ステンシル版画の魅力 〜年賀状デザイン〜

  今回は中学校の美術教師らしく教材についての内容です。私の趣味は教材研究なので、今回はかなり強烈なこだわりをもって版画の授業実践についてお話しします。

 版画と言えば、多くの人が木版画をイメージするのではないかと思います。実際に生徒に版画の制作に入るというと「彫刻刀を準備するんですか?」と聞かれます。これまでに取り組んできた版画のイメージが強烈に刷り込まれているのでしょうね。版画は白と黒のみの世界だと思い込んでいる場合も少なくはありません。

 版画の制作に入る前に版画には大きく4種類のものがあり、凸版、凹版、孔版、平版それぞれに特徴的な作品を作ることができることを作品例を示しながら説明するようにしています。凸版はこれまでに生徒が紙版画や木版画で経験したことがあるものですが、多版多色木版(浮世絵)を見せると、「葛飾北斎の浮世絵って版画やったん!?メチャカラフルで普通の絵やと思ってた…」「え?分担作業でやってたん?」みたいな反応があり、版画の奥深さについてついて考えさせることができます。凹版の緻密な線描、平版の柔らかい表現は中学生にとって版画というものに対する考え方を根本的に揺るがすインパクトがあります。

 そして生徒が取り組むことになる孔版のステンシル。穴から絵の具を通し切り絵を利用して作品を版画を写し取ることによって切り絵のシャープさと大胆な図柄、多様な色彩表現を可能にします。版画の導入の授業でステンシルによる版画の作品例を示すと、その工夫の可能性にあふれた表現方法に多くの生徒が興味を示してくれます。


 今回紹介するステンシルの技法を用いた授業では年賀状のデザインが題材です。年賀状は古くから日本にある物ですが、最近年賀状を出す人はかなり減ったと思います。しかし、年賀状には年賀状の良さがあり、本当に大切な人にはとっておきの年賀状を届けるのも悪くはないと思います。これに関しては以前の記事で書いていますので、そちらをご覧になってくださると嬉しいです。

https://art-educator-tatsuwaki-serendipities.blogspot.com/2020/12/sns.html


 年賀状には日本人の美意識を詰め込んで、相手に誠意を伝え、より良い関係を築いていこうとする想いが宿った時に、本当に価値あるものになると思います。そんな年賀状を受け取った正月は相手にとって非常に気持ちの良い1年のスタートになるのではないでしょうか。近代から現代の年賀状の多くはいわゆる「社交辞令」的なものとして存在していた側面が強いですが、デジタルやSNSが普及した現代だからこそ、芸術としての年賀状に視線を向けてることが大切であると考えています。そのような想いから私は「ステンシル版画で年賀状デザイン」という教材をカリキュラムの中に入れるようにしています。

 今回はステンシルで年賀状の版画をデザインすることの魅力について「ステンシルの魅力」「年賀状を題材にする可能性」の2点に大きく分けてお話しさせていただきます。表現や発想の面で大切なことについて触れていきますので、版画や年賀状に興味のない人でも最後まで読んでいただけると嬉しいです。

 今回のラインナップは以下のようになります.

ステンシルの魅力

1.デフォルメによる強調された表現

2.色のアレンジがしやすい

3.構成の面で進化させやすい

4.遊びのある表現


年賀状を題材にする可能性

1.自分の好きな干支の選択

2.言葉をデザインに

3.貰い手の気持ちを考えるデザイン思考


 今回もかなりがっつりな内容ですが、春も近づき最近はスポーツをしていて一層体が気持ちよく動くので、手もよく動きます。タイピングスピードも上げて軽快に書き上げていこうと思います!



ステンシルの魅力

1.デフォルメによる強調された表現

 デフォルメ(強調・簡略化)は漫画やデザインでよく使われる技法で、これを使うことによって主役が目立つようになったり、よりモチーフの特徴を強調して伝わりやすい表現にすることが可能です。この技法自体が造形的に優れたものを生み出すポイントになりますが、切り絵をベースにするステンシルはその特性上デフォルメが必要になるため、必然的にデフォルメの効果を作品にもたらすことができます。

 このデフォルメが条件になる表現によって救われるのは写実的表現が苦手な生徒です。彼らの多くは自分が絵が上手でないことに強いコンプレックスをもっていることが多く、平面表現に自信をもっていないことが多くあります。そんな生徒でもデフォルメが条件となっていれば、形の歪みもそれほど気にしなくても良くなります。ステンシルによる着彩では形がはっきりと写し出され、色も綺麗に出せるため、形が正確でなかったとしてもそれはそれで十分に魅力的なものになります。形の歪みがそのまま「味」や「クセ」になって、作品の独自性につながるのです。

 このような形を稚拙だと捉える人もいますが、マチスのカットアウトのように、その人の心の中のイメージがそのまま形になるという、その人にしかない視点を通して表現されたものであば、それは大事にされるべき表現と言えるのではないでしょうか。このような表現に対して「それでは評価をすることが困難」と言う人もいますが、そういう人は学習指導要領のどこに「写実性を評価する」という記述が書いてあるのか問いたいです。デッサンであれば、このような点に関して対象のボリュームや角度、明暗を捉えるというのがポイントになるため写実性を評価するのも間違いではありませんが、それ以外の場合であれば、モチーフを表現する際の形というのは本人の想い次第であり、カメラで捉えたような写実性は決して必要なことではないのです。

 では逆にデフォルメはしていても写実的要素を取り入れて表現している場合はどうなのかという疑問が生まれると思いますが、作者がそのように表現したいのであれば写実的に表現するのも勿論良いでしょう。結局は作者がどうしたいかによりけりであり、教師は生徒の表現を応援したり、問題が発生した時のサポートに徹したり、表現を発展させるためのメタ認知を促すことが仕事になります

 写実的な表現が得意な生徒もほとんどの場合デフォルメを利用して、普段とは一味違った表現を楽しんでくれます。結局のところ、デフォルメの要素が強い表現方法は写実的な表現が苦手な生徒だけでなく、描写能力が高い生徒にとっても取り組みやすいものであると思います。この適度な取り組みやすさは生徒が生き生きと活動をする上で大変重要な要素だと思います。このバランスが崩れてしまい、簡単すぎたり、逆に難しすぎたりすると誰かが憂鬱な時間を過ごすことになります。極力そういう状態にならない「易しいけど突き詰めがいのある」表現を教材として設定したいと思います。


2.色のアレンジがしやすい

 ステンシルの魅力は色の表現にもあります。基本的にはスポンジや専用のブラシで色を刷り込んでいくのですが、この際に色の調整が非常にやりやすいのがステンシル版画の特徴です。

 版画は刷り上がるときに色がどう写されているのか分からず、綺麗に刷れているかドキドキした経験が多くの人にあるのではないでしょうか。思うように刷れていなくて再びバレンでゴシゴシ…ありましたよね?(笑)。ステンシルも版を剥がすときに綺麗に写し取れているかはドキドキしますが、少なくとも自分の塗った色については完全にコントロールしているので、他の版画ほど版を剥がすときのスリルは味わえません。この点については体験的価値という意味で少々デメリットと考える人も稀にいるかもしれませんね。

 しかし、まさかこんなスリルを求めて版画をする生徒なんて基本的にはいないと考えて良いでしょう。やはり、やるからには満足のいく版画を製作したいわけであり、とことん色を自分のイメージに合うまで調整できるステンシル版画は生徒にとって魅力的な教材だと思います。極端な話、一度塗った色を完全に変更して上塗りすることさえ可能です。この着彩の瞬発力は版画の中でステンシルが最強だと思います。

 色のコントロールがしやすいステンシル版画は、複数の作品を製作するときに、さらに色の可能性を生かすことに貢献してくれます。思い切って色を変えて雰囲気を全く別のものにすることができるのも大きな魅力でしょう。もともとカラフルにしやすいのですから、配色を1枚目2枚目と根本的に変えていくと非常に多くの色の組み合わせを実験しながら体験することができます。つまり、ステンシル版画は色の学習の面で大変有効な表現方法であると言えます。

 ここまでで、すでに色彩表現の魅力についてはお腹いっぱいという人もいるかもしれませんが、まだまだ色の可能性をステンシル版画は引き出してくれます。それはスパッタリングの活用です。この技法は絵の具をつけたブラシを網の上で擦り、スプレーのように色を飛ばすというモダンテクニックの一種です。

 これをすると、表現が非常に幻想的になり、光の雰囲気や空気感を表現することができるため、多くの生徒がこの技法を利用します。と言うより、他の人がやっているのを見て自分もやりたくなるという感じです。単色でスパッタリングをするのも良いのですが、複数の色を別々に用いて着彩すると、色の粒子が目の中で混色として見え、単純に色を混ぜて表現するより、色が鮮やかで明るく見える視覚混合という、印象派がよく利用した効果を得られます。

 別々の色どうしが混ざって見えるという、認知機能の限界を超えた現象に対して人間は本来恐れるのですが、このような安心安全なものの場合は別の話です。人間の認知の限界を超えたものや、自然のもつ雄大さやパワーに対して私たちは畏敬の念(awe体験)を抱く習性があります。スパッタリングにはそのような人間の本能を刺激するような可能性があり、更に言うならモダンテクニック全般に人間のコントロールを超えた自然の美としての要素があるため、表現に用いるとそれを見る人の興味を大変惹きます。

 本能に刺激を与えるスパッタリングは禁断レベルの技法なのかもしれません。これが使えると、それまで美術が苦手でどうしようもないものだと考えてきた生徒でもすごい手応えを感じてくます。美術が苦手な生徒でも楽しめますが、もともと美術が得意だった生徒にとってもステンシル版画での色彩表現は表現のレベルを更に一段上げてくれます。

 色んな生徒にとってステンシル版画の着彩可能性というのは魅力的です。授業では日本の伝統色について触れた上で配色の際には意識して使ってみるように指導をしますが、一枚そういうものを作ったら後は伝統色以外の自由な配色で製作するのも勧めています。そうすることで実に多様な作品が生まれます。生徒の多様な表現を見ていると私が美術を教えている立場であることを忘れてしまいそうになりますが、生徒の表現から教師も学べる授業にするというのは私が常に目指していきたいと考えていることです。


3.構成の面で進化させやすい

 ステンシル版画では版を逆向きにしてみたり、パーツを追加したり、または版をずらしたりなど構成を変えることが容易にできます。中には友達の作ったパーツを利用して合作にしたり、メインのパーツを全く違うものにして完全に新しい作品を作る生徒もたくさんいました。

 紙を切り抜いて図柄をどこに配置するか。これはカットアウト(切り紙絵)の得意とすることですが、これをステンシル版画の前に取り組んでいるので、この技法が生かされます。ステンシル版画は作品到達度を見ながら作業できるため、パーツを配置した段階でなんとなくどんな感じになるかイメージができます。その安心感があると、手を加えていきやすくなると考えられます。構成を変えたものを着彩してその効果を実感し、またすぐに次の工夫に入るという、工夫とフィードバックの高速回転によって、ちょっと目を離した隙に大変な進化をしている作品もたくさん出ます。

 表現を進化させる上で手軽さというのはとても重要な要素だと思います。手軽で簡単な方法でも、工夫を重ねることで作品はどんどん進化して、気がついたときには創造的で個性の輝く作品に到達するということになります。

 構成の作品に与える影響は非常に大きいです。極端な話、いくら絵を頑張って描いていても、構成が考えられていなければパッと見た時の印象は弱いものになります。逆に超絶シンプルでも、構成さえ考えられていたら国旗のように洗練された美しいものにもなります。構成美というものは縄文土器からも見ることができ、人類が自然の中から発見した美の法則です。美術を指導する際には構成美について生徒に考えさせる機会をたくさん設けるようにしています。構成美の大切さを知れば知るほど形を大胆に利用することができるようになり、「絵を写実的に上手に描く」という考え方ではなく、「見応えのある構成」を意識して多様な工夫を凝らした制作をすることができるようになります


4.遊びのある表現

 なんと言ってもステンシル版画の魅力は遊びを中心にした作業にしやすいということです。図柄はデフォルメの効いたシンプルなもので良いですし、一旦紙を切り抜いて版を作ってしまえば、後は色や構成で遊びたい放題です。版画は納得のいかない配色や構成をしてしまったと感じたのであれば、すぐにまた次の1枚に取り掛かることができます。学校の授業ではどうしても子どもたちが「評価」を気にして失敗しないようにしますが、ステンシル版画の場合、失敗しても大丈夫という安心感があるため、配色に困って手が止まる生徒はほとんどいません。失敗したと思ったらすぐに別の色に置き換えられると分かっていますし、イメージと違ったというのであれば、その作品はただの実験場として色んなことを試してみるというのも良いでしょう。失敗したと思った作品も、実験台にしている中でとても良い作品になったという振り返りをしているものもありました。

 制作時間の最終回では授業の目標を「色で遊ぶことができる」というものにします。ステンシルという技法を使った作品なら何をしても良いという意識で1時間遊んでもらいます。その結果、授業の振り返りでは「遊ぶことで新しい表現と出会える」「自由で楽しめる。しかもたくさんの発見や工夫がある」といった、非常に重要なことに気が付けたことを振り返りシートに書いている生徒がたくさん見られました。その流れで次の授業では作品鑑賞会を行い、鑑賞会で更に表現の面白さや奥深さに気がつき、「遊び」の重要性について認識が深まります。



年賀状を題材にする可能性

1.自分の好きな干支の選択

 子どもたちが制作に取り組む際に大切なことは自分たちの好きなものを表現に使えるかどうかというのがとても大切になります。「もし来年が丑年だから牛限定で」となったら、おそらくテンションが上がらない子どももいるでしょう。牛は私たちの生活では大変ありがたい存在ですが、犬や馬、ウサギ、辰といった他の人気のあるモチーフを使えない状態にするのはあまり好ましい方法とは言えないと思います。

 今回の制作では2学期の後半から取り組んだので、自ずと丑年というものが浮かんだ生徒もいるかもしれませんが、この教材の狙いはあくまで「年賀状の価値に迫るデザイン」なので、次の年のものに限定する必要は全くありません。自分が一番取り組みたいと思える干支を選んでデザインを制作してもらいました。

 美術の授業では多少の条件付けも必要になりますが、それによって窮屈に感じたり、表現の幅が狭くなってしまうようなことがあると、教材の魅力を引き出すことができなくなってしまいます。そう言った意味で、モチーフに関してはある程度の自由度を設けることが大切になります。

 このようなことを言うと、じゃぁそもそも干支ではなくて良いのではないかと言われそうですが、それは違うと思います。年賀状という日本古来から存在するものと、これまた古来から存在する干支のコラボレーションは文化的に非常に強力です。この接点があるからこそ、日本の美について深く学ぶ機会が作り出せるわけであり、題材のテーマ設定として大切なことだといえます。子どもたちは文化に触れながら、美術を学ぶのです。学習指導要領にはこのことについてもしっかり述べられています。

 干支にモチーフが絞られることのメリットは他にもあります。干支という12の選択肢というのは、自由にモチーフを考えて選ぶよりも易しいため、考えたり決断したりするのが苦手な生徒にとって取り組みやすくなります。私のようにゴキブリ以外の全ての生物を愛する人間なら12支の中から選ぶのでさえも難しいかもしれませんが、大抵の子どもは好みがはっきりしていて割とすぐにモチーフを絞ることができます。モチーフが絞れたら後はデザインを考えるだけなので、作業はスムーズに進行していきます。そしてデザインの工夫を色々と考え、内容を充実させる時間を充実させていくことができます。このデザインにしっかりと取り組める時間が大切だと考えています。

 悩みに悩んでテーマがやっと決まるというのも時には必要ですが、悩みというのは「悩み過ぎ」になることが多々あります。美術の時間は悩む時間がメインではありません。手を動かし、次々に工夫をしていく。そのような試行錯誤の中で悩むのなら非常に意味もあるのですが、ただじっと考えているだけというのはほぼ思考停止状態のようなものです。私たちは頭の中だけで考えることを非常に不得意にしていることを忘れてはいけません。まずは行動。それを可能にする教材設定と授業作りがとても大切だと考えています。


2.言葉をデザインに

 年賀状には新年を祝う温かいメッセージや数字が入ります。文字もデザインとして大事であることを学ぶ上で年賀状はとても良い教材になると思います。

 ステンシルで文字を作る場合、少々制限が発生してしまいます。単純に文字を切り抜いてしまうと、ステンシルとして成り立たなくなってしまうケースが多々あるためです。しかし、それゆえに文字を工夫して形を変えたり、紙を繋げるための線を入れるなどして強制的に形をアレンジすることになります。これによって字が不恰好になることもあるかもしれませんが、大抵の場合、普通にデザインされた感じの文字になってくれます。

 カッターで切り抜くと明快な形になるため、どんな形でも基本的にはデザインされた印象のものになる上、そこに色の工夫が入ると文字が一段と格好良く見えるようになります。

 多くの生徒にとって、文字の美的な効果というものについてあまり意識したことがないようで、格好良く写し出されてた自分の文字に驚く姿をたくさん見ることができました。中には文字だけで年賀状をデザインする生徒も現れ、絵の入ったバージョンと2パターン魅力的な作品を作ることができていました。



  文字や言葉も美の大切な要素であるということが実感できると、デザインの面白さを更に深く知ることができますし、それが表現力の幅を更に広げることにもつながります。


3.貰い手の気持ちを考えるデザイン思考

 なんと言っても年賀状は自分のためではなく、他者のためにデザインするものです。貰い手が受け取ったときにどう感じるか、これを意識してより良い状態を実現するデザイン思考が求められます。そう言った意味で、年賀状は子どもたちにとって身近な存在であるため、デザインと真剣に向き合いやすい教材であると考えています。

 「自分が受け取るなら」というのをイメージしやすいというのはとても大切です。もし、自分にとってどうでも良いようなものがデザインのテーマになっていると、その制作で良い形を生み出すために自分の考えを深め、試行錯誤するというエネルギーを生み出すことは非常に難しいでしょう。年賀状は自分が送る場合のイメージが働くからこそ製作へのモチベーションに繋げやすく、その点が教材としての大きな強みと言えるでしょう。


 どのようなデザインにしたら美しく見えたり、面白くなったり、インパクトを出したりできるかについて作品を製作をして比較をしながら考えを深めることができる時間というのはメタ認知に溢れています。出来上がった複数の自分の作品を見比べることによって、それぞれの作品の良さと課題がわかります。それに気が付けると、更にもう一枚改良版を製作したくなることも期待できます。

 今回の制作ではできれば2枚作品を作るように指示を出していましたが、3枚目以降に関しては「ご自由に」というスタイルでやっていました。つまり、3枚目以降は自主的な取り組みになります。そのような条件で結果的にどのようなことが起きたかというと、3枚以上製作した生徒が多数出ました。中には末に2枚以上できているにも関わらず、補習にまで参加して作品を制作する生徒さえいたほどです。それぐらいに関心をもって取り組んでくれたことは大変嬉しいことですし、改めて身近に感じられるデザインや改良を重ねていきやすい教材の重要性について考えることができました。


 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回は授業実践に関することだったのでかなり気合が入って文章を書いてしまいました(笑)。長い内容になってしまったので、今回の内容を振り返ると、ステンシル版画はデフォルメによる強調された表現や色のアレンジがしやすいということ、構成の面で進化させやすく、遊びを生かした表現ができることが魅力ということでした。そして年賀状という題材は自分の好きな干支を選択でき、言葉をデザインに反映させやすく、身近なものであるゆえに貰い手の気持ちを考えるデザイン思考がしやすいという魅力があります。

 色々な版画による表現がありますが、手軽で遊びがいのあるステンシル版画は非常に教育的効果が高いと私は考えています。年賀状以外にも、和歌をテーマに日本の美をステンシル版画で取り組んだこともありますが、もちろんこれ以外にもステンシル版画の魅力を引き出せる題材はいくらでもあると思うので、美術や図画工作で子どもたちに版画を教える機会がある方には是非一度ステンシル版画に取り組んでみてほしいと思います。

 今回の教材は私のYouTubeチャンネルにもアップしていますので、もし興味があれば、そちらの方もご覧いただけると嬉しいです。



https://youtu.be/IM9lXmAhKuk




 次回は「部活動の在り方」について、これまでソフトテニス部と美術部を担当してきた経験からお話させていただく予定です。これまで部活動問題はさまざまなところで語られ、今大きく変わろうとしています。近い将来学校の先生の多くが部活動の顧問から離れる時代も来るかもしれません。しかし、私は部活動顧問も可能な限り続けていきたいと考えています。勿論本業の美術教育、そしてクラスや学年の経営について今後も更にレベルアップを図りたいと考えていますので、私はいわゆる「部活動専門教員」ではありません。そんな私が部活動について切り込んでいったら、ゴリゴリの部活動で生きている先生にフルボッコにされるかもしれませんが、私なりにベストを尽くして部活動に取り組んできたつもりなので、私の観点で語ろうと思います(笑)。よかったらまた読んでいただけると嬉しいです。

 それではまた!


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