セカンドティーチャー制度を導入
今回は私が最近授業で導入したセカンドティーチャー制度について紹介します。これまで生徒の主体性を重視した学習環境をつくるために色々と仕掛けを考えてきましたが、今回の仕掛けは持続可能で発展性のあるものであると考えています。
このセカンドティーチャー制度が定着すれば、課題解決型学習(PBL)を教師による仕掛けではなく、生徒主導で始めることも可能になるだけでなく、授業の枠もさえも超えて、生活や社会の中での取り組みが普通になり、主体的に学習に取り組む生徒の育成につながると考えています。
まだ始まったばかりの試みではありますが、手応えは感じています。セカンドティーチャーとはどういう内容で、どのような効果が期待できるのか、簡単にまとめてみました
私は、GoogleクラスルームとGoogleスライドを活用して振り返り(レポート)を毎時間取り組み、写真を用いた制作記録や達成できたこと、次回に向けた課題や質問などを入力させています。もうこの方法を使い始めて4年目で、GIGAスクール構想が始まって以来継続して取り組んでいます。Googleクラスルームの利点として、ルーブリックを連携させて形成的な評価を生徒に共有して、指導と評価の一体化を図ることができるところにあります。これを使わないのであればロイロノートやCanvaでも同じように振り返りやコメントでのフィードバックはできるため、機能に大差はありませんが(CanvaはChromebookにはやや動作が重たい…)、GoogleスライドとGoogleクラスルームによるルーブリック機能の連携は指導と評価の一体化をする上で大きなアドバンテージになります。
セカンドティーチャーになれる基準は、このルーブリックの評価でオールA(A+を含む)にしています。この評価は十分な学習状況であると判断できるため、教師側からの指導よりも、自律的に判断してやりたいことに取り組めるようにした方が、より学習充実度は向上すると考えられます。それゆえに、セカンドティーチャーになって一般の生徒以上の権限を認める形が望ましいと考えました。
セカンドティーチャーは授業中に自由に行動可能
私の授業の形式では、授業前半は個人制作を自分の場所で集中して行う時間にしており、その後移動自由な協働学習の時間が入り、最後は自分の場所に戻って振り返りをしたり、余った時間で制作をしたりするようにしています。セカンドティーチャーは個人制作の時間から自由に移動することができる上、振り返りの時間も自由に場所を選べるようにしています。そうすることによって、他者に良い影響を与える存在として活躍できることを期待しています。
教材について意見を出せる(教材作成可能)
授業で扱う教材は教師が提示するものですが、セカンドティーチャーは教材を改善するための意見を出したり、自身で教材を作成したりすることもできるようにしています。
まだ始まったばかりなので、教材を作成する事象までは生まれていませんが、セカンドティーチャーの取り組み方を見ていると、教材開発できるだけの可能性は十分にあると感じています。生徒視点で面白いと思ったことを授業に導入していくことは、私自身の授業展開にとっても有意義なことです。
セカンドティーチャーから提供された資料をGoogleクラスルームで共有して、他の生徒に「こんな表現や制作もできる」ということを示すことができれば、表現の幅は広がりますし、そういう環境が当たり前になれば、お互いから学び合う協働的な学習の成果も上がり、本来の学習目標である「表現及び鑑賞の幅広い活動を通して,美術の創造活動の喜びを味わい美術を愛好する心情を育てるとともに,感性を豊かにし,美術の基礎的な能力を伸ばし,美術文化についての理解を深め,豊かな情操を養う」を高いレベルで達成し、さらには教育の目的である「生きる力」の獲得にもつながると思います。「協働的で対話的な深い学び」はあくまでこれら教育の目的を達成するための手段です。しかし、協働的な学習自体が目的化してしまい、とりあえず協働的に学ばせることに重きが置かれるのは危険なことであると私は考えています。
あくまで、協働的な学びの中で達成されるものを教師はイメージできていなければいけません。さらに、イメージしていたこと以上のことが結果的に生徒から生み出されるのであれば、それは協働的な学習の目指す多様な価値観を認め合った上で、クリエイティビティーを発揮して、新たな価値を生み出したことになるので、非常に望ましいことです。そういった教師の協働的な学習に対する展望が授業展開の中に反映されていなければ、協働的な学習はただ形骸化することになってしまうでしょう。
この学習形態については個別最適な学習が担保された上で有効に働くものでもあるので、今回はこの点については省略しますが、コンピテンシーベースの協働的な学習には大きな可能性があると考えられます。
セカンドティーチャーが活躍し、その数が増えていくと、授業風景は大きく変わることになるでしょう。学習意欲に溢れる教師同士がお互いの試みを共有しながら新たな可能性に挑戦する。そんな研究機関やプロジェクトチームのような活発な創造の場にしていきたいと思います。
振り返り(レポート)を共有
普段から記録している振り返り(レポート)を生徒全体に共有することへの承諾がセカンドティーチャーの認定にはセットになっています。ルーブリックは普段の学習への取り組み状況と振り返りを基にして調整しているので、A評価に達するためにはそれなりに振り返りを通してPDCAサイクルを回したり、メタ認知ができていたりする必要があります。そういう振り返りを他の生徒にも見えるようにGoogleクラスルームで共有しておくと、どのように振り返ることができるのか参考になるだけでなく、セカンドティーチャーの生徒がどのような学びをしているのか、その過程を知ることができます。
XやInstagram、Facebookを始めとして、コミュニティーの中でのコメントに対して、人間はかなり興味を持って情報を集める傾向があります。読み始めたら止まらなくなる人も少なくはないでしょう。ただ、SNSなどでのコメントの世界は玉石混交、良い意見もあれば、不安を煽るような見ない方が良い意見や情報もたくさんあります。その多様な意見があるからこそ、延々と見てしまう「沼る」現象になってしまうのでしょうが、そういう垂れ流しの情報ではなくて、セカンドティーチャーの情報であれば、教師側で良い資料と判断できるものを選んでいるわけなので、延々と情報を求めてしまう危険性も緩和することができると思います。
教師側で情報をコントロールすること自体もそれはそれで危険性があることですが、その自覚を持って、教師は多様な価値観を受け入れて評価する器を身につけることが大切です。そのためにも、日々勉強して世界観を広げる努力を継続していく必要があります。
セカンドティーチャーという存在が与える周囲への影響
この制度を導入してまだ十分な時間が経っていないため、これはあくまで今後の見通しに過ぎませんが、セカンドティーチャーという存在に対する周囲の認識が深まってくると、その自由な学習形態に対して「自分もそうなりたい」と思って学習を調整する生徒は少なからず出てくると思います。そして、セカンドティーチャーがクラスの中に1割、2割と増えていくにつれて、協働的な学習の質も大きく向上し、一般の生徒もその状況に巻き込んでいくことになります。目の前で活発な創造活動が見られるようになり、技術的な指導もセカンドティーチャーを中心に頼ることができるというのであれば、全体的な学習の質を向上させることができることでしょう。
セカンドティーチャーになれるタイミングが単元の終わりの方だと、他の生徒が受ける恩恵があまりありませんが、単元の中盤までに何名か出れば、後はその生徒を中心に良い学習活動が広まっていくでしょうし、セカンドティーチャーに認定されていない生徒でも、十分に充実した活動で、周りに良い影響を与えることと思います。
この協働学習の環とも言える状況は、江戸時代に吉田松陰が松下村塾を開き、そこで四天王と言われる優秀な弟子(吉田稔麿、高杉晋作、久坂玄瑞、入江九一)が育ち、そこからさらに多数の新しい時代を拓く志士が育っていったように、指数関数的に意欲的な生徒が増えていくと期待しています。
これまでは一人の教師が生徒に対して「教える」という状況だったのが、生徒も他人に教師として「教える」という、教育を広める立場に生徒もなるというのは、今後の教育の在り方を考える上で大切なことだと考えています。
最後まで読んでくださってありがとうございました。今回はセカンドティーチャー制度について紹介させていただきました。まだまだこれからという状況ではありますが、今後成果を検証して、より体系化させ、研究が深まったらまたブログで書こうと思います。
2024年もあっという間にラスト10日間となりました。学校は冬休みに入りますが、個人的には練習試合や試合であっちこっちに行って、年末は地元の京都府福知山市に帰るので全然休まることはないのですが、少しはゆっくりする時間もあると思うので、2025年に向けて英気を養いたいと思います。
ちなみに来週もブログは更新します(笑)
それではまた!
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