提出用作品ファイルにステンシルでデザインを施す

 今回は美術の学習で制作した版画作品をまとめて提出するための作品ファイルにデザインを施すことで生まれる学びと経験の広がりについて考察します。
 最近の私の美術の授業では、1つの単元の中で複数の作品に取り組めることを基本としており、提出する作品の規格も基本的には自由にしています。絵画であれば八つ切りサイズの画用紙を一律で用意したとしても、それをカットして複数の作品にしたり、画用紙や様々な材料を貼り付けて倍ぐらいのサイズになった作品やモリモリに盛り上がった絵画か彫刻家区別することも難しいような作品であったり、生徒が多種多様な作品に取り組めるようにしています。
 複数の作品に取り組めると言っても、絵画作品や彫刻作品であればたくさん製作しても数点程度で収まるので、作品の管理はそれほど大変というわけではありません。しかし、これが版画作品となると話が違ってきます。版画は1時間だけでも複数の作品ができてしまうため、単元が終わる頃には膨大な作品数になりかねません。以前は年賀状をステンシル版画で作成する程度のものだったので、小さな袋さえ用意しておけば着彩できた年賀状の版画を管理することは容易でしたが、現在はステンシルで版画作品を作成すると言ってもサイズは様々、支持体も様々にしているため、完成作品をまとめて提出するためにある程度の大きさを持ったファイルが必要になりました。今回はそんな提出用ファイルにも美術的要素を反映させて、美意識を刺激する機会にすることができる方法を紹介します。

提出用ファイルも美しくアレンジ

 作品をまとめて回収するだけであれば、クリアファイルに名前を記入させて提出させれば簡単かもしれませんが、提出用ファイルにも創造力を発揮するチャンスがあると考えました。A3サイズの紙を半分に折って、一辺を糊やマスキングテープなどでとめて紙製のファイルを作り、あとは好きにアレンジします。


 ステンシル版画では日本の美をテーマとした伝統文様や和柄で平面構成を始めとして、例年通りの年賀状やテキスタイルデザイン、版画を活用した絵画などに取り組むことを通して日本の美の再発見をすることを目指した学習をするため、ファイルの装飾に活用できるアイテムは充実しています。このファイルを美しくアレンジするだけでなく、制作の実験用として活用するのにも役立ちます



 ファイル自体は提出作品として扱うわけではありませんが、そこに施された試行錯誤は学習状況を見取る上で重要な判断材料になります。場合によっては本来の提出するべき課題作品はできていなくて、作品ファイルが美しく仕上がることもあるかもしれません。このような場合で、色や形、構成について学習目標を踏まえることができていれば十分評価に値する学習ができていると考えて良いと思います。
 各々の興味関心を生かせるよう、取り組めるもののバリュエーションを豊かにしているわけなので、結果的にファイルの装飾にハマって日本の美をステンシルで表現できたのであれば、学習の目標は十分に達成できていると言えます。これもある意味、学習意欲に火をつけるナッジ(さりげなくその気にさせる仕掛け)としての側面があるのではないかと考えています。


日本の美を生かす視点を刺激する

 日本の美を少し生かすだけでA3の紙が美しく生まれ変わるということを、提出用ファイルで実感できる機会があるかないかでデザインに関する学習の深まりが違ってくると思います。この単元は提出用ファイルを和風のデザインにするための制作時間ではなく、日本の美について考え、平面構成に生かせるステンシルという装飾ツールを作成し、それを活用して日本の美を自分で表現するということを目的にした学習です。様々なものに日本の美を装飾するステンシルを活用できるという美意識の深まりを実現する上でも、制作の「ついで」に取り組めるものから発見できる機会を仕掛けることが大切であると考えています
 このような物にも手軽に装飾することを通して、その効果を実感する経験ができれば、日本の美や一般的なデザインを自ら活用する姿勢を培えることも期待できます。
 装飾に関しては版画だけでなく、絵画や工芸、書道の要素を入れるのも良いと思います。そうなるとますます提出用ファイルに対して強いこだわりをもって取り組む生徒が出てくることも考えられますが、それはそれで主体性に火をつけるきっかけになっているので、肯定的に捉えて良いかと思います。



版と作品をセットにしてポートフォリオ化

 私は普段から生徒にGoogleスライドを活用した振り返り&レポートに取り組ませているので、単元の学習がポートフォリオ化されるようにしていますが、やはり美術作品は生の作品にこそ魅力を感じやすいものなので、提出用ファイルに丸ごとセットで取り組んだものをまとめ、ポートフォリオ化する意義は大きいと考えています。また、ポートフォリオに完成作品だけでなく、試行錯誤した試し塗りのものも入れておけば学習の過程がより分かりやすくなるため、学習評価する上でもメリットがあると言えます。
 A3の紙を一律で配布はしますが、ポートフォリオの形式も基本的には自由なので、作品サイズが大きくなってポートフォリオのサイズもそれに伴って大きくしたいのであればそれも自由です。
 版画の学習に限らず、学習をポートフォリオ化する視点は主体的な学習や課題解決型学習に取り組む上で大切だと思います。制作するものが増えたり、多様化すると、従来のような一律で同じ課題を回収して評価するという方法ができなくなります。しかし、だからこそ、学習活動全体を見取るという指導の視点を持つことができるようにもなり、ファシリテーターとしての教師の役割が発揮できるようにもなるでしょう
 今回版画の実習に取り組み課題の提出方法について検討する中で、改めて学習をポートフォリオにすることの重要性について考えを深める機会になりました。

 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回は提出用作品ファイルにデザインを施すことの可能性について考察してみました。何か参考になる内容があれば嬉しいです。
 デザインへの意識は生活の様々な場面で生かされるものであり、好きなデザインに囲まれた生活や自分でデザインを調整できる力はウェルビーイングにも貢献することと思います。そんなことにもつながる課題意識がデザインに関する学習では大切なので、これからもデザイン経験を豊かにできる美術の学習を感がていきたいと思います。
 それではまた!

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