第2回 倉北アート&クラフトワークショップ
10月12日に第2回倉北アート&クラフトワークショップを開催しました。これは、今年から学校教育外で私が行っている「倉北アート&クラフトプロジェクト」という、福武教育文化振興財団の助成金を得て活動しているボランティアによる造形ワークショップです。第1回である前回は勤務校のPTA研修として開催しましたが、今回は保護者だけでなく、地域の方々にも参加していただけるイベントとし、中学生のボランティアにも加わってもらいました。
今回のブログではこのワークショップの振り返りと考察についてまとめました。
小学生から社会人まで計23名の参加者
今回の参加者で一番多かったのが小学生で13名、高校生からも1人の参加がありました。保護者の横のつながりによって倉敷市外から参加された方もおられました。勤務校の同僚の教員からも親子参加が3組ありました。
今回も6月のワークショップ同様、勤務校でチラシを配布して参加者を募集し、一応Instagramでも宣伝しました。今回からは誰でも参加できるワークショップになったので、学区外からの参加も少しあり、活動の幅を広げることができたことは良かったと思います。
美術室の容量限度である30名ぐらいの参加者を目指していましたが、結果的に程良い人数で活動しやすい環境で行うことができました。午後は参加者が減り、スペースに余裕があったので1日を通して平均20名程度、午前と午後の合計で30名程度が利用する状況を目指していきたいと思います。
中学生のボランティア
勤務校の美術部員を中心にボランティアの募集を行い、13名(美術部11名、美術部外2名)が参加し、当日は運営の補助をしてもらいました。ボランティアスタッフには当日までにワークショップで使える材料や画材を部活動や美術の授業の際に使って作品制作するなど、経験値を得た状態で臨んでもらいました。こうすることで、ワークショップの参加者に手解きができる状態になり、多様なニーズに応えられるようにしました。当日は油絵やレジンなどでボランティアスタッフが活躍し、私の負担を大いに軽減してくれました。午前中は特に参加者が多く、七宝焼をしたい方がたくさんおられ、私はそちらの指導と作業補助に忙しい状況でしたが、ボランティアスタッフのお陰でなんとか乗り切ることができました。
ボランティアとして参加する場合、材料が事前に使えるというのは生徒にとっては大きなメリットになったと思います。ボランティアスタッフ自身もワークショップで参加者の手解きをしつつ、個人の制作も楽しめるようにしていたので、これもボランティアとしては良い条件だったと思います。私にとっても指導できる人が増えることはメリットであり、今後もこのWin-Winな条件でボランティアを募っていきたいと思います。ちなみに、生徒にはもう一つメリットがあり、通知表と要録の実績にボランティア活動として記録に残ります。
倉北アート&クラフトプロジェクトではレギュラーのボランティアスタッフを募集しており、今回のワークショップを機に、今後ボランティアとして運営に協力して下さることになった方もおられました。
今回のワークショップを通して、スムーズな運営にはボランティアスタッフの力が必要であると感じました。特に、幼い子どもたちの要望に応えるには人手が必要でした。今後はレギュラーのボランティアを募りつつ、また勤務校の美術部員を中心に臨時のボランティアを募りたいと思います。
小学生にはレジンが人気 抽象の美を経験する重要性
小学生の参加者の中には絵や粘土、中には七宝焼に取り組む児童もいましたが、今回一番人気があったのがレジンクラフトでした。あまりに人気だったため、用意したレジンが殆どなくなってしまうぐらい盛況でした。透明感があって煌びやかなレジンクラフトは完成した時の感動が大きいようで、小学生たちは揃って「きれい!!」と感嘆の声をあげていました。
綺麗な素材を組み合わせてできるので、美観的に「ハズレ」が生まれにくく、誰でも手軽に楽しめるのがレジンクラフトの魅力です。そんな簡単なもので美的な判断能力が養えるのか疑問に思われるかもしれませんが、私はレジンによるクラフトは造形教育のスモールステップとして有効であると考えています。
レジンとビーズを組み合わせたクラフトは抽象的な造形を生みます。しかし、ビーズやレジンの配色にテーマ性を持たせることは可能で、完成した作品は非常に雰囲気のあるものになります。形が正確に描けなくても、色や材料でテーマを表現し、それをイメージに合うように組み合わせ構成する。これだけで十分に造形美は成り立つということを認識する経験は美的判断能力を培う上で非常に重要です。そういう経験がベースとなって、表現したいものが変容し、写実的な表現にも触れながら、できることを増やしていく。そんな発達過程が考えられます。
小学校高学年から見られる傾向として、写実性を求めるようになる中で抽象的でイメージ重視の遊びのある表現がそれ以前と比べてあまり見られなくなるということがあります。これは児童が写実性に重きが置かれていると認識してしまう環境が少なからず影響していると考えられます。「写実性が高い」=「絵が上手」「美術の才能がある」という偏った認識を持っている人が非常に多いのはこのことを象徴していると言えます。
そんな写実性に引っ張られがちな小学生が抽象の美を味わえる経験はとても重要な意味を持っています。写実性を身につけつつ、抽象を活用して雰囲気を表現する力をさらに高め、具象と抽象の融合した表現を楽しむことができるようになるスモールステップとしてレジンクラフトは有効性が高いと考えています。
大人も工作や絵画を楽しむ
保護者の参加者も童心に帰って造形を楽しんでおられました。大人が子どもの目の前で造形を楽しむことは子どもの造形を楽しむ心に大変な影響があります。親の取り組む姿勢を子どもはよく観察し、それを真似します。親が楽しんでやっていることなら、自分もやってみたいと思うのは自然なことです。アート&クラフトプロジェクトを全ての人を対象にしている目的の一つとして、大人と子どもが同じ空間で造形を楽しむことによって相互に良い影響を与え合う相乗効果を狙いとしています。
大人の参加者にも大いに楽しんでいただくために、多様な絵具や材料を用意しているのが本ワークショップの売りです。水彩(透明・不透明)、アクリル、アクリルガッシュ、ポスターカラー、顔彩、水彩マーカー、油性マーカー、クレヨン、オイルパステル、パステル、色鉛筆、油彩など一通りの絵具を揃えているため、大人でも好奇心をそそられるものがたくさんあります。油絵は広く認識されていて美術館で見る作品の多くが油絵であるにも関わらず、使ったことはない人がほとんどです。そのため、「一度やってみたかった」と言って取り組まれる方が、前回も今回もおられました。
クレヨン、クレパス、水彩(ポスターカラーを含む)、色鉛筆、マーカーなどは義務教育の学校に行っていれば自然と触れる機会があるので、多くの人にとって馴染みのある(とは言ってもクレヨンとクレパスの違いを認識している人はほとんどいませんが)絵具ですが、アクリル系さえも使ったことがないという人も多くいます。イベントカラーやペンキなどで知らず知らずのうちに使っていることはありますが…。普通に生活をしているだけでは、絵具との出会いは限られたものになってしまうものです。
使ったことがない絵具が使えることや、やったことがないことに取り組めることは大人の参加者にとっても非常に興味がそそられることです。今回、七宝焼にも取り組めるように準備し、大人がまず挑戦して出来上がったものを見て、次々に子どもたちも七宝焼に挑戦していました。七宝絵具を置く作業は繊細で神経を使いますが、小学生たちも真剣になって取り組んでいました。大人と子どもが相互に刺激し合える造形の場として今後さらに発展させていけるよう、取り組めるものを充実させていきたいと思います。
参加いただいた方からの作品提供
今回参加された方の中に画用紙とワイヤーで花のクラフトを制作されている方がおられました。非常に質の高い作品を制作されていて、その制作方法からは大変学ばされるものがありました。この参加者は午前から午後の最後まで造形を楽しまれていたのですが、最後に制作した作品の一つを提供して下さりました。
早速、美術室に最適な場所があったので展示しました。こういう質の高い作品が美術室の一部になることは普段この場所で授業を受けている生徒に良い影響を与える可能性を生みます。学校外の地域の方と生徒がこのような形でつながり、美術の学びがさらに充実することは大変意義のあることです。
参加者の方に作品提供を呼びかけるのは本プロジェクトの目指すところではなく、あくまで人と人、人とアートを繋げる場として造形活動の場を用意していますが、このような作品提供による美の広がりも期待できる場であることを確認することができました。
最後まで読んでくださってありがとうございました。今回は第2回倉北アート&クラフトワークショップの振り返りと考察についてまとめました。私はワークショップやプロジェクトの内容について知っていただき、このような活動が多くの場所で広がってほしいと考えています。造形ワークショップ自体は多くの場所で行われていますが、私は学校という設備面で非常に優れた場所がもっと多くの人に利用されてほしいと思い、今年からこのプロジェクトを立ち上げました。今回の内容に少しでもたくさんの方に興味を持ってもらえたのであれば嬉しいです。これからも本業に勤しみつつ、可能な範囲でこのアート&クラフトプロジェクトにも取り組んでいきたいと思います。ちなみに次の開催予定は2月下旬から3月上旬です!
それではまた!
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