ステンシルで年賀状作成 2026年午年

 2025年の最終記事は毎年恒例のステンシルでデザインを施した年賀状について書きます。

 来年は午年ですね。ウマは生命力や飛躍、成功、幸運を象徴する縁起物ということで、そんな雰囲気をデザインに生かせるように考えました。ステンシルという版画を活用した着彩はやり方さえ分かっていれば簡単にできます。今から取り掛かると正月には間に合わないと思いますが、年賀状のお返しであれば、正月休みで時間に余裕がある人もいると思います。興味があれば是非やってみて下さい。子どもと一緒にやってみるのも楽しいと思います。


下がきを描く

 ステンシルは切り絵を活用した版画なので、絵は切り抜きしやすいシンプルなものにすることをお勧めします。


 最初に全体の構成を考えて、それを基にして上から写し描きすればパーツの位置関係を合わせて形を描くことができます。ハガキサイズの枠を用意した紙に絵を描くと位置がズレず、綺麗に形が重ねられます。


 写し描きした紙をハガキサイズの画用紙(ケント紙や百均などで売られている無地のハガキなどがお勧め)に糊付け、もしくは写真のように裏面に鉛筆で塗り潰してカーボン紙のような状態にして絵を画用紙に転写します。

 次に、画用紙を切り抜いて切り絵にします。この際、シルエットをそのまま切り抜く場合と線を残して切り抜く場合に分かれます。これが少しややこしいところですが、基本的に線が繋がっている状態で描けば大丈夫です。今回のものであれば、富士山の形をした二〇二六の文字の部分のみ線を残して切り抜き、他のものは全てシルエットの部分を切り抜くシンプルな図にしました。「謹賀新年」の文字の部分は切り絵として成立させるために行書にしています。文字を切り絵にする場合は普通に書くと大抵の場合は切り絵にできないので、少し形を変形させる必要があります。そういう点で行書を使うのが便利です。

 ちなみに、最初の下描き段階では謹賀新年の文字は縦書きにしていましたが、構図の密度が偏るので、横書きにして上部に構成し直しました。ステンシルは多版で構成を変更したり、色々なパターンを試したりしやすいのも魅力です。

 

配色の実験を楽しみながら多色で重ねる

 ステンシルは色の工夫がしやすく、スポンジやスパッタリングで着彩する際に、配色を試したり、画材を変えたりして着彩の実験も兼ねて作業することができます。これがとても楽しく、毎年ステンシルを続けている理由の一つです。版画の教材資料にもなるので、一石二鳥にも三鳥にもなっています。




 ステンシルの着彩は個人的にブラシと網で絵具を霧状に飛ばすスパッタリングがお勧めです。専用の道具を使わなくても、硬めの歯ブラシと料理用の網でも十分です。スパッタリングでは単色で着彩しても良いですが、私は複数の色(色相環である程度離れた色、例えばマゼンタとオレンジ、イエローとシアンなど)を使って目の中で色が混ざって見える着彩方法が好きです。この方法は視覚混合と言って、印象派系の画家が使ったことで有名ですが、プリンターの網点の技術(シアン・マゼンタ・イエロー・ブラックのインクを点で配置し混色に見えるようにする)にも利用されています。この色彩表現は色に深みを持たせることができ、絶妙なグラデーションも生み出せます。

 スポンジでの着彩も色を画面上で混ぜたり、マットな塗りあがりになって魅力がありますが、年賀状で文字も書くので、あまり絵の色が強くなりすぎないようにしたいところです。こう言った点からも、私は年賀状のステンシルではスパッタリングをよく利用するようにしています。

 最初に背景から着彩して、徐々に色を重ねていくと、図の前後関係を綺麗に表現できます。文字はスポンジでは色が滲みやすいので、一部はスプレーで着彩しました。スプレーで着彩すると版が樹脂加工されて防水になります。これがスパッタリングで着彩する上で好都合となります。通常、スパッタリングをすると水が版の紙について、紙がたわみます。たわんでしまうと文字の形がボケて綺麗に文字が写せなくなります。しかし、防水加工された版は水にたわまなくなるので、スパッタリングしても綺麗に文字の形を写すことが可能になります。


 スプレーをする際に気をつけたいのが、スプレーを少しだけ吹きかけるということです。普通にスプレーのボタンを強く押してしまうと色が強く乗りすぎてしまいます。なので、スプレーを軽く押すと同時に、スプレーを持っている手を動かして、液がほとんどかからないようにすると、ちょうど良い加減に色がついてくれます。

 スプレーは油性系だと紙に染み込んでしまうので、水性やアクリル系のものを使うようにしましょう。


同じ図でも色とりどりに

 ステンシルは色の工夫を手軽に楽しめる版画です。私は毎年40枚程度版画で年賀状に絵付けをしますが、配色は直感的に考えて、色んなパターンのものを作成します。



 こうして見ると、二〇二六の〇の部分の紺色が強すぎてアクセントになってしまったのが後悔です(白っぽい色が馴染んで良かったと思います)が、文字を富士山と重ね、馬が登る構成にした部分は良かったと思います。

 あと、今回はラメ入りのアクリル絵具も使い、煌びやかな年賀状にしました。こういう素材感を生かせるのも手作り年賀状の良いところだと思います。



1年に1回だからこそ大切にしたい年賀状

 このステンシル年賀状を初めて、今年で12年となりました。これを始めたのは私が美術の教員として正規採用となり、クラス担任になったことがきっかけです。たくさんの生徒に年賀状を送る機会を得ることになりました。別にクラス担任だからと言って年賀状を出さなければいけないわけではありません。ただ、私が小学生だった時に、当時の担任の先生が手描きのイラスト入りの年賀状(文章量もかなりありました)を下さったのがとても嬉しかったので、同じように私もクラスの生徒に一貫して絵を入れた年賀状を送るようにしています。

 だからと言って、膨大な時間を割いて年賀状を書くのも現実的ではありません。ステンシルを利用すれば、割と短時間でオリジナリティを生かした年賀状を作成できますし、この作業自体もとても楽しく取り組めます。これなら負担はそれほど感じないということで、これまで続けてこられました。

 ステンシルで年賀状作成を続けていると、1年に1回のこの作業が自分にとってとても大切な時間であることを認識するようになりました。稀に3年連続担当する生徒はいますが、基本的には1年ごとに担任する生徒は代わりますし、クラス担任ができるのも限られた期間です。もしかしたら、年度が変われば二度とクラス担任ができなくなってしまうこともあり得ます。そう考えると、クラスの生徒に心を込めてデザインを施し、新年のメッセージを送る機会があることに感謝の念が湧いてきます。

 タイパやコスパで考えると、年賀状を書いたり、ましてやステンシルでデザインを施すというのはどう考えても合理的な話ではありません。しかし、感謝の念に浸れるということ自体が大切ですし、そういう時間が貴重だと思います

 1年の節目となる時期だからこそ、人との関係と向き合い、感謝の念を持って新しい年を迎えることができる。そんな機会に繋がるのが年賀状だと思います。そして、創意工夫した年賀状を作成し、相手に細やかなサプライズを送る。そんな新年を迎えるのも良いと思います。そんな魅力がステンシルの年賀状には詰まっていると思うので、私はこれからも、手作りの年賀状を作成し続けていきたいと思います。


 最後まで読んで下さってありがとうございました。今回はステンシルを利用した年賀状の制作方法と年賀状に対する私の考えを書かせていただきました。今回の内容を読んで、年賀状やステンシルに興味を持ってもらえたら嬉しいです。

 今年もあと数日で終わりますが、まだやり残したことがあるので、ラストスパートをかましていきたいと思います。やることやって2025年が終えられるよう、あと少し頑張りたいと思います!

 今年も大変お世話になりました。

 皆様良いお年をお迎えください!

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