Google ClassroomとGoogleドライブを用いた教材共有で生み出すシナジー
以前の記事で、Google Jamboardによって道徳や美術の授業の可能性が大きく広がったことについてお話ししましたが、これらは「共有」がスムーズになったことによって、お互いの考えを生かして、アクティブに深い学びを実現することができるようになったというものでした。
GIGAスクール構想のもと、Google Workspaceが利用可能になったことでGoogleが提供する様々なアプリケーションが授業で活用できるようになり、教師と生徒がより良い関係を主に学習面で作れるようになりました。使い方によっては部活動や委員会活動でも有効です。
GIGAスクール構想では教師と生徒、生徒と生徒が学校生活でデジタルを活用することにとどまらず、保護者や地域との関係も新しいものにしていく可能性があります。そして教職員の連携の在り方も大きく変わっていくことと思われます。教職員の連携が充実したものになれば、教材が簡単に共有できるようになって授業準備の時間が短縮され、時間外労働の問題も改善する可能性があります。教材の共有はやろうと思えばこれまでの校務用パソコンでもできましたが、より手軽に分かりやすく共有でき、しかもGoogleのアプリケーションを使った教材であれば、デジタル上でそのまま授業に利用できるようになりました。
教材の共有だけでも十分に魅力的なのですが、Google Workspaceの魅力はただの共有を超えて、協働で教材を開発できるという点にあり、しかもそれが学校内だけでなく、自治体単位で行えるということです。この点に大きな可能性があり、今後の展開に大いに期待しています。
今回は記事の前半でGoogle ClassroomとGoogleドライブを利用した教材の共有、後半で共有することによって可能となる教育の発展可能性について文章を書いてみました。少しでもこれからのGIGAスクール構想の推進に役立つものになれば幸いです。
Google Classroomで共有する教材
Google Classroomは一つのクラスに20名まで教師を登録することができます。教師として登録することで、「授業」を設定したり、ストリーム上のファイルを自由に編集することが可能になります。
クラスを選択する画面にあるフォルダを教師で共有することもできるため、同じ教科の教師同士で教材共有に役立てることができます。
これまでも校務用のネットワークで教材の共有ができましたが、その教材を使うためにプリントアウトしたり、校務用USBを使って授業で使えるPCにデータを移動させたりと手間がかかっていました。そういった手間が教員間の連携を大なり小なり阻害していたところはあると思います。しかし、Google Classroomでの共有は、授業中に教材をすぐに活用することができますし、Googleのアプリケーションで作られたファイルであれば教師の協働作業で編集したり、生徒に配信して編集させたりすることも可能なので、幅広い用途で活用できます。例えば、ある教師がGoogleスライドで振り返りシートを作成し、それを他の教師が授業で生徒にコピーを作成して配信するというのも可能です。
しかし、教師としての登録人数に限りがあるため、ストリームに載せられているものは共有できても、市内全ての教師がフォルダを共有できません。同様に、ある程度の規模の学校になると、職員数は20名を超えてしまうため、校務用ネットワークのように学校全体で一つのクラスにまとめて教材共有するというのは現段階では難しいです。今後、教師の数の制限がなくなることを期待したいところです。Classroomを使い始めて数ヶ月ですが、この短い期間でもアプリケーションの不具合が改善されてきているので、きっと今後もより良い形に進化していくことと思います。
共有ドライブで教材を共有
20名以上の教師が教材や資料を共有できるようにするためには「共有ドライブ」を利用すると良いです。これなら人数制限がありません。
共有ドライブを他の教師と共有するためには、Googleのアカウントを入力する方法がありますが、これを一人ひとり入力していたら、全ての教師を入力するまでに人類が滅びるぐらいの時間がかかってしまうので、クラスに登録している人を丸ごと追加して管理者かコンテンツ管理者にしておけば、自由に共有ドライブを利用することができるようになります。クラスに登録している人を丸ごと追加するためには、ドキュメントやスライドなど、起動させた時に共有をかけられるものをストリームに作成し、「共有」からクラスのアカウントをコピーして、共有ドライブの「メンバーを管理」のところにペーストします。
こうすることで共有の対象が1個のグループとなって表示されます。クラスの人数が多いほどこの共有方法をお勧めします。
こうして沢山の教師とGoogle Classroomとそれを活用した共有ドライブで教材や情報の共有ができるようになりました。今後教材が充実したり、フィードバックに使えるような資料が充実してますます活用の幅が広がっていくことと思います。そして、これによってGIGAスクール構想の目指す新しい授業や学びのあり方が生まれるのではないかと思います。
共有から生まれるシナジー
これまで他校の教師がどのような教材を使っているかを知る機会というのは非常に限られたものでした。情報共有の手段も口頭や紙の資料が中心で、それらによって何となく他の教師の授業が分かったとしても、いざ自分で授業をしようとする場合には、教材を準備するのに労力が必要でした。紙の資料をもらっても、それを打ち直したり、アレンジしたりするのが好きな教師ばかりではありません。できればすぐにでも使いたいと考える人が多いのではないかと思います。教材がGoogleで共有できるようになったことで、教材共有が圧倒的に楽になりました。やろうと思えば研究会の直後でも共有した教材で授業が行えます。
教師としてある程度の年数を経験していたり、教材開発が好きな人であれば、生徒が早く課題を完了させてしまい、時間が余ってしまったとしても、時間を無駄にしない教材を提供することも可能です。しかし、まだ経歴が浅く、教材の引き出しが少ない場合や、教材作成に行き詰まっているという場合には、教材の共有は大変有効です。本来であれば、教師は授業に関する仕事に集中できる状況というのが望ましいですが、担任や部活動顧問、沢山の分掌や研究会の役割などがあると、教材研究をする時間の確保が難しくなります。共有できるものは共有して、効率良く仕事をする。これこそ働き方改革につながります。
特に美術の教師は1校に1人ということもよくあることなので、教材を校内で共有することができない場合も少なくありません。もちろん、教科書さえあれば学習指導要領に沿った内容を指導することができますが、美術の教科書は良くも悪くも自由度が高く、どのような制作方法で進めるかが示されていないことが多いです。美術の場合、作品そのものよりも、制作過程における工夫が個性を引き出すポイントになるため、教科書や美術資料だけで作品を制作しようとすると、アイディアを膨らませる過程が十分に生かせない可能性が高くなります。教科書を見れば優れた作品をお手本にすることができますが、そうなってしまうと表現の幅がどうしても狭くなってしまいかねません。生徒が取り組みやすくなる工夫が施された教材を作ることが必要であり、過程を充実させて、生徒一人ひとりが力を発揮できるような仕掛けをワークシートなどに盛り込む上で、教師が情報を共有するというのは大きなメリットがあります。
情報を共有することで、お互いの考え抜いた工夫を吸収できます。教師の開発した教材は学生の研究論文みたいなもので、日々の研究と実践の中で獲得してきたことを生かして作られたものが沢山あります。他の教師の教材から良いアイディアを見つけ、自分の教材をレベルアップさせることができれば、より良い授業も可能になり、それが生徒の成長につながります。このようなシナジー効果をこれまでよりも格段に生みやすくする可能性がGoogleドライブでの共有にはあると思います。共有できるものはどんどん共有していきたいところです。
教材だけではなく、振り返りシートなどのフィードバックに使えるものも共有していけると、生徒の学習効率を上げることができるので、内容を充実させる価値があると思います。授業中には、「コンパスを使わずに円を綺麗に書く方法が分からない」「どんな線があるか」など様々な質問があがります。そういった質問には図を描くなどして丁寧に答えますが、これを画像に取り込んでおけば、他の生徒が同じ内容で質問をしてきた際にすぐに示すことができますし、こういう指導に役立つものを多くの教師が協力して共有ドライブに入れていくと、内容が充実して生徒へのフィードバックの質も上がります。デジタルの振り返りシートであれば画像や動画をつけることも可能です。
<Google classroomを活用した美術科における振り返り活動https://art-educator-tatsuwaki-serendipities.blogspot.com/2021/06/google-classroom-vol2.html>
公開授業を協働的に考える
これまで、研究大会に向けた公開授業をする場合、特定の教師が教材を作成し、授業後に授業者が内容について説明した上で、参加した教師で話し合うというのが一般的でした。しかし、この方法では授業者の意図が上手いこと共有されず、論点がブレてしまうことも多々ありました。「そういうことじゃない!」と思いながらも、「授業を1回見ただけでわかるものでもないし、仕方がないか…」と思うしかなかったのが正直なところです。これは授業開発が特定の教師によって行われるが故にできてしまう壁です。
しかし、授業開発が4〜5人、もしくはそれ以上の教師が関わって行われた場合、より多角的に授業を考えることができるだけでなく、授業後の議論でも理解している人が多いことによって話がスムーズになりやすくなると考えられます。新しい方法を1人で実践した場合、議論の場では多勢に無勢状態で理解が得られず、「この方法はウチの学校では難しい」と言われてしまいかねませんが、そこに授業を理解している人が沢山いれば、より建設的な話になりやすいでしょう。
Google Classroomのストリームに授業に関する資料をアップし、多数の教師が協働して編集をすることができれば、研究もより良いものになりますし、その作業に参加していない教師でも興味がある場合は閲覧してことの成り行きを知ることができます。多くの人が関わった研究は進歩も早まり、1人の教師にかかる負担を減らすだけでなく、より多くの教師が授業について考えを深める良い機会になることと思います。
GIGAスクール構想は始まったばかりですが、教師が協働して新しいことに取り組んでいけば、きっとGIGAスクール構想は波に乗って日本の教育を大きく変えることにつながることでしょう。この先、どうなっていくかは予想することが難しいですが、良いものを力を合わせて作っていくことに変わりはないと思います。まずは自分にできることから少しずつ始めていきたいと思います。
最後まで読んでくださってありがとうございました。今回はGoogle ClassroomとGoogleドライブを用いた教材共有についてお話しさせていただきました。GIGAスクール構想が始まったばかりの今年は手探り状態が続いていますが、色々とやっているうちに1学期間でかなりの進歩をすることができたと感じています。これからより多くの人と情報共有したり、活動を共有して、GIGAスクール構想を進めていきたいと思います。もし、今回の内容で参考になることがあれば幸いですし、少しでも多くの人と共有してもらえると嬉しいです。
次回は「夏休みに利用したい憩いの場」について記事を書く予定です。私はこの夏休みほぼ毎日公園を利用しています。決して行き場所を失って公園に行っているわけではありません。暑い夏は家のクーラーで涼みたいところですが、外もなかなか良い!ということで、公園を利用することのメリットについてお話しします。もし興味があればまた読んでもらえると嬉しいです。
それではまた!
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