使わなくなった一眼カメラを美術室へ


 今回は私が以前に使っていたデジタル一眼カメラを美術の授業で利用できるようにしたことについてお話しします。

 Chromebookが学校に導入されて以来、生徒は制作過程や作品を自分のChromebookで撮影してレポートを作成してきましたが、デジタル一眼カメラが使えると、撮影が充実するだけでなく、カメラについて学ぶ機会をつくることにもなると考え、今は使っていない私のカメラを必要に応じて使えるようにしました。


比較して分かる一眼の写真の質

 今回利用できるようにしたデジタル一眼は2台で、1台は3年前までメインで使っていたミラーレス一眼で、私が倉敷で教員生活を始めた10年前に購入したソニー製のものです。もう1台は一眼レフで大学院1回生の時に中古で購入したものです。

 これら2台のカメラと生徒が使っているChromebookの写真を比較すると、画像の質が全く違うのがようわかります。


 一眼カメラの特徴はイメージセンサーがPCやスマホのカメラと比較するとはるかに大きく、光を感知する力が強いため、白飛びや黒潰れがイメージセンサーの小さい機器と比べて起きにくく、より目で捉えたような自然な写真が撮影しやすいのが持ち味です。夜景などを撮影する際も、ノイズが入らず非常にクリアな写真が撮影できるのも一眼カメラの特徴です。

 今回用意した一眼カメラの画素数は約1600万画素と約1000万画素で、画素数自体は最近のスマートフォンに劣りますが、イメージセンサーが大きいことやレンズ自体が優れているため光をよく感知して写真自体はとても質の良いものが撮れます。


写真の設定を自由にカスタマイズできる一眼



 一眼カメラはシャッタースピードや絞り(F値)、ISO感度など自分の撮影したい写真に合わせて自由にカスタマイズできるのが大きな利点です。それゆえに、一眼カメラが使える状況というのは写真やカメラについて学習する良い機会につながります。細かい設定ができないChromebookを使っているだけでは、そもそもそのような視点を持つことができませんし、普段大多くの生徒が使っているスマートフォンのカメラは自動的に平均的に綺麗な写真を撮影できるように設定してあるので、一眼カメラで写真の設定を調整するという経験はとても貴重なものになります。

 上の写真のように熊の顔に焦点を合わせて、F値を下げる(ピントを浅くする)と後景がぼけてメインの部分を目立たせることができます。こういうドラマティックな写真や、シャッタースピードを極端に遅くして心霊写真のような画像を作ったり、逆にシャッタースピードを上げて水の動きを撮影したりと、写真の芸術性を引き出すことができるのが一眼カメラの可能性です。

 スマートフォンなどは加工技術に優れていますが、カメラの基本的なリテラシーとして、写真をイメージ通りに撮影する知識と技術を身につけるために一眼カメラに触れられる環境を用意しておくと、写真撮影に関する学習を自然の流れですることができ、より美術の学習も充実すると思います。写真を撮影することを通して造形物を客観的に捉え、新たな視点を持つことができることもあります。

 カメラで撮影した写真は教師用のPCに取り込んで、Googleクラスルームに用意した生徒と共有する写真用ドライブにアップロードしたり、Googleスライドの共有資料に写真を貼り付けたりして生徒と共有しています。


まずは生徒の興味を刺激して触ってもらう

 写真も立派な美術の一分野であることを考えると、本当はがっつり写真に関する授業をしたいところです。しかし、自分自身写真の授業を大学時代に受けた時に、少人数で(確か4人で授業を受けました)一眼レフを実際に使いながら学んだ経験上、カメラは使いながら理解を深めることができるものなので、一斉授業で絞りや焦点距離、シャッタースピード、ISO感度、ホワイトバランスなどを教えることは困難です。それゆえに、美術室でいつでも触れるように置いておき、興味のある生徒が写真を撮影する経験の中で必要に応じて知識と技術を身につけていけられるように仕掛けをつくることが自分にできる最大限のことであると考えるに至りました。

 一眼カメラは写真を撮っている時の手応えが他の機器とは比べ物になりません。あの「カシャ」という大きなレンズが作動する時の手応えや一眼レフのファインダーから被写体を捉える行為は、撮影していて少し自分がプロのカメラマンになったような感覚が得られます。一眼カメラでの写真撮影はシンプルに楽しいものであり、これを使う経験自体が美術の学習を促進するものになるのではないかと思います。実際に一眼カメラを手にした生徒は色んなアングルから次々に作品の写真(たまに友達の姿も…)を撮影し、カメラでの撮影を楽しむ姿を見ることができました。そんな生徒に設定次第でより自由にコントロールした写真が撮影できることも美術資料を活用して紹介すると、興味を持って内容を見てくれます。

 ちなにに、カメラの近くには美術資料の写真に関するページを開いたままにしておき、設定次第で色んな写真が撮影できることが分かるようにしています。これも仕掛けであり、カメラを触りたくなるナッジ(人間の行動心理を利用して、ある行動をそっと後押しする仕掛け)です。



 今年は一貫してナッジについて研究と実践をしているので、カメラに関する仕掛けはさらに改善していくつもりです。また良いアイディアがあれば紹介したいと思います。


 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回は私が以前に使っていた一眼カメラを生徒が美術室で自由に使える環境とその可能性について説明させていただきました。

 学校に限らず、子どもたちが興味を持ってものに触りながら学んでいける環境は主体的な学習者を育てる上で非常に大切だと思います。もし、生徒に壊されても構わないと割り切れるようなもので、使えばそれなりに学習効果が期待できるようなものがあるのであれば、学校へ持って行ったり、学校へ寄付するなどして生徒に活用してもらえるようにすれば、将来に向けて大きな価値を生み出せるかもしれません。

 私の美術室にはこれからも生徒の学習意欲を促進するような体験できるものを用意していこうと思います。こういうことは考えるだけでも楽しいことですが、あまり色々やりすぎると、他の大切なことに手が回らなくなるので、なんとかバランスは取れるように努力はしようと思います(苦笑)

 それではまた!

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