手軽にできる伝統文様窓ガラスフィルム

 最近伝統文様にはまっています。私自身、元々デザイン関係のことが好きで、伝統文様や北欧柄を教室の天井に貼り付けて、空間をデコレーションしてきました(天井の雨漏りの痕を隠す役割も有)。

 そんな私ですが、最近さらに伝統文様を活用することが増えています。と言うのも、中学2年生の授業では版画に取り組む中で伝統文様も扱い、日本ならではの美について生徒に知ってもらえるよう試みてきました。生徒と一緒に授業を楽しんでいるうちに、自然と伝統文様を活用する視野が広がり、これまで以上に伝統文様への愛が深まったことが授業外での活用につながっていると思います。授業ではステンシル版画で日本の美を表現することをテーマにしていたので、伝統文様を学ぶことが目的ではありませんでしたが、多くの生徒が伝統文様を活用した版画制作を楽しみ、非常にクリエイティブな作品がたくさん生み出されていたので、そこから私自身も大いに刺激を受けることができました。

 版画の授業は終わりましたが、伝統文様が様々な場面で有効活用されているのを生徒が目にすることができれば、学習のメタ認知を促したり、美への興味関心を刺激したりすることにつながることが期待できます。なので、機会を見つけては伝統文様を生かしたアレンジに取り組むようにしています。

 今回はそんな授業外で取り組んできたもの中から、伝統文様窓ガラスフィルムを紹介します。これはコピー用紙とラミネートフィルム、カッター、スプレーと両面テープがあれば割と簡単にできるものなので、良かったら作成してみてください。

 ちなみにこちらから作成動画を見ることができます。 伝統文様窓ガラスフィルム




コピー用紙に方眼を施し柄を下がき

 用いる用紙はコピー用紙で十分で、画用紙や和紙といった高価で丈夫なものでなくて構いません。コピー用紙でもラミネートをすればそれなりに綺麗に見えるようになります。



 まずは紙に方眼を施すために、折り目をつけます。正方形を生かした方眼であれば紙を折り曲げるだけでもできますが、もちろん定規で長さを測って線をかき込むのも良いでしょう。正三角形の斜方眼を描く場合はコンパスがあった方が良いですが、正方形のものはこの点でとても手軽です。

 伝統文様は幾何学的な図を活用したものが多く、方眼を活用すればたくさんの種類の伝統文様がかけます。今回は青海波の文様を作成しました。青海波は方眼を使う中では少しややこしい部類に入るかもしれませんが、市松や檜垣、鱗などといった文様であればかなり簡単にできます。



コピー用紙を重ねて切り抜き複数枚の切り絵を一気に作成

 下がきができればコピー用紙を数枚重ねてカッターで一気に切り抜きます。今回はA3サイズのコピー用紙を4枚切り抜くので、一番上に下がきした紙を重ねて4枚同時に切り抜きました



 青海波は切り抜くところが分かりやすく、切り絵を作成しやすい文様ですが、市松のように、普通に切り抜くと紙がバラバラになるものもあるので、切り抜く前にどのように切れば文様が切り絵として成立するのかをよく考えて切り進める必要があります。

 文様はパターン化されているので、一つひとつ切り抜くと紙を回しながら少しずつ進めるよりは、作業効率を考えるのであれば切る向きが同じ部分を一気に流れ作業で切って、切り抜いた部分をまとめて外すとかなりスピードが上げられます


切り抜いた文様をスプレーで着彩


 スプレーは何でも良いですが、今回はシリコンスプレーを使いました。ラッカースプレーも良いと思いますが、コスト的にシリコンの方が安く作業中の臭いもきつくないのがメリットです。複数の色を重ねてグラデーションを表現するのも良いでしょう。


 スプレーの作業には下敷きとして大きな段ボールパネルがあると便利です。新聞紙などの紙でも良いですが、個人的にダンボールパネルは準備が楽で、すぐに敷いて作業できるのでおすすめです。私の場合は、美術室に協働作業用の作業机を設置しており、その上にこの下敷き用の段ボールパネルを敷いたままにしています。作業した後には切り絵がステンシルの役割を果たして文様が段ボールパネルに残されるので、これも趣があって良いです。


ラミネート加工して裏面からスプレー

スモークガラス風に

 ラミネート加工すればガラスフィルムとしては完成です。しかし、透明なフィルムのままだと日光を通しすぎるため、裏面からラッカースプレーで着彩し、スモークガラス風にしても良いでしょう。


 裏面に色をつけても文様がさりげなく見えるので、窓の外から見てもいい感じになります。切り絵に表面からしか色を塗っていない場合は、このようにラミネート加工してから裏面に着彩した方が仕上がりは綺麗に見えると思います。

窓に貼り付けて完成

 最後は両面テープで窓に貼り付けして完成です。事前に窓の寸法と紙のサイズを合わしておくことが仕上がりを綺麗に見せる上で大切です。

 色んな美しい文様でデコレーションしつつ、日光も和らげてくれるようになったので日光の角度が浅くて眩しさを感じやすい冬場もカーテンを閉める必要がなくなりました。また、日光を通すことで部屋を適度に温めてくれるため、暖房とのコラボレーションも助けとなって部屋はポカポカです。


 見栄えを追求するだけでなく、その中で可能な限り機能性も充実させる。用と美の精神は美術教育の中で醸成する大切な視点だと考えています。こういうことの積み重ねが生徒の美意識を少しずつ育んでいくと期待したいです。

学校は学びを形にする実験場として存在意義がある

 最近、ますます生成AIが進化してChatGPT o3(miniは無料で使える)やDeepSeekといった高性能で推論ができる生成AIが普通に使えるようになっています。質問すれば懇切丁寧に教えてくれる生成AIは今後教育の在り方を根本的に変えることになるでしょうし、教育のアップデートが盛んに叫ばれるようになっている昨今なので、生成AIが教師の代わりに知識を教える日はそう遠くないと思います。個別最適な学習によって主体的な学びを実現する上で、AIによる知識獲得、知識を生かしたコンピテンシーベースの実践は困難と言えるでしょう。GIGAスクール構想が本格始動して早4年、最近言われるネクストGIGAはAIをいかに駆使するかという視点が大事になるようです。

 そうなれば、学校の学びは大きく変わりますし、ただ知識を獲得するだけなら学校へ来る必要性が低くなります。すでにその傾向は強くなっており、通信制の高等学校(N高やS高、クラーク)が数万人規模の学校になっていることからも、この流れは今後ますます加速すると思います。

 そんな中で学校の存在意義をアップデートする必要があります。これまでにも学校は社会性を学ぶ場、非認知能力を育む場として重要であると言われてきましたが、それがさらに強調されるものになると思います。ただ、これまではそのようなことを言われながらも、授業では社会性や非認知能力を育むどころか、じっと座って黒板に書かれたことをノートに写し、主体性に関係なく出された課題に取り組むという時間が大部分を占める学校が多かったと思います。そんな授業ではほとんどの生徒が生き生きと活動的に学ぶことは困難です。

 しかし、知識活用型、コンピテンシーベースの学習になれば、授業が各生徒の実験的な学習によって進められるようになります。もちろん、その中で様々な成果物が生み出されることでしょう。その成果物をさらにより良いものにしていこうとすれば、自然とPDCAサイクルが回り始め、プロジェクトベースの学習が当たり前になります。そうなれば、学校の内外で生徒の生み出したものが溢れるようになっていくことでしょう。

 学んだことを生かして何かをクリエイトしたり、環境を改善したり。そういった創造的な活動が学校での学習活動の割合として高いものになれば素敵だと思います。自ずと生徒の学校生活への満足度も向上することでしょう。ただ、身近なところに創造性を発揮した例がなければ生徒も何ができるかイメージすることが難しいと思います。そういった意味でまずは教師がその例となるものを作成し、生徒に「楽しそうだ」「自分もやってみたい」と思えるような、仕掛けをつくっていくことが大切だと思います私はこれからも美術教師として、今回紹介したような学びを実践に生かす例をつくっていきたいと思います。


 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回はコピー用紙とラミネートフィルムでできる伝統文様ガラスフィルムについて紹介しました。手軽にできて空間を良い雰囲気にしてくれますので、もし興味があれば作成してみてください。ちなにに伝統文様でなくても、切り絵やステンシルは簡単な図で魅力的なものができますし、着彩も楽しいので、小学校の図画工作や家庭で創造遊びするのにもおすすめです。是非やってみてください!

 それではまた!


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