地元の福知山を散歩して気がついた街の可能性と魅力

 お盆ということで地元の京都府福知山市に2日間帰省しました。お盆の時期ではありますが、実家の達脇ベーカリーは仕事をしており、しかも大口の注文が入ったということで、実家に帰るなり即パン屋の手伝いをしました。手伝いと言ってもパンの製造ができるわけではないのでパンの包装を行い、懐かしさに浸りながらエアコンのない灼熱の工場(大きな釜があるのでエアコンが効かないため、窓を開けて扇風機で暑さをしのぎます)でひたすら作業をしました。たまにはパンの包装という単純作業に徹するのも悪くはないものですね。実家を離れて全く違う生活をしていると、こういう体験がとても新鮮に感じられます。昔は手伝うのがなかなかの苦痛でしたが(苦笑)。あと、少しでも親孝行をしなければと最近は思うようにもなりました。

 滞在2日目の朝は30分程度散歩をしました。30年以上前からほとんど変わらない土手や自然の景色、大学生となって福知山を出てから大きく変化した市街地や商店街、少しの時間ではありましたが、色んなことを感じたり考えたりしながら散歩することができました。

 今回は散歩をしていて特に印象的だった福知山の姿について書かせていただきました。地元を離れても大好きな福知山への思いは変わりません。残して欲しいところや生かして欲しいところについて率直な地元への想いと共に少し考察をしてみました。


古い街並みの面影を残す長屋

 城下町である福知山には今もなお長屋の面影が商店街などに見られ、私の実家も昔は隣の家とくっついた状態(厳密には猫が通れるぐらいの隙間が隣の家との間に存在)でした。昭和以前であれば家が壁で隔てられた長屋は城下町には普通に見られた光景だったと思いますが、最近はほとんど見られなくなりました。しかし、福知山には割と最近まで典型的な長屋が結構たくさん存在していました。


 上の写真は福知山城のすぐ近くにある長屋のエリアです。これを見ただけでは普通の古い長屋としか思えないかもしれませんが、私はこういった長屋を生かせる福知山であって欲しいと思います。なぜなら、城下町の象徴的な場所として非常に貴重であり、城からすぐ近くにあるため観光スポットにもなり得ると考えられるためです

 まだ住民が普通に生活しているので、観光スポットにする話を勝手にするのも良くないかもしれませんが、古くからある長屋がほとんどなくなってしまった今、こういう貴重な場所を大切に保存して欲しいと思います。また、京都や倉敷のような規模ではありませんが、福知山に残っている商店街や古い街並みは利用の仕方次第で多くの人に楽しんでもらえる魅力を発揮できると考えています。

 滋賀県の長浜市は町おこしの成功例としてとても参考になると思います。長浜市も城下町で古くから商店街が栄えていましたが、福知山など他の地域の商店街同様に次第に廃れていました。しかし、黒壁スクエアという、ガラス工芸のショップやギャラリー、体験教室など、アートとデザインが楽しめる場所が充実しています。この場所では伝統的建造物がうまく活用されており、黒壁関係のお店と飲食系やお土産系、ガラス以外の伝統工芸などの様々なお店が相乗効果で栄え、商店街が賑わっています。福知山にも長浜のように古い街並みや商店街が存在するわけなので、何か福知山ならではのアート&デザイン体験ができるような魅力溢れる雰囲気ある場所があれば、そこを起点に街も栄えるのではないかと思います。

 長屋や商店街に対する古臭いイメージも、ちょっとしたデザイン面の工夫(見かけだけでなく、どのようなコンテンツにするか)でレトロで味わいのある非日常性を楽しめる場になるのではないでしょうか。


 最近になって通りが綺麗に作り直された広小路という場所が実家の近くにあります。この通りは夏祭りの場所でも利用され、お盆は盛り上がるのですが、綺麗に作り直されたと言っても普段はそれほど人で賑わっている感じでもありません。私が小学生だった頃は色んなお店があり、特に模型屋には足繁く通ったものですが、現在はほとんどが飲食系のお店となり、買い物やワクワクするような体験を楽しめるような場所が多くはありません。この周辺に生活している人はこの通りを飲食に利用するかもしれませんが、観光客や買い物客が普段から楽しめる場所としては十分ではないと思います。

 この通りが多くの人から訪れたいと感じてもらえる場所にするために何かが必要であると考えながら散歩していましたが、やはり福知山ならではの良さを感じられる「特別さ」が必要であり、この街並みを生かした地域の工芸や特産物を楽しみつつ、体験もできるような場所にする必要があると思います。京都や倉敷のような大規模な歴史地区で、見どころもたくさんあるような場所であれば自然と人は集まってきますが、そういうスポットがたくさんあるわけではない福知山の場合は街自体をフルに生かして体験的に楽しめるようにしないと、人はなかなか集まらないのではないかと思います。ただ綺麗に整備したり、商店を並べたりするだけでは買い物をする側としては大型のショッピングセンターの方が「便利」「コスパが高い」と感じてしまうと思います。街を楽しむのは「便利」「コスパ」の問題ではなく、その場所でしか味わえない「特別感」にあるのではないでしょうか。そういう場所であれば、商品も基本的にディスカウントして安さ勝負する必要がなくなり、良いものを良い値段で売れるようになるのではないかと思います。


和紙人形

 広小路を散歩していて目に止まった場所がありました。Gallery菊紫という場所で、ここには和紙で製作された人形がたくさん展示されていました。

 この人形の作者は根本きくゑさんという今年101歳になる方で、和紙人形を作り始めて半世紀、福知山の文化に関連する作品を数多く製作してこられました。大名行列や盆踊り、夏祭りをテーマにした作品など、福知山の昔からの景色が和紙人形の展示から伺うことができます。

 こういう作品を見ると和紙の魅力に惹き込まれます。ちなみにこの作品に使われている和紙は黒谷和紙という隣町綾部市で作られている京都府指定無形文化財です。このような作品を見ると、和紙を使ってみたいと思う人もいるのではないかと思いますし、和紙人形製作を体験できる場所があれば、それを目的で来る人もいるのではないかと思います




 このような和紙人形以外にも、きっと福知山やその周辺の地域ならではの良さを生かした何かがたくさんあると思います。そういうものを再発見し、情緒あふれる街の雰囲気とミックスさせていくことで、福知山はその魅力を発揮できるのではないかと思います。
 こういうことに関して小中高の学校や大学がPBL(課題解決型学習)で地域と連携して面白いことを企画し、根付かせていくことができれば面白いのではないでしょうか。そういう意味で美術教育の果たす役割は大きいと言えます。


自然は大変豊か

 人口8万弱で一通りの街の機能を備えた福知山市は住みやすい街だとは思います。そして福知山盆地という名にもあるように福知山は360度山に囲まれた街で豊かな自然が魅力です。堤防沿いは散歩やランニングにはピッタリで、穏やかな生活を送るにはもってこいな街だと思います。盆地ならではの夏の高温については穏やかではいられませんが。


 昔と変わらないこの堤防の景色を眺めていると、ただ毎日こういう景色を眺めて自然に感動することができるのも福知山の魅力だと改めて感じました。こういう場所が市街地のすぐそばにあり(それゆえに昔から度々水害で街は大きな被害を受けてきましたが)、街と自然が調和しているからこそ住み心地の良い街として存在できるのだと、地元を離れて20年目の今だからこそ改めて強く感じました。

 

 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回はお盆で帰省した福知山を散歩していて気がついた街の可能性と魅力についてお話しさせていただきました。今後福知山が街のポテンシャルを生かしてさらに多くの人から愛される街になってほしいと願っています。岡山からは地元に貢献できることが現在の自分にはほとんどありませんが、地域の文化や都市デザインについてこれからも自分なりに研究は続けて、いつか地元に直接恩返しができるような機会があれば嬉しいです。そんな日が来ることを願いながら美術教育の活動にこれからも励んでいきたいと思います。

 それではまた!

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