面接マインドマップ
今回は面接練習の一環で取り入れているマインドマップについて紹介します。現在私は中学3年生を担任しており、面接の指導をする中で今回紹介する教材を思いつくに至りました。
マインドマップを活用した教材を作成しようと考えたのは、マインドマップによって思考のイメージ化が促進されることと、過去の自分自身の面接対策で手応えがあった方法であることを思い出したためです。
面接のトレーニングは自分自身と向き合い、思考が整理されたり、考えが広がったりする機会にもなると思います。これは講習会で発表したり、それに向けて実践研究をまとめたりする際に得られる感覚と近いものがあります。取り組んだ分だけ世界が広がり、やりたいことが明確化するためモチベーションが促進されるものであると個人的には考えています。
というわけで、今回は自らの世界観や思考を耕すことに繋げ、充実した面接トレーニングにするためのマインドマップの実践方法について紹介します。
ハウツーよりも自分が情熱を注げることのイメージ化
おそらくほとんどの人が試験や就職活動などで面接を受けたことがあると思います。ただ、面接に自信があるという人はあまり多くはないのではないでしょうか。かく言う私も、過去に教員採用試験で何度も面接で落とされた(と思われる)ことがあり、決して得意ではなかったと言えます。
何度も面接を受けていると、場慣れしたり説明が上手になって手応えのある面接を安定してできるようになるものですが、これを中学生に指導するとなると話が変わってきます。限られた期間で成果を出す必要があるので、面接で自分の考えをしっかりと伝えられるようにする指導が必要になります。
一般的に、中学生に対する面接指導では面接のテキストを購入してトレーニングに取り組みます。テキストには自己理解を深めるページや面接で聞かれそうな質問に対して一問一答形式で答える内容について文章を書き込むページがあり、面接の際の姿勢や気をつけるべきことが詳細に載っています。これらは面接の基本を押さえているので、知識として必要なことです。こういったことを手軽に確認できる面接のテキストは用意して損することはないと思います。
面接を上手に「こなす」ハウツーを参考にして日々トレーニングすれば、それなりに面接上手にはなります。ただ、これが面接トレーニングの目的であるとしたら少し勿体無いことであると私は思います。面接で話す内容は、高校で頑張りたいこと、自分が興味関心のあること、将来の夢であり、情熱に溢れた内容です。本来であれば、1分以内で手短に話をすることさえ難しいぐらいに熱く語りない内容となってもおかしくはないはずです。しかし、それが言葉に詰まったり、頭が真っ白になって言葉が出てこなくなったり、そんなことがしばしば起きます。上手く言えない不安があると、何度も話す内容を覚えるためにメモしたことを暗唱しようとします。このような練習を努力すること自体は悪いことではないと思いますが、面接練習による成長の可能性を十分に生かせているとは到底思えません。
取り組み方によっては、面接練習は、自分について知り、情熱を注ぎたいことを想像し、輝く未来に向けて夢と理想を膨らませるキャリア学習の機会になります。これは非常に意義ある時間になると思いますし、それを目指して指導することが大切です。それゆえに、まずは自分が情熱を注げることについてイメージ化し、それを膨らませていける仕掛けが必要であり、それがマインドマップの活用になります。
セントラルイメージには自分が一番熱くなれること
イメージを可能な限り広げ、柔軟に話せる状態に
マインドマップはセントラルイメージという軸となる言葉から連想を働かせて言葉を広げます。一問一答形式とは違い、イメージを無限に広げ、関係ある事柄をつなげることができるため、自己理解や自分がやりたいと考えていることを把握しやすくなります。セントラルイメージは全ての内容につながる起点になるため、考えていることがブレにくくなるというのも面接ではポジティブな要素となるでしょう。なお、この熱くなれることを表すセントラルイメージはマインドセットや理念に関することにすることをお勧めします。こうすると多様な言葉に繋げやすくなります。
一問一答形式で答えを考えると、上手に答えることが優先され、内容が薄くなってしまうこともありますが、マインドマップの場合は内容が無数につながっているため、いくらでも内容を調整して話すことが可能になります。言いたいことを忘れてしまうケースはよくありますが、そもそも内容が無数にあれば一番言いたいことを忘れたとしても、それ以外に話せることはたくさんあるので、話す内容を必死に覚える必要もありません。面接において第2・第3候補の内容を用意しておけば、集団面接で他の人と内容が被ったとしても焦ることなく話すこともできます。
言葉を色分けしてイメージをより明確に
連想で広げた言葉を内容で色分けすると、よりイメージが明確になり、自分が何を大切にしているのか、または何に対する意識に課題があるのかを掴みやすくなります。
この教材では「世のため、人のためになること」「自分の強みに関すること」「自分が情熱を注げること」で特に該当するものを色で囲むようにしました。ちなみに、自分で設定する項目も作れるようにしています。こうすると複数の色が該当するキーワードが見つかり、逆に他に比べると意識が弱い内容も分かります。
高校受験の面接について考える上で、自分の強みや情熱を注げることへの意識は大切ですが、将来仕事をすることを考えると、「世のため、人のためになること」について生徒によく考えるように指導しています。これについての意識がいずれ仕事に繋がるというのもあるのですが、自分の強みと情熱が重なった時、仕事や学習に励む上での一貫性を持ったモチベーションになり得ると考えています。
自分の強みや情熱も大切ではありますが、これらは絶対的なものではなく、相対的な側面がやや強く、継続性に欠けると思います。強みは他者と比較すると劣ってしまうことがありますし、自身の変化によって強みは喪失する可能性さえあります。情熱を注いでいることも様々な要因で冷めることがあります。しかし、「世のため人のため」に関することと接点があれば継続して強みを伸ばし、情熱をさらに注ぐこともできるようになるのではないでしょうか。
セントラルイメージで「熱くなれること」を書き込むことはマインドマップを広げる上で大切なことですが、セントラルイメージから生み出された事柄が後々自分の人生の軸になっていくことはよくあることです。とりあえず高校入試や大学入試の段階で自分が活発に活動したり、学習したりできることを考えることが重要です。
メタ認知を促すマインドマップ
マインドマップでセントラルイメージから言葉を広げていくと、個人的なこと(趣味や個人的な幸福など)と社会的なこと(仕事や周囲との関係)につながりがあることを発見するきっかけにもなります。
一問一答形式で応答する内容を考える場合、記述の内容的にこのようなつながりを意識することが難しいですが、マインドマップの場合は言葉が図で繋がっているため発見しやすくなります。
面接練習を繰り返し行う中で、考えがさらに深まった際に、マインドマップに言葉を追加して、さらにイメージを広げるという使い方もおすすめです。こうして気づきを蓄積していけば、メタ認知が促され、考えていることがより明確化していきます。このような状況になれば、聞かれたことに対してより柔軟に応えることも可能になることでしょう。
マインドマップによるイメージの繋がりは意味と内容を深めることを可能にします。例えば、「美術教育」という言葉から「絵画」「彫刻」「デザイン」「工芸」といったありきたりの言葉が広がっていても、大した内容にはなりません。しかし、そこに別の枝で広がっている「地域活動」という言葉と繋がることで、「イベント」「ワークショップ」「企業との連携」「デザイン思考」「マーケティング」といった他の要素が生まれます。こういう視点も交えて話ができれば非常にポジティブな印象を与えることになりますし、これは面接だけでなく、小論文でも自分の考えをアピールすることも可能になるでしょう。
最後まで読んでくださってありがとうございました。今回は面接のトレーニングでマインドマップを活用した教材について紹介しました。マインドマップは自分の考えを広げ、深い内容で説明する力をつける上で大変有効だと思います。面接練習とは、未来の自分を描くための“自己対話の時間”です。その時間を豊かにするツールとして、マインドマップはとても有効だと感じています。色んなことに活用できるので、良かったら参考にしてみてください。
ちなみに書籍の宣伝になりますが、明治図書から出版されている『道徳教育07月号』でマインドマップを活用した道徳の授業法について書いています。もしご興味がありましたら、こちらも見ていただけると嬉しいです。
それではまた!


 
 
 
 
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