構成美マグネット

 今年は行動目標の一つに「夢中になれるナッジを美術室の環境に増やす」というものを設定し、美術室を継続的にアップグレードしています。美術室が良い環境になれば、生徒が主体的に美術と関わる機会をさらに増やすことができると考え、仕掛けを作るようにしています。

 これまでにも様々な仕掛けを設けてきましたが、この度、色と形によるイメージを生かして遊びながら学べる構成美の仕掛けを作成しました。今回作成したのは構成美マグネットで、ホワイトボードにラッカースプレーで着彩し、マグネットシートや色画用紙をラミネートしたものにマグネットを貼り付けて色のパーツを作りました。

 

美術のスモールステップとして期待できる構成美の遊び

 この構成美マグネットを作りたいと思ったのは、構成美というものが簡単にできるものであり、積み木のような感覚で色のパーツを組み合わせて構成美を作る経験をしてほしいと考えたからです。誰もが幼少期に遊んだことがあるであろう積み木。私たちは積み木で夢中になって遊ぶ中で自然とバランスやシンメトリー、リピテーションといった構成美の感覚を身につけてきたのではないかと思います。そんな積み木のような感覚で構成美の感覚をある程度身につけることができれば、美術の様々な場面でそれを生かすことができます

 積み木はできても構成美にその経験が生かされていないというケースもあると思いますが、構成美が積み木のように簡単な形の組み合わせによって成り立つものであることを理解すれば、すぐに構成美を作ることができると思います。実際に、1年生の授業で構成美に取り組むと、ほとんどの生徒が様々な構成美を自分なりに表現することができるようになります。

 しかし、構成美に関する授業をしたときにできたことが、それ以外の時間に応用されているかと言うと、必ずしもそうならないことが多いような気がします。絵や立体で表現する際に構成美の感覚を発揮してほしいところですが、授業で構成美の学習をしただけでは十分とは言えないのかもしれません。もっと普段から構成美で遊ぶような感覚や、簡単に構成美は作ることができるというマインドを根付かせる必要があると思います。

 そういった意味で、手軽にパーツに触りながら構成遊びをすることができる構成美マグネットが美術に取り組む上でのスモールステップの役割を担うことを期待しています。


作業スペースを拡張する役割も

 私が使っている美術室は決して広くはなく、私がこれまでに経験してきた美術室と比べて狭い方です。なので、これまで空間の利用方法については様々な工夫を施してきました。改良に次ぐ改良でかなり使いやすい環境にはなってきましたが、それでもまだまだ何かできると思案を練る日々です。

 これまでは教室の中央に道具・材料コーナーを設けていましたが、これを教室の壁側に移動させ、作業机9台を中央に固めました。横のスペースがかなり広くなったので、机を3つ追加して、構成美マグネット4つを連結させた状態で、机と机を橋渡しする形にしました。構成美マグネットのパネルは2枚が蝶番で組み合わさっているので、閉じることが可能になっています。閉じれば作業スペースにすることもでき、補習などでたくさんの生徒が集まる場合にはこちらも臨時で活用できる場所にしました。

 用と美の視点もやはり大切にしたいところです。


溜まり続けていた木製パネルの有効利用

 今回の仕掛けを作成する際に利用した木製パネルは教材の余りや持ち主不明となってしまったパネルです。私は3年生の卒業制作でB4木製パネルを利用した作品制作(スクラップブッキング、ボックスアートなど)をこれまで教材にしてきました。教材として購入しているので、もちろん生徒全員に渡るようにしていますが、教材屋さんが予備として数枚のパネルをサービスしてくれるため、3年生を担当する度に少しずつパネルが増えていました。

 どこかのタイミングで溜まった木製パネルを有効活用したいという思いがずっとあり、構成美遊びができるおもちゃ作成と作業スペースの拡大という、パネル活用の絶好の機会が見つかったので、この度一気に多くのパネルを利用することができました。

 材料として使えるものを残しておくと、いつかこうして役立つ日が来ます。しかし、そもそもDIYする機会が少ないと溜まる一方となってしまい、美術準備室のスペースを圧迫し、挙げ句の果てには準備室に収まらないものが美術室の方にまで溢れてしまうこともあります。使いやすい美術室を維持するためにも、材料の溜めすぎにならないよう、DIYしたり、授業で活用したりすることを大切にしています。

 DIYによる空間改善を生徒に見せることは、少なくともDIYに対する興味を刺激することにもなると思います。こういうことの積み重ねも美術教育の大切な要素の一つであると私は考えています。


 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回は生徒が構成美をより身近で手軽に活用できるようにする構成美マグネットについて紹介しました。知育玩具でもこういった色と形で遊びながら構成美の感覚を養うものがありますが、この視点は中学生やそれ以上の年齢の人にとっても重要な気づきを与えてくれるものだと思います。このような美的な判断力は生活に彩りを与えてくれるものですし、生涯大切にしたい力です。

 これからも美的な判断力を養えるような仕掛けや教材を考えていきたいですし、さらに美術室の空間を学べる場所にアップグレードしていきたいと思います。

 それではまた!

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