アート&クラフトプロジェクトについて
休日に学校を開いて創造活動を楽しむ場へ
私は、学校という場は地域の人々に大いに使っていただき、スポーツや文化的な活動を楽しむ場として役立つポテンシャルを持っていると考えています。実際に体育館では部活動がない時には施設開放が積極的に行われていますし(平日の夜間は毎日利用されています)、私も部活動以外のソフトテニスのクラブ活動でテニスコートをよく借りています。このように、グランドや体育館の施設開放は割と行われていて、地域の人々の生活の充実に貢献していると言えます。
スポーツ関係での利用が盛んであれば、美術室や調理室、木工室や金工室、音楽室なども地域の人々に使っていただき、文化的な活動を促進する役割を果たしても良いのではないかと私は考えています。なので、今年の抱負に休日の美術室開放を掲げて、実施に向けて準備をしてきました。
福武教育文化振興財団の助成
ただ、実施する際に必要となるのが活動費です。美術室が利用できると言っても、接着剤や画用紙などの材料や消耗品は学校の予算や教材費で購入したものなので、ワークショップで自由に教室のものを使えるわけではありません。ワークショップを実施するにあたって、材料や消耗品は購入する必要があります。
自腹を切ってでも地域の教育に貢献する覚悟はありますが、しっかりした活動をしようと思うとかなりの資金が必要になります。さすがに10万円を超えるような寄付を数回のワークショップのためにすることはできませんし、参加費を数百円徴収しても大したものは用意できません。大したものを用意できないのであれば、人々にとって魅力的なワークシップにもならないため、これでは成果が上がりません。
そんな中、よくお世話になっている大学教授から福武教育文化振興財団というベネッセに関係する財団の助成があることを教えていただき、ワークショップの概要を伝える申請書が採用されたため、資金面での助成を受けられることになりました。これによって、様々な種類の絵具や接着剤、木材や粘土といった材料が用意できるようになり、やりたいことに取り組める環境を整えることができました。
ワークショップで使い切れなかった材料は美術室にそのまま保管し、生徒が自由に使えるようにするため、生徒にとってもワークショップ開催の恩恵が得られることになります。
地域の教育力向上を目指して
教育と聞くと学校で教師が生徒に教える姿がイメージとしてわく人が多いかもしれませんが、私は一番教育効果があるのは生徒の主体性が生かせる環境を用意することであり、そのためにも大人が学びに対して貪欲で主体的な姿を普段から子どもたちに見せることが大切であると考えています。逆に言うと、大人が学びに対してポジティブな姿勢でなかったり、偏った学習への価値観を持っていると、子どもに良い影響を与えにくくなります。
美術教育はこの点で、これまで非常に危うい状況であり続けてきたと感じています。なぜなら、美術の基本的な知識であったり、ピカソやマチス、岡本太郎といった偉大なアーティストの名前を知ってはいても、どういう点で偉大と言えるのか、あくまで私の経験上ではありますが、美術関係者以外でこういったことについて理解している大人と出会ったことがほとんどありません。葛飾北斎や歌川広重が浮世絵で有名でも彼らの作品が版画であることを認識している人も意外と多くはない印象です。
中学校や高校の社会科で習うレベルの内容であっても、それらを理解し、咀嚼して自らの創造性に生かせるようにするには、そういう視点について気がつけるきっかけが必要だと思います。そういった意味で、地域の人々にワークショップを開催して、機を見て美術の奥深さについて考えてもらえるような問いを仕掛けることには、地域の教育力向上につながる可能性があると考えています。大人がアートやクラフトを面白いと思って大切にするようになれば、それはそのまま子どもたちへの美術の学習に対するポジティブな影響へとつながると思います。
参加される地域の方々に少しでも美術の奥深さと魅力に気がついていただき、子どもと一緒に第2回、第3回と何度もワークショップに足を運んでいただけるように、楽しく充実した時間を送ってもらえる工夫と環境を考えておきたいと思います。
ちなみに、生徒も参加できる第2回以降は生徒や大学生からボランティアスタッフも募りたいと考えています。生徒の中には他の生徒に指導できるレベルの人もいるので、そういった生徒には制作を楽しみつつも、イベントを運営する側として携わってもらい、より充実した活動の実現に繋げたいと思います。
また、このワークショップの場は地域の人々を繋げる場としても役割を果たしたいと考えています。もし、参加者の中にアートやクラフトを専門にしている人がいたり、知人にいたりする場合、そこから次の発展的な展開が自ずと見えてきます。この他にも、部活動支援員や外部指導コーチなど部活動に関わることができる方を募る機会にもなります。美術室でのワークショップが地域を繋げるハブとして機能すればこの上ないことだと思います。
つくることへの喜びとウェルビーイング
何かを夢中になってつくる時間はそれ自体がとても充実した幸せな時間だと思います。作品が完成した時の喜びや、生活の中で実際に使うことを通して味わい深くなっていくクラフト、見ただけで楽しい気持ちが蘇るようなアート作品、こういったものが心豊かな生活に大いに貢献してくれます。そういった、つくることを通してのウェルビーイングの大切さについて、参加される人々に気がついてもらえるようにしたいと考えています。
自分で創造することの楽しさを知り、マインドセットに刻まれれば、それがあらゆることの行動基準になっていきます。その点において、上手に美術作品ができるかどうかは大した問題ではありません。アイディアを生かしたり、制作することを通して発見できるプロセス自体に価値があります。創造マインドセットが身につくとアートやクラフトの作品制作以外でも創造力を発揮できるようになりますし、充実感から主体的に取り組む姿勢を育てることにもなると思います。そんな状況を理想にして活動に取り組んでいきたいと思います。
最後まで読んでくださってありがとうございました。今回はアート&クラフトプロジェクトについて開催することになった経緯と、活動の目的について説明させていただきました。
私はこの美術室開放が多くの学校で広まってほしいと考えています。学校の設備は様々な活動に対応できるポテンシャルを持っており、大いに活用されるべきだと思います。活用されると、そこに資金も回り始め、さらに発展した場にもなっていくことでしょう。そんなことにつながっていくきっかけにしたいです。そのためにもあと1ヶ月少々、余念なく準備をしておきたいと思います。実施後に良い報告ができれば嬉しいです。
それではまた!
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