作品を(なるべく)傷めない展示
秋真っ只中で心地よい時期ですね。こんな時期には学校でも文化祭など、文化の秋を象徴するようなイベントが行われ、美術や音楽の素晴らしさを生徒たちと一緒に改めて実感できるのは学校教育に携わる者としても 幸せなことだと思います。
私は美術科の教員として、毎年文化祭や学習発表会(学校によって名称は様々)では美術作品の展示をしてきました。全校の生徒作品が展示された空間は大変華やかになり、こういうイベントを強力に盛り上げたり、お互いの作品の素晴らしさを認め合ったりする機会を生むなど、作品展示は非常に意義深いことであると考えています。
私はこれまで展示する際には、なるべく作品が傷まず、効率良く展示できて、作品が美しく見える方法を考え、試行錯誤を繰り返してきました。効率度外視だった20代から30代前半の若かりし時は何日間も深夜まで展示の下準備をして、展示する際も夜遅くまで学校に残って作業し、次の日の朝にも早く来て展示を仕上げるということをしていました。しかし、そんな働き方は家庭の状況的にできないので、効率重視で展示の準備と作業をするようになりました。
そうは言っても作品を大切に扱うという部分は絶対に外せないポイントになります。今回は効率良く、綺麗に作品を展示し、かつ作品が傷みにくい方法を紹介します。使えそうなものがあれば是非実践してみてください。
マスキングテープで壁面固定用のリード
〜画鋲を作品に突き刺さないように〜
作品展示する際に一番やってはいけないと思うのが、画鋲で作品に穴を開けて固定する方法です。しかし、これは割と一般的な方法だと思います。よく作品展に学校単位で応募して作品が返ってきた時に作品の四隅に残酷な画鋲の穴、酷い時には端が破れて虫が食いちぎったような状態になって学校へ帰還することがあります。これでは作品展という戦場に作品を送り出すような感覚になってしまいます。「無事に戻ってこいよ!」と願うばかり。そんな願いも届かずに展示会場では次から次に画鋲が作品を貫きます。これは割と一般的な展示方法ではありますが、この方法に対して疑問を抱いてほしいと思います。心と魂を込めて作成した作品が当たり前のように傷つけられて戻ってきた時、作者はどのような気持ちになるのでしょうか。
今回、私がこの記事を書いた一番の目的は、少しでも生徒の作品に画鋲を突き刺す人を減らし、効率的かつ綺麗に展示する方法について考えたり、知ってもらう機会にして、生徒の作品が綺麗な状態で扱ってもらえるようにすることにあります。
では、ここから私がどのように展示しているか説明します。私はまず、マスキングテープを7〜8センチ程度にカットし(写真はカッターマットの方眼を利用して7.5㎝でカット)、1.5〜2㎝程度折り返してテープが付かない部分を作ります。次に、その部分が作品の上端からはみ出すようにマスキングテープを付けます。このリード部分が壁面に布テープで固定されます。
布テープもマスキングテープ同様にカッターマットに貼り付けて2.5センチ幅に切り、必要な分を予め全て用意しておきます。A4サイズのカッターマット両面に40〜60本のテープを作ることができるので、作品の数が分かれば用意するテープの数も大体予想することができます。作品は4〜5作品程度を縦向きに連結させるので、それほどたくさんのテープを用意しなくても大丈夫です。
テープで作品を連結しない
〜連結クリップで効率と展示の柔軟な調整〜
作品を連結させる際にガムテープや布テープで裏面に大胆に貼り付けるというのを何度か見たことがあります。台紙に作品が貼られているような場合であればそれほど問題はないかもしれませんが、作品にダイレクトに貼り付けるのは作品を片付けて1枚1枚にばらす際に大きなダメージが生まれてしまいます。作品表面は傷ついていなくても、裏面はテープを外す際に紙がボロボロに剥がれてしまいます。画用紙の裏面が剥がれ散らかしてしまうと、最悪の場合、画用紙の厚みが変わってしまい、紙が透けて見える状態になってしまいます。
テープを外すとダメージが出るということで、カッターで連結部分を切り離すというケースもありますが、これはこれでテープが作品にがっつり残ってしまうため、この場合も表側から裏面のテープが透けて見えたり、時間が経ってテープの糊が作品に浸透してシミが出たりと、問題が発生してしまいます。
作品を連結するために使える方法として、展示用の額を使うのも良いですが、これはこれで莫大なコストがかかってしまいます。安価な紙とビニールを組み合わせた額もありますが、これはこれで作品のサイズに適したものにしか使えないので、柔軟に展示会場の構造に合わせて綺麗な展示をするには額を使わない方が有効な場合が多いです。
額を使わず、そして作品を傷めるテープも使わずに作品の連結を実現させる。そんな願ったり叶ったりな状況を実現してくれるのが連結クリップです。これは両サイドに挟む部分があり、手軽に作品を連結させることができます。
連結部は少しだけクリップで挟んだ跡が残りますが、テープや画鋲のダメージに比べたら皆無に等しいレベルです。連結クリップを使うと、壁面固定後でも連結する作品数を柔軟に調整できるメリットもありますし、展示が終わって作品を片付ける際にも短時間でクリップを外して作品を元通りの1枚1枚に戻すことが可能です。
連結クリップはとても便利なアイテムですが、私がこれまで赴任してきた学校に備わっていたことがなく、赴任する度に連結クリップの購入をお願いしてきました。これは意外とこの便利なアイテムが認知されていないことを意味していると言えるのではないでしょうか。
連結クリップを使って展示するためには、大規模校であればとんでもない数を購入する必要がありますが、一度用意すれば紫外線の当たらない場所で保管さえすれば長い年月が経っても使えるので、大変おすすめの商品です。
最後まで読んでくださってありがとうございました。今回は作品を傷めずに効率よく綺麗に展示する方法について紹介しました。生徒が頑張って制作した作品を展示して鑑賞の機会を作ることは大切なことですが、作品はあくまで作者のものであり、管理する側として最善を尽くして大切に扱うことが不可欠です。今回の内容が何か参考になることがあれば嬉しいです。
私自身、このような方法に辿り着くまでに何年も試行錯誤をしてきたわけですが、まだまだ改善の余地はきっとあるはずなので、これからも改善を毎年重ねていきたいと思います。もしまた良い方法が見つかればブログで共有できたらと思います。
それではまた!
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