学期末の大掃除で美化活動

 学期末定番の大掃除が1学期の終業式の前日に行われました。教室は掃除の後にワックスをかけるので机椅子は全て廊下へ出して床や教室の隅々まで拭いたり磨いたりしますが、美術室は床が謎のコンクリート加工ということでワックスをかける必要がなく、机椅子の場所はそのままで行うので、割といつも通りの掃除をしました。しかも、普段から美術室は時間いっぱい掃除に取り組んでいるので、特別に綺麗にする必要もなく、いつも通りの掃除で十分という状態でした。普段から掃除に励んでくれている美術室のメンバーには感謝です。
 大掃除は普段の掃除時間の倍の30分間ということで、普通に掃除をすれば15分余るわけですが、せっかくなので掃除以外の美化活動に取り組んでもらうようにしています。これまでにやってきたこととして、

・すのこラックのペイント
・ダンボール棚のペイント
・美術室の汚れた壁をグレーにペイント(もちろん校長に許可を取った上で)
・ダンボールパネル(90cm×180cm)や画用紙(絵画制作の下敷き)にステンシルでペイント

以上のような美化活動に取り組んできました。どれも掃除時間が終了しても少し居残りしてやり続けるぐらい生徒は夢中で取り組みます。ちなみに、この大掃除の後半15分間で行う美化活動の時間のほとんどは、私は別の担当場所である自分のクラスの教室や廊下の掃除監督に行くので、活動の一部始終を把握しているわけではありませんが、出来上がったものを見れば大体どんな感じで作業が進んだのかは想像ができるので、生徒が短時間で色々と工夫を試みたことが分かります。
 今回は先日行った大掃除の美化活動で取り組んだダンボールパネルと絵画制作する際の下敷きに利用する画用紙へのステンシルペイントを紹介します。もちろん掃除時間の美化活動としてだけでなく、教材としてもステンシルの版画は面白いので、何か参考になることがあれば嬉しいです。

ステンシルの版とスプレーがあれば手軽に楽しめる

 模様や図柄をステンシルの切り絵で作成すれば、スプレーで簡単に版画ができます。もちろんステンシルを作成するのは手間ではありますが、この作業自体が充実感であったり達成感であったり、ものを作るのが好きな人にとっては多少なりともウェルビーイングに貢献することなので、暇を見つけてはステンシルを作成しておくのが良いでしょう。私の場合は教材の一環として和柄のステンシルを多数作成しています。
 着彩はスポンジなどに絵具をつけてポンポンと穴から絵具を通しても良いのですが、たった15分程度しかないので、スプレー(自腹で購入ですが…)でサクッと着彩できるようにします。スプレーも一色だけでなく、色が混ざり合って見える視覚混合の原理を利用すれば、少ない色数でも多様な色彩を表現することが可能です。



 作業前に生徒に少しデモンストレーションで着彩して見せると「うわぁ!綺麗!」「面白そう!」という反応で、一瞬で興味を持ってくれました。実はステンシルは2学期に学習する版画の教材なので、美術室掃除の生徒はさりげなく予習に取り組んだことになります。
 導入に成功して、生徒が意欲を持って美化活動に取り組み始めたのを確認できたので、他の掃除場所を回りました。そして、そのまま掃除終了の終わりの時間を迎え、他の生徒が一斉に待っていましたと言わんばかりに下校したり部活動に行ったりし始めるタイミングで美術室に戻ると、依然として美術室担当の生徒は美化活動をしていました。こちらから感想を聞いたわけではありませんが、生徒たちから自然と「凄く楽しかった」と嬉しい感想をいただきました。
 

美化活動の楽しさを伝えたい

 掃除に真面目に取り組むことはできても、主体性を発揮してやりたいだけ掃除をする生徒はあまり多くないと思います。多くの場合は掃除時間の最後の方は自分の役割を終えて他の生徒と暇つぶしのコミュニケーションをしているのではないでしょうか。しかし、興味をもって取り組める美化活動であれば、自然と時間いっぱいどころか、時間を超えてでも取り組もうとするものです。そういう美化への主体性を刺激するのも美術教育の大切な役割であると私は考えています。
 与えられた仕事をこなすだけだとさっさと終わらせたくなるものですが、自分の裁量でできて、しかも楽しい仕事であれば、掃除の時間が終了するのを待つ受動的な状態ではなく、時間の限り工夫して活動に取り組む能動的な状態になります。本来、美に触れる体験というものは感動の伴った充実感のあるものですが、そこに能動性がなければ体験価値も大きく異なるものになってしまいます。いくら花が好きでも、ただ指示された通りに運ぶだけだと花と触れ合う感動は長続きしませんが、運んだ先でお客さんに向けてフラワーアレンジメントをしたり、花を通してのコミュニケーションがあれば充実感を得たり、花の美しさについてさらに深い認識を持てるようになったりするでしょう。このような体験の違いを教育の現場でもよくよく考えて指導に生かす必要があると思います。
 ただ、「能動的に活動しよう」「主体性を発揮して」と教師が生徒に言葉で促しても、大した効果はありませんし、そのような言葉で動いたとしても、それは受動的な活動にしかなりません。生徒が能動的に活動できるようにするために大切なことは、モチベーションに火をつける「仕掛け」です。近年教師は知識を教えるティーチャーというよりは活動を促進するファシリテーターとしての役割を求められるようになっているように、生徒がその気になる「仕掛け」を考え、興味を持って活動する生徒を見守ったり、話を聞いたり引き出したりしてメタ認知を促したりと、生徒の内発的な動機に主眼を置いた指導をすることが大切になっています。
 生徒が「楽しそう」「やってみたい」と思えるような仕掛けをするためには、道具や材料といった準備が必要になります。これは一手間かかることではありますが、パーティーや旅行の計画を練るのと同じで、考えること自体が楽しい側面もありますし、実際に楽しんで充実した活動をしてもらえると嬉しいものなので、教師の仕事のやりがいになることだと思います。政治のエンタメ化という言葉を最近よく聞きますが、教育こそあらゆる人に関わるエンタメであると思いますし、そうなって欲しいと願っています。

 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回は学期末の大掃除でステンシルを活用して行った美化活動について紹介しました。掃除だけでも道具が充実したり取り組み方を工夫すればとても楽しいものになりますが、アートを取り入れた美化活動も環境を整える掃除の一環として行う価値があると思いますので、今回の内容が参考になるものになれば嬉しいです。
 夏休みもあっという間に1週間が過ぎましたね。1日1日を大切にして2学期に向けて良い時間を過ごしていきたいものです。
 それではまた!

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