道徳教材「人生の優先順位」 〜人生をビンに例えると〜
今年度も最終盤に差し掛かり、先日は最後の道徳の授業を行いました。私は最後の授業では、どの学年の場合でも、オリジナル教材をするようにしていて、生徒と一緒に道徳的価値観について考えを深める時間にしています。
今回は中学2年生の最後の授業で扱った教材「人生の優先順位」について紹介します。これは「人生をビンに例えると」や「Big Rocks」という動画からインスピレーションを得て作成した教材で、内容としては中学生だけでなく、大人にとってもより良い生活を考えるヒントになるものであると思います。自分自身も今回の道徳の教材を考える中で、気がつくことができる視点がたくさんありましたので、良かったら参考にしてみてください。
まずは人生の優先順位で高いものについて考える
授業の最初に生徒に人生で最も優先したいことを考えさせます。発言させたりCanvaの資料に入力させたりして数分で十分なので、優先順位の高いものを挙げてもらいます。
これは導入に過ぎないので、短時間でみんなが大切なものを持っていることを確認した上で、二つの動画を見てもらいます。
「人生をビンに例えると」はYouTubeなどSNSで結構知られている動画だと思います。「Big Rocks」は著書『七つの習慣』などで有名なスティーブン・R・コヴィーの動画です。これらは共通の内容で、先に細かい砂や小石を入れてしまうと、後から大きな石を入れることができなくなるということを説明しており、これは「大きな石=人生の大事なこと」「小さな石=些細なこと」のアナロジーとなっています。優先するべきことを後回しにしてしまうと、些細なことで人生がいっぱいになってしまい、大事なことに手が回せなくなる一方で、大事なことから先にやっておくと、隙間に些細なことが入る余地が生まれ、充実した人生を送ることができるということを説明しています。ビンと石を使った人生のアナロジーではありますが、非常に現実的で分かりやすい例えと言えるのではないでしょうか。
ビンの中に優先順位を考えて石をかき込む
動画を見た上で、今度はワークシートに用意したビンの図に優先順位が高いものを大きな石、些細なものを小さな石に見立てて瓶の中を埋めていきます。思い浮かんだものからどんどん書き込んでいくのですが、抽象的なものであれば後から説明を追加してかき込むのも良いです。
こうしてかき込んでいくと、自分が普段何を大切にしたいと考えているのかイメージ化できますし、石のサイズで相対的に優先事項を決められるので、メタ認知を促すことができます。
最後にモットーの液体を注ぎ込む
これは「人生をビンに例えると」の動画で先生が最後にビールをビンに注ぎ込んで容器を満たすシーンがあるのですが、これを先生は「どんなに忙しくても仲間と一杯酒を酌み交わすだけの余裕は大切にしたい」と説明していました。これを私はいかなる時も大切にしたい心の拠り所、モットーのようなものとして解釈しました。
最後に瓶の中に入れたものに共通して大事にしたいことを注ぎ込んで(全体に色を塗って)人生のビンは完成です。
さらに、私はビンの中には入れたくないものも外側に書くようにしました。些細なことは経験として成長につながるものもありますが、ビンの外にあるものは避けても良いようなものを書きます。
ビンの外にあるものも、一概に「無駄」として切り捨てる必要もないかもしれませんが、とりあえず現状で不要と思うものについて考えさせるようにします。もしかしたら、将来そういったものにも何かしらの価値を見出して、器を拡大させることにもつながるかもしれないということは生徒に伝えておきます。
自分は何を大切にしたいのかメタ認知
この道徳の授業を通して、自分が何を大切にしたいのかメタ認知し、よりよく生きる上で自分が優先的に取り組んでいきたいことについて考えることになります。自然と今の自分の生活と照らし合わせることにもなるでしょう。優先順位を大切にして行動を起こしていけば、充実した人生になるということを視覚的にイメージできるのがこの教材のポイントです。
こういうときの教師のNG行為として、現在の状況を否定的に捉えさせる発問が挙げられます。例えば「ビンの中に書き込んだ石と、現実に入っているものが全く違うんじゃないか?いらないものばかりでビンの中を満たしている人はそんなものを優先して良いのですか?人生を無駄にしますよ?」といった煽り発言です。そんなことを言わなくても、生徒は自然と自分の状況を自覚して、自分の人生と向き合おうとしているところに、教師からの説教が入ると逆効果になってしまいかねません。感想では教師に忖度したことを書くかもしれませんが、メンタルとしては決して気持ちの良いものではないと思います。
ついつい教師として大人として「子どもたちには正しいことを教えなければいけない」という強力なバイアスがかかっている人も多いかもしれませんが、成長する姿を見守る余裕を大切にしたいものです。シンプルに授業の中で考えたことや気づき、そういったことが今後の生活で重要な要素になることを確認し、教師や大人は頑張るみんなを応援し、必要があればサポートすることを伝えるだけで十分だと私は思います。道徳の授業の最後は道徳的価値観の深まりによって、メンタルとモチベーションが向上するような終わり方が望ましいと考えます。
最後まで読んでくださってありがとうございました。今回は1年の最後の道徳で扱った教材について紹介しました。元々は動画で注目された内容なので、道徳の授業だけでなく、いわゆる自己啓発的な内容としても利用できるものだと思います。良かったら自分の人生のビンをかいてみてください。
これからも充実した道徳の授業を考えていきたいと思います。また紹介できる教材があれば記事を書きたいと思います。
それではまた!
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