三原色水彩画で色彩について学ぶ
今回は色彩の学習教材を紹介します。以前にもパレット絵画や三原色で肌の色を表現するお話をしましたが、今回の内容は三原色(赤(マゼンタ)・黄・青(シアン))を使って色彩理論や混色、重色について実践を通して自然と身につけられる教材にしています。
教材動画はこちら:三原色で色彩表現
元々美術が専門ではなかった私なので、中学生の時は多少の混色は作って着彩していたものの、色を自在にコントロールできていませんでしたが、大学時代に水彩画や印象派の色彩理論について学んだことで色彩に対してそれまでとは全く違った視点で考えることができるようになりました。そして、このことが色彩表現を美術で指導する上での課題意識につながりました。
色彩についての学習は美術教育において非常に重要な部分ではありますが、(中学時代の私も含め)意外と基本的なことを知らない大人が多く、混色や重色を生かした表現の魅力、そして手軽にできるということも認知されていないと感じています。
今回の内容が中学校や高校の美術だけでなく、大人や小学生以下の子どもにとっても色彩表現の奥深さと面白さについて考えるきっかけになれば嬉しいです。着彩が苦手という人は是非試しにやってみてください。
画用紙やスケッチブック上に三原色をセット
一般的にはパレットに絵具をセットして、混色を作ったり、水を調整したりするものですが、以前に紹介したパレット絵画のように、画用紙上に絵具をセットして、絵を描くというのが、今回紹介する教材の特徴です。
絵具をセットする場所は画面のどこに三原色(+白)を置いても良いでしょう。水彩画なので、それほどたくさん絵具を出さなくても水で薄めれば少量の絵具でも十分です。空いているスペースに絵を描いていきます。
この絵は最初に鉛筆で簡単に下描きをしていますが、色彩の学習が目的なので、下描き抜きでいきなり色で絵を描いていくのも良いと思います。水墨画もそうですが、下描きを入れないからこそ自由な筆遣いや、濃淡を生かした立体感や奥行き感を出しやすくなるという側面もあります。
混色と重色を瞬発的に生かせる方法
パレットではなく、画用紙上に三原色をセットする狙いは、セットした絵具のすぐ側で絵を描けるゆえに、瞬発的に混色と重色を生かすことを容易にすることにあります。1枚の完成度の高い作品を制作すると考えると絵具が画用紙の上にセットされるのは不都合な話ですが、これはあくまで混色と重色による色彩理論について学習する教材であり、画面上に試行を残すこと自体に意味があります。アイディアスケッチでメモを書き込んだり、試しに色を実験したりするのと同じです。
試した分だけ色について体験的に学ぶことが可能であるなら、最初に画用紙に三原色をセットしておき、気楽に画面上で色を混ぜたり、重ねたりできるようにしておくことが有効だと考え、このような方法を取るに至りました。
この教材に使った制作例は混色よりも重色重視で描いていますが、混色と重色の見え方の違いについても実感できるよう、最終的にはどちらの方法も取り組ませたいところです。
三原色の絵具もただ置いてあって混色された状態にしておくよりも、絵の構成の一部として生かせるようにアレンジしても良いと思います。この作品では虹をイメージして表現してみました。
色彩表現の基礎について習得するスモールステップ
本来は三原色に絞って色彩表現するというのは表現の可能性を狭めてしまうものですが、色を自由に調整して表現する力をつけるためには三原色に絞って、強制的に混色や重色で描く機会をつくり出すことも教材として大切だと思います。
「個性豊かに自由に色を塗る」という言葉の聞こえは良いのですが、それは知識や技術が伴ってこそ、本当の意味で個性を生かし、自由に表現することが可能になるというもの。生徒は三原色の活用でここまで自由に色がつくれるとは思っていませんでしたが、実際にやってみると「意外にできた」という振り返りをたくさん確認することができました。
「自分にはできない」という思い込みが、実はそんなに難しいことではないことを実感させ、それまではやろうともしなかったことに見通しを持って挑戦することができるようになる、そんな可能性が教育にはあります。その実感への橋渡しさえコーディネートできれば、後は生徒の主体性によって自然と技術は向上し、知識獲得をするためのレディネスも培われることになります。そういう橋渡しがうまくいく教材を考えることがコーディネーターとしての教師の大切な役割であると私は思います。
最後まで読んでくださってありがとうございました。今回は三原色の水彩画で混色と重色の表現をし、色彩理論について学ぶことができる教材を紹介しました。色で遊びながら色彩理論について学べるのもこの教材の特徴だと思いますので、興味のある方は是非一度試しに三原色をセットして描いてみて欲しいと思います。
これからも遊びながら理論についても深く学べる教材を開発していこうと思います。また情報共有できるものがあればブログで書きますので、今後も楽しみにしてもらえると嬉しいです。
それではまた!
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