、黄)を中心とした混色を指導しています。これにより、彼らが色を柔軟に扱う力を養うことができると考えています。しかし、指導を続ける中で、生徒たちの中には強い固定観念が残っていることに様々な場面で気付きます。特に「肌色」の作り方について質問される時に色への固定観念を感じます。

 きっと多くの人が肌の色を表現する際に同じような疑問や質問をしたことがあるのではないでしょうか。保育園や幼稚園、小中学校ではよく人を描く機会があり、その際に「肌色」を使うのが当然のこととして考えられてきたと思います。しかし、肌の色は本来人それぞれですし、同じ人でも肌の場所によって色が大きく異なります

 それゆえに、「肌色」という言葉が生徒の口から出た時というのは、生徒が色彩についてそれまでの固定観念を破壊して、新たに認識を深める非常に良い機会になります。今回は「肌色」という言葉が授業で出た時の生徒への仕掛けを紹介します。




肌色の固定観念と肌の色の多様性

「肌色」という言葉は、かつては絵具の色の種類として広く使われていましたが、最近では「ペールオレンジ」や「薄橙」という言葉が使われるようになっています。しかし、人々の間では「肌色」という言葉が根強く残っており、その影響からか中学生も何の疑いもなく「肌色」という言葉を使い、肌の色を表現する固定的な色が存在すると思い込んでいることが多いです。

 しかし、肌の色は本来多様であり、陰影や光の関係、体温の上下によっても変化するものです。それゆえに「肌色」と色を固定することは本来不可能だと考えています。私は多様な肌の色を前提にした「肌色」という言葉の存在自体を否定するわけではありませんが、肌の色が多様であること、そして色彩表現する際には細かな色の調整が必要であることを生徒には認識してほしいと思っています









 以上の色はどれも肌の色であり、変化はグラデーションで考える必要があります。昔のように絵の具に「肌色」が存在すると、それ以外の色を肌の色として使いにくくなってしまう可能性があり、これは「肌色」による色彩学習への弊害となります。


肌の色彩表現



 この絵は、三原色と白を使って肌の色を再現する教材として私が描いたものです。この絵の完成度は置いておいて、これを見れば基本的には三原色と白があれば肌の色を再現できること、そして描く部分によって色を調整することの重要性が伝わると考えています。生徒が「肌色を作りたい」と言った時に、「オレンジと茶色、白でできるよ」と言うのは分かりやすく、誰でもすぐに肌の色を作ることは可能ですが、これでは自由な色彩表現力がなかなか身につけられません。大切なことは、実践しながら理解度を深められるような仕掛けをすることです。なので、「三原色と白で調整してごらん」と私は言うようにしています。これは答えを教えるのではなく、気がつくための仕掛けを施していると言えます。こうして肌の色を調整して作る経験を得て、色に対する柔軟な考え方を培うことができます。


青の重要性

 生徒たちにとって、青を混色として加えることは意外に感じるかもしれません。これはおそらく大人たち一般の人々にとってもそうでしょう。それゆえに青が入ることでより忠実に肌の色が再現できる経験は、色彩表現において重要な意味を持っています。このような経験を通じて、生徒たちは色に対する固定観念を壊し、常にニュートラルに色を考え、自分で調整して色彩表現する力を養うことができるようになります

 このような色彩表現の指導は、肌の色に限ったことではありません。例えば、木々の緑を表現する際に、ただ黄緑や緑を使うだけでなく、コンスタブルがやったように赤をほんの少しだけ置いて、緑を際立たせるという高度なテクニックもあります。色を通じて多くのことを学び、経験することができるのです。

 色に対する固定観念を壊し、自由な色彩表現を促すことは、美術教育において非常に重要です。生徒たちが自分の感性を信じ、色を自在に操る力を身につけることで、彼らの創造力がさらに豊かになることを願っています。


 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回は私が中学校での美術指導の中で指導する肌の色彩表現について紹介させていただきました。何か参考になる視点があれば嬉しいです。これからも、生徒たちと共に自由な色彩表現を探求していきたいと思います。

 もうすぐ夏休み!と言っても部活や研究・研修で息つく暇もない過酷な夏の日々が待っていますが、これまでよりは多少趣味に興じる時間もつくれそうなので、少しだけ楽しみにしています。

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