岡山県中学校教育研究会美術部会岡山県大会で行ったワークショップの振り返り

 先日7月31日に建部町文化センターで中学校美術部会の岡山県大会が開催されました。今回はこの研究大会の振り返りをブログにまとめました。

 私は倉敷支部の発表を担当させていただき、「ICT活用で広がる学びの可能性」について研究発表し、ICT活用が目的ではなく、その先の生徒の主体的な学習や課題解決型の学習にICTが助けとなってくれること、そしてやりたいことに安心して挑戦できる充実した学びが約束された学習環境の中で実現されることが期待される幸福感について私の考えを発表しました。また、倉敷支部では私以外にもう一人が「共通事項に自ら気づく授業展開」について発表しました。

 4年前から私は倉敷支部の研究主任ということで、支部の発表全体をコーディネートさせていただきました。支部の持ち時間が90分ということで、発表2人が質疑応答を含めて35分程度、指導講評10分程度というのが普通の流れになるところだと思いますが、共通事項とICTを発表の軸にすることを決めた際に、参加者に体験を通して学んだり、会の中で実践に向けた一歩を踏み出す機会にしたりできたらと思い、ワークショップをメインにして実践発表は質疑応答含めて30分で二つ行い、40~45分程度ワークショップの時間を設けることにしました。


ワークショップ「造形美の遊園地」



 今回の倉敷支部の発表テーマが「生徒と教師が共にワクワクする創造的な学びの冒険」ということで、共通事項にしろICTにしろ、ワクワクに溢れた美術の学習を実現する視点をポイントにして研究発表しました。そして、ワークショップも同様に共通事項への意識を大切にして、色や形、構成、材料などの造形要素の働きを捉え、作品全体の特徴からイメージを捉えることをポイントに参加者には取り組んでいただきました。

 最初に「造形美の遊園地」という言葉からイメージできることを個人で1分程度でメモ書きして、5〜6人グループでテーマを合わせて制作をスタート。材料は部屋の中央に用意してあるので、必要なものは自由に利用できるようにしておきました。参加者のほとんどが美術教師ということで、みるみるうちに作品が発展していきました。参加者の年齢層は20代から60代と非常に幅広かったのですが、皆さん童心に帰ったように造形を楽しみ、コミュニケーションしながらアイディアを発展させているのが印象的でした。








 私は作品の変化の過程を記録しながらGoogleスライドに作品をまとめていきました。今回、私の発表ではICTを活用して鑑賞の授業を協働的に行う方法を紹介したので、学校で使用しているChromebookと私が普段使っているWindowsとMacBookを試しに使える状態にしておきました。建部町文化センターはWi-Fiが使えないということで、私のポータブルWi-Fiで3台をギリギリ使える状態にするのが精一杯でした。本当は一人一台端末ができる環境が望ましかったのですが、ある程度何ができるかを知ってもらう機会にはなったと思います。倉敷支部の発表が終わって昼休みになってからも興味のある人が触りに来られたり、活用方法について質問に来られる人が何名かいました。


造形意欲を引き出す材料

 今回のワークショップは倉敷支部の研究チームで案を出し合って計画を練り上げてきました。「造形美の遊園地」というタイトルは倉敷支部の発表テーマ「生徒と教師が共にワクワクする創造的な学びの冒険」から連想して、参加者全員でワクワクする創造的な造形物、遊びのある場を生み出したいというイメージから生まれました。

 このワークショップの案を考える前に、昨年の夏季研修でGoogleスライドを活用した色面構成の研修会を行いました。その研修ではGoogleスライドを活用する前に積み木やレゴブロックなどアナログの材料で何か面白い形を作りました。さすがに美術の先生たちなので限られた素材でも創造性あふれる作品が5分程度で生み出されていました。しかし、材料が豊富でないためできることも当然限られます。そこで材料に制限のないGoogleスライドを使って造形美制作し、素材が自由に使えることの可能性、そして他者と協働作業することで生まれる予想外の表現といったことを体験してもらいました。結果的にGoogleスライドで魅力的な作品が多数生み出されていました。





 この研修を通して、アナログでも可能な限り使える素材を豊富に用意しておき、アイディアが生まれる仕掛け(題材のコンセプト、アイディア出し、作業環境)を工夫すれば、自然と創意あふれる作品が生み出されるのではないかという仮説を立てることができ、今回のワークショプのベースをつくることができました

 美術や図画工作の授業でしばしば見られ制作ツールキット。これを使うこと自体は否定しませんが、それだけだと当然全員の作品が同じようなものになってしまいます。例えばオルゴールやテープカッターの木製キットで、形は全て同じで彫刻や絵付けによる図が違うだけだと、できる工夫に制限がかかり過ぎた状態と言えます。木材であれば粘土や他の素材との接着もできますし、機能性を残しつつ木材に穴を開けたり形状を変えたりすることもできるはずです。生徒が自由自在に表現し、多様な個性を反映させてお互いに刺激を与え合いながら協働的に学ぶためには、制作ツールキット以外の要素が重要になります。

 今回の研修では材料を倉敷支部で全て用意しましたが、これを日頃の授業で行うには限界があります。それゆえに、使える材料を各自で持ち寄って、自分が使わなかった分は他者との共有に回すという方法が取れると、自然と多様な工夫が生まれるようになります。材料の存在が色や形、質感を生かした工夫を引き出すスイッチになるので、普段の教室でも材料が自然と集まるような仕掛けや、それを想定した題材設定が大切になると思います。

 今回のワークショップで創造力を引き出す授業や教室の在り方について参加者のメタ認知を促すまでの状況に至ったかというと、感想や意見交流の時間を取ることができなかったため少し怪しく、ただ「楽しかった」で終わってしまっていないか危惧するところはあるのですが、会の最後に助言者による指導講評でワクワクの語源は「湧く湧く」であり、制作に関わる主体の内面から創意は湧き出るものという主旨のお話をいただきました。言葉の力は偉大ですね。この一言に全てが集約されていました。生徒の可能性を信じて、意欲が自然と湧くような仕掛けを教師が準備する。そういう視点が大切であることを参加された方々に感じてもらえたのであれば嬉しいです。


 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回は美術部会岡山県大会で行ったワークショップの振り返りを記事にまとめました。読まれた方にとって何か参考になれば嬉しいです。

 気がつけば8月で夏休みも中盤ですね。この夏休み中はアパートから新居への引越しもあって、普段の夏休み以上に休む暇なく動いていますが、このブログとスポーツ後の冷水シャワーのおかげで心身共に健康生活が送れているような気がします。引越し作業もあと少しで終わるので、お盆から夏休み終盤にかけてはゆっくりしたいと実は願っている今日この頃です。ちなみに今は部屋がミニマリストみたいになっています(笑)



 次回はブログ開始5年目について徒然なるままに文章を書こうと思いますので、よかったらまた読んでいただけるとありがたいです。

 それではまた!

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